アトキンス以前の食事療法
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フランスの法律家で美食家のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)は、1825年出版の著書『Physiologie du goût』(『味覚の生理学』)にて、「思ったとおり、肉食動物は決して太ることはない(オオカミ、ジャッカル、猛禽類、カラス)。草食動物においては、動けなくなる年齢になるまで脂肪が増えることは無い。だが、ジャガイモ、穀物、小麦粉を食べ始めた途端、瞬く間に肥え太っていく。・・・肥満の主要な原因の2つ目は、ヒトが日々の主要な食べ物として消費している小麦粉やデンプン質が豊富なものだ。前述のとおり、デンプン質が豊富なものを常食している動物は、いずれも例外なく、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則から逃れられはしない」、「ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプン質と穀物によってのみ起こる、ということは証明済みである」、「デンプン質・小麦粉由来のすべての物を厳しく節制すれば、肥満を防げるだろう」と述べ、「身体に脂肪が蓄積するのはデンプンや砂糖を食べるからだ」と断言している。ブリア=サヴァランは、タンパク質が豊富なものを食べるよう勧めており、デンプン、穀物、小麦粉、砂糖を避けるよう力説している。 1856年、クロード・ベルナールは、パリで糖尿病についての講演を行っていた。当時、ウィリアム・ハーヴィーは、ベルナールによる講演を聴いていた。ベルナールは肝臓の機能について、肝臓がブドウ糖を産生して分泌することや、糖尿病患者の血中ではブドウ糖の濃度が異常に上昇している趣旨を説明した。また、ベルナールはブリア=サヴァランの著書を読み、肥満の治療法を発見した、と述べた。 ベルナールの講演を聴いたハーヴィーは、糖やデンプンを含まない動物性食品による食事を取ると、糖尿病患者の尿中への糖の排泄が抑制される事実に考えを巡らせ、これが体重を減らす食事法としても機能するかもしれない、と考えた。ハーヴィーは、「糖やデンプンを含む食べ物は動物を太らせるために使われる。糖尿病になると身体から脂肪が急速に減っていくことが分かる。肥満の進行の仕方はさまざまであれ、その原因は糖尿病に行き着く点に思い当たった。もしも動物性食品が糖尿病に対して有効であるなら、動物性食品および糖やデンプンを含まない植物性食品との組み合わせが、過剰な量の脂肪の生成を抑制するのに役立つ可能性がある」と記述した。その後、ウィリアム・バンティングはハーヴィーから炭水化物を制限する食事法を教わり、体重が減り、身体の不調も回復した。 1886年にベルリンで開催された内科学会にて、食事療法についての討論会が行われた際、肥満患者を確実に減らせる食事療法が3つ紹介され、ウィリアム・バンティングが実践していた方法がそのうちの1つとして紹介された。残りの2つはいずれもドイツ人の医師が開発した方法であるが、いずれにも共通するのは 「肉は無制限に食べて構わない」 「デンプン質・糖質は完全に禁止」 というものであった。1957年、精神医学者で小児肥満の研究者でもあったヒルデ・ブルッフ(Hilde Bruch)はこれを紹介したうえで、「食事管理による肥満の抑制における大きな進歩と呼べるのは、身体の中で脂肪を生成するのは肉ではなく、パンや甘く味付けされた食べ物のような、『無害』と思われていたものこそが肥満をもたらす、と認識された点にある」と述べた。1973年には、肥満について「脂肪組織において調節障害が惹き起こされている」とも述べている。1934年にアメリカ合衆国に移住したブルッフは、当時のニューヨークが「肥満体の子供で溢れかえっていた」と記録しており、太っている子供たちはどれだけ食べる量を減らしたところで痩せることは無く、身体は太ったままであった。体重を減らす目的で「食べる量を減らす」を実行したところで、いずれも全て例外なく失敗に終わる。
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アトキンス以前の食事療法
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「ダイエット」の記事における「アトキンス以前の食事療法」の解説
フランスの法律家で美食家のジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン(Jean Anthelme Brillat-Savarin)は、1825年出版の著書『Physiologie du goût』(『味覚の生理学』)にて、「思ったとおり、肉食動物は決して太ることはない(オオカミ・ジャッカル・猛禽類・カラス)。草食動物においては、動けなくなる年齢になるまで脂肪が増えることは無い。だが、ジャガイモ、穀物、小麦粉を食べ始めた途端、瞬く間に肥え太っていく。・・・肥満の主要な原因の2つ目は、ヒトが日々の主要な食べ物として消費している小麦粉やデンプン質が豊富なものだ。前述のとおり、デンプン質が豊富なものを常食している動物は、いずれも例外なく、強制的に脂肪が蓄積していく。ヒトもまた、この普遍的な法則から逃れられはしない」、「ヒトにおいても、動物においても、脂肪の蓄積はデンプン質と穀物によってのみ起こる、ということは証明済みである」、「デンプン質・小麦粉由来のすべての物を厳しく節制すれば、肥満を防げるだろう」 と述べ、「身体に脂肪が蓄積するのはデンプンや砂糖を食べるからだ」と断言している。ブリア=サヴァランは、タンパク質が豊富なものを食べるよう勧めており、デンプン、穀物、小麦粉、砂糖を避けるよう力説している。 1856年、クロード・ベルナールは、パリで糖尿病についての講演を行っていた。当時、ウィリアム・ハーヴィーは、ベルナールによる講演を聴いていた。ベルナールは肝臓の機能について、肝臓がブドウ糖を産生して分泌することや、糖尿病患者の血中ではブドウ糖の濃度が異常に上昇している趣旨を説明した。また、ベルナールはブリア=サヴァランの著書を読み、肥満の治療法を発見した、と述べた。 ベルナールの講演を聴いたハーヴィーは、糖やデンプンを含まない動物性食品による食事を取ると、糖尿病患者の尿中への糖の排泄が抑制される事実に考えを巡らせ、これが体重を減らす食事法としても機能するかもしれない、と考えた。ハーヴィーは、「糖やデンプンを含む食べ物は動物を太らせるために使われる。糖尿病になると身体から脂肪が急速に減っていくことが分かる。肥満の進行の仕方はさまざまであれ、その原因は糖尿病に行き着く点に思い当たった。もしも動物性食品が糖尿病に対して有効であるなら、動物性食品および糖やデンプンを含まない植物性食品との組み合わせが、過剰な量の脂肪の生成を抑制するのに役立つ可能性がある」と記述した。その後、ウィリアム・バンティングはハーヴィーから炭水化物を制限する食事法を教わり、体重が減り、身体の不調も回復した。 1886年にベルリンで開催された内科学会にて、食事療法についての討論会が行われた際、肥満患者を確実に減らせる食事療法が3つ紹介され、ウィリアム・バンティングが実践していた方法がそのうちの1つとして紹介された。残りの2つはいずれもドイツ人の医師が開発した方法であるが、いずれにも共通するのは 「肉は無制限に食べて構わない」 「デンプン質・糖質は完全に禁止」 というものであった。1957年、精神医学者で小児肥満の研究者でもあったヒルデ・ブルッフ(Hilde Bruch)はこれを紹介したうえで、「食事管理による肥満の抑制における大きな進歩と呼べるのは、身体の中で脂肪を生成するのは肉ではなく、パンや甘く味付けされた食べ物のような、『無害』と思われていたものこそが肥満をもたらす、と認識された点にある」と述べた。1973年には、肥満について「脂肪組織において調節障害が惹き起こされている」とも述べている。1934年にアメリカ合衆国に移住したブルッフは、当時のニューヨークが「肥満体の子供で溢れかえっていた」と記録しており、太っている子供たちはどれだけ食べる量を減らしたところで痩せることは無く、身体は太ったままであった。体重を減らす目的で「食べる量を減らす」を実行したところで、いずれも全て例外なく失敗に終わる。
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