しん‐しょく【侵食/侵×蝕】
しん‐しょく【浸食/浸×蝕】
浸透・侵食 (しんとう・しんしょく)
侵食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/11/27 14:46 UTC 版)
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侵食(しんしょく、侵蝕ともerosion)は、水や風などの外的営力により岩石や地層が削られること。浸食(浸蝕)と表記する場合もあるが、水に「浸る」とは限らないため、学術的には侵食の表記を用いる[2]。
水の場合は雨水およびそれが流れたものから河川の流れ、海や湖の波、氷河などが原因(scoring)。水流そのものによって物理的侵食をする場合を「洗掘」、長時間にわたって堅い岩盤などが摩耗されることを「磨食」と区別することもある。
風の場合は風そのもののほか、風で飛ばされてくる砂粒によって削られる(サンドブラスト状態)ことも多い。これは風食(deflation)と呼ばれることもある。また、貝類やウニなどによって石灰岩などが侵食されることを生物侵食(bioerosion)という。
河川プロセスにおける侵食
河川の物理的侵食作用
- 下刻作用(下方侵食)
- 河床を掘り下げる作用。下刻がおこると、河床が低下し下流側の勾配が小さくなり、流れの運搬・侵食力が低下する[3]。
- 側刻作用(側方侵食)
- 横に向かって河岸を削り、川幅を広げる作用。河床勾配の変化はおこさず、荷重の供給量を増加させ、侵食余力(運搬力の余剰分)を少なくする[3][注釈 1]。
- 谷頭侵食(頭方侵食・頭部侵食・後退侵食)
- 河谷の最上流部において[5]、地中のパイプの天井崩落やパイプ流出口の侵食などにより河道を上流側へと伸ばす作用。侵食は斜面の基部付近で地中流が噴出した地点や、地中のパイプが地表に露出した地点で発生しやすい。湿潤地域の河道は、こうした地下水や側方浸透流からの湧水出口のサッピング(地下水流による侵食)によって形成される。[6]。
河床の形態別による侵食作用
河床が岩盤からなる河川を岩床河川(岩盤河川とも)、堆積作用による沖積層からなる河川を沖積河川というが、河川の侵食は、これら河床の形態によって大きく異なる[7]。
(1)岩床河川の侵食
- 溶食
- 河床の岩盤に河川水が接触して、岩盤中の岩石・鉱物が溶解されること。特に石灰岩のような炭酸塩岩で顕著であり、炭酸が岩石を溶解し、溶流として運搬する[7]。
- 磨耗(削磨・磨食とも)
- 河川水が岩盤を研磨したり削り取ったりすること。流水中を運搬される砂礫が、河床に衝突したり引きずられたりすることで生じるのが一般的であり、河床を削り込むことにもっとも強く関与する。磨耗速度は、岩盤の強度や運搬される砂礫の特性・砂礫の運動エネルギーなどが関与する。大量の砂礫を運搬する洪水時に磨耗が大きくなりやすい[7]が、岩屑量が河川の運搬能力以上に多いと、むしろ岩盤が覆い隠され侵食は生じない[5]。
- 磨滅
- 砂礫が河床の衝突で削れたり磨かれること。あるいは、砂礫どうしの衝突や摩擦で細粒になったり円磨されたりする作用。岩床河川の甌穴はこの作用によるものである[7]。
- プラッキング
- 岩盤の割れ目から剥離される現象で、岩盤に層理面や節理面などの割れ目が多いと起こりやすい[5]。
- キャビテーション(空洞現象)
- 高速な流水下の局所的な圧力低下とその復元により岩盤が破壊される現象。ダムの放水口や滝など、流速が特に大きい場所に限って生じる[5]。ただし、室内実験による検証では、岩盤河床における影響はほとんどないとの報告もある[8]。
(2)沖積河川の侵食
沖積河川のある区間での侵食・堆積は、区間に流入する土砂と流出する土砂のバランス(土砂収支)できまる[8]。
- デグラデーション(減傾斜作用)
- 土砂の流出量が流入量を上回り、河床が侵食されて低下すること。例えば、ダム建設によりダムに土砂が堆積する一方、下流側では河床が侵食される例が挙げられる。逆に流入量が上回り河床が上昇することは、アグラデーション(増傾斜作用)と呼ばれ、上流部の侵食やマスムーブメント、採鉱など人為的活動などが要因となる[8]。
- 洗掘
- 洪水時に河床が大きく侵食されること。逆に、河床に堆積して凹地が埋められることを埋積という[8]。
侵食によってできた地形の例
- グランドキャニオン(アメリカ合衆国)
- 地殻変動により隆起した地層がコロラド川によって削られ、平坦な高原に断崖が切り込む現在の地形となっている。
- カッパドキア(トルコ)
- 凝灰岩が雨によって侵食され、残った部分が円錐形 - キノコ型の奇岩群となっている。
- 桂林(中華人民共和国)
- 石灰岩が雨水によって化学的に溶解し(侵食の一種で溶食という)、大規模なカルスト地形となっている。
脚注
注釈
出典
- ^ Willenbring, Jane K.; Codilean, Alexandru T.; McElroy, Brandon (2013). “Earth is (mostly) flat: Apportionment of the flux of continental sediment over millennial time scales”. Geology 41 (3): 343–346. Bibcode: 2013Geo....41..343W. doi:10.1130/G33918.1 .
- ^ 文部省 『学術用語集 地学編』 日本学術振興会、1984年、ISBN 4-8181-8401-2(J-GLOBAL 科学技術総合リンクセンター)。
- ^ a b 松倉 2021, p. 178.
- ^ 松倉 2021, pp. 178–179.
- ^ a b c d 小池ほか 2017, p. 260.
- ^ 松倉 2021, pp. 177–178.
- ^ a b c d 松倉 2021, p. 165.
- ^ a b c d 松倉 2021, p. 167.
関連項目
参考文献
- 小池一之・山下脩二・岩田修二・漆原和子・小泉武栄・田瀬則雄・松倉公憲・松本淳・山川修治 編『自然地理学事典』朝倉書店、2017年。ISBN 978-4-254-16353-7。
- 松倉公憲『地形学』朝倉書店、2021年。ISBN 978-4-254-16077-2。
侵食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/16 06:20 UTC 版)
表面流出は地球表面の侵食の原因の1つである。農作物生産性の減退は侵食が生じるが、土壌保全の分野で学ばれている。4つの典型的な侵食があり、雨滴侵食・ガリー侵食・表層侵食(面状侵食)・河底浸食である。雨滴侵食は、土壌表層に繋がる雨滴の力学的衝突の結果であり、土の粒子が表面流出の容体の中を漂う。ガリー侵食は、土壌中を帯状に削るほど強い流れのときに発生するが、1cmの溝であることもあれば、数mの川であることもある。表層侵食は、はっきりとした溝を持たない流路で、地表で運搬をする。2つのタイプの流路とも相当量の堆積物とその他の水質汚染物質を運ぶ。ガリー侵食の場合、かなりの量の物質が、一時的な増水で運ばれる。河底浸食は、河やクリークの早い流れにおける、川岸や河底の磨耗である。 流路で運ばれる土の粒子はさまざまなサイズを持ち、直径0.01–1.0mmである。より大きな粒子は少ない輸送距離で沈殿、堆積するが、微粒子は水中を漂って長距離を動くことができる。こういう理由で、濁度を生み出し光透過率を減じるのは微粒子のシルト質土であり、水の生態系を混乱させる状況である。 世界規模の現代の侵食土壌喪失の主要の原因は、熱帯雨林の焼畑農業から生じる。大地表面の全体が植生で剥ぎ取られ、有機体が全て焼き払われたならば、土の表面は、風化と水の浸食に傷つきやすい。地球の数多くの国で、全ての地域で生産性がなくなっている。国の陸地の10パーセント程度を構成するマダガスカル高地の中央部では、実質的には陸地全体が植生に対して不毛で、そこにはおおよそ奥行き50m、幅100kmを超えるガリー侵食溝帯がある。世界のある地域には、移動農耕が焼畑農業と組み合わせて営農組織となっている。侵食は、肥沃な表土を損失し、沃土を減退させ、農業生産性の質をも後退させる。
※この「侵食」の解説は、「表面流出」の解説の一部です。
「侵食」を含む「表面流出」の記事については、「表面流出」の概要を参照ください。
侵食
「侵食」の例文・使い方・用例・文例
- 海が海岸を侵食した
- 調査により、川の下方侵食が起きていることが明らかになった。
- その理由によって、その地層は侵食の影響を受けなかった。
- 錆が金属の部分を少しずつ侵食している。
- 都市化が田園生活をどんどん侵食しています。
- 乱伐は(土壌)侵食をもたらす.
- その王は隣国を侵食しようとしてしきりにその機をうかがっていた.
- 雨はテラスを侵食した
- 侵食が山の尾根を切り詰めた
- 海岸線における波の侵食作用
- 土地の隆起によって、(流れまたは川)が侵食することを引き起こす
- 侵食する
- (特に岩について)水の動作によって滑らかに侵食される
- 蒸発と土壌侵食を減らすために広げられる腐りかけの植物質の保護カバー
- 風の力を弱め侵食を防ぐ生垣あるいは立木の柵
- 侵食から色彩豊かな頂上と尖塔をもつサウスダコタの国定公園
- ユタ州の国立公園で、多色の岩盤侵食がある
- 川岸や海岸が水流や波浪によって侵食されないように,コンクリートや石で保護すること
- 岸やに,波による侵食を防ぐためにつくられる施設
- 先行谷という,河川が元の流路を維持するために下刻侵食をくり返すことにより形成された地形
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