アンジェルマン‐しょうこうぐん〔‐シヤウコウグン〕【アンジェルマン症候群】
アンジェルマン症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/28 08:25 UTC 版)
アンジェルマン症候群 | |
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別称 | Happy puppet syndrome[1] |
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アンジェルマン症候群のメキシコの5歳の女児。特徴として眼角隔離、両側の内眼角贅皮、小さな頭、幅の広い口、幸せそうな態度、先細りでしわの多く、親指が幅広い手指などが挙げられる。 | |
発音 | [ˈeɪndʒəlmən] |
概要 | |
診療科 | 遺伝医学 |
症状 | 発育遅延、高い幸福感、知的障害、発語障害、運動障害、小頭症、痙攣[2] |
発症時期 | 6か月から12か月の間に顕著[2] |
原因 | 遺伝的(または突然変異)[2] |
診断法 | 症状に基づいて、遺伝子診断を行う[3] |
鑑別 | モワット・ウィルソン症候群、アデニロコハク酸リアーゼ欠損症、ピット・ホプキンス症候群[3] |
治療 | 支持療法[3] |
予後 | 標準的な寿命とほとんど変わらない[2] |
頻度 | 12,000人から20,000人に1人[2] |
分類および外部参照情報 |
アンジェルマン症候群(angelman syndrome, AS)は主に神経系に影響する遺伝子疾患の一つである[2]。症状は小頭症、特定の顔貌、重度の知的障害、発達障害、発語障害、失調や運動障害、発作、睡眠障害などである[2]。大概のアンジェルマン症候群の子供は幸福感の高い性格であり、特に水に興味を示す[2]。一般的に1歳くらいから症状が顕著になる[2]。
アンジェルマン症候群は一般的に親からの遺伝よりも新たな突然変異によることが多い[2]。親からの遺伝が原因の場合は、15番染色体の機能が欠ける母親からの遺伝によるものである[2]。新たな突然変異が原因の場合は、染色体のUBE3A遺伝子の欠損または変異によるものである[2]。場合によっては2つの15番染色体が父親からコピーされ、母親からはコピーされないことが原因の場合がある[2]。この場合、父親のものはゲノム刷り込みにより不活性化され、機能しない遺伝子が残る[2]。診断は基本的に症状の診察と遺伝子診断によって分かる[3]。
根本的な治療法はない[3]。治療は一般的に支持療法である[3]。発作には抗てんかん薬が使用される[3]。歩行には理学療法および装具が役に立つことがある[3]。アンジェルマン症候群のヒトの平均寿命は健常者の平均寿命と変わらない[2]。
アンジェルマン症候群は12,000人に1人~20,000人に1人に発症する[2]。 男女ともに発症率は等しい[3]。アンジェルマン症候群は英国の小児科医のハリー・アンジェルマンが1965年にこの症候群について説明したことからこの名前がついた[3][4]。この疾患の古い呼び方は"幸せな人形症候群"と言われ、一般的に侮辱的な意味が含まれていた[5]。 プラダー・ウィリー症候群とは別の疾患であるが、アンジェルマン症候群と条件が似ており、父親の15番染色体が欠けていることが原因である[6]。
出典
- ^ Winter, Robin M.; Baraitser, Michael (2013). Multiple Congenital Anomalies: A Diagnostic Compendium. Springer. p. 34. ISBN 9781489931092. オリジナルの2017-11-05時点におけるアーカイブ。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p “Angelman syndrome”. Genetics Home Reference (May 2015). 27 August 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。28 April 2017閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “Angelman Syndrome – NORD (National Organization for Rare Disorders)”. NORD (National Organization for Rare Disorders) (2015年). 13 November 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。28 April 2017閲覧。
- ^ Angelman, Harry (1965). “'Puppet' Children: A report of three cases”. Dev Med Child Neurol 7 (6): 681–688. doi:10.1111/j.1469-8749.1965.tb07844.x.
- ^ Wilson, Golder N.; Cooley, W. Carl (2000). Preventive Management of Children with Congenital Anomalies and Syndromes. Cambridge University Press. p. 193. ISBN 9780521776738. オリジナルの2017-11-05時点におけるアーカイブ。
- ^ Kumar, Vinay; Abbas, Abul K.; Aster, Jon C. (2013). Robbins Basic Pathology. Elsevier Health Sciences. p. 244. ISBN 978-1437717815. オリジナルの2017-11-05時点におけるアーカイブ。
外部リンク
アンジェルマン症候群
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アンジェルマン症候群は、重度の発達遅延、痙攣、言語障害、身体障害を特徴とする神経遺伝学的疾患である。エピジェネティックな疾患であり、従来の治療法は対症療法である。この疾患は、ユビキチン-タンパク質リガーゼE3Aの母方の対立遺伝子の欠失または突然変異によって引き起こされる。UBE3A(英語版)は殆どの体組織で発現しているが、神経細胞では母方の遺伝子コピーのみが発現しているという特徴がある。UBE3Aは15番染色体(英語版)上に位置し、父方のコピーは遺伝的に刷り込まれ、アンチセンスRNA(英語版)の転写によってサイレンシングされる。母方の遺伝子のコピーコントロールセンターはメチル化されており、アンチセンス方向の転写を抑制しているが、父方のコピーコントロールセンターはメチル化されていない。 治療では、父方の対立遺伝子のサイレンシングを解除し、正常な父方のUBE3A対立遺伝子が転写される様に調整する。UBE3Aは、通常の機能では、ユビキチン鎖をタンパク質に付加し、不要なタンパク質や損傷を受けたタンパク質をプロテアソームによる分解の対象としてマーキングする。 16種のトポイソメラーゼ阻害剤は、父方のUBE3Aのサイレンシングを解除する。トポイソメラーゼは、DNAの巻き戻しを制御する酵素である。この16種類の阻害剤のうち、ノギテカンが最も強くUBE3Aのアップレギュレーションを誘導することが判明した。酵素はDNAに結合してリン酸骨格を切断し、DNAの巻き戻しを可能にする。ノギテカンは、父方のUBE2A対立遺伝子のアンチセンス転写を減少させる事により、サイレンシング解除を行う。ノギテカンは、トポイソメラーゼIを阻害する事で、マウスの培養神経細胞においてUBE3Aのレベルを野生型の範囲に回復させる。 UBE3Aに蛍光タグを付けた遺伝子組み換えマウスを用いて、父方のコピーのサイレンシングを解除する効果を検証した。in vivo でマウスを用いて試験したところ、ノギテカンは海馬、線条体、大脳皮質に影響を与えたが、高用量(21.6μg/hr、5日間)を投与しない限り小脳には影響を与えなかった。この研究では、トポイソメラーゼ阻害剤が正常に機能するUBE3Aタンパク質を産生する可能性が示唆された。アンジェルマン症候群による症状の殆どは、従来、言語療法、理学療法、作業療法によって治療されてきた。痙攣はアンジェルマン症候群の一般的な症状であるため、抗痙攣薬が処方される事が多い。これらの治療法は症状のみを対象としている。
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