神経幹細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/28 22:53 UTC 版)
神経幹細胞(しんけいかんさいぼう、英: Neural stem cell)は、ニューロンおよび(ミクログリアを除く)グリア細胞へ分化する細胞を供給する能力を持つ幹細胞。
歴史
1989年、サリー・テンプルがマウスの脳室下帯にある幹細胞の多分化能について論文を発表する[1]。1992年、ブレント・レイノルズとサミュエル・ウェイスが初めて成体マウスの脳組織の、脳室下帯を含む線条体組織から神経幹細胞及び神経前駆細胞を分離させることに成功する[2]。これ以来、神経幹細胞及び神経前駆細胞は人類を含む[3] 多くの生物において脊髄等の非神経領域を含む成体の脳の他の部分からは分離された[4]。
機能
娘細胞の一方が神経前駆細胞となり、様々な分化制御を受けて神経細胞やアストロサイト、オリゴデンドロサイトを生み出す。分化制御には外部からのシグナル伝達や細胞自律的な転写因子の非対称分配、クロマチン修飾によるエピジェネティクスが関わる。発生における神経系の形成の他、終末分化した組織においても新たな神経細胞を供給する役割を持ち、神経の再生医療への応用も研究されている。
哺乳類の成体の脳の神経細胞は増えることはないと考えられていたが、海馬と側脳室と呼ばれる部位に神経幹細胞が存在しており、ニューロンの新生を行うことが報告されている。海馬の神経幹細胞は、学習や豊かな環境下で、その増殖頻度が増加し、またストレスを受けたり、加齢(歳をとること)によって減弱することが報告されている。
関連項目
脚注
- ^ Sally Temple (August 1989). “Division and differentiation of isolated CNS blast cells in microculture”. Nature 340: 471-473. doi:10.1038/340471a0.
- ^ Reynolds BA, Weiss S (March 1992). “Generation of neurons and astrocytes from isolated cells of the adult mammalian central nervous system”. Science 255 (5052): 1707–10. doi:10.1126/science.1553558. PMID 1553558 .
- ^ Taupin P, Gage FH (September 2002). “Adult neurogenesis and neural stem cells of the central nervous system in mammals”. J Neurosci Res. 69 (6): 745–9. doi:10.1002/jnr.10378. PMID 12205667.
- ^ Tanja Zigova; Paul R. Sanberg; Juan Raymond Sanchez-Ramos (2002). Neural stem cells: methods and protocols. Humana Press. ISBN 9780896039643 2010年4月18日閲覧。
外部リンク
神経幹細胞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/12/25 01:55 UTC 版)
詳細は「神経幹細胞」を参照 ラットにおいてニューロン新生が成体でも継続していることが発見されて以来、脳内における幹細胞の存在が疑われていた。成長した霊長類の脳における幹細胞の存在が初めて報告されたのは1967年である。以来、ニューロンが新生することは成体のマウス、スズメ亜目、およびヒトを含む霊長類で示されてきた。通常、成体におけるニューロン新生は脳内の2つの領域に限られる。側脳室を覆う脳室下帯と海馬体の歯状回である。海馬におけるニューロン新生はよく知られているが、自己複製能のある幹細胞の存在については議論がある。虚血による組織損傷後のような特殊な状況においては、新皮質を含む脳の他の領域でもニューロン新生が見られる[要出典]。
※この「神経幹細胞」の解説は、「成体幹細胞」の解説の一部です。
「神経幹細胞」を含む「成体幹細胞」の記事については、「成体幹細胞」の概要を参照ください。
神経幹細胞と同じ種類の言葉
- 神経幹細胞のページへのリンク