隠れた瑕疵
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/20 22:59 UTC 版)
「瑕疵」の意義 旧570条にいう「瑕疵」とは取引通念からみてこの種の物が通常であれば有するべき品質・性状を有さず目的物に欠陥が存在することをいう。契約の趣旨から個別的に判断されるが、契約時に給付義務者が見本や広告などで一定の(特殊の)品質・性状を保証した場合(見本売買・広告売買等)にはそれを標準とし、その表示された品質・性状に至らない場合には瑕疵となる(大判大15・5・24民集5巻433頁)。 法律上の瑕疵 瑕疵には物理的瑕疵と法律的瑕疵(法律上の障害)が考えられるが、後者が旧570条の瑕疵にあたるかについては議論があり、判例は一貫して旧570条を適用しこれを肯定するが(宅地造成目的で売買された山林が森林法上の保安林であった事例につき最判昭56・9・8判時1019号73頁)、多数説は瑕疵担保責任として扱うと強制競売の場合に担保責任を認められなくなり(旧570条但書参照)不均衡を生じるとして法律上の障害には旧566条を類推適用して処理されるべきとしていた。 「隠れた」の意義 旧570条にいう「隠れた」とは、相手方が取引上において一般的に要求される程度の注意をもって発見できないことであり、その瑕疵について善意・無過失であることをいう(通説・判例)。 瑕疵の存在時期 瑕疵の存在時期については瑕疵契約時存在必要説(法定責任説の立場。契約締結時に存在する原始的瑕疵であることが必要で、締結後の瑕疵は債務不履行の問題とする)、瑕疵契約時存在不要説(契約責任説の立場。原始的瑕疵であることは不要とする)、危険移転時説(危険負担的減額請求権説の立場。危険移転時を基準とする)があり、この点については学説によって見解が分かれていた。判例は瑕疵が契約時に存在することは不要であるとしていた(大判昭8・1・14民集12巻71頁)。 善意・過失の問題 瑕疵担保責任を追及しうる買主は善意者に限定されるが、過失がある場合については学説により見解が分かれていた。判例は無過失であることを必要とし(大判大13・6・23、最判昭41・4・14)、買主の悪意・過失の立証責任は売主が負うとしていた(大判昭5・4・16)。
※この「隠れた瑕疵」の解説は、「担保責任」の解説の一部です。
「隠れた瑕疵」を含む「担保責任」の記事については、「担保責任」の概要を参照ください。
- 隠れた瑕疵のページへのリンク