誤訳のもたらした理論的混乱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/28 04:36 UTC 版)
「フランス革命」の記事における「誤訳のもたらした理論的混乱」の解説
小林良彰は世界史を日本史に翻訳する過程で重要な語句について誤訳があると指摘し、科学教育研究者の板倉聖宣も同様な意見を述べて、小林に賛成した。 フランスのビュルガー、ブルジョアは都市に住みながら貧民、下層民ではなく、戦士(武士階級)としての貴族でもないので「資産家」「中産階級」とすべきものである。単なる「市民」は誤訳である。 西洋中世のnobleと中世日本の武士は本質的に同じものである。「貴族」は、平安時代の貴族よりも江戸時代の「武士」に近いものである。西洋の領主・騎士階級を日本語に翻訳するときに「西洋の武士階級」と翻訳していれば、理論的混乱は少なくなったはずである。 明治維新を西洋では「明治レストレーション(王政復古)」と訳しているが、西洋でレストレーションとは打倒された旧政権が復活したことを指す。明治維新をレストレーションというなら打倒された徳川幕府が復活した意味になる。明治維新はそのような変化ではないから誤訳である。日本人は当時「御一新」と呼んでいた。これは「革命」として差し支えない。正しくは明治レボリューションとしたいところである。 ドイツ語の「ビュルガリッヒェ・レヴォルチオン」を「市民革命」としたのは誤訳で、正しくは「ブルジョア革命」と訳すべきである。これほど奇妙な訳語が使われ、しかも高校の教科書にまで書かれ周知の言葉になっているのは日本だけであり、世界の中でも珍しい。この言葉はドイツではそれなりに知られているが、フランスやイギリスでは一般的ではない。 日本では西洋中世の貴族の支配する土地を「荘園」と呼ぶが、日本で荘園というのは平安貴族の支配する土地で、古代国家の延長である。日本の中世の武士の支配地は「領地」であり、西洋中世の武士階級(貴族)が支配する土地も「領地」と翻訳するのが正しい。原語の「マナ」「セニョリ」「グルントヘルシャフト」に荘園と訳すほどの古代的色彩はない。
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