寛解
別表記:緩解
「寛解」とは、病気が完全に治ったわけではないが、症状がひとまず軽くなったり消えたりした状態で安定している、という意味の医学用語である。
寛解した病状は、そのまま完治に至る可能性もあるが、また再発(再燃)して悪化する可能性もある。そのため、治った(治癒)とは言わず、あえて「寛解」と表現される。
軽快、寛解、治癒(完治)、増悪
病気が快方に向かって病状が軽くなること自体は「軽快」と表現される。「寛解」は、おおむね元の日常生活に戻れる程度に回復した状態を指すことが多い。病気が完全に「治った」と表現できる状態は「治癒」または「完治」と呼ばれる。ガンのように再発する可能性の高い病気では、症状が回復して病巣が消失したように見えても容易に「治癒」とは表現されず、ひとまず「寛解」と表現されるが、寛解と判断されて治療をやめてから数年(ガンの場合は一般的には5年)ほど様子を見て再発が確認されなければ「治癒」と判断されることが多い。
病気が寛解した状態は、あくまでも再発の可能性を残している状態である。日常生活に戻った後も、病気の再発を抑止する薬を飲んだり、再発につながりやすい生活習慣を遠ざけたり、検査を定期的に受けたり、といった努力が求められる。
「寛解」という表現が用いられやすい病気
「寛解」という表現は、がん、白血病、骨肉腫その他の悪性腫瘍といった、悪性かつ難治性で再発しやすい病気について用いられることの多い表現である。同じく難治性で再発しやすい「うつ病」でも用いられることが多い。がん(癌)は「寛解」の表現が最も用いられやすい病気のひとつである。がんは生体に生じる悪性腫瘍の総称であり、がんが発生した細胞の種類に応じて「癌腫」や「肉腫」「血液がん」などに分類される。通常、単に「がん」と呼ばれる場合は、上皮細胞から発生する悪性腫瘍(癌腫)を指す。癌腫が発生した部位に応じて「肺がん」「乳がん」「胃がん」「大腸がん」「子宮がん」等々に呼び分けられる。
がんにおける「寛解」は、腫瘍が一時的あるいは永続的に縮小もしくは消失している状態を指す。寛解に至れば退院して普段の生活に戻れる。ただし、寛解した後に完治に至ることもあるとはいえ、腫瘍が再び増えたり、場合によっては別の部位に転移して増えていたりすることもある。
うつ(うつ病)は気分障害の一種であり、気分の落ち込みなどの精神症状、および、不眠や食欲不振などの身体症状が生じ、日常生活に大きな支障が生じる病気である。
うつ病における「寛解」は、こうした精神症状および身体症状が軽くなったり消えたりして、普通の日常生活が営めるようになった状態を指す。そのまま再発せず治癒に至る場合もあるが、再びうつ病の症状が再燃する人もいる。
うつ病は、適切な診断と治療を受ければ寛解しやすいとされる。ただし再燃もしやすいとされる。
「寛解」の熟語・言い回し
寛解状態
「寛解状態」とは、病気の症状が一時的に軽快したり、消失したりして、病状が安定した状態のことである。「寛解の状態」。「病気が寛解した状態」。寛解する
「寛解する」とは、病気や病状が「寛解」と表現できる状態になった、ということを表現する動詞である。サ行変格活用。「寛解」は、通俗的な表現を使えば「病気の症状がほぼほぼ回復した」状態であるともいい得る。
寛解期
「寛解期」とは、治療によって病状が治まり、「寛解した」といえる状態になっている間(期間)を指す表現である。「寛解期」は「活動期」と対比されることが多い。「活動期」は、病状(炎症など)が激しく現れている期間を指す表現である。
非寛解
「非寛解」とは、寛解していないこと、寛解していない状態のこと、(治療を続けているにもかかわらず)まだ症状が良くなっても消失してもいない状況のことである。「非寛解」は「非寛解での造血幹細胞移植」や「非寛解期骨髄系腫瘍」のような言い回しで用いられる学術用語的な表現である。
寛解
「寛解」とは、病気の症状が消失している状態のことを意味する表現である。
「寛解」とは・「寛解」の詳しい解説
「寛解」とは、「病気の症状がない、あるいは検査によって得られた数値などに異常が見られない状態」を意味する医学用語である。英語においては「remission」と表現される。例えば、原因となる細胞を取り除くのが難しく再燃の恐れが高い「がん」や、再発の可能性が高い「うつ」などの精神疾患などは、一時的に症状が治まったことで「治癒(完治)した」と誤認されやすく、「寛解」という表現が使われる。また、反対に「自分は治らない病気になってしまった」といった誤解や、治療を諦めてしまうことのないように、「治療を継続すれば症状を抑えて生活できる」という意味で、「寛解」と表現することもある。言葉の定義や、実際にどのような治療を行い、生活していくのかについては個人差が大きく、医師の判断によるところがある。「寛解」の対義語として、抑えられていた症状が再び悪化することを、「再燃」あるいは「増悪(ぞうあく)」という。激しく憎しみを抱くことを意味する「憎悪(ぞうお)」は、漢字・読みが似ているため誤認・誤用されることがあるが、誤りである。「増悪」は「寛解」とセットで用いられることも多く、「寛解と増悪を繰り返す(症状がよくなったり、悪くなったりする)」という表現などがある。
「寛解」の発音・読み方
「寛解」は「かんかい」と読む。「寛解」の語源・由来
「寛解」という表現は、「寛(ゆるやか・くつろぐ)」と「解(しばりつけていたちからをとりのぞく)」という二つの漢字の意味を合わせた、熟語として生まれたと考えられる。「寛解」と「完治」の違い
「完治」が「病気が完全に治った状態」を意味するのに対して、「寛解」は「完治の手前の状態だが、また再度症状が発生する恐れがある状態」を意味する。例えば、がんの場合は治療によって症状が治まったとしても、他の部位にがん細胞が転移している可能性が否定できず、後々再発する可能性があるため、「完治」とは表現せず「寛解」とすることが一般的である。「寛解」に関連する用語の解説
「完全寛解とは」とは
「完全寛解」とは、がん治療などにおいてよく用いられる医学用語であり、「治療によって、がん細胞などが消失している状態」を示す。「寛解」よりも更に安定した状態を意味するが、「治癒(完治)」とは異なるため、再発する可能性は否定できず、また病気の種類によっては服薬やカウンセリングなど、なんらかの治療を継続することもある。英語においては「complete remission」と表現する。
「寛解期」とは
「寛解期」とは、治療によって病気の症状がゆるやかになった、あるいは症状がおさまっている時期のことを意味する。
「寛解状態」とは
「寛解状態」とは、「寛解」と同様に、「病気の症状が落ちついていること・検査によって異常が見つからない状態」を意味する。
「寛解導入療法」とは
「寛解導入療法」とは、「完全寛解」を目標とした化学療法における、第一段階の治療を意味する。一般的には副作用等も大きな強い治療であることが多い。「寛解導入療法」を終えた後は、やや緩やかな「強化療法」などを経て、検査をしても異常がない「寛解状態」を目指す。その後更に、再発を防ぎ「寛解」を維持するための「寛解維持療法(地固め療法、維持療法)」を行うなどして、将来的な「完全寛解」を目指すことになる。
「寛解」の使い方・例文
「寛解」という言葉は医学用語のため、主に、医師や医療従事者が患者に対して使う言葉である。ただ、病気や症状、あるいは個人差が大きいため、そもそも「寛解」の意味や、「寛解後にどのような憎悪が起きる可能性があり、どういった治療をするのか」や「寛解を維持するために必要なこと」などは異なるため、主治医によく確認することが望ましい。個人が「寛解」という言葉を使う場合は、寛解を目指して治療中であるという人に対して「寛解期になったら美味しいものを食べに行こうね」や「焦らずに寛解を待とう」といった使い方ができる。かん‐かい〔クワン‐〕【寛解/緩解】
寛解
【概要】 治療の結果(時には無治療で)病気の勢いがゆるんだ(=弱まった)状態を言う。特に悪性腫瘍などでは見えなくなっても「治った」とは断定できない。
【詳しく】 完全寛解(complete remission)とは外見上でも検査でも病気があるとは判定できない状態。まだ認知できる病気が残っている場合は、部分寛解(partial remission)と言う。長期間観察しても再発しなければ、恐る恐る(!?)治癒という。悪性腫瘍では治癒という言葉は使いにくく、寛解状態と維持することが目的になることが多い。遺伝子レベルで腫瘍の残存を調べることができるものもある。エイズの場合はカポジ肉腫、悪性リンパ腫などの治療で使う言葉。治験の場合は治験ごとに寛解判定基準を作って判定する。
《参照》 治験
寛解
寛解(かんかい)
寛解
寛解と同じ種類の言葉
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