誤記による疑問票
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 10:58 UTC 版)
自書式は紛らわしい記載が多くなる傾向がある。例えば、「河田」候補に対して投票したつもりが誤って「川田」と投票した場合などである。その選挙における立候補者に「川田」という人物が存在しない場合、河田票と扱うか無効票と扱うかの疑問票となる。その場合、選挙管理委員会は有効か無効か判断する。少しの誤記であり、他に該当者と推定される人物が存在しない場合は、有効と判断される場合が多い。 1956年の参議院議員選挙の全国区で次点だった候補(上条愛一)が最下位当選の候補(小西英雄)の当選無効を訴えた裁判の判決では以下の判断が示された。 「条」は当用漢字表(現:常用漢字表)で「條」の当用漢字とされており、区別なく用いられる実情にあることから、「上條」が「上条」を表すものではないとは言えない。よって、「上條」票は上条愛一候補と上條某候補との間で按分されるべきである。 姓名のうち一部が異なるが近似性が認められる誤記(下条愛一、北条愛一、大西英雄、中西英雄ほか)は有効票とすべきである。 誤りが一部だけであるものの、近似性に乏しい誤記(上条敬一、小西正雄ほか)は有効とは認められない。 字形が近い文字同士の誤記(條と篠、愛と受など)は有効票とすべきである。 漢字が異なっていても読み方が同じと認められる誤記(小西秀夫ほか)は有効票とすべきである。 近似性が認められるものの、他の候補者名とも同様の近似性が認められる場合は無効票とすべきである。(川上愛一票は川上嘉候補とも近似する、小林英雄票は小林政夫候補とも近似するため、いずれも無効となる) 姓名のうち名のみが記載され候補者が特定できる票(愛一のほかあいち、アイチ等の表記ゆれを含む)は有効となるが、正しい名と誤った姓を記載し、全体として近似性が乏しい場合(上下愛一、西田英雄など)は有効とは認められない。 福岡市における小西春雄票は当時の福岡市長と同名であるため、候補者以外への投票として無効票とすべきである。(福岡市外はこの限りではない) 名字のみが正しく記載された票は有効(ただし上条(上條)は按分)であるが、大西、中西、川西など候補者ではない名字のみが記載された票は小西候補の有効票とは認められない。 「雄英西小」と逆順に記載された票は故意に特異な方法で記載されたと認められ、無記名投票の原則に反するため、無効とすべきである。 2017年11月12日の葛飾区議会議員選挙では、当初「大森ひでこ」及び「大森ようこ」の2票が大森有希子の有効票として扱われ、大森は2175票で落選した会田浩貞と1票差で最下位当選した。しかし、東京都選挙管理委員会はこの2票について、下の名前が同じ候補者がいたため2018年2月21日に無効票と判断し、当落が入れ替わった。大森は裁決を不服として東京高等裁判所に提訴する方針である。2018年7月、東京高裁により原告(大森)の請求が棄却され、同年12月11日付で最高裁判所が上告を受理しなかったため、大森の失職が確定した。
※この「誤記による疑問票」の解説は、「自書式投票」の解説の一部です。
「誤記による疑問票」を含む「自書式投票」の記事については、「自書式投票」の概要を参照ください。
- 誤記による疑問票のページへのリンク