ノリ・メ・タンヘレ
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ノリ・メ・タンヘレ | ||
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著者 | ホセ・リサール | |
発行日 | 1887 | |
発行元 | Berliner Buchdruckerei-Aktiengesellschaft, Berlin, German Empire | |
ジャンル | Novel, satire, Philippine history | |
国 | スペイン領フィリピン, Spanish Empire | |
言語 | Spanish | |
形態 | 文学作品 | |
次作 | El filibusterismo | |
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『ノリ・メ・タンヘレ』(Noli Me Tángere, ラテン語で「我に触れるな」の意)は、当時スペイン領フィリピン諸島出身の作家ホセ・リサールによって執筆された小説であり、スペイン語で書かれた。初版は1887年にドイツで出版された[1]。
あらすじ
19世紀後半のスペイン領フィリピンを舞台に、ヨーロッパで教育を受け帰国したクリソストモ・イバラ(通称:イバラ)を主人公とし、彼が直面する社会の不正義、腐敗、宗教的支配、そして失われた愛を描く。
イバラは帰国後、父親が不当に投獄され死亡したことを知り、真相を探るうちに、修道士たちによる圧政や腐敗した宗教・政治体制に直面する。彼は自らの理想をもって祖国に尽くそうとするも、さまざまな陰謀や中傷に巻き込まれ、やがて反逆者として追われる身となる。
一方、イバラの婚約者であるマリア・クララは、彼を深く愛しながらも、家族の秘密と修道士たちの策略によって修道院に閉じ込められ、自由を奪われる。
主な登場人物
- クリソストモ・イバラ(Crisóstomo Ibarra)
- ヨーロッパ留学から帰国した若き青年。理想主義的で進歩的な考えを持ち、祖国の発展と教育の普及を願って行動するが、体制側の圧力や陰謀により次第に追い詰められていく。主人公。
- マリア・クララ(María Clara)
- イバラの婚約者であり、物語のヒロイン。優美で純真な性格だが、家族の秘密と社会的圧力により苦悩する。修道士たちの策略により修道院に入れられ、悲劇的な運命をたどる。
- フライ・ダマソ(Padre Dámaso)
- スペイン人フランシスコ会士。イバラの父に深い敵意を抱き、イバラの人生を妨害する。マリア・クララに対しても影響力を持つ傲慢な聖職者。
- エリアス(Elías)
- 神秘的な過去を持つ若者で、イバラを助ける影の英雄的存在。社会の底辺で苦しむ人々の苦悩を体現し、真の改革を求めて奔走する。物語の終盤で重要な役割を果たす。
- カピタン・ティアゴ(Capitán Tiago)
- マリア・クララの父親であり、裕福なフィリピン人商人。宗教的偽善者で、社会的地位と教会との関係を重んじる保守的な人物。
- ドニャ・ビクトリーナ(Doña Victorina)
- スペイン文化に固執し、虚栄心の強い女性。フィリピン人であることを恥じ、スペイン人と結婚して上流階級に取り入ろうとする人物。
- タシオ老人(Don Anastacio / “Pilosopo Tasyo”)
- 学識ある元学者で、村では「狂人」と見なされているが、実は深い哲学的洞察を持つ賢者。イバラに助言を与える良心的存在。
参考文献
- ^ 『ホセ・リサールの生涯 : フィリピンの近代と文学の先覚者』芸林書房、1992年11月。
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