アトキンスダイエットとは? わかりやすく解説

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アトキンスダイエット

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/15 13:29 UTC 版)

アトキンス・ダイエットに基づく食事の一例

アトキンス・ダイエットThe Atkins Diet)とは、アメリカ合衆国の医師で心臓病専門医、ロバート・アトキンスRobert Atkins)が提唱したファド・ダイエットの一種である。炭水化物が多いものを避けるか、その摂取量を減らす代わりに、タンパク質と脂肪が豊富な食べ物を積極的に食べる食事法である。「低炭水化物ダイエット」、「ローカーボ・ダイエット」、「低糖質食」、「炭水化物制限食」とも呼ばれ、アトキンス・ダイエットもこの食事法の一種である。

アトキンス・ダイエットの流行

1972年、ロバート・アトキンスは『Dr. Atkins' Diet Revolution』(邦題:『アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット』[1])を出版した。アトキンスはこの本の中で、「肥満を惹き起こすのは炭水化物であり、これを制限する代わりに、肉、魚、卵、ステーキ、バターのような、タンパク質と脂肪が豊富な食べ物は自由に食べてかまわない。炭水化物が多いものは可能な限り避けなさい」と推奨している[2][要ページ番号]。本書の販売数は数百万部を超えた[2]。2003年にイギリスで行われたアンケートによれば、300万人が、アメリカ合衆国においては11人に1人が、アトキンス・ダイエットを試したことがあると推定され[3][4]、アメリカ人の11人に1人がこの食事法を取り組んだという[5]

2000年2月24日アメリカ合衆国農務省は『Great Nutrition Debate』と呼ばれる討論会を主催し、アトキンスとバリー・スィアース(Barry Sears)を識者として招いた[6]

アトキンスもスィアースも、炭水化物の危険性を訴える点で共通していた[7]。この討論会では、アトキンスに対する批判が集中し、アトキンスはその批判に答える形で登壇した[8]

2003年には、パスタや米といった炭水化物が多い食べ物の販売額が4.6~8.2%ほど落ち込むことになり、それらの産業界からは数多くの怨嗟の声が上がり、クリスピー・クリーム・ドーナツの販売店からも恨みの声が上がった[9]。著書が売れたことに伴い、炭水化物の少ない特別製品を発売する企業が増えた。

2004年、「これを開始して1年後には頭痛下痢といった副作用もみられ、長期的な安全性は保証できない」と報告された[10]

2004年2月の時点で、消費者の9.1%がこの低炭水化物ダイエットを実行していると答えていたが、同じ年の7月には2.1%に急落した。1989年にアトキンスが設立した法人企業『アトキンス・ニュートリショナルズ』(Atkins Nutritionals)は、連邦倒産法第11章に基づき、会社更生手続きをとった[11]

食事法

誘導段階

  1. 最初の2週間、導入期間として「炭水化物の摂取量を1日20g以下」に抑える。こうすることで、身体がケトーシス状態に誘導される[2][要ページ番号]
    • 炭水化物が10%以上含まれるものは禁止。ケチャップ、蜂蜜やシロップ、大量の砂糖を含む甘いもの全般、甘い果物、米、パン、麺・パスタ、バナナ、栗、豆の状態を保った豆、芋、フライドポテトやポテトチップスも禁止。緑色野菜に含まれる食物繊維は食べて構わない。
  2. カフェインを含む飲み物も制限する。アルコールは禁止。
    • 肉・魚・卵・チーズといった、動物性食品を中心に摂取することでエネルギーを補給する。ビタミンを補充するという意味で、サプリメントの摂取も許される[12]

減量段階

続けていく過程で、体重の増加が確認できるまで、炭水化物の量を徐々に増やしていく。炭水化物をどれだけ摂取すればどれぐらい体重が増えるかを、自分で見極める。

体重維持段階

炭水化物中毒の状態に戻らないためにも、砂糖を多く含んでいるもの全般は禁止とする[13]。砂糖の代わりにステビアは使ってもよいとしている[13]ジャンクフードは健康を害するだけでなく、炭水化物中毒に戻ってしまうので禁止とする[14]

高果糖コーンシロップ、蜂蜜砂糖果糖乳糖、精製された炭水化物の摂取の全般を禁止とする[15]オートミール玄米蕎麦のような精製されていない全粒穀物(※注 玄米も全粒穀物も血糖値を上昇させる)を少しだけ取り入れる[16]。魚、豆腐、野菜、豆から組み立てたメニューは健康的である、としている[17]

安全性

この食事法に対しては批判も多い。基本的な知識として、炭水化物を制限すると、エネルギー源は脂肪およびタンパク質となる。ここで脂肪が十分に摂取されないとタンパク質が分解されアミノ酸がエネルギー源として使われてしまう。アミノ酸をエネルギーとして利用すると、構成する窒素や硫化物、リンが大量に放出され、腎臓に負担がかかる。心臓を始め、臓器のタンパク質が消費され心不全を始めさまざまな機能不全が起こる。体調不良の原因は、タンパク質と脂肪の摂取が不十分で、それに伴う心機能や腎機能の低下によるものである。

2007年世界保健機関が報告したところでは、「タンパク質の多い食事は腎臓疾患や糖尿病性腎不全を悪化させる」[18]としている。2003年の報告では、「肥満や糖尿病を予防する食べ物」として「全粒穀物」を挙げている[19]国際糖尿病連盟英語版は、糖尿病の治療に対して「グリセミック指数が低い食品が良い」としており、これには全粒穀物も含む[20]

出典

  1. ^ 『アトキンス博士のローカーボ(低炭水化物)ダイエット』 荒井稔・丸田知美 (翻訳)、橋本三四郎(監修) 同朋舎 2000年10月 ISBN 978-4810426441
  2. ^ a b c Gary Taubes (7 July 2002). “What if It's All Been a Big Fat Lie?”. The New York Times. 30 March 2009時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  3. ^ Three million follow Atkins diet”. BBC News (1 September 2003). 15 February 2004時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  4. ^ Vanessa Barford (17 April 2013). “Atkins and the never-ending battle over carbs”. BBC News. 1 april 2014時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  5. ^ Kaufman, Wendy (3 August 2005). “Atkins Bankruptcy a Boon for Pasta Makers”. NPR. 15 April 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  6. ^ Millennium Lecture Series Symposium on The Great Nutrition Debate” (PDF). cnpp.usda.gov. THE UNITED STATES DEPARTMENT OF AGRICULTURE (24 February 2000). 15 April 2015時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  7. ^ Little Accord in a Round Table of Diet Experts - The New York Times”. The New York Times (25 February 2000). 6 December 2010時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  8. ^ 「ご飯を食べるダイエット=○」『日経ヘルス』2000年6月、33-36頁。 
  9. ^ Schooler, Larry (June 22, 2004). “Low-Carb Diets Trim Krispy Kreme's Profit Line”. NPR. 9 December 2012時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  10. ^ Arne Astrup,Thomas Meinert Larsen,Angela Harper, "Atkins and other low-carbohydrate diets: hoax or an effective tool for weight loss?" The Lancet 364(9437), 2004 Sep 4-10, P897-9. PMID 15351198
  11. ^ Howard, Theresa (1 August 2005). “Atkins Nutritionals files for bankruptcy protection”. USA Today. 5 December 2013時点のオリジナルよりアーカイブ。14 November 2022閲覧。
  12. ^ ロバート・アトキンス 2005, pp. 105.
  13. ^ a b ロバート・アトキンス 2005, pp. 236–237.
  14. ^ ロバート・アトキンス 2005, pp. 238–239.
  15. ^ ロバート・アトキンス 2005, pp. 239.
  16. ^ ロバート・アトキンス 2005, pp. 236.
  17. ^ ロバート・アトキンス 2005, pp. 230–231.
  18. ^ 『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 Protein and amino acid requirements in human nutrition, Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007
  19. ^ Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases 2003
  20. ^ 食後血糖値の管理に関するガイドライン』国際糖尿病連合

参考文献

  • ロバート・アトキンス『アトキンス式低炭水化物ダイエット』河出書房新社、2005年6月。ISBN 978-4309280141 

関連文献

関連項目

外部リンク


アトキンス・ダイエット

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ウィリアム・バンティング」の記事における「アトキンス・ダイエット」の解説

1972年に『Dr. Atkins' Diet Revolution』(邦題:『アトキンス博士ローカーボ(低炭水化物ダイエット』)を出版し、『アトキンス・ダイエット』を広めたアメリカ合衆国医師ロバート・アトキンスRobert Atkins )は、デラウェア州にある会社デュポン社DuPont )に所属していた、アルフレッド・W・ペニントンAlfred W. Pennington )が研究し従業員提供していた食事法を発見した1940年代ペニントンは、過体重太り過ぎの従業員20人に、「ほぼ肉だけで構成され食事」を処方していた。彼らの1日摂取カロリー平均3000kcalであった。この食事続けた結果、彼らは平均で週に2ポンド(約1)の減量見せた。この食事処方され過体重従業員には、「一食あたりの炭水化物摂取量20g以内」と定められ、これを超える量の炭水化物摂取許されなかった。デュポン社産業医部長、ジョージ・ゲアマン( George Gehrman )は、「食べる量を減らしカロリー計算し、もっと運動するようにと言ったが、全くうまくいかなかった」と述べた。ゲアマンは、自身同僚であるペニントン助け求めペニントンはこの食事処方したであったアトキンスは、ペニントン実践していたこの食事法からヒント得て患者診療する際に、「炭水化物が多いものを避けるか、その摂取量可能な限り抑えたうえで、肉、、卵、食物繊維豊富な緑色野菜積極的に食べる」食事法を処方し始め、それと並行する形で本を書いたアトキンス著書Dr. Atkins' Diet Revolution』の中でケトン体について触れており、「炭水化物摂取極力抑え脂肪の摂取量を増やすことで、身体ブドウ糖ではなく脂肪エネルギー源にして生存できる」という趣旨述べ体重減らしたい人に向けて炭水化物避けるか、その摂取制限奨めている。 方法論がどうであれ、「炭水化物極力避ける」という点においてはバンティング初め過去様々な人物実践してきた食事法と同じである。

※この「アトキンス・ダイエット」の解説は、「ウィリアム・バンティング」の解説の一部です。
「アトキンス・ダイエット」を含む「ウィリアム・バンティング」の記事については、「ウィリアム・バンティング」の概要を参照ください。

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