風 風の利用と制御

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/15 02:27 UTC 版)

風の利用と制御

風車。伝統的なオランダの風車は有名。
風力発電
風をとらえて進むヨット

生活

住居へ吹きこむ風を和らげる工夫として、生垣石垣などがある。風の強い海岸地域や農村地域などでは、屋敷林防風林を設けて風を防ぐこともある[39]。また、冷たい強風ボーラが吹きつけるイタリアトリエステでは、外での強風対策として手すりロープが多数設けられている。

一方、気温が高い場合には、風をうまく利用して高温による悪影響を軽減する。人工的に風を発生させて体温を下げる扇風機団扇扇子などが代表的なものである。エアコンなどの空気調和設備では、気温湿度だけではなく風(気流)の制御も重要である。室内に風を取り込み空気の流れを作って効率よく換気することで、よどんだ空気や病原菌などのリスクを下げることができる[40]

動力

風車は風のエネルギーを羽根で受けて歯車機械的な回転へと変換するものであり、揚水や、小麦粉などの製粉に用いられてきた。この原理は古くから知られており、950年頃にイランの東部において製粉用の垂直軸の風車が登場した[41]。一方、おそらくこれとは独自に、1150年頃にはヨーロッパにおいても水平軸の風車が現れた[42]。この風車はオランダへと伝わって1407年頃に低湿地の排水に用いられるようになり[43]、その後改良が進められてポルダー干拓に威力を発揮した[44]蒸気機関の登場とともに風の動力利用は減少していったものの[45]エネルギーの使用量が増えてきた現代では、風力原動機を用いて風力を利用する動きが活発化している。風力発電は出力が小さく大規模発電に向かないことや、定常的な利用が難しいなどの欠点があるものの再生可能エネルギーの1つとして挙げられており、主に地球温暖化防止の観点から利用が進められている[46]

交通

海上においては、風は何よりもまず移動手段に使用された。が風を受けて進む帆船ははるかな古代から海上交通の主役であり、すでにメソポタミア文明インダス文明の間において帆船による海上交易は行われていた[47]。一方、オセアニアにおいては紀元前13世紀ごろからポリネシア人が帆船外洋航海によって島々の植民を進め、6世紀頃にはポリネシア東端のイースター島にまで植民している[48]。ヨーロッパにおいても帆船の改良が進み、15世紀に入ると遠洋航海に適したキャラック船が開発されて[49]、同時期の航海術の発展とともに15世紀末からの大航海時代へとつながっていった。その後も帆船は発展をつづけ、19世紀に入り蒸気船が出現してもしばらくの間は蒸気船をしのぐ性能を誇り、1860年代にはクリッパー(快速帆船)によって帆船の発展は頂点に達した[50]。その後は蒸気船の性能向上によって帆船は姿を消していったが、現在では純帆船はほとんど使用されていないものの、ヨットなどの小型・スポーツ用船舶においては今なお使用されている。

風を利用したスポーツ

風を使って人はスポーツをしたり、遊んだりする。あまり一般的ではないが風を利用したスポーツを「ウインドスポーツ(windsport)」という。ウインドスポーツには、セーリングヨット)、ウィンドサーフィンカイトサーフィンハンググライダーパラグライダースポーツカイト(凧上げ)、ランドセーリングアイスヨット(ice yachting)、スノーカイト、カイトバギー(kite buggy)、パラセーリング(parasailing)、気球熱気球)などがある。ウインドスポーツは空を飛ぶもの(気球、パラグライダー、ハンググライダー、凧など)と海の上を進むもの(ヨット、ウィンドサーフィンなど)が多い。こうしたウインドスポーツの器具は自前の推進力を持たず、風を利用することではじめて行うことができる。熱気球は下からバーナーで空気を熱することによって浮揚することはできるが、推進力を持たないために上昇と降下しかできず、そのため高度を調節して風を捕まえることではじめて水平方向に移動することができる[51]

ウインドスポーツに含めることは少ないが、軽飛行機も風を利用した部分がある。超軽量動力機など軽量のものはなおさらである。

それ以外のスポーツにおいても、風は当然影響を与える。特に球技や投擲種目は風の影響を受けやすい。特に卓球バドミントンは風の影響が大きすぎるため、屋内で行われる。それ以外の種目では、風にどう対処するかも技術のうちである。また、前半と後半でコートチェンジを行うのも、それに対しての公平性を求めての対処の意味が含まれる。陸上競技のうち短距離や跳躍競技においては、追い風が秒速2.0mを超える場合の記録は追い風参考として別に扱われる[52]


  1. ^ 出典:広辞苑
  2. ^ a b c d 「百万人の天気教室 5訂版」p13 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  3. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p54-56 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  4. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p53 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  5. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p21-22 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  6. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p15 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  7. ^ 「エネルギー資源の世界史 利用の起源から技術の進歩と人口・経済の拡大」p411-412 松島潤編著 一色出版 2019年4月20日初版第1刷
  8. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p19-20 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  9. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p17-19 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  10. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p17 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  11. ^ 「エネルギー資源の世界史 利用の起源から技術の進歩と人口・経済の拡大」p412 松島潤編著 一色出版 2019年4月20日初版第1刷
  12. ^ 「エネルギー資源の世界史 利用の起源から技術の進歩と人口・経済の拡大」p414 松島潤編著 一色出版 2019年4月20日初版第1刷
  13. ^ 白木正規『百万人の天気教室 5訂版』成山堂書店、平成10年5月8日5訂版発行、53-54頁。
  14. ^ 地形等の影響とは、風の中に物体があるとカルマン渦という乱流が生じるが、不特定多数の障害物によって複雑な乱流が生じて、突発的に風速が増すことである。
  15. ^ 「海の気象がよくわかる本」p100-101 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  16. ^ 「気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から」p225-227 水野一晴 NHK出版 2016年8月25日第1刷
  17. ^ 「図解 異常気象のしくみと自然災害対策術」p12 ゲリー・マッコール著 内藤典子訳 原書房 2019年7月31日第1刷
  18. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p80-82 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  19. ^ 「海の気象がよくわかる本」p152-153 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  20. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p77-78 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  21. ^ 「世界地理12 両極・海洋」p50 福井英一郎編 朝倉書店 昭和58年9月10日
  22. ^ 「海の気象がよくわかる本」p134-135 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  23. ^ 「世界地理12 両極・海洋」p267 福井英一郎編 朝倉書店 昭和58年9月10日
  24. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p106-107 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  25. ^ 「海の気象がよくわかる本」p120-121 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  26. ^ 「海の気象がよくわかる本」p128-129 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  27. ^ 「海の気象がよくわかる本」p130-131 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  28. ^ 「海の気象がよくわかる本」p140-141 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  29. ^ 「百万人の天気教室 5訂版」p121 白木正規 成山堂書店 平成10年5月8日5訂版発行
  30. ^ 「海の気象がよくわかる本」p124 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  31. ^ 「海の気象がよくわかる本」p126-127 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
  32. ^ 「樹木学」p117 ピーター・トーマス 築地書館 2001年7月30日初版発行
  33. ^ これからの時期は特に注意!風と寒さの関係”. ウェザーニューズ (2016年11月9日). 2017年9月13日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2017年9月13日閲覧。
  34. ^ 「基礎地球科学 第2版」p126 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
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  36. ^ 「基礎地球科学 第2版」p128 西村祐二郞編著 朝倉書店 2010年11月30日第2版第1刷
  37. ^ 「キリマンジャロの雪が消えていく―アフリカ環境報告」p158 石弘之(岩波新書、2009)
  38. ^ 「海の気象がよくわかる本」p204-205 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷
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  40. ^ https://www.ykkap.co.jp/info/ventilation/ 「窓がポイント! 住まいのじょうずな換気方法」YKKAP 2020年8月11日閲覧
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  43. ^ 『図説 オランダの歴史』p12 佐藤弘幸 河出書房新社、2012年4月30日初版発行
  44. ^ 『図説 オランダの歴史』p12-15 佐藤弘幸 河出書房新社、2012年4月30日初版発行
  45. ^ 「エネルギー資源の世界史 利用の起源から技術の進歩と人口・経済の拡大」p420 松島潤編著 一色出版 2019年4月20日初版第1刷
  46. ^ 「トコトンやさしいエネルギーの本 第2版」(今日からモノ知りシリーズ)p78 山﨑耕造 日刊工業新聞社 2016年4月25日第2版第1刷
  47. ^ 「海を渡った人類の遙かな歴史 古代海洋民の航海」p222 ブライアン・フェイガン著 東郷えりか訳 河出文庫 2018年2月20日初版
  48. ^ 「南太平洋を知るための58章 メラネシア ポリネシア」p52-54 吉岡政徳・石森大知編著 明石書店 2010年9月25日初版第1刷
  49. ^ 「大帆船時代 快速帆船クリッパー物語」p203 杉浦昭典 中公新書 昭和54年6月25日発行
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  57. ^ 「海の気象がよくわかる本」p192-193 森朗 枻出版社 2012年3月30日第一版第一刷


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