遺伝子異常
遺伝子疾患
遺伝子異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 15:47 UTC 版)
近年、少なからぬ数の特定遺伝子の突然変異がパーキンソン病の原因となることが発見されている。この中には相当数の患者が存在する地域(イタリア、コントゥルシ・テルメ)もある。遺伝子の変異で、パーキンソン病患者のごくわずかについては説明がつく。患者の中には、血縁者の中にやはりパーキンソン病患者がいることがある。 家族性パーキンソン病の原因として同定されている遺伝子には以下のものがある。 タイプ遺伝子遺伝子座遺伝形式発症年齢備考PARK1 SNCA 4q22 常染色体優性 40歳前後 PARK2 Parkin 6q26 常染色体劣性 40歳以下 PARK3 ? 2p13 常染色体優性 ごくわずかの家系だけに見られる。 PARK5 UCHL1 4p13 常染色体優性 50代以前か PARK6 PINK1 1p36.12 常染色体劣性 30歳前後 PARK7 DJ-1 1p36.23 常染色体劣性 20代 - PARK8 LRRK2 12q12 常染色体優性 65歳以下 PARK9 ATP13A2 1p36.13 常染色体劣性 10代で発症 PARK10 1p32 非若年性 - PARK11 GIGYF2 2q37.1 常染色体優性 非若年性 PARK12 Xq21-q25 非若年性 - PARK13 Omi/HTRA2 2p13.1 非若年性 PARK14 PLA2G6 22q13.1 常染色体劣性 20代 PARK15 FBXO7 22q12.3 常染色体劣性 10代 PARK16 NUCKS1 1q32 非若年性 - PARK17 VPS35 16q11.2 VPS35遺伝子のヘテロ変異。 PARK18 EIF4G1 3q27.1 EIF4G1遺伝子のヘテロ変異。 遺伝子異常と家族性パーキンソン病 ^ α-シヌクレインタンパクをコードしている SNCA 遺伝子の突然変異によって起こる。やや若年の発症 (40歳前後) であること、認知機能障害を合併しやすいこと以外は孤発性パーキンソン病と似た臨床症状を呈する。PARK4 と命名された遺伝子はおそらく SNCA 遺伝子の三重重複 (triplication) によって起こる。 ^ パーキン (Parkin) タンパクをコードする遺伝子の突然変異によって起こる。この変異は日本に多く、臨床型の報告も遺伝子の単離も日本で行われた。2012年現在、若年性パーキンソン病の最も一般的な原因のひとつである。 病理所見ではレビー小体が見られない。孤発性パーキンソン病と極めて似た症状を示すが、下肢のジストニアがみられる。パーキンタンパクはユビキチンリガーゼ (細胞内で不要となったタンパクを分解するシステムのひとつ) であり、パーキンソン病のタンパク分解機構 (ユビキチン-プロテアソームシステム) の機能低下仮説の根拠となっている。 ^ ユビキチンC末端水解酵素 (Ubiquitin carboxy-terminal hydrolase L1) をコードする遺伝子 UCHL1 の突然変異による。 ^ ピンク1 (PTEN 誘導性推定キナーゼ1タンパク、PINK1) をコードする PINK1 遺伝子の突然変異による。ピンク1はミトコンドリアに局在するキナーゼで、その変異による発症数はまれではあるが、臨床型は PARK2 と非常によく似ており、ピンク1がパーキンと同じ経路で働いていることが明らかになった。ミトコンドリアは活性酸素やその他の毒素などに傷害されると呼吸能が低下し、その結果外膜の膜電位が低下する。するとピンク1が膜上で自己リン酸化してパーキンを外膜に蓄積させ、パーキンは膜上のタンパクをユビキチン化する。このように、ピンク1はパーキンと協調して損傷した異常ミトコンドリアを処分する (オートファジー = ミトファジーを誘導する) ことで「ミトコンドリアの品質管理」を行う。ピンク1遺伝子の変異は不良なミトコンドリアを蓄積させ、神経細胞の変性につながると考えられる。 ^ DJ-1タンパクをコードする DJ-1 遺伝子の突然変異による。DJ-1タンパクは酸化ストレスに対して神経を保護する作用を持つ。ミトコンドリアにも局在しており、パーキン/ピンク1経路とはまた別の経路でミトコンドリアを保護し、オートファジーに関与している。 ^ ダーダリン (dardarin) タンパクまたはロイシンリッチリピートキナーゼ2 (Leucine rich repeat kinase 2, LRRK2) をコードする LRRK2 遺伝子の突然変異による。In vitroでは、変異した LRRK2 はおそらくパーキンとの相互作用によって、タンパク凝集と細胞死を引き起こす。また発症は平均50歳代で、レボドパ治療に反応する典型的なパーキンソン病である。 ^ リソソームに局在するタイプ5-P型ATPアーゼ をエンコードする ATP13A2 遺伝子の変異によって起こり、Kufor-Rakeb症候群としても知られる。レボドパに反応するパーキンソン症状、錐体路徴候、認知機能障害、核上性上方注視麻痺などを表現型とする。本来、α-シヌクレインは選択的に、シャペロン介在性オートファジー (リソソームに運ばれて分解される) を受ける (ミトファジー) 。ATP13A2の変異によってタイプ5-P型ATPはリソソームではなく小胞体に集積しており、その結果リソソームの機能不全が起こってα-シヌクレインが蓄積し、神経変性を引き起こすのだろう。 ^ GIGYF2 (Grb10相互作用GYFタンパク、TNRC15とも) をコードする GIGYF2 遺伝子の変異で生じると考えられる。神経細胞内のエンドソームに存在し、エンドソームのシグナル調節にかかわっているが、遺伝子変異があってもなくてもその働きに変化はなく、パーキンソン病発症の機序は不明である。 ^ HtrA2 (ミトコンドリア内に発現するセリンペプチダーゼ2) をコードする Omi/HTRA2 遺伝子の突然変異による。 ^ PLA2G6 (ホスホリパーゼA2グループ6)をコードする PLA2G6遺伝子の変異による。この変異は乳児型神経軸索ジストロフィー・鉄沈着を伴う脳神経変性症・Karak症候群とされていたが、若年性パーキンソン病の原因であることもわかった。 ^ Parkinson-pyramidal症候群またはPallido-pyramidal症候群とも呼ばれ、FBXO7 遺伝子の突然変異によって起こる。臨床症状はPARK9に類似する。
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遺伝子異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/05/31 06:57 UTC 版)
FISH法やサザンブロット法でc-myc遺伝子と免疫グロブリン遺伝子の相互転座を検出する。以下のような相互転座が認められる t(8;14)(q24;q32) - 75~90%はこのタイプである。 t(2;8)(p12;q24) t(8;22)(q24;q11) t(8;14)とt(14;18)が同時に出現することがある。またc-myc遺伝子、免疫グロブリン重鎖遺伝子、BCL1がすべて転座融合している場合がある。いずれも予後が極めて不良となる。
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遺伝子異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/23 06:17 UTC 版)
ここでは列挙のみ。詳しくは遺伝子疾患を参照のこと。 Apert(アペール)症候群 Crouzon(クルーゾン)病 22q11.2欠失症候群(CATCH22) Williams症候群 Laurence-Moon-Biedl症候群 Prader-Willi症候群 Angelman症候群 Kallmann症候群 Aicardi症候群 Miller-Dieker症候群 Rubinstein-Taybi症候群 Brachmann-de Lange症候群
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遺伝子異常
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/07 09:57 UTC 版)
「原発性線毛運動不全症」の記事における「遺伝子異常」の解説
PCDは、多数のタンパク質から構成される運動性繊毛の構造や機能が障害される遺伝的に不均一な疾患である 。繊毛を正しく動かすのに必要な構造として、ダイニン外腕、ダイニン内腕、ネキシン−ダイニン制御複合体、放射状スポーク、中心微小管構造が知られており、いずれの障害によっても上・下気道症状が認められる。2021年現在までに少なくとも50の原因遺伝子が特定されている。主に常染色体潜性の遺伝形式を示すため、ほとんどの原因遺伝子では両アレルに病的異常があって初めてPCDの症状、所見を呈する。例えば、DNAH5遺伝子の異常は、欧米で多く認められ、超微細構造上、ダイニン外腕欠損を生じる 。 日本では、ネキシン−ダイニン制御複合体を構成するDRC1(CCDC164)遺伝子のエクソン1−4を包含する27,748 bpに及ぶ大規模欠失アレルが一般集団の0.2%程度(0.0-0.7%)に見出され、そのホモ接合体がPCDの原因として最も大きな割合を占めるものと推定されている。この遺伝子異常では鼻腔内一酸化窒素(nitric oxide; NO)が低値であるが、内臓逆位は見られず、電子顕微鏡像に目立った異常が見られないことが知られている。マルチプレックスPCR法によって欠失アレルの有無を検出することが可能である。
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