下肢とは? わかりやすく解説

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か‐し【下肢】

読み方:かし

人の足。脚部また、4本足の動物後ろ足後肢。⇔上肢(じょうし)。


(下肢 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/23 15:28 UTC 版)

左からウマオオカミヒトの脚。ヒトにおける各部の名称は

(あし)は、動物を支え、移動(歩行走行)に使われる付属肢である。

脚という言葉は言語用途によって意味が異なり、一般に形態学 (生物学)に限らず体部下位に付属し支えるものを指して「脚」と呼び、それを機軸として、比喩や慣用句として、無生物を含めた様々な意味合いを持つ言葉に発展してきた。

生物学では脊椎動物については前肢と後肢、ともいう。

この項ではヒトの下肢踝から以下の接地部を指す(あし)と、生物無生物と用途を限らず広く使われている脚を区別して説明をしている。

形態学的観察

脚はそれを所有する動物によって構成要素や構造が様々であり、彼らはその機能に見合った生活をしている。また、脚そのものにも様々な適応的な形態が見て取れる。脊椎動物前肢と後肢、節足動物関節肢環形動物疣足などに見られるように、脚は往々にして対で備わっているが、棘皮動物管足のようにそうでない場合もある。

形態学的に脚は体部に付属し、移動に際し使われる股関節辺りから末梢端接地部までの肢全体を指して呼んでおり(英語: leg)、脚と指す時は(英語: foot)を含めた意味であることが一般的になっている。脊椎動物の脚にはに相当するものが末端部に付属しており、体を支えるという機能以外に様々な行動を補助するものとなっている。偶蹄目奇蹄目などの陸上動物の脚は歩行に特化しており、付属器官である指と爪が等になっており、その形はヒトのそれとは大きく異なっている。

一般的な動物の脚には、様々な付属器官がある。指や、あるいは様々な毛の束があり、それなりの機能を果たしている。タコイカなど頭足類が持つ脚はその機能から、動物学上「」と呼ばれる[1]。特に十腕類(イカ)の特殊化した腕は触腕と呼ばれる。中には生殖器、外分泌器等を備えるものもあり、外敵に対抗し身を守る手段としても脚を利用している動物が多い。その一方、ヘビのように脚を痕跡程度にまで退化させた動物群や、完全に脚を失い、新たに吸盤を形成したヒル類のような動物群もある。

なお、タコイカなど頭足類の脚は「腕」とも呼び、生物学用語として触腕触手を用いる。

ヒトの脚

後ろから見たヒトの左脚

医学的には 下肢 かしともいう。対してのほうは上肢ともいう。生物学的には四足の動物については前肢、後肢という用語があるが、ヒトは基本的に二足歩行し前肢は原則接地させなくなったので、生物学上の後肢のみが脚と呼ばれ、と区別される。

接地部足底から上に向かい、足首、脛(すね)、(ひざ)、(たい)までを含み「脚」と呼んでいる。便宜上、日本語で同じ音を持つ「足」という漢字を当て、踝(くるぶし)以下の接地部を足とする。関連する文字に腿もあり、太腿(だいたい・ふともも)や脹脛(ふくらはぎ)を指し、上腿(じょうたい)と書いて下肢の膝から上の太腿を、下腿(かたい)と書いて下肢の膝から先の脹脛を指す。

ヒトの脚の解剖学

脚の骨

骨については、骨盤の下、股関節側から言うと、大腿骨膝蓋骨脛骨腓骨のほか、足に多数の骨がある。

足の骨は数が多く、人の足と足首には、片側だけで28個の骨が存在し、両側で56個であり[2]、全身の骨の約1/4を占める[2]。そして、足には55もの関節が存在し、歩行中にこれらの関節が調和して動くおかげで人は快適に安全に歩くことができる[2]

大腿骨は人体中で最も太い骨である。

筋肉

太腿前の大腿四頭筋は人体で最大の筋肉である[3]

瞬発力と持久力を兼ね備えた筋力を備える。脚の筋肉は骨格筋によって構成され、大きく大腿筋下腿筋足筋に分けられ、それらと骨を繋ぐ腱とで脚の動きを調節している(「人間の筋肉の一覧#下肢の筋」を参照)。

人の健康と脚

脚は日常の基本動作に非常に重要だが、加齢で衰えやすい部位でもある[3]。脚は体全体を支え日常的に頻繁に使われる部位で、体の中で最も筋肉量が多いが、使用しない時の退化が激しい。最も太く丈夫とされる大腿骨を折ってしまうと修復に時間がかかり、老人の場合そのまま寝たきり生活になってしまい、補助器具(後述)を使わずに立ち上がることができなくなってしまうことが多い。そのため日頃から昇降運動などで膝周辺の筋力を鍛えておく事は老後の健康にも有益である。

脚には人体最大の筋肉があり消費エネルギーが大きく、糖尿病罹患者、高脂血症高血圧運動療法を行う人、ダイエットを志す人に脚を積極的に使い筋肉を鍛えることを広く推奨できる。

脚、特に脹脛は「第二の心臓」とも呼ばれ[4]、立位時に地球の重力に従って下方向へ体液が流動することに因って引き起こされる体液停滞浮腫を、脚の血管周辺の筋肉の運動によって上部へ押し返し再び循環系に戻している。押し返す行ないは脚を使った運動、歩行や走行などにより促進されるため、運動は全身の血の巡りを良くする効果が望める。

脚の疾患や負傷

脚から足にかけて血管が炎症動脈硬化を起こすと、足の指など末端近くの血液循環が滞り、傷や細菌感染が治りにくくなり、壊死の拡大を防ぐため足・脚の切断が必要になるケースもある[5]。歩行機能を維持するためにはを残せるかどうかがカギとなる[5]

ヒトの脚の形状として内反膝英語版外反膝英語版などがあり、それぞれ一般的にはO脚(おーきゃく)、X脚(えっくすきゃく)と呼ばれている。病的なものや遺伝の要素は少なく癖とも言える個人差の範囲だが、矯正し修正することもできる。内反膝や外反膝は脚のアンバランスな使用であるため将来変形性膝関節症等の膝の病気を引き起こす原因にもなり、気になるようなら専門家に相談することを勧める。

また乳幼児期に見られるそれらの多くは一過性のものであり、継続するようならビタミンDの摂取不足や日照時間が短い事から起こるくる病に罹っている場合がある。また同様の症状が大人になって突如起こることがあり、その場合は体位バランスの崩れもあるが、なんらかの原因で骨軟化症を引き起こしていることが多い。矯正中や骨軟化症の罹患時に胡坐や正座などは悪化させることがあるため、椅子中心の生活に変えた方が良いときがある。日本人には内反膝が、特に女性に多いとされる。

また脚には手と同様に利きがあり、反対側よりも筋力、長さ等が発達していることが多く、左右の不均等が全身の歪みを引き起こすとも言われている。この脚の利きの違いが、見通しがきかない森林などで遭難する原因の一つであるリングワンダリングを引き起こすと言われている。また下半身骨格の歪みが利き足同様の症状を引き起こすことがあるが、その場合は脚のみの利きよりも症状がハッキリと出る。

脚に何らか症状を引き起こす負傷や病気は、加齢のほか運動や事故によることが多く、以下が挙げられる。

  • 浮腫の放置、反復により下肢静脈瘤に進展する事があり、予防を目的としたストッキングやソックス、靴を用いる事で進行を遅らせたり症状を緩和させる事が出来る。
  • 日常的に立ち行動が多いヒトには脚部に浮腫が生じ易い。脚の筋肉を動かす事で血液循環を促進し浮腫の解消に一役かう事が出来る。
  • 他に足に何らかの症状を及ぼす病気としては、脚気(かっけ)、痛風、ケーラー病、レイノー病オスグッド・シュラッター病ビュルガー病フィラリア症等がある。
  • 足首や膝に起こりやすい捻挫脱臼は運動障害を伴った傷害であり、靭帯断裂等を伴い起き易く習慣化し易い症状であるため観察には注意が必要である。
  • 筋肉痛肉離れ筋断裂などは、激しい動きに伴う筋肉の症状として一般的に起こり得る病気として挙げられる。
  • 脚は細かい動きや大胆な動きを体重を支えながら行うためにを傷めることも多く、腱に沿った痛みを伴う腱鞘炎、力を入れても全く動かなくなる腱断裂、運動時に起こりやすい捻挫など。
  • 関節の炎症の総称である関節炎には、老化と共に現れやすくなる変形性関節症、女性に多いリウマチ痛風罹患に伴う炎症などは膝関節や足の指にできやすい。また膝の靭帯は損傷報告が多く、運動不足の状態で十分なストレッチを行う事なく膝に負担がかかる運動をすることで靭帯断裂等を引き起こしやすくなる。
  • 骨折のほか、足の指の突き指は時として骨折や腱断裂を引き起こしていることがある。また普段使われている場所なため使われない時の衰退は早く、運動不足が骨折(疲労骨折)を招くこともある。

脚を失ったり、脚での起立・歩行が難しくなった人は、松葉杖車椅子義足を用いる。

足病学

このように脚から足にかけて生じる疾患や負傷、加齢などに伴う機能低下は多様であり、深刻化するとクオリティ・オブ・ライフ(QOL)や健康寿命を低下させるリスクが大きい。このため欧米では足病学、足病医の長い歴史があり、日本でも2019年、日本フットケア学会と日本下肢救済・足病学会が合併して日本フットケア・足病医学会が発足した[5]。足病医療では複数の診療科形成外科循環器科血管外科など)が連携して診断と治療に当たることが理想形であり、必要ならリハビリテーション義足の製作もとりいれる[5]

脚と舞踊やスポーツ

舞踊スポーツのパフォーマンスも左右し、格闘技でも重要で、蹴り技足払いなど脚を使う攻撃方法のほか脚を使う防御法があり、特にテコンドーは脚を主とした格闘技である。脚の長さや形状は容姿の重要な要素であり脚線美という語もあり、バレエダンサーにとっては職業上重要である。

脚にまとう被服

脚に着用する被服、外衣下着としてはズボンスラックススパッツスカートアンダーパンツタイツストッキングハイソックス股引(モモヒキ)、猿股脚半 等がある。脚先(足)にはソックス類のほか、履物をはく。

日本古来のものとしてはがある。着物の上下繋がったものを着用する方法もあった。

その他

  • 「肢」と言う漢字は「体から分かれる枝」と言う意味で、生物学では動物の前肢、後肢という。医学的には上肢、下肢と言い、上肢がに、下肢が脚に相当する。四肢と書けば腕と脚をまとめて指す。
  • 椅子など接地する棒状の部材を比喩的に「脚」という。日本語では助数詞としても使い、椅子やテーブルなどは「一脚、二脚」と数える。
  • 建造物の接地部を指して使うことがある。建造物の脚と使う。
  • 日本語で「脚」を使う単語としては「三脚」「脚本」「脚立」「脚注」「脚色」「脚気」「脚光」「脚半」「脚力」などがある。

脚注

  1. ^ 奥谷喬司『新鮮イカ学』東海大学出版会、2010年7月20日、2–34頁。 
  2. ^ a b c 歩き方と足の骨・関節・靭帯の関係”. 足と歩行のクリニック. 2025年3月12日閲覧。
  3. ^ a b 太もも前を鍛えて代謝をアップ”. 関東百貨店健康保険組合. 2025年3月12日閲覧。
  4. ^ ふくらはぎの痛み・こむら返りに効く漢方日経Goodday(2023年4月12日)2023年4月17日閲覧
  5. ^ a b c d [医療ルネサンス]No.7990:足の病気(6/6)「歩ける」健康寿命延ばす読売新聞』朝刊2023年4月11日くらし面(2023年4月17日閲覧)

関連項目


下肢

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/08 09:19 UTC 版)

骨格」の記事における「下肢」の解説

下肢の骨格は、体幹下部下肢帯)と、股関節から先の自由下肢の部分範囲とする。片側で8種類31個の骨が有る下肢帯代表する骨は骨盤だが、これも複数の骨からなる骨格である。うつわ状の骨盤は、左右2枚寛骨前方では軟骨性恥骨結合つながり後方では仙骨との間に耳の形をした仙腸関節結合しつつ、仙腸靭帯仙棘靭帯仙結節靭帯3つ強固につながっている。寛骨最大扁平骨だが、思春期頃までは腸骨坐骨恥骨それぞれ独立してあり、Y字型の軟骨性結合部つながっている。これが成長に伴い骨化しながら融合し1つ大きな骨になる腸骨部分股関節から上に向かって広がる扇形状を持ち内側のへこみ(腸骨窩)で腸を支える。外側には皮膚下まで張り出して腸骨陵を形成し、この部分体表から触れられるだけではなく、その位置外見容易に見付けられる。この前端部上前腸骨棘呼ばれ体表基準点使われる一方後側の上腸骨体表に「ビーナスのえくぼ」と言うくぼみを作る坐骨寛骨後方下部に当たり、全体L字型曲がっているため角の坐骨結節体表から触れる事ができる。恥骨寛骨前方下部に当たり、「く」の字型に曲がっている。坐骨恥骨の間には閉鎖孔呼ばれる穴が有る骨盤結合部外側には半球状深くくぼんだ寛骨臼有り、ここに大腿骨頭部はまって股関節構成している。骨盤全体で、かかる体重脊椎から受け脚の骨に伝え支持役割持ち膀胱子宮卵巣直腸などの骨盤内臓保護する。またヒト骨盤性差顕著な部分であり、男性では全体ハート型で内側は狭い漏斗形なのに対し女性では横楕円型内側は広い円筒形をしている。 脚部骨格は、骨盤から下の太腿部に有る大腿骨と、足首足関節)まで続く脛部有る脛骨腓骨膝関節を介して接続した構造である。大腿骨単独では人体で最も大きな骨で、上端球状部(大腿骨頭)が寛骨臼つながり、やや外側下方伸びる大腿骨頚経て下方伸びる大腿骨体有る下端では幅が広がり末端内側顆外側顆という2つ楕円形隆起およびその間くぼんだ顆間窩有る。ここと対面する形で、脛骨上部外側広がった2つ隆起組み合いながら、2本の十字靭帯接続されるお互いの骨が接す部分にはそれぞれ半月板有り、これら全体内外両方で副靭帯が覆う。そして前面には、俗に「膝のおさら」と呼ばれる逆三角形に近い扁平膝蓋骨有る脛部支えるもう1本の腓骨膝関節直接関与しておらず、その骨頭外側側副靭帯付着する形で連結する平面的な脛腓関節構成している。 足の骨は、足根骨中足骨指骨の3グループ区分される足根骨脛骨腓骨足関節形成する距骨と、その下後方に突き出して踵を形成しつつアキレス腱とつながる踵骨有る。この2つは足を構成する他の骨と比べて非常に大きい。2つ足根骨前方接続する5本の管状骨中足骨であり、足の指の骨である指骨との仲立ちをする。これら足の骨は筋で強く結合しており、足の内側脛骨から伸びる三角靭帯支えられながら、足弓と言われるアーチ土踏まず)を形成する。これは直立二足歩行を行う際の衝撃分散緩和吸収機能を持つ。

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