ハドレー‐じゅんかん〔‐ジユンクワン〕【ハドレー循環】
ハドレー循環
ハドレー循環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/23 10:14 UTC 版)

ハドレー循環(ハドレーじゅんかん、英語: Hadley circulation, Hadley cell)とは、赤道付近で上昇した空気が南北に分かれ、緯度30度付近で下降し低空の赤道付近に戻る循環のこと。[1][2][3]。
概要
1735年にジョージ・ハドレー(George Hadley)は偏西風と貿易風の原因として、赤道付近で暖められた空気は密度が低くなって上昇し、上空を両極に向かって移動し、冷却され密度が高くなって下降し、地表付近を通って赤道に戻るという循環を提案した[1][4][5]。地球自転による地表の移動速度の影響により、赤道から極へ向かう空気は地表から見ると西風(偏西風)となり、極から赤道へ向かう空気は東風(貿易風)となる。
実際の空気の流れを観測してみると、赤道付近で空気は確かに上昇しているが、この空気は緯度30度付近で下降してしまう[1]。ただし、その循環の機構はハドレーの提案したものと合致している。現在では、赤道周辺を起点とし低緯度地域を廻る循環のみがハドレー循環と呼ばれている。
ハドレー循環では、
- 上空では、低緯度→中緯度方向に地球自転速度を加味した向きに流れる。
- 地表近くでは上空とは逆(中緯度→低緯度、地球自転に抗う向きに偏る)に流れる。貿易風と呼ばれ北半球では概ね北東の風、南半球では概ね南東の風である。
- 赤道付近には常に強い上昇気流が存在し、これは地表近くでみると低圧部(低気圧)であり雨が多い。
- 緯度30度付近で下降する。これは亜熱帯高圧帯と呼ばれ、熱帯を取り巻く低–中緯度地域の乾燥気候の主要原因となる。
ハドレー循環と同様の機構により、やや弱いながらも緯度60度付近で上昇して極周辺で下降する循環が存在する。これを極循環という[1]。
脚注
- ^ a b c d 大気大循環とジェット気流,羽田空港 WEATHER TOPICS,東京航空地方気象台,2013年9月
- ^ 水野一晴『気候変動で読む地球史 限界地帯の自然と植生から』NHK出版、2016年、195頁。ISBN 978-4-14-091240-9。
- ^ 小倉義光『一般気象学』(第2版補訂版)、2016年3月、171頁。 ISBN 978-4-13-062725-2。
- ^ 廣田 勇 (2011年5月). “風のいろいろ”. 日本気象学会機関紙『天気』 (日本気象学会) 58 (5): 55–59 .
- ^ 小倉義光『一般気象学』(第2版補訂版)、2016年3月、168-169頁。 ISBN 978-4-13-062725-2。
参考文献
- 田中博『地球大気の科学』共立出版〈現代地球科学入門シリーズ〉、2017年。 ISBN 978-4-320-04711-2。
関連項目
ハドレー循環
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 05:57 UTC 版)
詳細は「ハドレー循環」を参照 18世紀にイギリスの気象学者ジョージ・ハドレーがその理論を提唱したことからこの名が付いた。太陽熱で暖められた空気は上昇するのだが、赤道付近には地球上で最も多くの太陽熱が供給されるため、「熱帯収束帯」または「赤道低圧帯」と呼ばれる恒常的な低気圧帯が発生する。熱帯収束帯では巨大な積乱雲の群れが収束線に沿って連なっており、気象衛星画像などでその姿を見る事が出来る。 熱帯収束帯で上昇した空気は圏界面(対流圏界面)に達したあと水平に広がり、中緯度地域の上空へ流れ込む。ここで次第に冷やされた空気は下降し、中緯度(北緯・南緯30度付近)で「亜熱帯高圧帯」または「中緯度高圧帯」と呼ばれる高気圧帯となる。亜熱帯高圧帯から吹き出す風は貿易風として熱帯収束帯に向かって吹き込む。こうして、上空では赤道から中緯度へ、地上付近では中緯度から赤道へ向かう、1つの閉じた循環ができる。これを「ハドレー循環」という。 地球表面を長い距離移動する風は自転の影響(コリオリの力)を受けて、高緯度から低緯度へ向かう風は西向きに曲げられるため、貿易風は北半球では北東貿易風、南半球では南東貿易風となる。 ただし、地軸(赤道傾斜角)の傾きにより季節によって太陽が天頂へ来る地域(太陽熱を多く受ける地域)は変わるため、熱帯収束帯は季節によって南北へ移動する。このことから、厳密には熱帯収束帯が位置するのは「赤道」ではなく「熱赤道」となる。 ハドレー循環は、熱帯収束帯で上昇した空気が中緯度高圧帯へ移動する事で熱をより高い緯度へ運ぶため、「直接循環」と呼ばれている。
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