軸糸の運動
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/29 02:42 UTC 版)
精子の運動は、いくつかの代謝経路と調節機構に依存している。 軸糸の運動は、外腕と内腕に分かれた分子モーター(ダイニン)による軸索の二重構造の微小管の活発な滑りに基づいている。外腕と内腕は、鞭毛運動の生成と制御において異なる役割を果たしている。外腕はうなり振動数を増加させ、内腕は鞭毛の屈曲の推進と伝播に関与している。鞭毛の屈曲は、ダイニンアームがBサブユニットに付着し、力を発生させ、離脱するというサイクルを繰り返すことによって起こる。軸糸の結合は、ダイニンによって生成される微小管のスライドに対する抵抗の存在の結果である。 中央ペア装置の両側のダイニンは、鞭毛の屈曲を調節するラジアルスポーク-中央ペア装置[訳語疑問点]によって行われる活性化/非活性化の繰り返しによって互い違いに調節される。精子の運動はいくつかの経路で制御されているが、最も重要なのはカルシウム経路とPKA経路である。この経路には、各種イオン、アデニル酸シクラーゼ、cAMP、膜チャネル、リン酸化などが関与している。 最初のイベントは、Na+/HCO3-(NBC)共輸送体の活性化と、SLC26輸送体によるHCO3-/Cl-の制御であり、これによりHCO3-濃度が上昇する。 第2のイベントは、Na+/H+交換体とプロトンチャネルHv-1の活性化であり、これによりpHが上昇する。 このようなHCO3-とpHの上昇により、精子膜に特異的なカルシウムチャネルであるCatSperチャネルが活性化される。CatSperは、プロゲステロンやアルブミンによっても活性化される。CatSperが活性化されると、細胞内に自由なカルシウムの入り口が開かれ、細胞内のカルシウム濃度が全体的に上昇することになる。 HCO3-、pH、カルシウムの増加は、可溶性アデニル酸シクラーゼ(SACまたはSACY)の活性化につながり、cAMPの産生を増加させ、PKAの活性化をもたらす。PKAは、いくつかのチロシンキナーゼをリン酸化するプロテインキナーゼであり、軸糸ダイニンのリン酸化で終わるリン酸化カスケードを引き起こし、鞭毛運動を開始することになる。
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