家族性地中海熱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/29 00:17 UTC 版)
家族性地中海熱 | |
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分類および外部参照情報 | |
診療科・ 学術分野 | リウマチ学 |
ICD-10 | E85.0 |
ICD-9-CM | 277.31 |
OMIM | 249100 608107 |
DiseasesDB | 9836 |
MedlinePlus | 000363 |
eMedicine | med/1410 |
Patient UK | 家族性地中海熱 |
MeSH | D010505 |
GeneReviews |
家族性地中海熱(かぞくせいちちゅうかいねつ、Familial Mediterranean fever:略称FMF)とは、炎症性の遺伝性疾患の一つ。地中海周辺の民族に特に多いことから命名されているが、それ以外の民族でも発症例がある。家族性発作性多漿膜炎(かぞくせいほっさせいたしょうまくえん)ともいう。自己炎症症候群の一つである。なお単に「地中海熱」というとブルセラ症を指すこともあるが、これとは全く関係ない。アルメニア病(armenian disease)とも呼ばれる。
原因
常染色体性劣性遺伝する。原因遺伝子はMEFVと呼ばれ、第16染色体にある [1][2]。MEFVは細胞内タンパク質ピリン(pyrin)をコードする[3]。ピリンの機能はまだ明確ではないが、カスパーゼ1の活性化を抑制することが知られている。これがインターロイキン1βの活性化を抑制することを通じて炎症を抑える(逆にピリンに異常があると炎症が促進される)のではないかといわれる[4]。
症状
大部分の患者は激しい腹痛発作を10代までに発症する。これは腹膜炎によるもので多くは発熱を伴い、数時間ないし数日続き、さらに不規則に再発する。また痛みを伴わない発熱も見られる。一部の患者では膝などの関節炎や胸膜炎による胸痛が見られる。主要な合併症としては、AA型アミロイドーシス、またこれによる腎疾患がある。アミロイドは発作時に特に多く生じるので、発作を抑える適切な治療によりアミロイドーシスを防ぐことができる。
診断
診断は、特に高リスク民族の患者の場合、発作の病歴により行われる。メタラミノール投与により軽度の発作が誘発されるので、これも診断に用いられる[5][6](日本では使用不可)。発作時には炎症マーカーである血清アミロイドA(SAA)が著増することにより判断できるが、激しい腹痛が虫垂炎と誤診されることが多く注意を要する。SAAは症状消失とともに減少する。現在は遺伝子検査による診断も行われる。
治療
コルヒチンの投与が行われる。これは91.8%の患者で有効であり[7]、またそれによりアミロイドーシスを予防することができる。コルヒチンが副作用などのため用いることができない場合には、インターフェロンαやインフリキシマブ、小柴胡湯などが用いられることもある。
ガイドライン
出典
- ^ The French FMF Consortium (1997). “A candidate gene for familial Mediterranean fever”. Nat. Genet. 17 (1): 25–31. doi:10.1038/ng0997-25. PMID 9288094.
- ^ The International FMF Consortium (1997). “Ancient missense mutations in a new member of the RoRet gene family are likely to cause familial Mediterranean fever”. Cell 90 (4): 797–807. doi:10.1016/S0092-8674(00)80539-5. PMID 9288758.
- ^ Livneh A, Langevitz P (2000). “Diagnostic and treatment concerns in familial Mediterranean fever”. Baillieres Best Pract Res Clin Rheumatol 14 (3): 477–498. doi:10.1053/berh.2000.0089. PMID 10985982.
- ^ Chae JJ, Wood G, Richard K et al. (September 2008). “The familial Mediterranean fever protein, pyrin, is cleaved by caspase-1 and activates NF-kappaB through its N-terminal fragment”. Blood 112 (5): 1794–1803. doi:10.1182/blood-2008-01-134932. PMC 2518886. PMID 18577712 .
- ^ Barakat MH, El-Khawad AO, Gumaa KA, El-Sobki NI, Fenech FF (1984). “Metaraminol provocative test: a specific diagnostic test for familial Mediterranean fever”. Lancet 1 (8378): 656–7. PMID 6142351.
- ^ Huppertz HI, Michels H (1988). “The metaraminol provocation test in the diagnosis of familial Mediterranean fever”. Monatsschr Kinderheilkd 136 (5): 243–5. PMID 3405225.
- ^ Migita K, et al. Jpn J Clin Immunol 2011; 34: 355-360.
家族性地中海熱(FMF)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 06:08 UTC 版)
「自己炎症症候群」の記事における「家族性地中海熱(FMF)」の解説
家族性地中海熱は2006年度の検討では世界中に10万人以上の患者が推定されている。2009年の全国調査では日本に約300人の患者が推定されている。2011年に厚生労働省からガイドラインが発表されている。無菌性漿膜炎発作と寛解を繰り返す常染色体劣性遺伝の疾患である。責任遺伝子座は16p13.3であり責任遺伝子はMEFV、その産物はピリン(pyrin)。ピリンはインフラマゾームの活性化調節を行なっており家族性地中海熱の患者ではインフラマゾームの抑制障害によって自己炎症が起こると考えられている。ピリンは好中球で高発現しており、家族性地中海熱の漿膜炎では好中球浸潤が認められる。診断はTel-Hashomer criteriaで行われることが多い。典型的には1~4日続く38度以上の発熱と無菌性腹膜炎、胸膜炎、関節炎などの漿膜炎症状を反復する。90%以上は20歳以下で発症、ストレスで発作が起こるという意見もある。発作時はCRP、SAAといった全身性炎症マーカーが高値となり間欠期には正常化する。予後を規定するのはアミロイドーシスである。蛋白尿が出現してから7~8年で40歳前後で尿毒症で死亡する。コルヒチンによって腎アミロイドーシスも予防できるとされている。ベーチェット病、結節性多発動脈炎、 アレルギー性紫斑病といった血管炎の合併も認められている。
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