脂肪の摂取
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 17:59 UTC 版)
「心臓病を惹き起こすのは何か?」について、ユドキンは「砂糖が原因である」と主張し、キースは「食べ物に含まれる脂肪が原因である」と主張し、両者は激しく対立した。この論争では、「脂肪が原因である」というキースの主張が通り、「砂糖が原因であるというユドキンの主張は通らなかった。のちにアメリカ合衆国政府は「脂肪の摂取を減らし、炭水化物の摂取を増やせ」とする食事の指針を発表し、国民に呼びかけるが、肥満・糖尿病・心臓病を患う国民の数は増加の一途を辿るようになった。 5大陸、18か国に住む135335人を対象に行われた大規模な疫学コホート研究(Epidemiological Cohort Study)の結果が、2017年に『The Lancet』にて発表された。これは炭水化物の摂取量および脂肪の摂取量と、心血管疾患に罹る危険性およびその死亡率との関係についての調査であった。これによると、炭水化物の摂取を増やせば増やすほど死亡率は上昇し、脂肪の摂取を増やせば増やすほど死亡率は低下するという結果が示された。とくに、飽和脂肪酸の摂取量が多ければ多いほど、脳卒中に罹る危険性は低下した。また、飽和脂肪酸・不飽和脂肪酸を問わず、脂肪の摂取は死亡率を低下させ、心筋梗塞および心血管疾患の発症とは何の関係も無かった。 飽和脂肪酸の摂取は、冠状動脈性心臓病、脳卒中、心血管疾患の発症とは何の関係も無く、飽和脂肪酸がこれらの病気と明確に関係していることを示す証拠は無い。 また、多価不飽和脂肪酸の摂取量を増やし、飽和脂肪酸の摂取量を減らしても、心血管疾患の発症の危険性は減らせない。 1960年代以降、「動物性脂肪を豊富に含む動物性食品は、健康に悪影響を及ぼす可能性がある」と言われるようになると、栄養学者たちは、「動物の肉には、生命維持に欠かせない全ての必須アミノ酸(Essential Amino Acids)、全ての必須脂肪酸(Essential Fatty Acids)、13種類ある必須ビタミンのうちの12種類がたくさん含まれている」という栄養学上の事実の指摘を控えるようになった。ビタミンDとビタミンB12の両方を含む食べ物は「動物性食品だけ」である。 ユドキンは「肥満や糖尿病、心臓病を惹き起こす犯人は砂糖であり、食べ物に含まれる脂肪はこれらの疾患とは何の関係も無い」と断じており、体重を減らしたい人に向けて、炭水化物が少ない食事療法を奨めている。
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