誤解・偏見・差別
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 01:09 UTC 版)
「トランスジェンダー」の記事における「誤解・偏見・差別」の解説
トランスジェンダー当事者が現在使用していない名前を本人の同意なく使用することは「デッドネーミング」と呼ばれ、差別にあたるので注意が必要である。 子どもの年齢で性別移行を始める人もいるが「性別移行したことを後悔している子どもが多い」という主張も一部で広まっている。しかし、イギリスのNHS(国民保健サービス)の報告書によれば、NHSを使って性別移行をした3398人に調査したところ、性別移行を後悔していたのは0.47%との結果がでており、性別移行を後悔している子どもが多いことを裏付けるようなデータはない。 近年では女性専用空間にトランス女性が立ち入ることについての是非が争点となり、特に一部のフェミニストや宗教団体の間で議論が起き、女性が性犯罪などの危険に晒されると主張している者もいる。その議論の中、まるでトランスジェンダーを性犯罪者のように扱う言説がSNSなどで目立ち、事実に基づかない主張で不安を煽り、トランスジェンダー当事者を苦しめている状況がある。アメリカでは、トランスジェンダー当事者の人のうち約7割がトイレのアクセスを拒否されたり、トイレで嫌がらせを受けたり、何らかの形の身体的暴行を経験したりしたという調査結果も報告されている。カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によれば、トランスジェンダーの人々に性同一性に合ったトイレなどの公共施設を使用させることで一般の安全上のリスクが高まるという証拠は確認されていない。すでに長年にわたって性同一性に基づく差別を禁止してきた地域がいくつもあるが、それらの地域で女性専用空間に侵入する性犯罪者が増加したという報告はなく、Equality Federation (英語版)のレベッカ・アイザックスは、トランス女性の立ち入りを認めることは危険であると流布する一連の主張は「燻製ニシンの虚偽」であると語っている。一部の危険主張派の人々は、男性の性犯罪者が自分はトランスジェンダーであると嘘をついて罪を逃れようとする可能性を心配するが、その人の性同一性がなんであれ、性犯罪行為をした時点で性犯罪者であることには変わりなく、犯罪を誤魔化す有効な手段にはならないとヒューマン・ライツ・キャンペーン (英語版)は述べている。 トランスジェンダーのアスリートのスポーツ大会への参加はしばしば論争のまとになってきた。一部の人はトランスジェンダーの参加はスポーツ競技に不公平を招くと懸念の声をあげ、地域によってはトランスジェンダーのアスリートを競技から締め出す動きもある。とくにトランスジェンダーのアスリートがスポーツ大会で好成績をおさめると批判的な注目が高まりやすいが、一方でトランスジェンダーであれシスジェンダーであれスポーツ選手が競技で記録的な実績をだすことは別に珍しいことではなく、トランスジェンダー特有の異常な出来事であることを示すデータはない。アメリカ心理学会のような研究者組織やアメリカ自由人権協会のような人権団体も、トランスジェンダーのアスリートが自分の性同一性に合ったチームでプレイすることが、スポーツや競技の公平性に影響を与えるという主張を裏付ける証拠はないとしている。国際スポーツ医学連盟はトランスジェンダーの選手の出場を制限することは五輪憲章の原則に反するとしている。
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