インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/24 22:52 UTC 版)
「痩身」の記事における「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。 インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。 インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。 インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。 肥満における危険因子には、高インスリン血症(Hyperinsulinemia)が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生(Gluconeogenesis)を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。 脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。 17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。 食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる。 ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(en:George F. Cahill Jr.)は、 「Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」)との言葉を残している。 肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した。 体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。 1日を通して、インスリンの濃度が高い状態を避けることは、脂肪の蓄積を防ぐという意味でも大いに有効である。断食も有効な手段となりうる。
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インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
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「肥満」の記事における「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。 インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。 インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。 インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。 肥満における危険因子には、高インスリン血症(Hyperinsulinemia)が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生(Gluconeogenesis)を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。 脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。 17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。 食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる。 ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(en:George F. Cahill Jr.)は、「Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」)との言葉を残している。 肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した。 体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。 ゲアリー・タウブスは、「体重を減らしたいのなら、炭水化物を食事から排除すれば成功する。これを守らなければ、減量は必ず失敗に終わる」「炭水化物ではなく、タンパク質と脂肪の摂取を減らした場合、常に空腹感が付きまとい、その空腹が減量を失敗に導くであろう」「炭水化物は人間の食事には必要ない。『必須炭水化物』なるものは存在しない」と明言している。 1日を通して、インスリンの濃度が高い状態を避けることは、脂肪の蓄積を防ぐという意味でも大いに有効である。断食も有効な手段となりうる。
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インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
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「ダイエット」の記事における「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。 インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。 インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。 インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。 肥満における危険因子には、高インスリン血症(Hyperinsulinemia)が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生(Gluconeogenesis)を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。 脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。 17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。 食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる。 ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(en:George F. Cahill Jr.)は、 「Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」) との言葉を残している。 肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した。 体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。 ゲアリー・タウブスは、「体重を減らしたいのなら、炭水化物を食事から排除すれば成功する。これを守らなければ、減量は必ず失敗に終わる」「炭水化物ではなく、タンパク質と脂肪の摂取を減らした場合、常に空腹感が付きまとい、その空腹が減量を失敗に導くであろう」「炭水化物は人間の食事には必要ない。『必須炭水化物』なるものは存在しない」と明言している。 1日を通して、インスリンの濃度が高い状態を避けることは、脂肪の蓄積を防ぐという意味でも大いに有効である。断食も有効な手段となりうる。
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インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 21:46 UTC 版)
「インスリン」の記事における「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。 インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。 インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。 インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体(Keto)の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。 肥満における危険因子には、高インスリン血症が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生( Gluconeogenesis )を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。 脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。 17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成作用」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。
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インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/23 02:57 UTC 版)
「アトキンスダイエット」の記事における「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説
インスリンは脂肪の合成と貯蔵を促進し、体内における脂肪分解を徹底的に抑制・阻害する最大のホルモンである。 インスリンは脂肪の蓄積を強力に促進し、空腹感を高め、体重増加を惹き起こす。たとえカロリーを制限したところで、インスリンを注射された動物には過剰な量の体脂肪が蓄積する。。 インスリンの分泌を高める食事は、インスリンを注射した時と同様の作用をもたらす。 インスリンは、細胞へのブドウ糖の取り込みを促進し、脂肪細胞からの脂肪酸の放出を抑制・妨害し、肝臓でのケトン体の産生を抑制し、脂肪の沈着を促進し、主要な代謝燃料の循環濃度までも低下させる。 肥満における危険因子には、高インスリン血症が関わっている。インスリンの濃度が正常より高い場合や、インスリンの濃度がほんのわずかに上昇するだけで肥満は惹き起こされる。インスリンの分泌を阻害する薬物を投与するか、インスリンの濃度が低下すると体重は減少する。脂肪分解を抑制・妨害する作用は、インスリンにおける最も敏感な代謝作用である。空腹時でもインスリンの濃度がわずかに上昇すると、脂肪細胞における脂肪分解作業は阻害される。細胞へのブドウ糖の取り込みを刺激するには、通常の6倍のインスリン濃度が必要になり、肝臓における糖新生( Gluconeogenesis )を抑制するには、インスリンの濃度が2倍になるだけで十分である。 脂肪細胞が満杯になってしまう場合に備えて、新しく脂肪を貯蔵する場所を確保するため、インスリンは脂肪細胞を新しく作るよう信号を送る。 17歳の時に1型糖尿病を発症したある女性は、その後47年間に亘って太ももにある2か所の部分に、毎日インスリンを注射し続けた。彼女の太ももには、マスクメロン大の脂肪の塊ができあがった。これは、「彼女が何をどの程度食べたか」とは何の関係も無く、「インスリンによる脂肪生成効果」に他ならない。全身のインスリン濃度が上昇している時にも、同じ現象が起こる。糖尿病患者がインスリン療法を受けるとしばしば肥満になるのは、これが理由である。『ジョスリン糖尿病学』(『Joslin's Diabetes Mellitus』)には、「It results from the direct lipogenic effect of insulin on adipose tissue, independent of food intake」(「食べ物の摂取とは何の関係も無い、脂肪組織に対するインスリンによる直接的な脂肪生成作用の結果である」)と説明されている。 食後の血糖値の上昇とインスリンの分泌を最も強力に促進するのは炭水化物である。タンパク質もインスリンの分泌を刺激するが、インスリンと拮抗する異化ホルモン、グルカゴン(Glucagon)の分泌も誘発する。一方、食べ物に含まれる脂肪分は、インスリンの分泌にほとんど影響を与えない。この生理学的な事実は、低糖質・高脂肪食が人体に有益であることを示す理論的根拠となる。 肥満、インスリン抵抗性、メタボリック症候群、2型糖尿病を患っている患者が、炭水化物の摂取を制限し、脂肪に置き換えて食べると、最大限の効果が得られる可能性がある。さらに、84時間に亘って絶食状態にあった被験者と、84時間に亘って脂肪「だけ」を摂取し続けた被験者の血中の状態は「全く同じ」であった。双方とも、血糖値とインスリンの濃度は低下し、遊離脂肪酸とケトン体の濃度、脂肪分解の速度がいずれも上昇した。 体重を減らしたい人、心血管疾患の危険因子を減らしたい人にとって、炭水化物が少なく、脂肪(トランス脂肪酸を除く全ての脂肪。飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸)が多い食事はその選択肢となりうる。 ハーバード大学の元医学部長ジョージ・F・ケイヒル・ジュニア(en:George F. Cahill Jr., 1927-2012)は、 「Carbohydrates is driving insulin is driving fat.」(「脂肪を操るインスリンを、炭水化物が操る」)との言葉を残している。
※この「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」の解説は、「アトキンスダイエット」の解説の一部です。
「インスリンは脂肪分解を抑制・妨害する」を含む「アトキンスダイエット」の記事については、「アトキンスダイエット」の概要を参照ください。
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