建築家
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歴史
起源
古くから中世の歴史を通して、多くの建築設計と建設は、石造りの石工や大工のような職人によって行われ、マスタービルダーの役割を果たしていた。現代まで、建築家と建築エンジニアの間に明確な区別は無かった。ヨーロッパでは、タイトルの建築家とエンジニアは主に同じ人物を指す地理的なバリエーションであり、しばしば同じ意味で使用されていた[4][5]。古代 ギリシャではこの称号は重要な建物の設計と施工両方に責任を負う人物を指しており、そうした人物は美学と建築の両方に精通しており、建築現場での作業を指示し、建築資材の供給などを手がけていた。そこからデザイン理論が分野に発展し、建築家がますます全体的計画までに取り組んで、多かれ少なかれ現代までに至っている。
技術と数学の様々な開発が、実践的な職人とは別のプロの「紳士」たる建築家の発展を可能にしたことが示唆されている。設計図を紙に書くことは、ヨーロッパでは15世紀までは行われていなかったが、16世紀に入ると徐々に紙が使われるようになった。西暦1600年までには設計図における鉛筆の利用も増えていった。紙と鉛筆が利用可能になったことで、建設前の図面は専門家によって作成されるようになった。同時に、2次元の3次元建物を記述するための異なる投影法の使用や、寸法精度の理解の向上など、線形の視点や技術革新の導入は、建築設計者がアイデアを伝えるのを補助してきた。しかし、開発は徐々に進んでいた。18世紀まで、建築物は高水準のプロジェクトを除いて職人によって設計され、設定され続けた[6]。建築家を旧来の構成のもとに位置付ける向きが確立するのは17世紀頃で、以降建築あるいは芸術のアカデミーを設立してその会員として建築家を推挙する制度ができるが、これが芸術家としての確立である。1671年に創設されたフランス建築アカデミーが最初である[7]。
語源
英語の「architect」の語源はラテン語のarchitectusであるが、さらにそのラテン語の語源はギリシャ語の「ἀρχιτέκτων (architéktōn) アーキテクトーン」である[9]。この「アーキテクトーン」という用語は2つの部分で構成されており、「ἀρχι アーキ」(最初に存在する者。命令する人。〜の長。)+ 「τέκτων テクトーン」(職人、建てる人)という構成になっている。つまりもともとは、建築に関わる職人たちに命令をする立場の人、という意味の表現である。文字通り、建築の仕事をする人々の「頭(かしら)」「長(ちょう)」という意味である。
なお「ἀρχι アーキ」は接頭辞であり、「アーキビショップ ärke + biskop」(大司教つまり司教たちの長(頭))や「ärke + fiende」(敵のボス)という表現でも使われており、 マイスターや親方も指す。「τέκτων テクトーン」のほうは建築に直接関わる現場の人々全般(大工やさまざまな職人など)を意味する。
各地域の建築家の歴史
- ヨーロッパ諸国の場合
古代ギリシャ・ローマでは、建築術をはじめ土木技術、造兵技術、機械技術を含んだ「大技術者」、いうなればクラフトマン(工匠)で「大工」という意味であった。中世ヨーロッパに大聖堂を築いた工匠は存在しても、建築技術者は一般に職人と見られていた。
12世紀以前には修道院や教会の建築は、歴史的建築物や測量に造詣のある修道士が行っていたが、建築物の複雑化などから、11世紀半ばには建築主の要望を聞き、測量して図面を引く建築の専門家に委託する例が現れるようになった。優れた建築家は賛美される反面、他の地に同じような建物を建てられることを嫌った建築主に処刑されることもあった。故に初期ゴシック期の建築では、建築家が名声を得ることを建築主、建築家の双方ともに恐れたため、可能な限り名は伏せられた[10]。
アーキテクトの地位が確立したのはルネサンス期以降で、アーキテクトの名前が作品とともに伝えられるようになった。15世紀イタリアのブルネレスキがアーキテクトの始めとされる。当時、フィレンツェ大聖堂(サンタ・マリア・デル・フィオーレ)に世界最大のドーム屋根をかけることが課題となっていたが、巨大な足場が必要になるため、建設は非常に困難と見られていた。ブルネレスキはこの課題に合理的な解決をもたらし、足場を築かずにドームを造る方法を提案して、ドームを完成させた。また、万能の天才といわれた人文主義者アルベルティは『建築論』を著し、学問的に建築学を位置づけた。これらの人物の活動によって、次第に職人とは異なり、高い教養と科学的知識を持つアーキテクトの職能が確立していった。イタリアなど南欧諸国においては、ルネサンス期以降、アーキテクトは主に社会的な事業に関わる芸術家として尊敬を集めてきた。こうして、アーキテクトが芸術家的意味を帯びるのは15世紀のイタリア・ルネサンスに始まると同時に建築の形態が学問として科学的に解析検討され、芸術としての本性が追求された。アーキテクトは技術者との職分から、学者であり芸術家・デザイナーとしての側面を持つに至る。
ところが、イタリアに比べ当時は後進国であったイギリスでは、環境芸術家や都市デザイナー、アーキテクト的な側面は、イギリスで中世以来発展してきたサーベイヤー(測量技師、調査師または調査官などと邦訳される)という職能の一部として機能する。そして、このイギリス的特性の中で形成されていくのが、近代的アーキテクト像とされる。イギリス最初期にデザイン系のアーキテクトとなるイニゴー・ジョーンズや後のクリストファー・レンなど、多くの著名なアーキテクトは、当初王室サーベイヤーとして活躍し、のちにアーキテクトへと発展し、建築作品を残していく。たとえば、1666年当時のロンドン大火後の再建計画を国王や市に寄せた幾人か、クリストファー・レンのほか友人のジョン・エブリン、その他ピーター・ミルやリチャード・ニューコート、バレンタイン・ナイトなど、この時点では専門のアーキテクトでも都市計画家でもなく、本職をもちながらサーベイヤーを委嘱されていた人物らである。
この一群の中から、南ヨーロッパ伝統の、芸術家的側面のアーキテクトとは異なる、技術的な側面の強い近代主義のアーキテクトにつながるもう一方の系統が生じ、さらにギルト・職能主義の進展、近代的教育組織や職能団体を結成し、さらに国家試験を課して資格制限を目指す排他性を基調とした動向などに伴い、サーベイヤーからアーキテクトは分離独立していく。1761年には王室建設局が、それまで長らく使用してきたサーベイヤーという職名からアーキテクトという呼称に切り替えていく。こうして発生した英国内のアーキテクトは、根本的には芸術家であるからとの理由で、画家や彫刻家と同列にとどまろうとはせず、すでに多くの機会に彼らは弁護士に伍する専門家として、すなわち意匠設計に携わることだけに劣らず、建設の際施主の経済的また利害の保護に携わる高潔、聡明の士、として活動することになる。
サーベイヤーという器の中で成長してきたイギリスのアーキテクトは、その歴史をみるとおり、芸術家というより、不動産としての建築をつくる立場から、職能的倫理や資格が問われていたのであり、1838年創立の英国建築家協会(後の王立英国建築家協会, RIBA)の憲章に、建築家は本来、施主と施工者との中間者である、と説かれているのは、このような立場からである。近代的アーキテクト像がアーティスト的性格と、サーベイヤー的性格を統合する形で成立していったのには、このような歴史的背景がある。
- 日本の場合
日本では伝統的に設計と施工を兼ねる大工棟梁がいた。Architect の概念は、明治時代以降に輸入されたもので、まずは明治政府が雇用したお雇い外国人トーマス・ウォートルスやジョサイア・コンドルらが活躍した。次いで旧官立大学を中心に西欧の建築学が導入された。東京駅の設計で知られる辰野金吾は工部大学校(後の東京帝国大学工学部)1期生である。
Architecture は当初「造家」と訳され、1886年に工部大学校卒業生を中心に「造家学会」が設立された。やがて伊東忠太による提案を受け、1897年に建築学会(現・日本建築学会)と改称した。伊東は、「造家」では技術的な要素が強すぎるので、芸術的な要素を強調するため「建築」という名称を主張したものであったが、すでに明治6年に発行された英和辞書でconstructionを「建築術なり」と称していた。
これに対する反発として、大正時代に日本建築士会と関西建築協会(現・日本建築協会)が結成された。日本建築士会は設計と施工の分離を主張し、西欧の Architect に相当する地位を確立すべく、「建築士法」制定運動を起こした。1925年に「建築士法」案が議会に提出されたが、建築界全体の足並みがそろわず、成立を見なかった。
注釈
- ^ Architects Act(アメリカ)、Architects Act(イギリス)、Building Control Act(アイルランド)、Architects Act(カナダ)、Architects Act(インド)、Architects Registration Act(スリランカ)等。
- ^ 法定の資格を持つ「建築士」以外が設計や工事監理をすることは建築士法違反となる(敵は「建築家」にあり!(日本建築士事務所協会連合会 日事連、2012年2月号)、職能団体の責任:自称「建築家」で建築主の信頼は得られるか(日経BP社 ケンプラッツ、2012年1月16日)「建築士」と紛らわしい名称である「建築家」を使用して業務を行うことも違法であるとして問題提起がなされている。
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出典
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