無所属の“王”
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“狩人(かりうど)”フリアグネ[Friagne] 声 - 諏訪部順一 / 松風雅也 男性の“紅世の王”。炎の色は薄い白。I巻、外伝『ノーマッド』『ソロー』に登場。近代以降では五指に入るであろう強大な“王”で、フレイムヘイズ側には「フレイムヘイズを狩る“狩人”」として知られる。御崎市で起こる一連の事件の契機となる。 人化の自在法による姿は、純白のスーツを纏った線の細い美青年。本性の姿は鳥だと推測されている。 この世に渡り来た動機は不明だが、アルチザンやこの世の道具に興味があった模様。人形好きで、愛する“燐子”のマリアンヌを独立した一個の存在とするため、かつて“棺の織手”アシズが用いた秘法『都喰らい』で、膨大な“存在の力”を得ようとしていた。 宝具のコレクターとして知られ、自身のコレクションである様々な宝具の特性を活かした戦闘を得意とする。フリアグネ曰く“狩人”の真名は宝具の収集家である事を意味し(ただし、この世と“紅世”の狭間の産物である宝具はトーチ同様、“紅世”には存在しないため、これはフリアグネの勝手な解釈である思われる)、『物事の本質を見抜く』固有の能力から、入手した宝具の能力や使用法を即座に看破できるという。 また、“燐子”作りに関して優れた技量を持ち、恋人であるマリアンヌを初めとして自在法や宝具を使うことすら可能な高度な意志総体を持つ自律型の“燐子”(アニメ 新井里美)を多数率いる。 作中では、フリアグネ本人は炎を消し去る結界を張る指輪型宝具『アズュール』、絡んだ武器型宝具の能力の発動を封じる金の鎖を生み出すコイン型宝具『バブルルート』、実体のない弾丸を命中させたフレイムヘイズの内に眠る“王”を目覚めさせ器を破壊する拳銃型宝具『トリガーハッピー』、“燐子”の鼓動と共鳴させ爆発させるハンドベル型宝具『ダンスパーティ』といった多数の宝具を用いた他、彼の“燐子”たちも多数のカードをシャッフルして場に出す能力を持つカード型宝具『レギュラーシャープ』や刀剣型宝具などを駆使して戦う。 これらの宝具の特性を活かして幾多のフレイムヘイズを葬っており、戦闘(主に対フレイムヘイズ)に関しては、最古参で歴戦のフレイムヘイズであるカムシンでも苦戦する程の強さとされる。作者曰く、本来なら第I巻に登場させるには強力過ぎる敵、とのこと。 御崎市の廃デパート高層階に、巨大な箱庭を形成して一定地域の人間と“存在の力”を監視する銅鏡型宝具『玻璃壇(はりだん)』を設置し拠点として、配下の“燐子”たちと共に人間を喰らって『都喰らい』に必要な大量のトーチを作り出していた。彼の『都喰らい』は宝具『ダンスパーティ』でトーチを一斉起爆させて連鎖破壊を起こすため、トーチの数がアシズの『都喰らい』よりも少ない数で実行できる。このことが、違和感の発生を抑えて敵の襲来を減らし、また目的が『都喰らい』であることを隠蔽する要素にもなっていた。 本編が始まる少し前 にも、御崎市を訪れたフレイムヘイズを気配隠蔽を施した“燐子”の軍団の炎弾一斉射撃と『バブルルート』『トリガーハッピー』の連携攻撃で完勝するなど、計画を順調に進めていたが、成就寸前に『炎髪灼眼の討ち手』が現れたことで彼の計画は狂っていく。 シャナと“ミステス”坂井悠二の共闘により、トーチに施された仕掛けから『都喰らい』の可能性に気づかれ、トーチを次々と減らされたため、計画の破綻を防ぐべくシャナたちとの対決を強いられることになる。持ち前の計算高さで準備を進めつつ、悠二を人質に取ることに成功し、彼に有利な状況で直接対決に持ち込むものの、幾人もの強力なフレイムヘイズを葬ってきた戦術が『変わり者』のシャナにはほとんど通じなかったという誤算、さらに最終段階まで進んでいた『都喰らい』の布石を崩さないために行動や戦力を大幅に制限されたことから、苦しい状況に追い詰められる。状況を打破するため自ら犠牲となったマリアンヌの献身で逆にシャナを追い詰めるものの、異常な感知能力を持つ悠二の存在を軽視したことで『都喰らい』に不可欠な『ダンスパーティー』を破壊され、計画は失敗に終わる。 計画が失敗したことで正気を失い、その原因となったシャナに『トリガーハッピー』を撃ち込むものの、シャナは爆死せずアラストールが“紅世の王”として顕現することになり、顕現したアラストールによって討滅された。しかし、これらのいくつもの要素が揃った為にシャナたちは勝利し、なおかつ『都喰らい』を阻止することができたという、綱渡りの勝利であった。 彼のコレクションであった宝具の多くはシャナとアラストールにより破壊されたが、戦闘用以外の宝具は彼の死後もいくつか遺された。中でも『玻璃壇』は彼の死後マージョリー・ドー達に発見され、大いに活用されたが、後に本来の持ち主である“祭礼の蛇”が回収した。 なお、彼は挿絵を担当するいとうのいぢのお気に入りのキャラクターであるらしく、質問コーナー『狩人のフリアグネ』ではマリアンヌと共に回答と解説役を務めている。 第1期アニメでは原作と『都喰らい』の表現が異なり、また原作にはなかったマージョリー・ドーとの戦いが描かれた。最期も原作とは異なり、戦闘中に正気を失ってマリアンヌの死にも気付かずひたすら『ダンスパーティ』を振り続け、最後はシャナに斬殺された。また、アニメでは演出の都合か、彼の炎は薄い水色に色づいている。アニメでも『フリアグネ&マリアンヌのなぜなにシャナ!なんでも質問箱!』としてアニメで語られていない原作設定を補完する役割として登場していた。 フレッド・ゲティングズの『悪魔の事典』では同名の天使が「エノクのデーモン」として記載されている。「ヘプタメロン」や天使魔術論などの古い魔術文献に登場する精霊の名である。マリアンヌ[Marianne] 声 - こやまきみこ フリアグネに「可愛いマリアンヌ」と呼ばれる“燐子”でありフリアグネの恋人。元は粗末なこの世の人形だったが、トリノで馬車から捨てられた所を偶然見かけたフリアグネが、あまりに可憐なその姿に心に雷霆億激の如き衝撃を受け一目惚れ、その後色々あって高度な“燐子”になって愛し合うようになったらしい。彼女を他者の“存在の力”に頼らず生きてゆける存在へと組み換えこの世に定着させる『転生の自在式』発動のための莫大な“存在の力”を得るため、フリアグネは『都喰らい』を起こそうとしていた。 フリアグネ一党の“燐子”は作り手たるフリアグネの卓越した技量・強大な力のために全員が他の“徒”の“燐子”に比べて非常にハイスペックであり(ヴィルヘルミナに一手駒としては破格の強さであると言わせる程)、自立した高度な意思を持ち宝具を使える。その中でもマリアンヌはそこらの“徒”など全く問題にならない程の大きな“存在の力”が注ぎ込まれていた。 デパート屋上での決戦にて、シャナに追い詰められたフリアグネを救い「二人の願い」を叶えるために、フリアグネと違い自分は修復できるかも知れない、という僅かな希望を託してフリアグネに自分を『ダンスパーティ』で自爆させ、シャナに大ダメージを与えると共に消滅した。第1期アニメでは死に様が異なり、正気を失ったフリアグネを見かねてシャナに立ち向かって死亡した。 その後、残された『アズュール』はシャナを通じて悠二へと渡ったが、刻まれたまま気づかれず放置されていた『転生の自在式』は、後に全く意外な形でその力を表すこととなった。 記者会見時に使用するためにスタッフが作った彼女の人形は髪が伸びていっている模様(『劇場版 灼眼のシャナ』ディレクターズカット版コメンタリーより)。 ニーナ 声 - (未登場) / 浅野真澄 “狩人”フリアグネ配下の“燐子”の一体で、猫の人形型の“燐子”。フリアグネの5918番目の“燐子”。主であるフリアグネを強く慕い、主亡き後に、執念から“ミステス”悠二を襲い、シャナに戦いを挑み討滅される。『灼眼のシャナ』ドラマディスクが初出であり、それを小説としたM巻収録の『ノーマッド』に登場している。漫画版にも多少エピソードを変更された上で登場し、漫画版では討滅される前に悠二に吐いたセリフは、第II巻前半での悠二の無気力の原因の1つとなった。アニメには未登場。 ローレッタ “狩人”フリアグネ配下の“燐子”の一体で、陶器の馬四頭立てに懸架装置を備え、花の浮き彫りで彩られた二階付き乗合馬車の姿をしていた“燐子”。1864年頃、フリアグネが『内乱』で荒れる北米大陸へ渡った際に同行していた。フリアグネの指示にはっきり声に出して返答するなど、高度な意思総体を備えていることを窺わせた。現代まで存在していたかは不明。アニメには未登場。 “探耽求究(たんたんきゅうきゅう)”ダンタリオン[Dantalion] 声 - 飛田展男 男性の“紅世の王”。炎の色は馬鹿のように白けた緑。初登場はVI巻。この世と“紅世”に関する研究と実験と発明に生き甲斐を感じ、そのためなら自分の命すらも捨てるマッドサイエンティスト。天才かつ変人で、さらに力そのものは強大な“王”である為、最も始末に負えない。通称「教授」。作中きっての変人であり、作中で「とある変人」と表現される何者かは多くの場合彼を差している。 ガサガサの長髪の長い白衣を着たひょろ長い男で、太いベルトのようなものを体中を巻きつけ、首にカメラやメモ帳、双眼鏡や拳銃など様々なものを紐でぶら下げている。目付きは鋭いが、近眼であり分厚い眼鏡で隠されている。人間の姿をしているが、腕や腰などの関節がありえない方向にありえないほど曲がったり、伸びたり手をマジックハンド状に変化させる事もある。 興味の赴くまま、この世と“紅世”に関する研究実験と発見発明を繰り返すマッドサイエンティスト。研究第一の性格で悪意はないものの、かなり自分勝手で他人を振り回し、研究実験により周囲が受ける迷惑や被害を一切考慮せず、協力者を破滅に追い込むこともあるなど、いたる所でトラブルを頻発させる稀代のトラブルメーカー。本人は研究のためならばフレイムヘイズにも協力するが、“紅世の徒”であっても彼を恨んでいる者は多い。特に『契約のメカニズムの研究』を目的として『強制契約実験』を行い、彼以外誰も喜ばない大惨事を引き起こしたうえ、結果的に強力なフレイムヘイズ(『鬼功の繰り手』サーレ・ハビヒツブルグ)を生み出した事も、彼への怨嗟の声を高める一因となっている。 その思考や行動は荒唐無稽で奇想天外、他人には理解不能(たまに自分でもわからない時があるらしい)の超変人で、「意表をつく」という点では世界でも指折りの“王”。興味の移り変わりも激しく、「その場で思いついた名案」で直前の研究を安易に放棄したり、現在興味ない事象であれば過去の自分の行動を忘れていることも多い。 技術者としては紛れも無い天才で、彼の研究成果が他の自在師によって実用化され普及した事例もある(封絶の自在法など)。そのため[仮装舞踏会]からたびたび招かれ、客分待遇として組織の中核を担う研究を行っている(興味の移り変わりやトラブルで逃げ出しては、必要な時にベルペオルに連れ戻される)。また、20世紀初頭にはハワイで[革正団]サラカエル一派に技術面で協力していた。 自在法の研究も度々行っており、自在法に関しての知識は深いが、自在法を使わないためか自在師とは呼ばれていない。 まともに相手にするには非常に疲れる性格であるため、彼に関わった者の大半が2度と出会いたくないと考えており、積極的に討滅しようとするフレイムヘイズもほとんどいない。唯一、「研究の成果」であるサーレが(比較的)積極的に研究実験を阻止しようとするため、サーレを「失敗作」として酷く嫌っている。 妙なところで伸ばして妙なところで早める、特徴的かつハイテンションな口調や仕草が特徴。剣をドリルに改造、自爆装置のスイッチが目の前にあるとつい押してしまう、手をやたら飛ばすのが趣味など、独特の嗜好も持つ。 この世に渡り来た動機は不明だが、その性格から、この世への強い好奇心と研究のためと推測される。 本来自身のみに行われる『顕現』を、『他の物体』として具現化し永続的に実体化させるという特異な能力を持ち、その能力で実験や発明に必要な道具の『素材』を生み出す(この『素材』は大抵が使い道のないガラクタである)。それらの『素材』を、独自の理論体系によって創造された『我学』に基づき、この世の道具に組み込んで、様々な実験物を生み出している。彼の作った数万に及ぶ有形無形の実験物はまとめて『我学の結晶』と呼ばれ、各々には『我学の結晶エクセレント(通し番号)』というシリーズ名が付けられている(『強制契約実験』の産物である「合体無敵超人(サーレ)」のみエクスペリメント)。大部分は性能自体は無駄に良いものの、製作目的や見た目、付随効果が珍妙だったりと、周りに迷惑な物が多い。 敵が現れても自ら戦うことはなく、必要ならば『我学の結晶』を用いて「実験を邪魔する者」の行動を妨害したり、逃亡を図ったりする。そういう面では非常に用意周到でもある。 性格と信条上、敵が多いため、逃げ足は誰よりも速い。 時期は不明だが[仮装舞踏会]から最高機密である自在式『大命詩篇』の一部を刻んだ金属板を無断で持ち出し、15世紀末~16世紀初頭に[とむらいの鐘]が『壮挙』を引き起こす遠因となっている。 本編では7月、御崎市で世界の歪みを修復する自在法『調律』に対して効果逆転の自在法『逆転印章(アンチシール)』を起動させ、極限の歪みを作りどんな結果になるかという実験を試みるが、フレイムヘイズ達に阻止され失敗に終わった(VII巻)。 その後はベルペオルに『零時迷子』を餌に『星黎殿』へ連れ戻され、ヘカテーが持ち帰った『大命詩篇』の一篇を解析・実働させたり、[仮装舞踏会]全構成員への大命布達での技術面での解説を任される等(XVI巻)、[仮装舞踏会]に協力している。『大命』が第二段階へ移行するに伴い、異世界の調査のために、持てるだけの機材を厳選して“祭礼の蛇”坂井悠二らと共に『久遠の陥穽』に同行し(XVII巻)、『詣道』の崩壊や両界の狭間など、貴重な観測データを収集した。また、『詣道』の崩壊によって引き起こされた異変を『朧天震』と命名した。そして、追いついて来たシャナたちの妨害を撥ね退けて、“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する(XIX巻)。 御崎市決戦では、『星黎殿』を『真宰社』に変形させ、“冀求の金掌”マモンと共にその西側の防衛を担当。新兵器として小型の『久遠の陥穽』を発生させる『我学の結晶エクセレント252580-揮拳の圏套』を両拳に搭載した数十体の鉄巨人を『真宰社』の機器管制室から操作し、サーレと戦わせる(XXI巻)。更には『揮拳の圏套』を一段推し進めた直径30メートルを一撃で葬る『揮散の大圏』も用いて戦わせる。しかしサーレの妙技で『揮散の大圏』を機器管制室に投げ込まれ、咄嗟に緊急脱出装置を作動させるも、開かれるはずの通路に逃げ込んでいた『百鬼夜行』のパラが『ヒーシの種』で機能を麻痺させていたために不発に終わり、ドミノ共々機器管制室ごと消滅した(XXII巻)。 アニメ版では歪みの拡大の実験を行わず、登場した『我学の結晶』も名前が同じであっても見た目も用途も原作とは異なるなど、出番が大きく変更されている。第1期終盤では[仮装舞踏会]と共に、無限に“存在の力”を生み出し続ける『渾の聖廟』を製作し、第2期終盤では再び[仮装舞踏会]と共に本来“紅世”でしか生まれない“徒”をこの世で生み出そうとする実験『敷の立像(ごうのりつぞう)』を始めたが、2度ともシャナたちによって阻止された。第1期登場話数は第17話 - 19話 ・21話(台詞はなし)23話 ・24話、第2期登場話数は第15話 ・16話 ・22話(台詞はなし) - 24話。 ソロモン72柱の1柱にダンタリオンという同名の悪魔が登場する。ドミノ[Domino] 声 - 加藤奈々絵 ダンタリオンの助手を務める“燐子”。正式名称は『我学の結晶エクセレント28-カンターテ・ドミノ』。フレイムヘイズ側は「お助けドミノ」と呼んでいる。膨れた発条に大小の歯車で両目を付け、頂にネジ巻きを刺した頭部と、ガスタンクのような鉄の胴体に(いい加減にそれらしく作られた)細長い機械仕掛けの腕と短い足をつけたロボットの姿。首だけになっても活動可能で、胴体は周辺の物体を使って再構築できる。温厚で“徒”には常に敬意を払う性格だが、主人であるダンタリオンの研究を否定する者には怒りを表す。語尾に「~でありますです」とつけるなど、妙な敬語を話す。一言多いタイプで、ダンタリオンに余計なツッコミを入れてはその都度(時には何もなくても)つねられる。宝具を使用できるなど、(実は)かなり高性能な“燐子”。『大命』の第二段階においても教授と共に行動し続け、この世に帰還した後に教授からロフォカレがとある神の眷属だと聞かされる。その後も教授と共に行動し、御崎市決戦でサーレたちによって教授と共に消滅した。 アニメでは機械仕掛けの“燐子”と位置付けられ「フレイムヘイズはその気配を認識できない(御崎市駅潜伏時)」という特性があった。また、アニメオリジナルのキャラクターとしてドミノの量産型である「27 1/5」(自我は無く、ダンタリオンの機械から発せられる“存在の力”で動いている)も登場した。 “髄の楼閣(ずいのろうかく)”ガヴィダ[Gavida] 声 - 不明 男性の“紅世の王”。炎の色は乳白色。X巻に登場。人間の作り出す「芸術」の魅力に取り憑かれて以降、人間と協力して様々な宝具を作り出した老成の“徒”。 姿は六本腕を備えた板金鎧。 この世に渡り来た動機は不明だが、当時は他の“徒”と同様に人間を喰らっていた様子。芸術に惚れこんで人間好きとなった後は、芸術(特に建築や彫刻と言った立体造形物)にこだわりを持ちながら様々な宝具を作っていた。その後、人間を喰らわなければ顕現出来ない自身の立場を疎み、“徒”と人間の垣根を越えて芸術について語らうために、“存在の力”を消耗せずにこの世に自らを留め置く宝具『カイナ』を作り、隠居した。 世話好きで人情に厚く、人間に対し好意的な“徒”としても知られる。 戦いに際しては、柄の長い大金槌型宝具『キングブリトン』を武器とする。かつては無数の敵を叩き潰したらしいが、元々戦いは得意でも好きでもなく、16世紀の時点で実戦から長く遠ざかっていた。 かつては[仮装舞踏会]と協力関係にあったが、「とある変人」が絡んだ騒ぎをきっかけに袂を分かち、その代償として移動要塞型宝具『星黎殿』を譲り渡した。自身はその後、『カイナ』を設置した移動城砦型宝具『天道宮』に隠居し、姿をくらます。 16世紀初期の『大戦』の折、親友であった人間の画家ドナートからの言伝を“螺旋の風琴”リャナンシーに伝えるべく、マティルダたちを乗せて『天道宮』ごとブロッケン要塞へ接近、その後『天道宮』に侵入してきたチェルノボーグによって殺害された。 なおマティルダたちが『天道宮』を借り受けに行った際、ガヴィダは『天道宮』と『星黎殿』を迂闊に近づけてはいけないという忠告とその理由を話した。それを聞いたヴィルヘルミナは数百年後、『星黎殿』に拉致されたシャナを奪還する為に、海中に没していた『天道宮』を浮上させて『星黎殿』内部と繋がる通路が修復する距離まで『星黎殿』に接近させ、修復した通路からカムシンやレベッカと共に『星黎殿』へと突入した。 第3期アニメではヴィルヘルミナの回想の中で登場した。 ケルト神話にゴヴニュの別名をもつ同名の鍛冶神が存在する。 “彩飄(さいひょう)”フィレス[Pheles] 声 - 井上麻里奈 女性の“紅世の王”。炎の色は琥珀色。I巻からその存在が示唆され、IX巻で初登場。『永遠の恋人』ヨーハンと二人で『約束の二人(エンゲージ・リンク)』と呼ばれる。これは自称であり、定着に百年ほどかかった。 外見は黄緑色の長髪の華奢な美女で、各所に布を巻き付けたツナギのような服を着ている。両肩の人または鳥の貌を象ったプロテクターと両手の無骨な手甲はいずれも強力な武器。 この世に渡り来た動機は不明だが、後に人間であるヨーハンと恋仲となり、彼と「ずっと一緒にいたい」という願いから、ヨーハンと共に宝具『零時迷子』を作り上げた。 ヴィルヘルミナ曰く、本来はデタラメで明るく楽しい女性らしいが、ヨーハンが傍にいないと途端に機嫌が悪くなる。基本的に自由奔放に生きているが、時にはフレイムヘイズと協力もし、幾人か友人もいる。また恋人ヨーハンには絶対の信頼を置いており、彼の言いつけならば自身の意に沿わない行為にも従う。 ヨーハンと『零時迷子』の能力により「顕現を維持するため人間を喰らう」という枷から解放され、そのためフレイムヘイズの掣肘を受けることもなく、気ままに放埓を尽くすとされる“徒”の中でも本当の意味で自由な、極めて特異な存在でもある。 風を操る技を得意とし、周囲に発生させた風に自身の気配を宿らせ相手を包み込む事で、相手の気配察知や“存在の力”の流れの見極めを妨害する自在法『インベルナ』や、人間同士の接触によって伝達を続け、その際の走査で目標物を探索し、目標物を探し当てると伝達経路上の“トーチ”から僅かずつ集めた“存在の力”で意志総体を複製した傀儡を形成し本体の到着まで状況を調査、調整する独自の自在法『風の転輪』を使う。優れた自在師であるヨーハンと協力することで、さらに戦闘力を増す。本編開始の2年前には、周囲に地を這う巨大な竜巻を作り出す風の自在法『カラブラン』を編み出していた。 中世、ゲオルギウスという大法螺吹きの修士を気に入り、共に行動していたが、ある出来事を契機にゲオルギウスを殺し、彼の息子ヨーハンを育てることになる(XI巻より)。やがて青年となったヨーハンと恋仲になり、二人で『零時迷子』を作り(XII巻より)、“ミステス”と化したヨーハンと共に真に気ままな生を謳歌するようになった。 1901年、ハワイ諸島で活動していた[革正団]“征遼の睟”サラカエル一派を壊滅させる(XV巻)と、その一員であった人間ハリエット・スミスが逝去するまで、彼女と共にハワイに潜伏する。このため『約束の二人』に関する風聞は途絶え、“徒”やフレイムヘイズたちには両者とも死亡したと思われていた。 『零時迷子』の能力は“徒”にとって基本的に「あれば便利、なくても困らない」程度であり、また『約束の二人』のどちらも共に強大な実力の持ち主であるため、“徒”からは狙われていなかった。またフィレスという“徒”も、ヨーハンに諭され「決して人間を喰らわない」と誓い、毎晩回復するヨーハンの“存在の力”のみで顕現を維持し続けたため、フレイムヘイズの討滅対象にもならなかった。 しかし、本編開始の二年ほど前から“壊刃”サブラクに狙われ始め、あるとき二人と間違えられ重傷を負った『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルを助けた(S巻『ヤーニング』)。その後、ヴィルヘルミナとも行動を共にするようになり、彼女の協力もあってサブラクの襲撃から逃れ続けたが、本編開始の少し前の襲撃で遂に敗れてしまう。瀕死の重傷を負ったヨーハンを助けるため、彼を『零時迷子』に封じ込め『戒禁』を施し無作為転移を行い、自らはサブラクとともに自在法『ミストラル』で転移して瀕死のヴィルヘルミナの逃走の時間を稼いだが、その為『零時迷子』に生じた異変を知る事ができなかった(IX巻、XII巻より)。その後は自らは一箇所に留まり続け、探査の自在法『風の転輪』を世界中に撒き、転移した『零時迷子』を捜索していた。 御崎高校の文化祭初日、『風の転輪』により『零時迷子』を発見し、御崎市へ急行する(XI巻)。同時に『風の転輪』で現場に分身を形成し、ヨーハン復活のために行動させるが、それが妨害された後もヨーハン復活のためにシャナたちを欺き、状況把握と情報収集を行った。そして『零時迷子』の異変を知ると、今まで異変を知ることが出来なかった後悔とヨーハンへの強い思慕から「自分とヨーハン以外の全て」を切り捨て、本体到着と同時にヨーハン復活を強行するが、代わりに現れた“銀”に胸を貫かれ、失敗に終わる(XII巻)。その後、一時的に悠二から変化したヨーハンに説得されてヨーハン復活を断念し、彼に頼まれた三つの仕事を果たすために御崎市を去った(XIII巻)。しかしヨーハンの頼み事は彼の消滅を前提としたものであり、その前提はフィレスにとって「絶対に受け入れられない」ものであった。そこで彼への愛から彼の指示に従いつつ、愛が「そこまでの奇跡」を起こせるのかどうかを試すべく(XX巻、XXI巻)、宝具『ヒラルダ』に自分を召喚する自在式を込め、去り際に「最も行く道の険しい愛」を抱く吉田一美へ授けた。 その後は一箇所(かつて“征遼の睟”サラカエル一派の基地だったと思われる場所)に留まり、ヨーハンからの一つ目の頼み事「巨大で複雑な銀色の自在式(描写された特徴からすると『大命詩篇』らしい)の改変」を行いつつ、二つ目の仕事「[百鬼夜行]への仕事の依頼」のため『風の転輪』で捜索を行なっていた。またハワイ諸島一帯に張っていた風の警戒網で『星黎殿』を感知すると、『風の転輪』で追跡、中国奥地で停泊した座標を独断でチューリヒ外界宿総本部に送り、フレイムヘイズ兵団(と切り捨てたはずの友人ヴィルヘルミナ)の作戦を助けた(XX巻)。 御崎市決戦の最中、吉田が起動した『ヒラルダ』により、悠二の前へ出現。ヨーハンを悠二から分離させ、吉田を攫ってヨーハンや[百鬼夜行]と共に逃亡する。その最中、ヨーハンの最後の頼み事として、改変した自在式で自分とヨーハンの存在そのものを素材として『両界の嗣子』ユストゥスを生み出し、ヨーハンと共に消滅した(XXII巻)。 第2期アニメから登場していたが、アニメでは『零時迷子』が無作為転移した時にヴィルヘルミナが所用で離れていて行動を共にしていなかったので、サブラクが『零時迷子』に自在式を打ち込むのを目撃していた。またフィレスの本体が到着した時には、ヨーハンの解放より先にシャナたちを嘲笑しこき下ろすなど、ヨーハンのために手段を選ばないだけでなく、他人を見下し貶すような性格になっていた。 ドイツの民間伝承にメフィストフェレスという似た名前の悪魔が登場する。 “壊刃(かいじん)”サブラク[Sabrac] 声 - 黒田崇矢 男性の“紅世の王”。炎の色は茜色。VII巻やIX巻にて存在が語られ、XIII巻で初登場。依頼を受け対象を抹殺する文字通りの「殺し屋」で、強大なフレイムヘイズをも葬り去ってきた強大極まる“王”。護衛や自在式の打ち込みなど、殺すことが目的ではなく手段である依頼を請け負うこともある。 マントを纏い、全身をくまなく厚手の革つなぎとプロテクターで覆い、長髪を立て、顔を長いマフラー状の布で隠した長身の男。 “徒”には珍しく明確な欲望も望みも持っておらず、この世に渡り来たのも、別の世界の存在を知って「行ってみるか」と気まぐれを起こしたため。殺し屋を行っているのも、たまたま自分の在り様がそれに向いていたというだけの理由であり、特別なこだわりはないらしい。また刃物収集家であり、気に入っている物以外は使い潰すことも躊躇わない嗜好品程度の物ではあるが、殺し屋としての依頼にも剣を報酬としている。戦闘時に使用する大きさも種類も異なる無数の剣は、全て彼のコレクションであり、“存在の力”で強化は加えているが宝具ではない普通の武器。 普段は思考も言動も全てが長口上。よくブツブツと喋っているが、大半は相手に語りかけているのではなく自分の思考を垂れ流しているだけである。かなりの不平屋であるものの、怒るという場面はそうそう無いらしい。 「戦技無双」を謳われるヴィルヘルミナですら四分半間違えば死に直結する程の非常に卓越した剣士。加えて、洪水とも津波とも思える圧倒的な量の(攻撃力としての)炎を自在に操るうえ、その炎に無数の剣を混ぜ操ることで攻撃力を向上させ、更にそれらの剣で傷付いた傷口を時と共に広げていく自在法『スティグマ』を使う。また攻撃が当たっていないと錯覚させるほどの異常な耐久力を持つ。 初撃に限定されるが、“徒”やフレイムヘイズにすら彼自身の存在と攻撃の予兆を全く感じさせず、複数個所に絶大な規模と威力の同時攻撃を行えるという特性を持つ。炎の濁流と無数の剣による攻撃を完全な不意打ちで放つが故、初撃で並の者ならば即死、強者であっても運任せで、生き残ったとしても『スティグマ』の効果で傷を深められ、放置すれば死に至る状況で戦わなければいけないという恐ろしく厄介な“王”。正面から戦闘を挑めば、『スティグマ』の効果とサブラクの圧倒的戦闘力によって倒されてしまうが、反面、広範囲に効果を及ぼす“王”には珍しく、知覚能力が人一人の分しか備わっていない。そのため、姿を現した後は初撃のような広範囲の一斉攻撃は行わず目の前の敵に対処するのみで、また出現地点から遠くへ逃げると追ってこないため、(困難だが)初撃をかわしその後のサブラクの攻撃から逃れる実力があれば、逃げることだけは容易く出来るという極端な特徴を持つ。 その正体は街の大部分を覆えるほどの桁外れに巨大な体と力を持ちながら、感覚域は司令塔となる人間サイズの分しかないという非常にアンバランスな体の“徒”。『実体を持った“紅世の徒”』としてのサブラクは、巨大な体のごく一部をそれらしい形にした「人形」に意思総体を宿したもの(オルゴンと同系統の手法)で、体の「人形でない部分」が周囲にある限り即座に「人形の身体」を作り直すことが可能。体の「人形でない部分」は通常、フレイムヘイズや“徒”に気配を察知させないほど薄めて付近の地域に広く浸透させており、その範囲内であれば必要に応じて、予め見当をつけた位置に一撃入れる(ため実は命中精度は低い)、戦いの最中に人間を喰らうなど簡易な行動も可能。まともに倒そうとすればサブラクが浸透している範囲全てを凄まじい破壊力によって破壊し尽くさなければならないが、「人形」にはサブラクの全体を統御する意思総体が宿っているため、「人形」を「人形でない部分」から切り離せば、体全体を無力化することができる。その戦闘スタイルゆえに、戦争などの所を定めない広域・大規模な戦闘は不向き。広範囲に不意打ちの初撃を叩き込むのは、体の浸透する範囲の大体どの辺りに敵がいるのか、見当をつけるための行動である。 非常に強大な力を持ちながら、正体を隠した上で不意打ちを放ってから闘う戦法を取るのは、「陰にこもる」というサブラクの“徒”としての本質の現れ。“戯睡郷”メアには、その特性が「刃という攻撃力」を「鞘に収めて隠す」剣という道具にそっくりと評された。 本編開始の2年ほど前に[仮装舞踏会]参謀“逆理の裁者”ベルペオルから依頼を受け、『約束の二人』を襲撃し始める。その幾度目かに誤って『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルを攻撃し襲撃に失敗(SII巻『ヤーニング』)、その八つ当たりも兼ねた気まぐれから“戯睡郷”メアを助け(外伝『ジャグル』)、以後、共に旅するようになる。それからも機会があるごとに『約束の二人』とヴィルヘルミナを襲撃しつづけ、本編開始直前に『零時迷子』に『大命詩篇』の一篇を打ち込み、依頼を達成した(XII巻より)。 その後は一時期、“探耽求究”ダンタリオンに雇われていたが、秘蔵の剣である宝具『ヒュストリクス』を「イカレたからくり」(教授の付けた正式名称は『浪漫の結晶ドォ――リル付き西洋風の両手剣』)に改造され激怒し、袂を分かった。教授の方も自身の発明を「イカレたからくり」と言われたことで激怒し、お互いに相手を嫌い合うようになった。 ベルペオルに依頼達成を報告した後、その一端である『零時迷子』の“ミステス”の情報を気まぐれでメアに聞かせ、彼女に『零時迷子』に挑む決意をさせてしまう。サブラク自身は、弱小の“徒”であるメアが強者のシャナに挑む無謀を諭したが、彼女の決意は変えられず、再会を約束して彼女の粗末な短剣を預かった。その後、待ち合わせ場所である日本を訪れ、約束の日の最後までひたすら待ち続けたが、既に討滅されたメアが現れることはなかった(XIII巻より)。 メアの死を知った後、ベルペオルから『零時迷子』に関する二度目の依頼を聞かされると、標的にシャナたちが含まれていたため、自分の聞かせた情報でメアを死なせてしまった事に対する自分なりのけじめと、それに伴うメアへの弔いのために依頼を承諾(XIII巻)、クリスマス・イヴに御崎市に現れる。“ミステス”坂井悠二に最後の『大命詩篇』を打ち込むと同時に『非常手段(ゴルディアン・ノット)』を仕込み、依頼は達成したが、そのまま御崎市に滞在中の三人のフレイムヘイズとの交戦を開始。ヴィルヘルミナが『スティグマ』破りの自在法を完成させたこと、不死身とも思える耐久力と能力の正体・対処法を悠二に見破られたこと、これまで一度も追い詰められた経験がなかったために油断して敵を侮っていたことなどが重なり、悠二とフレイムヘイズらの連携によって敗北。討滅される直前に、囮兼不意打ちの手段としていたビフロンスが持っていた宝具『非常手段』に込められていた転移の自在法で辛うじてその場を逃れた(XIV巻)。 以降はベルペオルに雇われる形で[仮装舞踏会]の本拠地『星黎殿』に留まり、『大命』の第二段階への移行に伴って“祭礼の蛇”坂井悠二らと共に『久遠の陥穽』へと護衛役として同行する。盟主一行から離れて万が一現れる追手への待ち伏せを行い、『詣道』の途中に一人留まる。そして『詣道』に現れたヴィルヘルミナ、レベッカ、カムシンの三人と交戦に入るが、『スティグマ』を解呪不能の一点にのみ絞って強化した自在法『スティグマータ』(自動で傷が広がらず、傷から伸びる自在式をサブラクが攻撃することで広がる)と、御崎市で露見した弱点すら利用した罠と戦闘スタイルで終始三人を圧倒し続け、勝利するのは時間の問題となっていた。しかし、復活し『詣道』を遡って現れた“祭礼の蛇”神体を目の当たりにし、自分が敵し得る領域を遥かに超えた圧倒的な存在の大きさを前にした「どうしようもない感覚」の一端を生まれて初めて得て、その感覚を完全に掴むことに心からの興味と欲望を感じる。その結果、フレイムヘイズの総攻撃と『詣道』の崩壊による自身の命の危機をも無視してその感覚に浸ることを優先し、ベルペオルの助けをも断ち切って、自ら両界の狭間に飲まれて消滅した(XIX巻)。 “戯睡郷”メアと別れて以降、彼女のことを非常に気にかけているが、なぜメアのことが気に掛かるのか自身にも分からず、旅の代償として受け取りメアの形見となった粗末な短剣を大事に持ち、彼女への想いについてずっと考えていた。サブラクが“祭礼の蛇”神体を見たことで受けた甚大な衝撃を実感することに命も顧みない深い欲望を感じたのは、その「圧倒的な存在」に対する何を以ても埋めがたい畏れを感じた事で、メアがサブラクに抱いていた気持ちと感覚を感じ理解する事ができたためであり、彼女と同じ感覚を知ったことで自身のメアへの想いにも気付き、最期は彼女を「愛しい蝶」と言い表して消えて行った。 第2期アニメから登場していたが、登場する時期が原作より早かった。サブラクがベルペオルからの2度目の依頼を受ける場面や、戦闘後何故生きているかなどの場面が無くなっていた。 ソロモン72柱の1柱にサブナックという似た名前の悪魔が登場する。 “皁彦士(そうげんし)”オオナムチ[Oonamuchi] 男性の“紅世の王”。炎の色は弁柄。外伝『ヴァージャー』に登場。古代より長きに渡って世界中を荒らし、幾人もの強力なフレイムヘイズを倒してきた強大な“王”。カムシンには「黒金の大百足」と形容されていた。 巨大な百足の姿をしている。 動機は不明だが、この世と“紅世”の行き来が容易であった時代にこの世に渡り来ていた模様。 自らの巨体の有利不利を知り尽くし、小細工は使わず、自らの身体を武器にした直接攻撃と、全身の至るところから放たれる強力な炎を併せて戦う。また、普通の百足と同程度の大きさの百足型の“燐子”を無数使役しており、まともな知性や戦闘力も持たない代わりに微弱すぎて気配の察知が困難なそれらを見張りとして配置・利用し、また森から動けない自身の代わりに“存在の力”を刈り取らせている。 “祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐された『大縛鎖』創造の儀式にイルヤンカと共に列席しており、“祭礼の蛇”の放逐後はカムシン達と戦った模様。 かつて古代日本のとある山を住処としており、フレイムヘイズに敗北し追われて以降、世界を流浪していた。後に最初の宿敵であったフレイムヘイズ『理法の裁ち手』ヤマベとの幾度かの交戦を経て、ついにこれを討ち果たすが、不可思議な虚脱に陥る。しかし、それまで軽くあしらってきた『戈伏の衝き手』クレメンス・ロットと『荊扉の編み手』セシリア・ロドリーゴとの4度目の交戦で、2人が予想外に腕を上げていたことで、2人を新たな好敵手として認めて生き甲斐を取り戻す。クレメンスの発言からヤマベとはライバル関係にあった。 『ヴァージャー』の1年前、クレメンスを倒した際、彼がフレイムヘイズとして契約した頃にオーストリアの森の村に残した遺品をセシリアに見せないよう探して壊すことを頼まれるが、なぜか探しはしたものの壊さずにおり、遺品を探そうとやって来るセシリアを阻むために森に陣取っていた。以来、セシリアの救護要請を受けて外界宿から4度に渡って派遣された討ち手ら五人(内、四度目の二人は腕利きの討ち手であった)を屠ってきた。そして、ピエトロ・モンテベルディからオオナムチ討滅の依頼を受けた『贄殿遮那』のフレイムヘイズ(=シャナ)と激突し、シャナを足止めに利用して遺品が入っている木箱を取ろうとしたセシリアに対して、自分でも理由がわからぬまま逆上して殺害する。そしてセシリアが死んでも消えずに在り続けていた遺品を見て、それがセシリアだけにではなく、彼らと自分が長く共に在り、結び合わされた証であることに気付き、同時に箱を壊さなかった理由と逆上した理由を悟る。その証を守るために再びシャナと激突し、討滅された。 日本神話に、大国主神(オオクニヌシノカミ)の別名をもつ、大穴牟遅神(オオナムチノカミ)という同名の神が登場する。
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