家族性大腸腺腫症
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/06 08:39 UTC 版)
家族性大腸腺腫症(かぞくせいだいちょうせんしゅしょう,familial adenomatous polyposis;FAP)とは大腸に100個以上のポリープ(ポリポーシス)が発生する遺伝的な疾患である。家族性大腸ポリポーシス、家族性腺腫性ポリポーシスなどとも呼ばれる。
病因
常染色体優性遺伝の遺伝疾患である。原因遺伝子はAPC遺伝子であることが判明している。
病態
大腸
数百から数万個のポリープが発生する。ポリープが発生し始めるのは10歳前後であり、以降は時間の経過とともに数と大きさが増大する。このポリープから大腸癌が発生する。15歳前後から発生が見られ、40歳では50%、60歳ではほぼ100%の患者に大腸癌を発生する。
胃・十二指腸
患者の約6割に胃にポリープや腺腫が発生する。発生する部位は胃底腺と幽門腺であるが、これらが悪性化することはほとんどない。
十二指腸には高率で腺腫が発生し、癌化することもある。
消化管外
顎骨に骨腫が発生する。これは消化管ポリポーシスの中でもFAPに特異的なものである。
症状
特有な症状はない。血便や下痢が発生することがある程度である。
診断
注腸造影や大腸内視鏡検査で診断し、生検によって確定する。またX線検査によってその他の症状がないか検査する。
遺伝疾患であることから、家族にFAPの患者がいる場合は早期から検査をして極力早期診断・治療ができるように試みる。
治療
大腸癌が発生するのを予防するため、基本的に大腸粘膜を全摘する。通常は全結腸と直腸粘膜を切除し、回腸嚢肛門吻合を行うが、下部直腸や肛門管に癌が存在した場合は直腸も全摘する。手術は癌発生がまれな20歳以前に行う。
関連疾患
- ガードナー症候群(Gardner's syndrome)
- FAPに頭蓋骨や長管骨の骨腫や軟部組織の腫瘍が合併したもの。原因遺伝子はFAPと同じくAPC遺伝子である。治療法はFAPに同じ。
- ターコット症候群(Turcot's syndrome)
家族性大腸ポリポーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/28 13:22 UTC 版)
「遺伝子疾患」の記事における「家族性大腸ポリポーシス」の解説
5q21に存在するAPC遺伝子の異常による疾患。常染色体優性遺伝である。大腸に100個以上の腺腫(ポリープ)ができる疾患であるが、このポリープが高率に癌化(大腸癌)することが最も大きな問題である。40歳過ぎまでに50%が、60歳までに90%程の患者が大腸癌に罹患するとされる。大腸癌の発生を防ぐためには、現在のところ大腸を全摘出する以外に方法がない。
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