AAアミロイドーシス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/30 14:09 UTC 版)
「アミロイドーシス」の記事における「AAアミロイドーシス」の解説
AAアミロイドーシスはアミロイドA(AA)とよばれる蛋白が線維化し全身の臓器に沈着する疾患である・AAアミロイドーシスは慢性炎症性疾患(特に関節リウマチなどの自己免疫性疾患、家族性地中海熱のような自己炎症症候群、血管炎症候群、Castleman病、still病、クローン病かつては結核などの感染症)に合併するため続発性あるいは、二次性または反応性アミロイドーシスともよばれる。過去には結核に多く合併したが2010年現在ではその90%が関節リウマチに続発し、関節リウマチの約6%にAAアミロイドーシスが認められる。 慢性炎症時におもに肝臓から産出される急性期蛋白の血清アミロイドA(SAA)の代謝産物アミロイドA(AA)が腎臓や消化管に沈着する。SAAは炎症刺激をうけて肝臓で主に産出されるアミノ酸104個、分子量12000の蛋白質である。異なる遺伝子座に由来するSAA1、SAA2、SAA4のアイソタイプがあり、このうち炎症刺激で増加しアミロイドの前駆体となるのはSAA1とSAA2である。SAA1がアミロイド前駆体として優位である。SAAの産出亢進はIL-6シグナルによって活性化された転写因子のSTAT3とTNF-αとIL-1などのサイトカインで活性化されたNF-κBp65の活性化によっておこるがSTAT3の活性化が必須であり、NF-κBp65は補助的である。SAA高値の患者の一部にしかAAアミロイドーシスが発症しないことからSAA高値以外の因子の関与が想定されている。診断の契機となるのは関節リウマチ、結核など慢性炎症性疾患の患者が下痢、麻痺性イレウスなどの消化管症状、蛋白尿や腎機能低下などの腎障害所見が見られた時に疑われる。臨床的にもっとも問題となる症状は非選択性の蛋白尿、ネフローゼ症候群、腎不全といった腎障害や心臓障害である。関節リウマチに続発したAAアミロイドーシスの40〜60%の症例が透析を余儀なくされ末期腎不全で死亡する。アミロイド腎ではアミロイドは腎糸球体、間質のいずれにも沈着する。糸球体においては糸球体基底膜とメサンギウム領域がアミロイド沈着の好発部位である。間質においては尿細管基底膜、血管壁などにアミロイドの沈着がみられることが多い。AAアミロイドーシス、ALアミロイドーシスの比較ではALアミロイドーシスでは糸球体基底膜やメサンギウム領域に沈着が多く、AAアミロイドーシスでは尿細管基底膜などの腎間質への沈着が多い傾向がある。アミロイド心は欧米ではALアミロイドーシスより頻度が低いとされている。心症状は拡張不全が早期には主体になると考えられている。心臓超音波検査でgranular sparkling signがありさらに壁肥厚が認められると予後が悪いとされている。 AAアミロイドーシスの診断は生検で行われる。症状のある当該臓器で行うか、生検困難な場合は検出感度の高い十二指腸粘膜で行う。消化管粘膜においては粘膜下層が含まれる厚さで採取する。腹壁の脂肪吸引生検もよく行われる。染色はコンゴーレッド染色で判定可能であるが抗AA抗体を用いた免疫染色で確定的となる。 AAアミロイドーシスの予後は診断時期にも左右されるが一般に不良である。関節リウマチに合併したAAアミロイドーシスにおいては診断後の生存期間は4〜5年とされている。死因として多いのは感染症腎不全でが報告されており死因の40〜60%は腎不全に関連したものである。治療の方法としては原理的にはSAAの産出抑制、アミロイド沈着阻害、沈着アミロイドの溶出、臓器障害に対する対症療法が考えられる。沈着アミロイドの溶出に有効な薬物は2010年現在存在せず、SAAの産出抑制が最も有効である。とくに関節リウマチ患者においては炎症を完全にコントロールしSAAを正常範囲に保つことで予後の改善が期待される。AAアミロイドーシスに対するTNF阻害療法やIL-6阻害療法の有効性が報告されている。特にIL-6阻害療法の効果が高く今後AAアミロイドーシスの治療の主流になると考えられている。 治療は、AA蛋白質の前駆物質であるSAAの産生を抑制することが最も重要で、頻度の高い関節リウマチについてはメトトレキサートや生物学的製剤などを用い、特にTNF-α阻害薬、IL-6受容体阻害薬が有効である。
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