瑕疵
英語:flaw、defect、fault
「瑕疵」とは、キズ・欠点・欠陥・不具合、「不動産やビジネス上の成果物が引渡や納品の前にすでに何らかの欠陥を抱えている状態」などを意味する言葉である。
法律の用語としては、「瑕疵」は「本来なら満たされているべき機能・性能・要件が満たされていない状態」を意味する語である。商取引においては、瑕疵は売り手(納品する側)が補償等の対応の責任を負うものとして扱われることが多い。
「瑕疵」という言葉の意味
「瑕疵」の「瑕」の字も「疵」の字も、ともに「きず」を意味する字である。どちらの字も「傷」の異表記として用いられることがある。漢字の「瑕」は、「きず」もしくは「欠点」を意味する字である。「玉に瑕(たまにきず)」という表現があるように、「瑕」はもともと「宝玉に付いてしまったキズ」を指す字義がある。
漢字の「疵」には、「小さな傷」「欠点」「過ち」あるいは「誹謗(悪口をいうこと)」を指す意味合いがある。
法律用語としての「瑕疵」
法律上の概念としての瑕疵は、民法、とりわけ不動産契約において頻出した単語である。人、あるいは法人格の持つ権利やものについて、法的に何かしらの欠陥がある状態を指している。たとえば「瑕疵物件」といえば、不動産取引において土地または建物に何らかの難を抱えている物件を指す。
「瑕疵担保責任」は、仕事が完了して納品・引き渡しが済んだ後に不具合などが発見された場合、納品者(売り主)が注文者(買い主)に対して負う責任のことである。この際に行われる修正等の作業を「瑕疵対応」という。ただし「瑕疵担保責任」は法改正により「契約不適合責任」という呼称に改められている。
民法における「瑕疵」
法律、とりわけ民法においての瑕疵は、行為・権利・ものが、法的に欠陥を抱えている状態を表す言葉である。例えば契約の締結後、売り手が事前に告知した数量・品質・種類通りの商品やサービスを提供できない状態にあったり、買い手が意思表示をする際に何らかの詐欺・強迫行為があれば、それらは民法上の瑕疵となる。瑕疵ある商品を提供した売り手は、それによって発生した損害の賠償、あるいは契約の解除などの責務を負う場合がある。買い手の瑕疵ある意思表示は、後から取り消すことが可能である。このように民法上、瑕疵が発覚した場合は買い手が売り手側に対して有利になるよう定められている。
こうした仕組みは、法整備が為される近現代以前に、買い手は売り手に対して不利な立場にあり、買い手の保護が必要だった事情を背景としている。この傾向は特に不動産契約において顕著といる。
不動産については旧「瑕疵担保責任」=2020年4月1日からは「契約不適合責任」と呼ばれる概念により、売り手の責任の所在が明確にされている。なぜなら、不動産は通常の商品と違い、一見しただけでは発覚しないような箇所に瑕疵が存在し、後年になって発覚するようなケースが多々あるためである。このような場合、どの時点で発生した欠陥であるかが不明瞭だと、買い手も売り手に対して責任を問いにくくなってしまう。そういった事態を避けるために、売り手は契約不適合責任を負うこととなる。
瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更されたことによって、買い手の立場はいっそう強く保障されることとなった。賠償請求、契約解除に加えて、改めて完全に契約内容を履行するよう売り手に求める「追完請求」ほか、いくつかの権利を新たに得たためだ。諸外国のルールに合わせる、わかりやすい言葉を使用したわかりやすい民法を目指す、などという目的から、実のところ「瑕疵」という文言は今後、民法では使われなくなる。
「瑕疵」と「過失」の違い
法律概念上の類義語として「過失」があるが、これは瑕疵と明確に区別される。過失とは注意義務を怠ることによって、人が引き起こした過誤を意味する。因みに、「意図的に引き起こされた過ち」は過失ではない。過失とはあくまで、不注意・怠慢によって生じた過ちを指す。対して瑕疵は、物に生じた欠陥や不具合のことである。「物」に発生した不備であるからといって、必ずしも物理的なきずであるとは限らない。不動産やその他商品が、法律的に本来備えているべき用件を満たしていなければ、それもまた瑕疵として扱われる。
瑕疵の類義語
「瑕疵」の類義語に̪は「疵瑕」(しか)という語もある。疵瑕も「瑕疵」と同様、欠点や過ちなどを指す言葉だが、こちらは瑕疵とは違い、法律用語として使用されることはない。瑕疵
瑕疵(かし)とは、物品や建物などに存在する欠陥や不具合を指す言葉である。瑕疵は、目に見えるものや機能的なものなど、さまざまな形で現れる。瑕疵があることで、物品や建物の価値が低下することが一般的である。
瑕疵には、主に以下のような種類がある。まず、「表面瑕疵」は、物品や建物の表面に現れる傷や汚れなどで、目に見える形で現れる瑕疵である。次に、「構造瑕疵」は、物品や建物の構造に問題があることを指す。これには、設計ミスや施工不良などが含まれる。また、「機能瑕疵」は、物品や建物が持つべき機能を十分に発揮できない状態を指す。これには、故障や性能不足などが含まれる。
瑕疵担保責任とは、売買契約において、売主が買主に対して瑕疵のない物品や建物を引き渡すことを保証する責任である。瑕疵があった場合、売主は買主に対して修繕や交換、返金などの対応を行う必要がある。ただし、売買契約において瑕疵担保責任を免責する条項が設けられている場合もある。
瑕疵の有無を判断する際には、専門家による検査や評価が行われることが一般的である。不動産取引においては、建物の状態を評価するために、建築士や土地家屋調査士などの専門家による建物診断が行われることが多い。また、中古車の取引においては、自動車整備士による点検や評価が行われることが一般的である。
瑕疵
別表記:傷
瑕疵とは「きず」(傷)のことであり、欠点、欠陥、不足、不具合、といった意味で用いられる語である。とりわけ法律上の概念として、取引や契約における不備、あるいは契約履行における落ち度、を指す用語として用いられる場合が多い。
「瑕疵」の語を構成する「瑕」と「疵」の2字は、どちらも「きず」を意味するである。「瑕」は玉(宝玉)に付いたキズを意味する字であり、「疵」は生体に付いた創傷やその痕などを指して用いられることが多い字である。つまり「瑕疵」の語は「製作」「把握」「火炎」などと同様に類義語を並列的に並べた構成の熟語である。ちなみに現代中国語でも「瑕疵」の語は「欠陥」「短所」「不具合」といった意味で一般的に用いられている。
「瑕疵」は商品などに付いた具体的(物理的)なキズを指すこともあれば、契約・権利・行為あるいは意思表示といった抽象的(概念的)な事柄の中に見出される不備・不完全性を指す意味で用いられることもある。
民法上の「瑕疵」は、たとえば2004年の東京地方裁判所の判例では、次のように述べられている。
《民法570条の「瑕疵」とは、売買の目的物が通常備えるべき性能等を備えていないことをいう[...]》(「判例時報」1909号55ページ、東京地方裁判所平成16年4月15日、独立行政法人国民生活センターの掲載からの引用 http://www.kokusen.go.jp/hanrei/data/200612.html )
つまり、商品やサービスに対し当然備わっているものとして要求できる品質を満たしていない状態は「瑕疵がある」と表現できる。なお民法570条の条文では「隠れた瑕疵」という言い方が用いられており、隠れた瑕疵があった場合は566条の規定(契約解除や損害賠償の請求)をを準用できるとしている。
法律上の用語としては「瑕疵担保責任」という用語も多く用いられる。瑕疵担保責任は、取引上、注意を払っていても容易には気づけないような瑕疵(隠れた瑕疵)が潜んでいた場合に、売り主の側が買い主に対して負わなければならない責任のことである。
住宅・不動産取引の分野では、瑕疵のある物件を「瑕疵物件」と呼ぶ。住宅の瑕疵は「物理的瑕疵」「法的瑕疵」「環境的瑕疵」および「心理的瑕疵」に大別される。物理的瑕疵は、雨漏りがあったり家が傾いでいたりする物件を指し、法的瑕疵は建築基準法や消防法などに抵触している物件を指す。環境的瑕疵は住宅を取り巻く環境に騒音や悪臭などの問題がある物件を指す。そして「心理的瑕疵」は大多数の一般人が忌避感・嫌悪感を抱くような事情のある物件を指す。いわゆる「事故物件」や「いわく付き物件」は、心理的瑕疵のある物件に該当する。
瑕疵と似た意味合いで用いられる語としては「過失」なども挙げられるが、過失は「予見して回避することが可能だったにもかかわらず注意を怠ったために回避できなかった」ことを指す語である。
瑕疵(かし)
瑕疵(かし)
バグ
【英】bug
バグとは、プログラムに含まれる誤りのことである。プログラムの誤作動や処理の停止などの原因とある。
システム開発において、バグの箇所を特定し修正する作業がデバッグ(debug)と呼ばれる。デバッグ作業では、デバッガと呼ばれるツールを用いてプログラム上のミスを特定するという作業が繰り返し行われる。
バグの中には、実際にシステムが稼動しないと発見できないような種類のものもあり、システムリリース後にバグが発生することもある。
なお、バグ(bug)の語源にまつわる話として、コンピュータ黎明期に大型計算機の不具合を調査したところが、計算機の論理スイッチに羽虫(bug)が挟まったことが原因だったことに由来する、という説がある。バグは法律文書においては「瑕疵」(かし)と記述され、また程度によっては不具合と表現されることもある。
かし 瑕疵 defeat
瑕疵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/17 10:24 UTC 版)
瑕疵(かし)とは、通常、一般的には備わっているにもかかわらず本来あるべき機能・品質・性能・状態が備わっていないこと。法概念としても用いられる。
- ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、52頁
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- ^ a b 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、160頁
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- ^ 川井健著 『民法概論4 債権各論 補訂版』 有斐閣、2010年12月、160-161頁
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- ^ 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、63頁
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- ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、145頁
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- ^ 近江幸治著 『民法講義Ⅴ 契約法 第3版』 成文堂、2006年10月、139頁以下
- ^ 遠藤浩・原島重義・水本浩・川井健・広中俊雄・山本進一著 『民法6 契約各論 第4版』 有斐閣〈有斐閣双書〉、1997年4月、53頁以下
- ^ 大島俊之・下村正明・久保宏之・青野博之著 『プリメール民法4 第2版』 法律文化社〈αブックス〉、2003年3月、67頁以下
- ^ 我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法2 債権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、289頁以下
瑕疵
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