軸索誘導
軸索誘導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/25 17:12 UTC 版)
ナビゲーションに移動 検索に移動軸索誘導(じくさくゆうどう、英: Axon guidance)は、神経系の発生段階において、正しい神経回路形成を行うのに重要なプロセスである。神経細胞から伸びた軸索は、神経結合を成立させる標的細胞付近まで適切に伸長しなければならない。この間、たとえば脳の神経細胞ではせいぜい数ミリから数センチ程度でよいが、脊髄の運動神経などの場合、脊髄後根神経節に位置する細胞体から指先の筋肉の運動神経終板まで、ヒトでは1m近く、他の大型哺乳類では数メートルにも及ぶ距離を、適切に誘導されなければならない。この誘導を軸索誘導Axon guidance(軸索ガイダンス)という。
軸索誘導には、
- 足場の接着を促進する分子やキューによる方法
- 接着を阻止する分子による方法
- 軸索を呼び寄せる液性分子による方法
- 軸索伸長を排除する液性分子による方法
の4種類の方法がある。
軸索誘導を制御する分子
- ネトリン(Netrin)
- 軸索伸長を誘引する効果を持つ事で有名。ネトリン固有のレセプターとしてDCCとUnc5の二種類が知られている。
- セマフォリン(Semaphorin)
- セマフォリンは軸索伸長を反発する効果を持つ事で有名。現在までに20種類以上の分子が同定され、巨大なファミリーを作っている。分泌型・細胞膜貫通型・細胞膜結合型などがあり、構造類似性により8種類に分類されている。レセプターとしてニューロピリンとプレキシンの二種類が知られている。
- エフリン(Ephrin)
- 軸索伸長を反発する効果を持つ事で有名。細胞膜結合型はAファミリーに属し、細胞膜貫通型はBファミリーに属す。レセプターとしてEphファミリーが知られている。エフリンは近年毛髪促進効果がある事がライオンにより発見された。
- スリット(Slit)
- 軸索伸長を反発する効果を持つ事で有名。レセプターにRoundabout(Robo)がある。名称はショウジョウバエの変異体の表現型に由来する。
関連項目
- 軸索誘導分子 axon guidance molecules
- 軸索誘導キュー axon guidance cue
- 成長円錐 growth cone
- 化学走化性分子 chemotropic factor
- 化学反発 chemorepulsion
外部リンク
- 標的認識 - 脳科学辞典
- トポグラフィックマッピング - 脳科学辞典
- ネトリン - 脳科学辞典
- DCC - 脳科学辞典
軸索誘導
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/09 14:37 UTC 版)
神経系の発達の際、軸索の移動標的や経路に由来する分子的ガイドによって軸索に指示が与えられ、神経細胞の連結のパターンが確立される(軸索誘導)。Eph/エフリンシグナル伝達は、主に移動中の軸索の成長円錐の生存の低下とEph/エフリン活性化部位からの反発によって、標的への軸索の移動を調節する。この成長円錐の生存の低下による反発機構はEphとエフリンの相対的発現レベルに依存している。標的細胞にEphとエフリンの発現勾配が存在する場合、自身が発現しているEphとエフリンの相対的レベルに基づいて軸索の成長円錐の移動が指示される。典型的には、EphAとEphB受容体による順行性シグナル伝達は成長円錐の崩壊を媒介し、エフリンAとエフリンBを介した逆行性シグナル伝達は成長円錐の生存を誘導する。 Eph/エフリンシグナルが発現勾配に従って移動中の軸索に指示を与える能力は、視覚系におけるレチノトピックマップの形成によって裏付けられており、Eph受容体とエフリンリガンドの双方の発現レベルの勾配によって正確な神経投射マップが確立される(エフリンも参照)。さらに、Ephは中枢神経系の他の領域でもトポグラフィックマップ(位置特異的な神経投射マップ)の形成への関与が示されており、中隔野(英語版)と海馬の間の投射の形成は学習や記憶に関与している。 トポグラフィックマップの形成に加えて、Eph/エフリンシグナル伝達は脊髄における運動神経軸索の適切な誘導にも関与することが示唆されている。運動神経の誘導にはいくつかのEphとエフリンが寄与するが、エフリンA5(英語版)による逆行性シグナルが運動神経の成長円錐の生存に重要な役割を果たし、EphAを発現している軸索に対する反発を開始することで成長円錐の移動を媒介する。
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