フィリピン 地方政治

フィリピン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/26 10:11 UTC 版)

地方政治

地方政府

地方政治家は、地方選挙区から選ばれる議員(下院議員)や州知事、市長、町長などの地方政府の首長が当てはまる。

地方政治家は、大土地所有の大地主で地方権力を握り、経済的支配を背景に、世襲政治家が跋扈する。つまりは「金持ちによる支配」。地主と農民が互報酬制、つまりパトロン・クライアント関係(コスタリカ方式)で結び付けられている。伝統的な政治家(トラディショナル・ポリティシャン)を省略した「トラポ」[注釈 9] に象徴される汚職、公職を利用した汚職による私的蓄財というイメージが強い。また、私兵的な暴力集団を持つ地方政治家や、選挙時に投票者に通貨を配り買収する活動もする。

これらの地方政治家を表現する場合、「ボス」「ウォーロード」などが使われる。例として、イサベラ州のディー、ヌエバ・エシハ州のホソン、タルラック州のコファンコとアキノ、カマリネス・スル州のフエンテペリャ、セブ州のオスメーニャとドゥラノなど。

地方政治家は中央政府から比較的自由で、自分の支配地では「好き勝手やり放題」という認識が多い[46]

地方行政区画

フィリピンの行政区分

地方行政の最上位単位は、州と公認都市である。州と都市の数は、2006年12月時点で、州が81、公認都市が61。これらは、17の地方にグループ分けされる。

フィリピン各地方の概要
地方 称号(タガログ語 中心都市 面積 人口
ルソン 国家首都地方 NCR マニラ 638.55km2 1185万5975人
イロコス地方 Rehiyon I サン・フェルナンド 1万3012.60km2 502万6128人
カガヤン・バレー地方 Rehiyon II トゥゲガラオ 2万8228.83km2 345万1410人
中部ルソン地方 Rehiyon III サン・フェルナンド 2万2014.63km2 1121万8177人
カラバルソン地方 Rehiyon IV-A カランバ 1万6873.31km2 1441万4774人
ミマロパ地方 Rehiyon IV-B カラパン 2万9620.90km2 296万3360人
ビコール地方 Rehiyon V レガスピ 1万8155.82km2 579万6989人
コルディリェラ行政地域 CAR バギオ 1万9422.03km2 172万2006人
ビサヤ 西ビサヤ地方 Rehiyon VI イロイロ 2万0794.18km2 753万6383人
中部ビサヤ地方 Rehiyon VII セブ 1万5895.66km2 739万6898人
東ビサヤ地方 Rehiyon VIII タクロバン 2万3251.10km2 444万0150人
ミンダナオ サンボアンガ半島地方 Rehiyon IX パガディアン 1万7056.73km2 362万9783人
北ミンダナオ地方 Rehiyon X カガヤン・デ・オロ 2万0496.02km2 468万9302人
ダバオ地方 Rehiyon XI ダバオ 2万0357.42km2 489万3318人
ソクサージェン地方 Rehiyon XII コロナダル英語版 2万2513.30km2 424万5838人
カラガ地方 Rehiyon XIII ブトゥアン 2万1478.35km2 259万6709人
バンサモロ自治地域 BARMM コタバト 1万2711.79km2 427万3149人

都市

都市 行政区分 人口(人) 都市 行政区分 人口(人)
1 ケソン マニラ首都圏 2,960,048 11 ヴァレンズエラ マニラ首都圏 714,978
2 マニラ マニラ首都圏 1,846,513 12 ダスマリニャス カラバルソン地方 カヴィテ州 703,141
3 ダバオ ダバオ地方 南ダバオ州 1,776,949 13 ジェネラル・サントス ソクサージェン地方 南コタバト州 697,315
4 カローカン マニラ首都圏 1,661,584 14 パラニャーケ マニラ首都圏 689,992
5 サンボアンガ サンボアンガ半島地方 977,234 15 バコール カラバルソン地方 カヴィテ州 664,625
6 セブ 中部ビサヤ地方 セブ州 メトロ・セブ 964,169 16 サン・ホセ・デル・モンティ 中部ルソン地方 ブラカン州 651,813
7 アンティポロ カラバルソン地方 リサール州 887,399 17 マカティ マニラ首都圏 629,616
8 タギッグ マニラ首都圏 886,722 18 ラスピニャス マニラ首都圏 606,293
9 パシッグ マニラ首都圏 803,159 19 バコロド 西ビサヤ地方 西ネグロス州 600,783
10 カガヤン・デ・オロ 北ミンダナオ地方 東ミサミス州 728,402 20 モンティンルパ マニラ首都圏 543,445
2020年国勢調査

注釈

  1. ^ 例えば、2010年代であれば、2010年、2013年、2016年、2019年の4回である。
  2. ^ 1916年のフィリピン自治法(ジョーンズ法)で直接選挙による二院制になった。1934年タイディングズ・マクダフィ法で独立準備政府の樹立を認め、発足10年後の独立を約束した。
  3. ^ 1934年に憲法制定議会を招集し憲法草案を起草(共和政体の権利章典を含む憲法)、アメリカ合衆国憲法の影響が大きかった。1943年の日本軍占領下に第二共和政を組織する1943年憲法が制定されたが、1946年7月独立時に35年憲法に復帰した。
  4. ^ 戒厳令下では政権の永続化が可能であり、大統領権限の飛躍的強化がなされた。
  5. ^ 35年憲法改正の準備は196年代の後半から本格化し、1970年11月の憲法制定会議代議員選挙で320名選出される。
  6. ^ 1947年調印の比米軍事援助協定と1947~1991年比米軍事基地協定による。
  7. ^ 被害者総数は120万人に達するほどであった。一方、農業に適した養分を含む土地も形成した。
  8. ^ 1960年から2000年代中ごろまでに約1万件の地震が観測されている。1990年7月に中部・北部ルソンを襲った大規模地震は7州に被害を及ぼし、120万人以上が被災した。葉山アツコ「自然・地理」エリア・スタディーズ(2009):249
  9. ^ タガログ語で「襤褸切れ(ぼろきれ)」という意味もある。
  10. ^ 在日フィリピン人の場合、日本人と同様に「姓、名」で名乗ることがある。
  11. ^ CorazónAlmaEsperanzaなど、スペイン語の一般名詞に由来する人名も多く見られる。
  12. ^ ただし最近では、スペイン語よりも英語の名前が主流となっている。例:Miguel、Margarita → Michael、Margaretなど。
  13. ^ 窃盗傷害暴行強盗殺人事件などの重大犯罪発生件数は約8万件(前年比約28%減)が報告されており、そのうち窃盗が全体の30%、傷害・暴行が28%、強盗が14%、殺人が9%を占めている。殺人事件は約0.7万件(前年比約22%減)、強盗事件は約1.1万件(前年比約32%減)がそれぞれ報告されており、その件数は、殺人事件が日本の約8倍、強盗事件は日本の約6倍となっている。
  14. ^ 犯人が被害者や警察官・警備員などからの反撃に備えて銃器を所持している例も多い。

出典

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