岡田武松とは? わかりやすく解説

おかだ‐たけまつ〔をかだ‐〕【岡田武松】

読み方:おかだたけまつ

[1874〜1956]気象学者千葉の生まれ長く中央気象台長を務め日本の気象観測制度確立文化勲章受章。著「日本気候論」など。


岡田武松

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/19 09:43 UTC 版)

岡田 武松おかだ たけまつ
1953年頃
生誕 1874年8月17日
日本 千葉県相馬郡布佐村
死没 (1956-09-02) 1956年9月2日(82歳没)
居住 日本
国籍 日本
研究分野 気象学
研究機関 中央気象台
出身校 東京帝国大学
主な受賞歴 文化勲章1949年
プロジェクト:人物伝
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岡田 武松(おかだ たけまつ、1874年明治7年)8月17日 - 1956年昭和31年)9月2日)は、日本気象学者。第4代中央気象台長を多年に亘り務めた。「気象学の父」とも呼ばれる。

生涯

千葉県相馬郡布佐村東葛飾郡布佐町、我孫子町を経て、現在の我孫子市布佐)の海産物を扱う商家に生まれる。6歳で布佐初等小学校に入学、課外に和算を学ぶ。14歳で上京し、東京府立尋常中学校(現在の東京都立日比谷高等学校)に入学し、19歳で卒業し、第一高等中学校に入学。物理学を中村清二らに学ぶ。同級に桑木或雄(あやお)らがいる。このころ利根川の水害が多発したこともあり、防災科学や気象学に関心を寄せる[1]

1899年(明治32年)、26歳で東京帝国大学理科大学物理学科を卒業し、ただちに中央気象台(現在の気象庁)に勤務。技手として予報課に勤務する。大日本気象学会編(後に日本気象学会)『気象集誌』に論文を発表する。翌1900年(明治33年)、各測候所の勤務者対象とする気象観測練習会で、気象学の講義を受け持った[1]

1904年(明治37年)、中央気象台の予報課長に抜擢された。翌1905年(明治38年)5月27日、予報課長として日露戦争の帰趨を決めたとされる日本海海戦当日の対馬海峡沖の天気予報を出す。岡田が発したこの予報「天気晴朗ナルモ浪高カルベシ」は、連合艦隊から大本営宛に打電された有名な電報「敵艦隊見ユトノ警報ニ接シ聯合艦隊ハ直ニ出動、之ヲ撃沈滅セントス。本日天気晴朗ナレドモ浪高シ」の原典といわれる[2]

1911年(明治44年)、『梅雨論』で理学博士となり、1919年(大正8年)、東北帝国大学教授兼任。 1920年(大正9年)、神戸海洋気象台の創設と同時に初代台長に就任。1923年(大正12年)には第4代中央気象台長(現在の気象庁長官)となり、以後1941年、68歳までその職にあった。1942年から1944年に1927年刊『気象学』の姉妹編『理論気象学』全三巻を刊行する。中央気象台附属測候技術官養成所(現在の気象大学校)での講義案に新規の資料を付け加えた気象学基礎理論でもある。[3]

在任中は世界に先駆けた海上船舶の無線通信1910年)や地震観測網の整備・海洋観測船「凌風丸」の新造・全国気象官署の国営移管など、気象事業の発展に尽くしたほか、1925年に創刊された『理科年表』には、気象部の監修者として名を連ねている。

一方、研究者としても『気象学講話』(1936年)、『雨』(1951年)、『気象学』(1927年)などの数多くの研究書・入門書の執筆や後進の育成にあたり、藤原咲平とともに藤原・岡田学派の総帥として活躍した。

1941年(昭和16年)7月30日、中央気象台を退職。

1924年(大正13年)、イギリス王立気象学会英語版よりサイモンズ・ゴールドメダルを贈られ、1931年(昭和6年)、帝国学士院会員1949年(昭和24年)、76歳の時、文化勲章受章。1951年(昭和26年)、文化功労者[4]

台風(颱風)の命名やフェーン現象に風炎の字を当てたことでも知られる。

1956年(昭和31年)、82歳で没した。

家族

妻のみつは、現在の茨城県北相馬郡利根町の医師・小川東作の孫。柳田国男は少年時代に小川宅に住んでいたことがあり、武松とも交流があった[5]。娘婿に東京帝国大学理学部教授・抜山大三(抜山平一抜山四郎の兄弟)[6]

栄典

著書

単著

  • 『近世気象学』博文館、1901年10月。NDLJP:831632 
  • 『気象学講話 附録 簡易気象観測法』丸善、1908年10月。NDLJP:831591 
    • 『気象学講話』(再販)丸善、1910年5月。NDLJP:1083154 
    • 『気象学講話』(3版)丸善、1913年1月。NDLJP:937119 
    • 『気象学講話』(4版)丸善、1916年3月。NDLJP:937118 
  • 『雨』岡田武松、1916年10月。NDLJP:955243 
  • 『颱風の話』海洋気象台、1924年7月。NDLJP:984964 
  • 『気象学 上巻』岩波書店〈科学叢書 第5編〉、1927年10月。 
  • 『気象学 下巻』岩波書店〈科学叢書 第5編〉、1927年10月。 
    • 『気象学 上巻』(改版第1刷)岩波書店〈科学叢書 第5編〉、1935年9月。NDLJP:1223789 
    • 『気象学 下巻』(改版第1刷)岩波書店〈科学叢書 第5編〉、1935年9月。NDLJP:1223805 
  • 『気象学講話』岩波書店、1928年12月。NDLJP:1170938 
  • 『気象器械学』岩波書店〈科学叢書 第7編〉、1931年9月。NDLJP:1187895 
    • 『気象学講話』(改版第1刷)岩波書店、1932年2月。NDLJP:1170941 
    • 『気象学講話』(改版第3刷)岩波書店、1936年8月。NDLJP:1871753 
  • 『地球磁気学』岩波書店〈岩波講座物理学及び化学〉、1930年3月。 
  • 『気象器械学』岩波書店〈科学叢書 第7編〉、1931年9月。 
  • 『気候学』岩波書店〈岩波講座地理学〉、1932年12月。 
  • 『測候瑣談』鉄塔書院、1933年3月。NDLJP:1214809 
  • 『暴風講話』文部省、1935年3月。NDLJP:1235673 
  • 『気候』地人書館〈地理学講座〉、1936年11月。 
  • 『気象学礎石 上巻』岩波書店、1937年5月。NDLJP:1228356 
  • 『測候瑣談』岩波書店、1937年10月。NDLJP:1230760 
  • 『続測候瑣談』岩波書店、1937年10月。NDLJP:1230756 
  • 『気候学』岩波書店〈岩波全書 87〉、1938年6月。NDLJP:1224223 
  • 『大気物理学』岩波書店〈岩波講座物理学 12 A〉、1938年12月。 
  • 『航空気象学』岩波書店、1942年8月。NDLJP:1238790 NDLJP:1878813 
  • 『理論気象学 上巻』岩波書店、1942年10月。NDLJP:1261109 
    • 『理論気象学 中巻』岩波書店、1943年6月。NDLJP:1261122 
    • 『理論気象学 下巻』岩波書店、1944年7月。NDLJP:1261132 
  • 『気象学の開拓者』岩波書店、1949年9月。 
  • 『気象学通論』岩波書店、1949年12月。 
  • 『雨』岩波書店、1951年4月。 
  • 『世界気象学年表』荒川秀俊補、地人書館〈気象学講座 別巻〉、1956年11月。 

編著

  • 『近世気象学』博文館〈帝国百科全書 第73編〉、1901年10月。 

校訂

共編著

脚注

  1. ^ a b 岡田俊裕著 『日本地理学人物事典 [近代編 1 ] 』 原書房 2011年 237ページ
  2. ^ 北本朝展. “1905年5月27日 : 日本海海戦と天気”. デジタル台風:日本海海戦と天気 - 過去の天気図. 国立情報学研究所. 2019年5月21日閲覧。
  3. ^ 岡田俊裕著 『日本地理学人物事典 [近代編 1 ] 』 原書房 2011年 242ページ
  4. ^ 岡田武松|近代日本人の肖像”. 近代日本人の肖像. 国立国会図書館. 2022年11月3日閲覧。
  5. ^ 柳田國男記念公苑 - 利根町。2020年8月10日閲覧。
  6. ^ 『人事興信録 第13版 下』1941、「抜山大三」
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 堀内剛二「岡田武松事蹟(VI)」(PDF)『天気』第4巻第6号、日本気象学会、1957年6月、196-198頁、ISSN 05460921オリジナルの2016年4月7日時点におけるアーカイブ、2016年4月8日閲覧 
  8. ^ 『官報』第1773号「叙任及辞令」1918年7月1日。
  9. ^ 『官報』第6852号125頁 昭和24年11月14日

参考文献

  • 須田瀧雄[著](1968年)『岡田武松伝』岩波書店
  • 岡田俊裕[著](2011年)『日本地理学人物事典 [近代編1]』原書房ISBN 978-4-562-04710-9
  • 馬渡巌[著](2004年)『寸描 岡田武松博士』日本共産党我孫子東後援会。

関連項目

外部リンク




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