増殖と成長
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/07 16:34 UTC 版)
神経細胞の増殖は、ヒトでは小児期に、神経幹細胞が盛んに分裂して分化することで起こる。 神経細胞は分化が進むとともに、軸索誘導によって特定の位置にある神経細胞が特定の細胞に軸索を伸ばし、シナプスを形成して神経回路を形成していく。軸索を誘導する因子として、標的細胞側から出される特定の化学物質が関与していると言われている。 神経細胞間の接続関係の調節には、神経栄養因子(ニューロトロフィン; NGF、BDNF、NT-3、NT-4)とその特異的受容体(TrkA、TrkB、TrkC)が関与しているといわれる。BDNFは中枢神経に特に豊富で、神経活動依存的に合成・分泌される。これらの物質を受け取った細胞の活動やシナプスの接続関係を強化するため、神経系の学習・記憶を制御する中心的な物質と考えられている。また、神経細胞群は初期に過剰な接続を形成した後、必要なものだけを残してシナプスを減らすと考えられている。これは「刈り込み」と呼ばれている。 20世紀初頭のラモン・イ・カハール以来、ヒトの成人の脳では新たな神経細胞は形成されないと考えられてきたが、1990年代に神経幹細胞と新生神経細胞が成人の脳にも存在することが示され、成人で神経新生が起こる可能性も検討されている。ただし、その生理的意味はよく分かっていない。
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