インスリン分泌
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/02/09 06:53 UTC 版)
β細胞では、インスリンの放出は血中に存在するグルコースによって主に刺激される。食事の消化後などに循環するグルコースのレベルが上昇すると、インスリンは用量依存的に分泌される。この放出システムは一般にグルコース応答性インスリン分泌(glucose-stimulated insulin secretion、GSIS)と呼ばれている。GSISの「コンセンサス・モデル」では、GLUT2(英語版)依存的なグルコースの取り込み、グルコースの代謝、ATP感受性カリウムチャネル(英語版)の閉口、そして電位依存性カルシウムチャネルの開口、の4つの主要な過程によってインスリン顆粒の膜融合とエキソサイトーシスが引き起こされる。 ATP感受性カリウムチャネルと電位依存性カルシウムチャネルはβ細胞の細胞膜に埋め込まれている。ATP感受性カリウムチャネルは通常開いており、電位依存性カルシウムチャネルは通常閉じている。正電荷を持つカリウムイオンは濃度勾配に従って細胞外へ拡散するため、細胞内は細胞外に対して負の電位となる。安静時には、細胞膜を挟んだ電位差は約 -70 mVである。 細胞外のグルコース濃度が高くなると、グルコース分子は促進拡散(英語版)によって、濃度勾配に従ってGLUT2トランスポーターを介して細胞内へ移動する。β細胞は解糖系の第一段階の触媒にグルコキナーゼ(英語版)を利用するため、代謝は生理学的な血糖値周辺かそれ以上の値でのみ起こる。グルコースの代謝によってATPが産生され、ADPに対するATPの比率が上昇する。 この比率の上昇によって、ATP感受性カリウムチャネルが閉じる。このことは、カリウムイオンが細胞外へ拡散しなくなることを意味する。結果として、カリウムイオンが細胞内に蓄積し、膜電位はより正側へシフトする。この電位変化によって電位依存性カルシウムチャネルが開き、カルシウムイオンが細胞外から濃度勾配に従って流入する。カルシウムイオンが細胞内へ流入すると、インスリンを含む小胞が細胞膜へ移動して融合し、エキソサイトーシスによって門脈へインスリンが放出される。
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