上皮細胞
上皮細胞
上皮細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/27 10:06 UTC 版)
上皮細胞(じょうひさいぼう)とは、体表面を覆う「表皮」、管腔臓器の粘膜を構成する「上皮(狭義)」、外分泌腺を構成する「腺房細胞」や内分泌腺を構成する「腺細胞」などを総称した細胞。これら以外にも肝細胞や尿細管上皮など分泌や吸収機能を担う実質臓器の細胞も上皮に含められる。
構造上の特徴
上皮には、外気や液体にさらされている頂端面と結合組織に接着する基底面がある。基底面を支えるのは細胞外マトリクスの丈夫な層で、基底層と呼ばれる。個々の上皮細胞には頂端面と基底面に化学的な差、つまり極性があり、この極性があるために物質の分泌・吸収が可能になる。
隣り合う上皮細胞は種々の細胞間結合でつながれており、これにより細胞間隙を分子が通るのを防いだり、細胞同士がコミュニケーションをとっている。
ちなみに、手の甲にセロハンテープを貼って、はがしたときに白く付着しているのも上皮細胞である[1]。
分類
上皮は機能的に以下のように分類できる。すべての上皮細胞は生理的に以下の複数の機能を担っている。
- 分泌上皮 - 粘液、酵素、ホルモンなど生物活性のある物質を産生し分泌する。
- 吸収上皮 - 水、電解質、栄養源となる物質を能動的に吸収したり輸送する。
- 導管上皮 - 管腔面を覆い物質の転送を促進する。
- 被覆上皮 - 表面を被覆し物理的または化学的なバリアを構成する。
また、形態によっても分類される。まず、細胞の並び方によって、次のように分類される。
- 単層上皮 - 細胞が基底膜上で一列に並んでいる。
- 多列上皮 - 細胞が基底膜上で数列に並んでいる。ただし、すべての細胞は突起をのばして基底膜に接触している。
- 重層上皮 - 細胞は基底膜上で重なりあうように何列(およそ10から30)にも並んでいる。
一つ一つの細胞の形によっても、分類される。
これらの用語を組み合わせて、「食道の上皮は、重層扁平上皮である」といった具合に以下のように表現する。
- 単層扁平上皮:血管・リンパ管内皮、漿膜中皮(中胚葉由来、外・内胚葉由来の真性上皮に対して、偽上皮)
- 単層立方上皮:汗腺上皮(エクリン腺腺房の上皮)
- 単層円柱上皮:消化管上皮、呼吸器・気道上皮(多列線毛円柱上皮が多い)
- 重層扁平上皮:表皮、食道上皮、扁平上皮化生した気道上皮、子宮外頸部上皮、下咽頭から喉頭上皮、肛門上皮
- 重層円柱ないし立方上皮:唾液腺の導管、呼吸器多列線毛ないし単層円柱上皮での基底細胞過形成を伴ったもの(最表層の腺系上皮を失い扁平上皮化)、子宮頚部頚管円柱上皮や頚管線上皮で予備細胞過形成を伴ったもの(最表層の腺系上皮を失い扁平上皮化)
- 多列線毛円柱上皮:鼻腔上皮、咽頭上皮(上咽頭・中咽頭)、気管・気管支上皮
- 移行上皮(尿路上皮):腎盂上皮、尿管上皮,膀胱上皮、尿道上皮、前立腺導管上皮
発生学的には、三胚葉のいずれも上皮成分に分化する。例えば、皮膚は外胚葉に由来し、消化管上皮は内胚葉に由来する。そして、腎臓の尿細管は中胚葉に由来する。
脚注
- ^ 左巻健男、青野裕幸『話したくなる! つかえる生物』2014年、明日香出版社、12頁、ISBN 978-4-7569-1712-6
上皮細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/24 20:50 UTC 版)
尿路は、上流から、下流へ、以下の上皮細胞に被覆されている。腎実質の尿細管上皮細胞 腎盂・尿管・膀胱・尿道前立腺部の尿路上皮(移行上皮)細胞尿路に発生する悪性腫瘍の大部分は尿路上皮由来である。 尿道の一部(および周辺臓器)の円柱上皮細胞前立腺上皮細胞、精嚢上皮細胞、子宮頸部上皮細胞、子宮内膜上皮細胞、腸上皮細胞、などが円柱上皮細胞として認められることがある。 外尿道口(および、外陰部・膣)の扁平上皮細胞 健常尿では少数の扁平上皮細胞のみがみられるが、尿的状態では尿路各部位の細胞が尿中に出現する。 尿細管上皮細胞円形の核が1個。白血球の1.5~2倍の大きさ。類円形が多いがさまざまな形をとる。 近位尿細管、ヘンレループ、遠位尿細管、集合管などに由来。部位や疾患により大きく形態が変わる。 尿細管障害を意味する。 多数出現する場合は、腎虚血、尿細管壊死、薬剤性腎障害、腎盂腎炎、等。 激しい運動で健常人でも出現することあり。 尿路上皮(移行上皮)細胞尿路系の大部分を被覆する上皮細胞。 尿路の炎症性疾患、結石症、カテーテル挿入、等で見られる。 核が1~2個。白血球の2~4倍の大きさ。有尾細胞は腎盂腎炎で出現する。 円柱上皮細胞小型で円柱・長方形の細胞で集塊として認められることが多い。 カテーテル挿入による尿道の機械的損傷、腸管を利用した尿路変更術後、前立腺マッサージ後、子宮内膜由来、等。 扁平上皮細胞扁平で大きな細胞、小さな核(赤血球とほぼ同じ大きさ、中心性)。 膀胱三角部や外生殖器に存在。 多くは外陰部からの汚染であり、診断的意義はない。 卵円形脂肪体・脂肪顆粒細胞脂肪変性した尿細管上皮細胞ないしマクロファージ。 卵円形脂肪体は腎尿細管細胞の死を意味するので、重大な腎病変が示唆される。 ネフローゼ症候群、特に非選択性蛋白尿の際によく認められる。(選択性の高い微小変化群では出現頻度が低い。) 糖尿病性腎症、ファブリー病、アルポート症候群でも卵円形脂肪体が見られる。 尿路感染症でも脂肪化したマクロファージを見ることがある。 前立腺由来の細胞であることもあるが、形態的には鑑別困難である。(脂肪円柱の有無、精子の有無、等とあわせて推定する。) 封入体細胞各種のウイルス感染症で出現する。特に小児のRNAウイルス感染でよく見られる。 成人では、膀胱炎、腎盂腎炎、膀胱癌、尿路変更術後、クラミジア感染、マラコプラキア、など種々の疾患で出現することがある。 健常人と思われる人でも認められることがある。 RNAウイルス インフルエンザ、麻疹、風疹、ムンプス、その他 細胞質内封入体細胞 DNAウイルス パピローマウイルス コイロサイト(核周囲に広い空洞、核周明庭) ポリオーマウイルス デコイ細胞の一部(膨化し無構造のスリガラス様の核) 単純ヘルペスウイルス 核内封入体細胞(主に多核) サイトメガロウイルス 核内封入体細胞(主に単核) 異型細胞尿沈渣には、悪性を疑う(悪性を否定できない)細胞が見られることがある。下記のような所見は注意を要する。また、尿細胞診や画像診断の追加の要否の検討が必要である。大きな細胞集塊 核細胞質比の大きな細胞 奇妙な形の細胞 核の大小不同が目立つ細胞集塊や多核細胞 小型円形の単一性細胞 悪性疾患以外に、薬剤、放射線治療、良性病変でも異型細胞は出現することがある。
※この「上皮細胞」の解説は、「尿沈渣」の解説の一部です。
「上皮細胞」を含む「尿沈渣」の記事については、「尿沈渣」の概要を参照ください。
「上皮細胞」の例文・使い方・用例・文例
- 上皮細胞を肥大させ、先天性欠損症を引き起こす可能性のある一群のヘルペス・ウイルスの総称
- (シダについて) 単一の上皮細胞から各芽胞嚢を形成させるさま
- (シダについて)上皮細胞群から生じる胞子嚢を持つさま
- 支柱のように形づくられる上皮細胞
- 中枢神経系における神経膠の中に展開する様々な円柱上皮細胞のいずれも
- 立方体のよう形をした上皮細胞
- プレートのように平らで、上皮組織の一つの層を形成する上皮細胞
- 上皮細胞で内側を覆われ、分泌または他の物質を運んでいる身体の通路または管
- 顔面神経の感覚繊維、舌咽神経あるいは迷走神経を活性化する味覚芽にある上皮細胞
- 胃の基底部に沿って並んでいる上皮細胞によって作り出される消化管ホルモン
- 生きた細胞の通常の衰退と死(様々な上皮細胞など)
- 単一の上皮細胞から形成された胞子嚢
- 円柱形の上皮細胞により構成される動物の上皮
- EGFという上皮細胞の増殖を促進するポリペプチド
- 上皮組織に作用し,上皮細胞の増殖を特異的に促進するポリペプチド
上皮細胞と同じ種類の言葉
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