上皮細胞への侵入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 03:34 UTC 版)
サルモネラの上皮細胞への細胞内侵入には、III型分泌装置(さんがたぶんぴつそうち)と呼ばれる、細菌の細胞質タンパク質を菌体外に分泌するための機構が関与している。III型分泌装置は細菌の鞭毛に類似の構造体であり、鞭毛の毛に相当するタンパク質を宿主の細胞に突き刺して、その細胞内部に直接、エフェクター分子と呼ばれるタンパク質を送り込む。 サルモネラは大腸上皮細胞の表面に付着し、そこで上皮細胞にIII型分泌装置を突き刺し、その内部にエフェクター分子を送り込む。このとき送り込まれるエフェクター分子(サルモネラ染色体上のSPI-1領域の遺伝子にコードされた、SopE、SipAなどのタンパク質)は、細胞骨格を構成するアクチンを再構成する作用を持っており、この作用によってサルモネラが付着した周辺で細胞の形態が変化(ラフリングと呼ばれる構造変化)して、付着した菌体周辺で偽足のような構造が発達する。この偽足様構造の発達は上皮細胞のエンドサイトーシスを促進し、このエンドサイトーシスによってサルモネラは上皮細胞内に取り込まれる(引き金機構)。上皮細胞に取り込まれたサルモネラの一部はオートファジーによって分解されるが、残りはそのままエンドソームの内部で増殖する。このような機構の細胞内感染を行うものには、サルモネラの他に赤痢菌や一部の病原性大腸菌(腸管侵入性大腸菌、EIEC)がある。
※この「上皮細胞への侵入」の解説は、「サルモネラ」の解説の一部です。
「上皮細胞への侵入」を含む「サルモネラ」の記事については、「サルモネラ」の概要を参照ください。
上皮細胞への侵入
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/02 15:42 UTC 版)
汚染された食物や水とともに侵入した赤痢菌は、胃酸による殺菌作用を受けながらも大部分生き残り、腸管内に到達して小腸内で増殖し、大腸に到達してそこで腸管上皮細胞に感染して増殖する。この腸管上皮細胞内への侵入には、赤痢菌が持つIII型分泌装置(さんがたぶんぴつそうち)と呼ばれる、細胞質タンパク質を菌体外に分泌するための機構が関与しており、この機構を用いてマクロファージ以外の、貪食機構が発達していない上皮細胞に侵入が可能であるという点は、サルモネラや一部の病原性大腸菌(腸管侵入性大腸菌、EIEC)と共通である。ただし、赤痢菌はサルモネラとは異なり、腸管の内側(管腔側、絨毛のある側)からは、ほとんど細胞内に侵入できない。赤痢菌が腸管上皮細胞に侵入するときには、一旦、腸管内から出てその外側(基底膜側)から行われることが多い。 消化管に到達した赤痢菌は、腸管上皮にあるパイエル板に近接するM細胞(絨毛が発達せず、リンパ球やマクロファージに異物の提示や受け渡しを行う細胞)に取り込まれ、これを介してマクロファージによって貪食される。しかし赤痢菌はマクロファージに対して、Ipa-Bによるcaspase-1の活性化を介してアポトーシスを誘導することによって殺菌から逃れてその細胞外に逃げ出し、腸管の基底膜側に到達する。そこで赤痢菌は、腸管上皮細胞基底膜側に存在するインテグリンα5β1と結合して、細胞表面に接着する。このインテグリンとの接着が赤痢菌の細胞内侵入に必要であり、この分子が基底膜側にのみ多く存在することが侵入が基底膜側から起こる理由だと考えられている。 上皮細胞に接着した赤痢菌は、III型分泌装置を宿主の細胞に突き刺して、その細胞内部に直接、エフェクター分子と呼ばれるタンパク質を送り込む。このとき送り込まれるエフェクター分子(プラスミドにコードされた、Ipaとよばれるタンパク質)は、細胞骨格を構成するアクチンを再構成する作用を持っており、この作用によって赤痢菌が付着した周辺で細胞の形態が変化(ラフリングと呼ばれる構造変化)して、付着した菌体周辺で偽足のような構造が発達する。この偽足様構造の発達は上皮細胞のエンドサイトーシスを促進し、このエンドサイトーシスによって赤痢菌は上皮細胞内でエンドソームに囲まれた状態で取り込まれる(引き金機構)。
※この「上皮細胞への侵入」の解説は、「赤痢菌」の解説の一部です。
「上皮細胞への侵入」を含む「赤痢菌」の記事については、「赤痢菌」の概要を参照ください。
- 上皮細胞への侵入のページへのリンク