こうぐ‐し〔カウグ‐〕【香具師】
や‐し【香=具=師/野師/野士/弥四】
香具師
- 香具師-詐欺的商行為者。〔第二類 人物風俗〕
- 手品、蛇遣ひ、独楽廻し、居合抜など、路上にて往来の人に見世物とするを業とする者の総称。
- 縁日又は夜店に出て、いかものを売つて不当の利益を貧る業をいふ。
- 野師、露店人等にて商ふ人。
- 縁日又は夜店に出ていかものを売つて居る者のことをいふ。
- 香具師と書く。「てきや」とも云ふ。詐欺的手段を以て有効無効の商品等を売るもの、或は産地、製造会社等を詐り、マヤカシ物を売る者。昔野武士等が飢渇を凌ぐために起りしものならん。
- 昔は香具を行商したに始まる。縁日や夜店で、インチキ品物を売り、不当の利を貪ることを渡世としてゐる者。香具の行商が本業であつたが、本業そつちのけに、戦国の頃から密偵、軍の案内役を勤めたので武士に対して野士と謂はれ、やがて香具師をヤシと読むやうになつたのである一説には山師のマを略してヤシといふのであるといつてゐる。
- 路傍などで品物の呼売をしたり、見世物を興行したりする者のこと。「野師」とも書く。
- 香具師、的屋。矢師または野師(野武士)ともいい源頼朝の頃から始り、隠密をつとめながら薬等を売り歩いた、歩き医者の徒であつたが、後には居合ぬき、こま廻わし等遊芸類似のことを行い、人を集めて品物を売る露店業者の一つとなつた。香具師とは香具類を商売のネタにしていたところより。〔香〕
- 香具師と書く。「てきや」ともいう。詐欺的手段をもって有効無効の商品をうるものをいう。香具師については別項において述べたところ(※「てきや」)を参照のこと。
香具師
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/05 05:13 UTC 版)
概要
古くは、
これらの仕切り、管理は一般に賤民(人別帳に記載のない人物、無宿人)、いわゆるヤクザの仕事であり、時代劇や講談などで「香具師の元締」といえばヤクザの親分とほぼ同義である[要出典]。
歴史
- 1690年(元禄3年)の発行の『
人倫訓蒙図彙 ()』では江戸、大阪、京都の城下町や港町において、丸薬や鬢付け油売りや傀儡廻しや物真似芸や蛇見せ芸などを披露する大道芸人の様子が記載されている[4]。 - 1735年(享保20年)に、「十三香具師」という名で初めて「香具師」という職業名が使われた文書『古事類苑』の産業の部『香具師一件』が残っている。この十三は「丸、散、丹、円、膏、香、湯、油、子、煎、薬、艾、之古実」などの薬や香や実などを十三香具としている。またその販売方法の分類も文献によりその内容は、異同があるが、『香具師一件』に記述されているものは、「諸国名産の薬の仲卸」、「薬の製造と販売と、口蓋、口腔、歯科治療」、「お笑い芸にて、客寄せする薬売り」、「お笑い芸の見世物」、「居合抜刀芸」、「独楽廻し」、「軽業」、「曲鞠」、「按摩治療と膏薬売りの辻医師」、「その他の諸たる見世物」、「日限売薬」、「施シ治療薬」、「
艾 ()、火口売り」、「往来触売薬」、「歯磨売り」、「紅白粉売」、「小間物売り」、「薬飴売り」、「薬り菓子売り」、「その他、市場、盛り場での往還商人」[注 1]などとなっている。 - 1800年代中盤に江戸・大阪の風俗を記した『守貞謾稿』は、口上やちょっとした芸で人を集め、薬などを路上で売る職業として「矢師」を紹介している[5]。元は野武士などが貧窮から売薬をしたのが始めとし、「歯抜き」の有名どころとして大阪の松井喜三郎、江戸の長井兵助玄水を挙げ、抜刀や居合、独楽などを見せて人を集め、歯磨き粉や歯の薬を売るほか、歯の治療や入れ歯なども扱ったと記している[5]。そのほか、能弁によって有能・無能の薬を売ったり、辺土遠国からの名産と称してさまざまな物を売るなどし、香具師には十三種あるというがそれ以上あるとしている[5]。
語源
「やし」の由来については諸説ある。
-
薬師 () - という江戸時代の薬の物売り[6]と同じように、香具師という薬を売っていたものが合わさったという説。鎌倉時代以前には藥師も医師も「くすし」と呼称されていた[7]。 - 弥四 - 薬の行商を始めた者の名が「弥四郎」とされ、そこから「
弥四 ()」とされたとする説。 - 野士 - 身を窶した武士が飢えをしのぐために薬を売っていたことから、野武士の「武」が略され「
野士 ()」になったとする説。- 野師 - 上記の「野士」の扱う商品に香具が多かったために、「香具師」に「やし」の読みが当てられたとする説。ゆえに、元は「野士」と「香具師」という別々の語であった。
- 「
山師 ()」を略したとする説。
インターネットスラング
- やつ、やし - 「2ちゃんねる」(現・5ちゃんねる)などに見られる一部の電子掲示板で、奴(ヤツ)の代わりに使われているインターネットスラングのこと。片仮名の「ツ」が「シ」に似ており、「やし」とキーを打つと「香具師」に漢字変換されることに由来している。
この用法においての最初の出典は、1999年2月10日のあやしいわーるど@本店 昼の部まで遡る。固定ハンドルネーム「DTP」を騙るものが使い始めた。この時、ハンドルネーム「DTP」のなりすまし騒動があり、ばれて槍玉に挙げられた騙りの犯人が途中から「DTP@香具師」と自虐的に自分のハンドルネームに用いていた。「騙ったやつ」→「やつ」→「やし」→「香具師」の意味であった。
脚注
注釈
- ^ 理解できるものは平易な言葉に変更した
出典
参考文献
- 沖浦和光『旅芸人のいた風景 : 遍歴・流浪・渡世』文藝春秋〈文春新書〉、2007年8月。ISBN 978-4-16-660587-3。
関連書籍
- 添田知道 『香具師(テキヤ)の生活』 雄山閣出版、1964。
- 京都府警察部刑事課 『香具師名簿』 京都府警察部、1928。
- 和田信義 『香具師奥義書』 文芸市場社・談奇館随筆、1929。
- ツェザロ・ロセッティ 『英国の香具師』 河合俊郎 訳、栄光出版社、1979。
- 『香具師の全貌 附録・或株式現物屋の懺悔話』 内務省警保局、1942、刑事警察研究資料。
- 『のせる 香具師の世界(芸双書 第9巻)』 白水社、1982。
- 室町京之介 『香具師口上集』 正続、創拓社、1983-84。
- 坂野比呂志 『香具師の口上でしゃべろうか』 草思社、1984。
- 林喜芳 『香具師風景走馬灯』 冬鵲房、1984。
- 川瀬孝二 『祭りの商人「香具師」』 日本経済新聞社、1987。
- 北園忠治 『香具師はつらいよ ある露店商人の独白』 葦書房、1990。
関連項目
外部リンク
- 香具師 - 語源由来辞典
- 祭りばやしが聞こえる RKB毎日放送NEWS 1975年1月24日放送(第30回文化庁芸術祭賞優秀賞受賞)
香具師(やし)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 18:26 UTC 版)
芸や見世物を用いて客寄せをし、薬や香の製造販売・歯の医療行為をする者をさし、名称は他にも、野士・野師・弥四とも表記し、すべて「やし」と読む。由来は、野武士が困窮して薬売りに身を投じたという説や、弥四郎という者が薬の行商の祖と言われる事など諸説ある。
※この「香具師(やし)」の解説は、「的屋」の解説の一部です。
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香具師
出典:『Wiktionary』 (2021/08/16 01:39 UTC 版)
名詞
- 香具を製造する人。また、それを売る人。
- (コウグシ、熟字訓:やし)縁日など、人出の多いところで見世物や物品の販売を行う者。てきや。
- いかにしてか白き児熊を虜り、世に珍しとて飼ひおきしに香具師(江戸にいふ見世もの師の古風なるもの)これを買もとめ、市場又は祭礼すべて人の群る所へいでゝ看物にせしが、ある所にて余も見つるに大さ狗のごとく状は全く熊にして、白毛雪を欺きしかも光沢ありて天鵞織のごとく眼と爪は紅也。(鈴木牧之編撰 京山人百樹刪定 岡田武松校訂 『北越雪譜』)
- さくら 縁日などに出る香具師の仲間では、客の買ひ方を速める為に、囮になつて、馴れあひで物を買ふ。(折口信夫 『方言』)
- あるとき、南の方の国から、香具師が入ってきました。なにか北の国へいって、珍しいものを探して、それをば南の国へ持っていって、金をもうけようというのであります。(小川未明 『赤いろうそくと人魚』)
類義語
(語義2)
「香具師」の例文・使い方・用例・文例
香具師と同じ種類の言葉
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