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i.d.

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/23 06:54 UTC 版)

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i.d.
ジャンル 伝奇
小説
著者 三雲岳斗
イラスト 宮村和生
出版社 メディアワークス
レーベル 電撃文庫
刊行期間 2003年11月 - 2005年2月
巻数 全3巻
テンプレート - ノート

ストーリー

人間の意識の奥底に眠る「呪力」を行使することで、ひとを超えた力を行使する式神(フォーミュラ)使いたちの物語。物語は式神使いたちを育成していた雙羽塾が大火によって焼失したことにはじまる。この事件で多くのこどもたちの命が失われ、残されたこどもたちもあちこちへ散っていたことを引き金として、いくつもの事件が引き起こされていく。

登場人物

華椎学園

伊波瀬 砌 (いわせ みぎり)
I・IIIの主人公。学園の1年生。性格はどちらかといえば陰気で、由希以外の相手には心を許していない。愛想もきわめて悪い。にもかかわらず周囲から女性の姿が絶えないことを薮本が「顔のせい」と言っていたことからみて、かなりの美形である。人づきあいは決して上手ではなく、また好きでもないが、須藤のとある気持ちに気付いていたあたり、決して鈍感ではない。ただし、自分に向けられる好意については、その鋭敏な感性はまったく生かされていない。那依がよせるあからさまな好意にも、かなり後まで気付いていなかった。
使役者で式神は「切り裂く者」。自分の能力については「すべての〝式神〟の中でもっとも忌まわしい能力」と忌み嫌っており、「切り裂く者」と言われることも好まない。これはその能力の暴走で両親・友人を亡くしてしまっていることによる。シリーズ開始時点では、雙羽塾事件の影響で、巫護である由希が記憶を失っているため、能力をほとんど使うことができなくなっている。また、後述する雙羽塾の事件の生き残りでもある。
なお、砌は短時間であれば巫護の加護がなくとも式神を発動できる。これはIIIで四条によって語られたことによれば、一度巫護を失った者だけの特有の現象であり、作中では四条と砌が当てはまる。
Iの終局で那依と契約し、「切り裂く者」の力を取り戻している。しかし、もともと自身の能力を嫌い、また由希への引け目(ないしは恋愛感情)が残っていた砌は積極的に能力を使うことはなかった。しかしIIIの終盤、自分の能力、由希・那依と向き合うことを決め、その力を見せている。III終了時点での那依との関係は恋人未満といったところ。
圭吾や須藤などからは、「i.d.(不死の王)」とも呼ばれていた。
泊瀬 由希 (はつせ ゆき)
学園の1年生。本来は砌より一学年上だが、雙羽塾事件の影響で休学、1年留年している。名門のお嬢様だが、県議会議員をつとめる父親・継母との交流はほとんど途絶している。また事件の影響で一部の記憶も失っている。シリーズ開始時点では松葉杖で行動している。目立たない容貌の少女だが頭の回転はすさまじく、「切り裂く者」の巫護であるということで、狙われることも多いのだが、その機転と知識で自分や友人たちを何度か窮地から救っている。また、他人を放っておけない性格で、周囲からの人望は非常に高い。一方、自分でなんでもやってしまううえに秘密主義なところがあり、周囲の人間を守るためなら平気で嘘もついてみせ、苦労を背負いこんでいることも多い。
シリーズ開始時点の砌の巫護。使鬼は白猫。しかし、記憶を失っているため、能力を使うことはできない。また、現存する巫女の中ではトップクラスの実力を持っているが、上記の理由により発揮できていない。
那依の困った部分も含めて、好意的に思っているようである。
Iの終盤、砌が自分に依存していたのではなく、自らの依存心が砌を縛っていたことを告げ、窮地に追い込まれた那依の元へ送り出す。その際に涙を見せていたところから、砌への感情はたんなるパートナー以上のものであったと思われる。
IIIでは、実は能力をほぼ取り戻していた。記憶や足についても、直す方法はわかっていたが、那依への遠慮から、実際に健常に戻ったのは終盤になってから。その際、一時的に四条と契約しているが、由希曰く「一度だけ」だそうである。
真砂 那依 (まさご なより)
学園の1年生で、砌とはクラスメイト。「東京の芸能事務所がスカウトに来た」という噂が立つほどの美少女で、邸生には「綺麗過ぎて苦労タイプ」と評されていた。どちらかといえば寡黙で控え目な性格。料理なども上手で、級友たちからの信頼は篤い。I巻冒頭、痴漢(冤罪)で追い回されていた砌を助け、以来なにかと砌の世話を焼きたがり、彼の傍にいようとする。そんな行動を深綾らにからかわれて赤面することもしばしば。思い切りはよく、由希の問いかけにもはっきりと砌を思っていることを伝えていた。
シリーズ開始時点では式神を持たない巫護で、使鬼は鳶。
実は雙羽塾事件の生き残りのひとりで、砌に命を救われる(その際、彼女の使役者であった姉は死亡している)。以来彼に好意を寄せている。須藤の寄せる好意もある程度察していたが、あくまで友人としてのものと思っており、なにより彼女にとっては砌への想いのほうが大事なものであった。しかし、那依の容貌が(急激な成長のせいで)大きく変わっていたため、砌はIの最後までそのことに気付いていなかった。Iの終盤で砌のために単独で須藤に立ち向かい、絶体絶命の場面をまたも彼に救われ、契約を果たす。その際、由希の力の一部が砌のなかに残っていること、それが由希の体の自由や能力を奪っていることに気付いていたようであるが、由希がもとに戻れば砌が自分から離れていってしまうという恐怖から、そのことを告げられないでいた(「嫉妬だってするし、誰かを傷つけること」もあると告げている)。IIIの終盤で、砌の告白らしきものを受け入れて、由希の力を開放している。
あとがきによれば、「一部の女性読者からえらい嫌われている」とのこと。作者は読者の感のよさを誉めているので、IIIで発覚することにかかわる伏線は、Iの時点で出来上がっていたのだろう。
喬木 深綾 (たかぎ みあや)
学園の2年生。情報科学研究会の部長。コスプレ趣味で、学園でも変人として通っている。砌を気に入っており、彼を入部させるためにいろいろと画策をおこなっている。物語冒頭では寝ている砌を女子寮に連れ込んだほど。一見にはノリの軽い少女であるが、この行動も能力を失って不安定な砌を守るためのもので、正義感のつよい人物である。
櫂とはかつて付き合っていたが、現在では友人関係にあり、穂邑に彼との関係の進展を望むような発言もしている。上記のような性格のため、何者かに狙われる穂邑の護衛を櫂から依頼されたときも、快く引き受けている。四条とは(理由もあり、どちらにせよ助からなかったのだが)親友で巫護でもある理美の姉・杜美を殺されたことで犬猿の仲(というより、一方的に深綾が嫌っている)となっている。IからIIIまで唯一、準メインとして登場しており、出張った回数はもっとも多い。
使役者で、式神は「女銃士」。
IIで示唆され、IIIで明かされたところによれば、彼女の心臓はこどものときから非常に悪く、14歳までは生きられないと言われていた。彼女が心臓が動いているのは式によって無理やり動かし続けているためで、体には常につよい負担がかかっている。他人に異常なまでに世話を焼きたがるその気質も、この体質のためだろうと櫂は推測していた。
片倉 理美 (かたくら さとみ)
学園の2年生。情報科学研究会の部員で深綾とは親友といっていい間柄。彼女の巫護でもある。栗色の長い髪が印象的な、おとなしそうな少女である。しかしジョーカー研の一員らしく、市内のゲームセンターを制覇しているというつわものである。姉に社美がいるが、シリーズ開始時点ではすでに死亡している。櫂によれば非常にモテるらしい。
栗原 倫子 (くりはら りんこ)
学園の2年生で、生徒会会長。情報科学研究会の前部長でもある。圭吾の巫護であり、通常は1体のみ使役可能なはずの使鬼を3体扱うことができるという特異な人物。現在もFとつながっており、なにか任務を帯びているようである。砌をはじめ、式神使いたちの覚醒・復活を誘導している節はあり、これについてもなんらかの目的があるものと推測される。
邸生 圭吾 (やしき けいご)
学園の2年生で、情報科学研究会の部員。とらえどころのない性格をしており、他の式神使いが知らない多くの知識を有していると思われるが、ひとを煙にまくことが多く、重要なことは話したがらない。深綾からも肝心なときには役に立たないと評されている。倫子とともにFとつながっているようで、彼が「傍観者」の使役者であるのもそれと関係していると思われる。
Iの終盤で、Fの意思によって真波から能力とそれに附随する記憶を奪いとり、IIでは事件の発端となった手紙を穂邑たちに送りつけた張本人であることが示唆されている(つまり、大量のひと死が出ることを躊躇しなかったということ)。IIIでも尚について調査を進めていた。
須藤 裕哉(すどう ゆうや)
学園の1年生で砌や那依のクラスメイト。温厚な性格で、真面目な優等生。砌に対してもいろいろと気遣っている。多少、厭世的なところがある。
Iの事件の犯人のひとりであり、「鏡」の使役者。彼も雙羽塾事件の生き残りのひとり。那依に好意を持っていたが、彼女が砌を想っていること、またFに対する恐怖などから真波の計画に加担し、最終的には那依を殺すことによって独占しようと試みる。しかし、砌の救援をうけ、巫護である真波が逃亡したことによって敗れ、死亡した。
薮本 幸平(やぶもと こうへい)
学園の1年生で砌や那依のクラスメイト。金髪の軽い性格で、きれいな女の子(とくに那依)とお近づきになりたいようだが、うまくいきそうな気配はない。砌にはその軽薄さを呆れられていたが、決して悪い人物ではない。
酉島 篤彦(とりしま あつひこ)
学園の1年生で砌や那依のクラスメイト。かつては手のつけられない不良であったらしく、それが理由か1年留年している。由希に恩義があるようで、使鬼に彼女が襲われた際には身を張って守った。物静かな性格で、砌と普通に接する数少ない友人である。
多賀谷 葉子 (たがや ようこ)
学園の2年生で、由希の友達。生徒会の会計。周囲に気を配れるタイプで、記憶を失ってしまった由希をあちこち連れまわしたり、砌に那依のことをもっと気にしてやれと苦言を呈していた(もっとも後者については、砌が「同じクラスだから?」と返事したので、「バカ」と切って捨てている)。
小野原 真波(おのはら まなみ)
学園の2年生で、生徒会の書記。
Iの事件の犯人のひとりであり、実質的には主犯。中学時代に香我美と売春をしたことがあり、そのときの相手が長谷部であったことから彼に強請られるようになる。解決のためにふたりの殺害を計画、那依を殺そうとしていた須藤の頼み(彼の巫護になること)をきく代償として、ふたりの殺害に成功する。しかし砌と須藤の対決ではあっさりと須藤を見捨てて逃亡する。この契約の不履行がFの勘気にふれ、圭吾によって能力と記憶を奪われる。自業自得とはいえ、長谷部のロッカーから隠し撮り写真なども発見されてしまうなど、散々な結末だった。
秦野 京一(はたの きょういち)
学園の2年生で、生徒会の副会長。
根岸 香我美(ねぎし かがみ)
学園の2年生。最初の被害者。
長谷部(はせべ)
学園の数学教師。2番目の被害者。

高城学園

柚木 穂邑 (ゆのき ほむら)
IIの主人公で、IIIでもそれに準ずる扱い。学園の1年生で書道部に所属している、ごく普通の女子高生。肩から肘のあたりにある火傷の痕が小さなコンプレックスになっていたが、中学時代、櫂に「蝶みたいだ」と言われ、傷を醜く思うかはそのひとの心次第と気づかされたことで前向きになり、彼に好意を持つようになる。櫂に対する熱の入れようはテストの成績から一挙一動に及ぶまでの詳細な観察に結実しており、書道部に入ったのも彼を追いかけてのことである。その熱意のほどを知る友人たちからは「告れば?」とからかわれている。
保険金目的の父親によるとみられる放火事件に巻き込まれたことから、火を極端におそれている。「四大元素」の使役者で、彼女が2度の火事に巻き込まれても無事であったのはこの力の恩恵。櫂の助力によって雙羽塾事件の記憶を取り戻し、「四大元素」の使役者としての能力にも覚醒する。その後、「血」を退け、同時に火(ひいては父親)への恐怖心もなくなった。また雙羽塾事件の生き残りであるが、火事に関する記憶は失っている。邸生によれば彼女の記憶を奪っていたのはFのようである。
ごく普通の高校生活を送っていたが、連続殺人事件に巻き込まれたことから、一転危険な目にあうことになる。その際、護衛となってくれた深綾や、砌、那依、また梨夏とも出会っている。
強力な式神である「神狼」も退けており、原則強弱はない式神であるが、相性のいい相手と連続であたっている。
IIIではお見舞いにいったところをまたも式神絡みの事件に巻き込まれており、たまたま居合わせた由希と伊調、さらには櫂の機転によって無事救出されている。
長岡 櫂 (ながおか かい)
学園の2年生。天才で、一度でも見たものは全て自分のものとして吸収してしまう。IIの終盤では「他人にものを教わる必要など感じたことはない」とうそぶき、IIIでは砌の援護があったとはいえ、物理的な方法で式神を撃退してみせた(由希もIIIで同じ事をやっている)。学業・運動神経ともに抜群だが、あまりの出来のよさに友達を無くしまった過去がある。そのため目立つことを嫌っており、テストの点数などは意識的に「調整」している。書道部に所属し、伊達眼鏡をかけているのもそのため。性格は冷静沈着で、激することはほとんどない。また心理・論理の両面にわたって頭の回転が早く、那依の逡巡についても当事者たちよりも早く察していたほど。作中で対抗できるのは由希くらいなもの。
穂邑が連続殺人事件に巻き込まれた際には深綾に協力を求め、また自力の捜査活動と推理によって犯人・事件の真相を突き止めている。
雙羽塾関係者ではなく、式神とも無縁だった。しかし使鬼を一度見ただけで自分のもの(彼の使鬼は巨大な黒豹)として「血」の式神使いを驚愕させ、見よう見まねで穂邑の巫護までやってのけた能力の持ち主。
なお、IIの終盤で穂邑に対して告白らしきもの(「おまえを失うくらいなら―あのとき死んでもかまわなかった」)をおこなっているが、感情を表に出さない人物のため、はっきりとした結論は出ていない。すくなくとも穂邑には「付き合っている」という自覚はない。しかし、かつて付き合っていた深綾の推測によれば、櫂にとって穂邑は特別な相手であるらしい(深綾は「少し、妬ける」と独白している)。
藤井 香奈 (ふじい かな)
1年生。穂邑とおなじ手紙を送られたひとり。手紙に恐怖して、まっさきに穂邑に相談を持ちかけた。雙羽塾事件によって双子の姉である紗奈を亡くしている。物語中盤で、右京と付き合う。
IIの事件の犯人。姉の紗奈と共謀して、森原ら雙羽塾の元関係者を次々に殺害していった。事件のショックによって姉妹の人格はひとつに統合されており、それを支配している上位人格が「ナナ」=「七番目(ザ・セブン)」である。この姉妹が「血」の使役者と巫護。櫂によって真実を看過され、穂邑と彼を殺害しようとするが、櫂が巫護の能力を「盗んで」いたこと、また穂邑が「四大元素」の能力を回復したことによって敗北、姉妹のうちいずれかが死亡している。式神を砕かれたことで、精神が崩壊し、幼児化を起こしてしまっているため、生き残ったのがどちらであるかは不明。なお、IIIの序盤によれば回復傾向にある模様。
市川 彩乃 (いちかわ あやの)
穂邑のクラスメイトで友人。穂邑の言う櫂の格好よさに疑問を持ち、からかいながらも彼女のことを応援している。
野田 美咲 (のだ みさき)
おなじく穂邑のクラスメイトで友人。部活もおなじ書道部で、穂邑につきあって入部した。彩乃同様、穂邑の恋路を応援している。
森原 拓真 (もりはら たくま)
1年生で柔道部所属。穂邑とおなじ手紙を送られたひとりで、事件の最初の被害者。密室状況で喉を裂かれて死亡した。雙羽塾にかよっていたことがある。
式神使い。これはほかの手紙をもらったひとたちもおなじ。ただし、森原以外のひとたちも、作中で式神は使用していない。
藍沢 瑛理子(あいざわ えりこ)
2年生。穂邑とおなじ手紙を送られたひとり。小柄な美少女で、櫂の本領に気付いているよう。かつてトラブルになった上級生男子と、その仲間をひとりで病院に送りにしたという武勇伝がささやかれている。この武勇伝は式によるもの。放送室で式神によって惨殺された。
乾 泰史 (いぬい やすし)
2年生。穂邑とおなじ手紙を送られたひとり。成績優秀なようで、新入生総代を櫂が辞退したこと(つまり、結果的にとはいえ憐れまれたこと)を根に持っている。性格は直情径行で粗暴。瑛理子とともに事件の第2の被害者となる。
宮脇 右京 (みやわき うきょう)
2年生。穂邑とおなじ手紙を送られたひとり。軽いノリの男で、初対面の穂邑を口説こうとしていた。物語中盤で香奈と付き合う。
実は雙羽塾にかよったことはなく、ナンパの方便として利用していただけであり、式神使いではない。IIの終盤この嘘を櫂に看過され、香奈の使鬼によって重傷を負うが一命は取り留めている。

大神大付属高校

四条 雄一郎 (しじょう ゆういちろう)
大神大付属高校の王にして、王国の使役者。最強の式神使いで、相互不干渉のルールを提示し、実力で守らせている人物でもある。しかしその実態は杳として知れず、定時制の生徒のためか、おなじ大神付属の生徒でも彼の実像を知るものはほとんどいない。かつてルールを破った社美を殺しており、深綾から恨まれているが、放っておいても社美は死ぬ寸前で、「楽に死なせてやった」と言っている。彼の性格からすると、案外本音かとも思われる。
彼の巫護である美緒が死亡し、その統制が外れたことが、IIIでの事件の発端となっている。頭の回転は由希らに引けをとらない。砌曰く「変わった男」「奇妙な魅力を持っている」。また、砌は那依や深綾は嫌われそうだが、由希とはウマが合うかもしれないとも推測している。
正体に関しては「伊調 修次郎」の項目を参照。美緒とそのお腹にいたこどもを殺害した尚を殺すため、隠密行動をしていた。美緒に代わる巫護(由希のこと)がいなければ王国が使えないためである。IIIの終盤、由希と一時的な契約を結び、砌たちとの協力で尚を倒している。
棚原 美緒 (たなはら みお)
四条の巫護。何者かによって腹部を刺されて死亡する。四条の子どもを身ごもっていたと噂されていた。その噂は事実で、四条との間に子を成すはずであったが、そのこどもに義兄と姉の愛情を奪われると恐怖した尚によってこどもとともに殺されてしまう。
彼女の死がIIIの事件の要因である。
上原 琉乃亜 (かんばら るのあ)
2年生で、モデル科に所属する。「冥王」の式神使い。プライドが高く、美緒が殺されたことをきっかけに四条に対して反乱を起こす。その死者を操る能力を駆使して由希・穂邑を追い詰めるものの、脱出されてしまう。彼女の能力は暗殺専門のようなところがあるため、武沼に対しては立場が悪かった。尚を人質にしてあくまでも四条を追い詰めようとする。
「屈折した愛情」を抱いていた俊晶を殺されたことで能力を暴走させるが、人工式神と化した尚にはかなわず、式神を食われて敗北した。
榛名 俊晶 (はるな としあき)
2年生。琉乃亜の巫護。琉乃亜の幼馴染である気弱な少年で、彼女の命令には絶対服従していた。何度か琉乃亜たちが四条と争うのを止めようとし、敗北のあとも「一緒に逃げよう」と彼女のことを気遣っていた。最後まで琉乃亜と行動をともにし、「貪欲と虚無」の式神に殺害されるという哀れな最期を遂げた。
武沼 劉太 (たけぬま りゅうた)
2年生でボクシング部所属。「神狼」の式神使い。琉乃亜とともに四条に対して反乱を起こし、強力な戦闘能力で深綾、穂邑等を追い詰めたものの、最後は穂邑によって敗北。四条によれば何年か口もきけないほどのダメージを受けた模様。
黒木 (くろき)
武沼の巫護。黒木とともに反乱に加わるが、彼とともに敗れている。
棚原 尚 (たなはら なお)
美緒とは父の違う弟で、彼の母親が四条の父親と再婚したので、四条にとっても義理の弟。琉乃亜・黒木の反乱に際して深綾たちに救いを求める。その後、琉乃亜にとらえられ、四条への人質として利用されることになる。
尚は半年前に既に死亡しており、Fによって不老不死の実験体とされた人造式神。しかし、不完全な式神は暴走、尚の「放棄」が決定されるが、Fの研究所を破壊して逃走した。四条は自分を唯一倒せる王国を恐れたためと推測していた。四条に姉殺しを突き付けられ再び暴走、琉乃亜・俊晶を一蹴するが、最後は四条や砌によって倒された。
伊調 修次郎(いちょう しゅうじろう)
2年生。児童心理学研究会の会長で、その関係で病院にい合わせたところを琉乃亜の式神に襲われ、由希・穂邑とともに逃げ惑うことになる。
正体は王国の四条雄一郎。伊調修次郎の名前は本名のアナグラムで、この名前で夜間の定時制にかよっていたことが彼の正体がほかの式神使いに知られずにいた要因となっていた。由希に偽名の程度が低いことを指摘されているが、四条によればこの偽名を与えたのは「Fの連中」であり、彼自身も苦笑していた。

その他

皆瀬 梨夏 (みなせ りか)
前作レベリオンの登場人物。高城学園のOGで、現在は大学3年生。警察の捜査に協力しているところをみると、前作からの関係などは維持しているようである。使役者が式を発揮した状態や、使鬼よりはつよいようで、これらを圧倒していた。
片倉 社美(かたくら もりみ)
理美の姉。付き合っていた男性を友人に奪われたことで、「女銃士」に覚醒、能力を暴走させ、ふたりをはじめ多くのひとを殺害した。説得に向かった深綾をも返り討ちにしようとしたが、四条によって殺害されている。
藤井 紗奈 (ふじい さな)
香奈の双子の姉。雙羽塾事件によって死亡したとされているが、実際には生存しており、双子の特性を生かして香奈と入れ替わりながら、二重生活をしていた。手紙が送られたことで、この「自由」がFによって奪われることを恐れた姉妹は、高城学園に所属する自分以外の式神使いを殺すことで、Fの目から逃れようと目論んだのである。

用語解説

式神(フォーミュラ)
使役者に巫護が憑神することによって発動する能力。物理法則を超えた力を持っており、式神を倒すには他の式神の力を持ってするしかない。王国のような特殊なものを別とすれば、式神同士には優劣はなく、ただ相性が存在するだけである。作中に明示のあった相性は、女銃士>神狼・鏡>女銃士・四大元素>血・四大元素>神狼など。
式神使い
使役者と巫護の総称。式神を使うひとのことを指す。雙羽塾において能力の開発がなされたものであるので、原則としては雙羽塾の関係者以外は式神使いになることはできない。なお、式神使いたちは相互不干渉を定められており、とりわけ、他校の式神使いに手を出した場合は制裁がおこなわれることとなっている。また、他校の敷地内で式神を使用するのも厳禁である。
使役者
巫護と対をなす存在。式神を発動する側で、式は使役者のみが使用できる。これは、もともと式神使いというものが、動的な能力者(使役者)と、静的な能力者(巫護)とが補完し合うことによって、神を喚び出すシステムを作り出す、という実験の過程の存在であるため。超人的な肉体能力を持つのは使役者のみである。
情報科学研究会
通称ジョーカー研。ジョーカーはトランプのカードの名前に由来し、変人ばかりが部員であることからつけられた通称。シリーズ開始時点での部長は喬木深綾。仰々しい名前の研究会であるが、実態としてはゲームを中心に、コスプレ、フィギアなどを楽しみとするオタク系のサークルのようなものである。なお、この研究会の部室が荒れ放題な挙句、複数の隠し通路を持っているのは、たんに会員が整頓のできない変人ぞろいだからではなく、深綾の戦闘中に巫護である片倉理美の安全を確保するためでもある。
巫護
使役者と対をなす存在で、大原則として使役者が式神を使用するためには、巫護との契約、憑神が不可欠である。ただし、憑神した際には巫護は完全に無防備となり、その身は危険にさらされることとなる。そのため、使役者は巫護とは距離をとり、安全な場所に確保している場合が多い。長時間の憑神は体に負担を及ぼす。また、自分が憑神した使役者が敗れると、巫護にも大きなダメージが及び、深刻な場合には行動不能に陥る。
原則から外れたのは長岡櫂ただひとり。彼は片倉理美の憑神を見ただけで、その技術を自分のものにしてしまった。
憑神(トランス)
使役者が巫護の霊体を付与、それに守護された状態を指す。この状態でなければ式神を使用することはできない。
式(レギス)
一種の自己暗示で、呪化(じゅか)とも呼ばれる。雙羽塾でこどもたちが教えられていた技術のひとつ。肉体を精神の完全な統御下におき、人間の持つ能力を限界まで引き出す。適性があり、手順さえわかっていれば誰にでも使うことができる。いろいろなことが可能になるようであるが、状況や道具立てにもよる。作中でもっとも多用されたのは身体強化(エンハンスド)で、文字通り、運動能力を極限まで高めるもの。ただし、能力を限界まで引き出す関係上、体におおきな負担をかけることになり、長時間や連続での使用はできない。
使鬼
巫護の使う能力。普段は符の状態で、使用時には動物の姿をとる。陰陽道でいうところの前鬼後鬼、西洋魔術での使い魔のようなもの。巫護自身は単独では普通の人間とかわらず、その身を守るための能力である。作中では何匹かの使い魔を持っている巫護もいるが、その制御のはかなりの精神力が必要とされるため、基本的には1匹しか使うことはできない。例外は倫子のみ。なお使鬼がダメージを受けると、巫護に返ってくる。
雙羽塾
本作品に登場する多くの人物がかつて通っていた塾。一般には少人数制の学習塾として認知されていたが、その裏には式神の研究所としての実態があった。式神使いと巫護は、多くこことで相棒を得ている。しかし、「実験は終わった」というFの意思によって大規模な火事に見舞われ、ここに通っていたこどもの大半は亡くなっている。Iで死者は百人近いとされていた。
F
式神の実験をはじめ、式神使いを生み出した存在。同時に、雙羽塾を破壊することで多くの式神使いを葬った存在でもある。複数による組織であること、また何人かの式神使いが「彼女」と言っているところをみると、そのトップにあるのは女性のようである。雙羽塾の事件に際して亡くなったものと思われ、多くの式神使いたちもそれを信じているようであったが、作品時間の現在も活動を続けている。その目的のひとつに不老不死の達成がある。
華椎学園
Iの舞台。全校生徒1200人ほどで、3分の1程度が寮生活をしている。砌、由希、那依をはじめ、主要人物は寮生がおおい。
高城学園
IIの舞台。前作レベリオンで主人公・緋村恭介らが通っていた学校である。梨夏はOGで、穂邑たちが通っている。意外な場所に飛び地を持っており、これが由希や穂邑たちの危機を救うことになる。
大神大付属高校
IIIの主な舞台。四条らが通う学校である。確認されているだけでも16組の式神使いが在籍しており、他校を圧倒している。にもかかわらず大きな問題もなく機能していたのは、ひとえに王国という圧倒的な王の存在のためである。

  1. ^ 『i.d. I 神使いたちの長い放課後』341頁


「i.d.」の続きの解説一覧

.id

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/01 04:11 UTC 版)

.idインドネシア国別コードトップレベルドメイン (ccTLD)である。






「.id」の続きの解説一覧

ID

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/09 00:38 UTC 版)

ID, Id, id, I.D., 🆔




「ID」の続きの解説一覧

三雲岳斗

(i.d. から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/22 01:07 UTC 版)

(みくも がくと、1970年8月31日[1] -)は、日本小説家大分県出身。




「三雲岳斗」の続きの解説一覧




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