メープルシロップ‐にょうしょう〔‐ネウシヤウ〕【メープルシロップ尿症】
メープルシロップ尿症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/30 14:47 UTC 版)
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メープルシロップ尿症(メープルシロップにょうしょう、英: Maple Syrup Urine Disease; MSUD)とは、先天的な遺伝子の異常によって、α-ケト酸の代謝が阻害されて起きる疾病である。尿や汗からメープルシロップのような特有のにおいがするため、この名が付いた。また、別名を楓(カエデ)糖尿症ともいう。
概要
必須アミノ酸類のうち、分枝鎖アミノ酸と呼ばれるロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、バリン(Val)の代謝経路に存在するα-ケト酸脱水素酵素複合体の活性が低下するために生じる、常染色体劣性遺伝疾患である。α-ケト酸が体内に貯留するため、尿や汗からは特有のメープルシロップのような甘いにおいがする。
患者割合は約40から50万人に1人といわれ[1]、日本国外に比べて日本国内の患者数は少ない。
症状
生後数日から1週間ほど[2]で発症する古典型と新生児期以降に発症する間欠型があり、いずれも哺乳力の低下、吐乳、痙攣、嘔吐、意識障害、呼吸障害などが見られ、治療を施さなければ麻痺、発育障害、知的障害をきたして死に至る。
診断
新生児マススクリーニング対象疾患であり、Bacterial inhibition assay(BIA法)による高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により血中ロイシン濃度4 mg/dl以上[3]をMSUDとしている。
治療
急性期においては高カロリー輸液の投与、腹膜透析、場合によって交換輸血を行う。症状の軽いものにあっては、α-ケト酸や分枝鎖アミノ酸の脱炭酸に働くビタミンB1を大量投与することにより症状の改善が見られる場合がある(ビタミンB1依存型)。
- 食事療法
- 制限食は一生涯続ける必要がある。なお、食事療法の治療薬として「ロイシン・イソロイシン・バリン除去ミルク」があり、日本においては雪印メグミルクが唯一製造・販売している[4]。この治療用ミルクは、主成分として「分枝アミノ酸無添加総合アミノ酸粉末」を使用しており、MSUDでない乳児に使用することは分枝鎖アミノ酸欠乏を生じるため、禁忌とされている。
参考文献
- 小児保健/北大路書房 ISBN 9784762827464
- 小児疾患診療のための病態生理 2/東京医学社
出典
- “アミノ酸代謝異常: 遺伝性の代謝異常症”. メルクマニュアル家庭版. 2013年10月7日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年7月16日閲覧。
脚注
関連項目
- 新生児マススクリーニング
- ガラクトース血症
- フェニルケトン尿症
- ホモシスチン尿症
- 先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)
- 先天性副腎皮質過形成
外部リンク
- メープルシロップ尿症 大阪府健康医療部 保健医療室地域保健課
- GENE Reviews "Maple Syrup Urine Disease"(英語)
- MRIにて白質低形成と脳幹小脳萎縮を認めた軽症変異型メープルシロップ尿症の1例 脳と発達 Vol.23 (1991) No.1 P71-74
メープルシロップ尿症
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 13:22 UTC 版)
α-ケト酸代謝障害による疾患で、分枝鎖α-ケト酸脱水素酵素複合体を形成するE1α、E1β、E2、E3のいずれかの異常で発症する。原因となる遺伝子変異は、60種類以上あるとされている。低血糖・ケトアシドーシスによる意識障害発作を起こし、かつ異常代謝産物の蓄積や脳浮腫により神経症状を来たす。新生児マススクリーニング対象疾患。
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固有名詞の分類
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