誤診
誤診
誤診
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/05 00:55 UTC 版)
誤診(ごしん、英語: misdiagnosis)とは、医師が診断を誤ること[1]。また、その診断内容。
ある外国の集中治療室からの2004年に発表された論文では、死後に解剖を行ってみると、生前に行われていた診断のうち31.7%は誤診であった、とされた[2]。
1996年の日本の福井次夫、前川宗隆らによる解剖症例2787例についての分析・報告では、解剖実施後の診断では、12%の症例で臨床診断から診断が変化した、とした。つまりこの報告では1割以上で誤診していて気づかれず、解剖してようやくそれが明るみに出るということだった[3]。
精神科での誤診
精神科での誤診・誤処方による、症状の慢性化、副作用の残遺、合併症、自殺などは後を絶たない。日本の精神科医における誤診・誤処方の問題の原因は、複合的であるとされる。理由としては、次のようなものが挙げられる[4]。
- 治療が正しかったのかどうかの最終的な判断が難しい。
- 脳の構造上評価が難しい。しかしより正しいと思われる評価をするためには薬剤性のものか、病態によるものかなどの視点を常にもって関わらなければならない。
- 診断基準が曖昧。
- 意見交換の不足や議論の不足。
- 日本では、公の場において他者批判する文化は排除される傾向にあり、それぞれの医師が意見を言うことがあっても、公の場で互いに議論されることはない。よって矛盾があったとしても治療方法や疾患概念の拡散が生じる。批判する人物は排除しようとする傾向もあり、精神医学の権威や薬剤のマーケットを敵に回せば日本社会から抹殺される可能性がある。そもそも誤診・誤処方などの多い現在の精神科医療に疑問を持っている医師自体が少ない。
- 精神科医療においては、大学病院などの大病院や有名な医師であることと、より高度な医療を受けられることは必ずしも一致しない。しかし患者はそのような事実で判断するしかないという現実がある。
- 医療者同士のかばいあいの習慣。
- 診療時間の不十分さ。熟慮の欠如。(=手抜き、軽率)
- 初診だけでなく再診でも丹念に患者の訴えを聞く姿勢や、状態像や生活実態を熟考して診断・投薬・指導する姿勢の欠如。
- 患者と共有する治療仮説の貧困。
- 患者の主訴の軽視。
- 患者本人の苦しみやニーズを深く理解し、障害を否定性から肯定性に変化させる力動を創り出していく医療者側の努力の欠如[5]。
などがある。
誤診群は特に16~25歳の青年期の患者が多いことが明らかになっている。これは病気の初期に服薬治療が始まる事実をよく表している。なお誤診群の患者が転医する際の理由は「医師に対しての不信」が最も多く、不信により転医した患者の66%が治原性(医原性)障害を発症していた[5]。
患者側も別の医療機関にかかることが気疲れになることや[6]、「医師が間違うはずはない」「精神科医である以上、精神疾患全般を治せるはず」などのある種の信仰の為に誤診を疑わないなどの理由で、適切な治療を受けられず慢性化及び難治化してしまうといった理由がある。
精神科医の笠陽一郎によると、特に2000年代から不思議な診断内容や無茶苦茶な処方が目立つようになったと言う。大学病院の荒廃も一つの根源であると語る[7]。
この事態の早急に取り組むべき課題としては、「官僚・政治家が問題を知り、取り組んでいく」「日本レベルでの診断基準や疾患概念を、権威やそのほかの有識者を含めて徹底的に議論する。もちろん公開討論も視野に入れる」などがある[4]。
医原性障害
操作的診断による安易な診断、数分での診察などで誤診され、誤った投薬により薬害性の精神病になる患者もいるという[8]。このような医原性疾患・治原性障害の増加は、精神科においての児童患者や自傷傾向患者・非典型例の増加、新薬の多発、専門性の未成熟などを背景に近年増加している。
東大病院精神神経科の石川憲彦医師の調査では、転院時に誤診が判明した症例の3分の1の患者に、全転院患者の4分の1に治療による被害(治原性障害)が認められた。治原性障害の原因は、薬剤因性が50%、指導因性が72%であった(重複を含める)。
薬剤因性障害での内訳は、「過剰な投薬」が28%、「不必要な投薬」が20%、「異診などによる誤投薬」が14%であった。そのうち重症例は約3分の1であった。主に大量の抗精神病薬による物質誘発性気分障害と、抗不安薬による薬物依存が目立つ結果となった。指導因性障害では「誤指導」50%がもっとも重要で、「指導欠如」43%、「家族への誤指導」22%などであった[5]。
脚注
- ^ 大辞林ほか
- ^ Alain Combes, et al. Clinical and autopsy diagnoses in the intensive care unit: a prospective study.(Arch Intern Med. 2004; 164: 389-92)
- ^ 内科臨床研修における剖検の有用性 「『剖検所見の内科臨床研修へのフィードバックに関する調査』報告」 日本内科学会雑誌, Vol.85,No.12(1996)pp.2096-2105 PDFが閲覧可
- ^ a b c 越智元篤 『精神科医療における誤診・誤処方は何故減らないのか』2011年11月27日
- ^ a b c 精神医療問題研究会
- ^ 「うつ病:適切な治療を受けているのは1/4 学会、研修の実施検討」『毎日新聞』 2006年9月27日
- ^ 笠陽一郎 『精神科セカンドオピニオン ~正しい診断と処方を求めて』〈シーニュ〉 2008年
- ^ 「シリーズこころ これ、統合失調症? 「読売新聞医療ルネサンス」」『読売新聞』 2008年10月29日
関連書
- 中野次郎『誤診列島 ニッポンの医師はなぜミスを犯すのか』集英社2002 ISBN 4087474275
- 西城有朋『誤診だらけの精神医療:なぜ精神障害は治らないのか』河出書房新社、2005 ISBN 4309251854
- 日本実地医家消化器内視鏡研究会『“誤診”に学ぶ: 貴重な症例から』中山書店、2008
- 矢野宏『そこにはすべて「誤差」がある: なぜ予想違い・誤診・偽装が起こるのか?』技術評論社2009
- 山下格『誤診のおこるとき:精神科診断の宿命と使命』みすず書房、2009
関連項目
誤診
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/23 06:16 UTC 版)
パーソナルカラー診断は本来、ドレープと呼ばれる色布を肌に当て、プロの診断士が診断を行うものであった。しかし近年では、店頭で店員が目視で行う診断やインターネットを使用した診断、簡易化された情報をもとに自身で診断を行う自己診断なるものが多く広まっている。それに伴い誤った情報(俗説)の拡散や、パーソナルカラー診断時に誤診が発生する機会も増えている。以下に代表的な誤った俗説や誤診を生みやすいポイントを記す。 俗説による誤診 「日本人=黄み肌=イエローベースである」といった俗説は間違いである。まず黄み肌は肌色の色調であり、パーソナルカラー理論とは異なる分類である。黄み肌でイエローベースの場合もあれば、黄み肌でブルーベースの場合もあるため診断の際には注意が必要である。 また 「色白=ブルーベースである」といった俗説も間違いである。前述した通り、パーソナルカラーやそのシーズン分類によって日焼けの傾向や肌色の変化には違いがあるものの、色白色黒といった肌色の色調とは異なる理論である。色黒のブルーベースの者もいれば色白のイエローベースの者もいるため、混同すべきではない。 環境による誤診 照明光には自然光(太陽光)と人工光(白熱電球・蛍光ランプ等)が存在し、それぞれの照明によって色の見え方は大きく変化する。赤みの成分が強い白熱電球下や青みの成分が強い蛍光ランプ下といった人工光下では誤診が発生しやすいため、パーソナルカラー診断は色の波長が均一に含まれる太陽光下で行うことが推奨されている。 また、インターネットやアプリ上に写真をアップロードし診断を行うネット診断は、光源とは別にカメラ本体の性能やフィルター補正効果、周囲からの反射による色味の影響も発生する。 色味イメージによる誤診 「黄色が似合うからイエローベース」「ピンクが似合うからブルーベース」といった判断は誤診を生みやすい。黄色の場合、バナナイエローはイエローベースの色味群であるが、レモンイエローはブルーベースの色味群に分類される。同様にピンクの場合、チェリーピンクはブルーベースの色味群であるが、カーネーションピンクはイエローベースの色味群である。 近しい色味属性による誤診 ライト・スプリングとライト・サマー、クール・サマーとクール・ウィンター、ヴィヴィッド・スプリングとヴィヴィッド・ウィンター等。明度や彩度が近い色味群は混同されやすく、またセカンドシーズンである場合も多いため誤診しやすい。 典型的なパーソナルカラーイメージによる誤診 「春タイプは明るくクリアな色」「夏タイプは淡いパステルカラー」「秋タイプは深くゴージャスな色」「冬タイプは鮮やかでハッキリした色」といった簡易な基準はイメージによる偏りが多く、誤診に繋がる。 例えば、淡い色味を得意とするライト・スプリングは春タイプにも関わらず前述した典型的イメージ基準では夏タイプだと誤診されやすい。また、青みの強い色味を得意とするクール・サマーは夏タイプでありながら冬タイプと誤診されやすい。 誤診を防ぐためには好き嫌いで判断しないことが重要である。
※この「誤診」の解説は、「パーソナルカラー」の解説の一部です。
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