第7師団
第七師団
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 02:38 UTC 版)
北海道を本拠とし旭川に本部を置く大日本帝国陸軍の師団。通称「北鎮部隊」。かつて屯田兵と呼ばれた組織を前身とした部隊で、戦争帰りの将兵が多く、瀕死の重傷であっても反撃を試みたり、不意な襲撃にもすぐに対応するなど、個々の能力は高い。日露戦争時、第七師団は4個の歩兵聯隊 のほか、騎兵聯隊や砲兵聯隊など約2万人の兵で構成されていた。聯隊(中佐)は3個の大隊、大隊(少佐)は3個の中隊、中隊(大尉)は4個の小隊(中尉)を持つ。作中では「第七師団」といった場合、師団全体よりも鶴見ら歩兵第27聯隊を指すことが多い。 鶴見 篤四郎(つるみ とくしろう) 声 - 大塚芳忠 キャッチフレーズ - 反逆の情報将校 中尉。歩兵第27聯隊所属の小隊長で情報将校。両目の周囲の皮膚が剥け、常にホーロー製の額当を装着し、口髭を蓄えた異様な姿の男。装備はボーチャードピストル。アイヌ埋蔵金を付け狙う第七師団における主導者であり、師団内の反乱分子の主犯格。好物は和菓子、苦手なものは酒類。 頭蓋骨前面の欠損と前頭葉の一部の損傷のため、感情が亢ぶると何らかの体液が額から漏れ出す体質に加え、奇矯で突飛、残忍な言動が目立ち、頭に血が上りやすい。自身の怪我については極めて前向きで、男前が上がったと称し、笑いのネタにすることもある。その反面、巧みな話術で他者の身の上話を聞き出したり相手の心情に寄り添って魅了したりする人心掌握術に優れ、そのカリスマ性に部下たちの中には彼に心酔する者も多い。手下は物語開始時点で100人ほどで、小隊の定員数より多い。網走監獄強襲には63人の部下を引き連れていた。歩兵第27聯隊長である淀川 輝前中佐(声 - 木下浩之)の弱みに付け込み、不完全ながら歩兵第27聯隊の事実上の指揮権を握る。また鯉登父子を取り込み、陸軍ながら犬猿の仲とされる海軍の雷型駆逐艦を自身の目的のため動かせる。 新潟本土の生まれ。母親の旧姓はハセガワ。越後長岡藩の名門士族出身。元は裕福な育ちで洋琴の演奏も習得している。明治26年時には第二師団(新潟)に所属したが、自身の馬が上司の息子を蹴り殺した(実際は宇佐美の殺人の隠蔽)ことから日清戦争後の明治28年には特務機関のある第七師団・札幌の月寒へ転属(左遷)、情報将校としてロシアに行く。転属前の階級は少尉。 日露戦争の旅順攻囲戦において、二〇三高地攻略に反対し、献策したが全て揉み消され、やむなく自らを先頭に吶喊攻略。小隊長として二〇三高地山頂に国旗を突き立てた。続く奉天会戦で頭部に砲弾の破片の直撃を受け大怪我を負い、野戦病院に搬送。以後、額当を付けるようになる。日露戦争には勝利したものの、多くの戦死者を出したことで参謀長でもあった花沢中将は自害、勲章や報奨金はおろか陸軍のなかで第七師団は冷遇されるようになる。こうした背景から鶴見は戦友や戦死者遺族の窮状を救うため、自らが指導者となり北海道に軍事政権を実現させるべく、軍資金として刺青人皮及びアイヌ埋蔵金を追う。しかし日露戦争終結前からアイヌの金塊を狙う「計画」を持っていた描写がある。 よく背景に描かれる花は芥子(アヘンの原料)。北海道の寒冷地に適した芥子の栽培を進めており、農地を広げるべく金策に走っている。 アイヌ殺害事件の遺品を回収、所持している。軍服の下には「33人を殺害した津山」という殺人犯の刺青人皮製の自作肌着を身に纏い、常に情報を収集して師団内の造反者を炙り出し、江渡貝に製作させた贋物刺青人皮を用いて金塊を追う他の存在に揺さぶりをかける。 ロシアとのパイプがあり、キロランケ・尾形に関して「皇帝暗殺の実行犯が日露の国境を越える」「密入国犯は遊牧民族(ウイルタ)に紛れるだろう」とロシア側に伝える。 若い頃、スパイ・長谷川 幸一としてウラジオストクに潜伏、現地の女性と結婚し、女児が生まれていた。長谷川を捕まえに来たオフラーナとウイルク、キロランケ、ソフィアの戦闘に巻き込まれて妻子を亡くす。 日清戦争で多くの兵士が殺人をためらったことを問題視しており、どんな汚れ仕事もできる部下は指揮官との「愛」で罪悪感を乗り越えられるとの考えに至る。月島・鯉登・宇佐美・尾形に目を付け、秘密を共有する、窮地を救う、肉親を殺害させるなどの手段で自分を慕うよう仕向けた。ただし、尾形には本性を見抜かれ離反されている。 鯉登音之進が14歳の夏に鹿児島市を訪れ、西郷隆盛の墓参りをしている。鯉登平二を取り込むため、部下たちに16歳の鯉登を狂言誘拐させ、その対応のために函館の鯉登邸を尋ねた際には「月寒の特務機関から派遣された」と語る。 尾形 百之助(おがた ひゃくのすけ) 声 - 津田健次郎 キャッチフレーズ - 孤高の山猫スナイパー、孤高の凄腕スナイパー 上等兵。歩兵第27聯隊。300メートル以内であれば確実に頭部を撃ち抜くほどの凄腕の狙撃手で、2000メートル先までの射撃も可能 かのような発言もしており、とても目が良い。利き目は右。また隙を突いて敵対者の小銃の遊底を瞬時に抜き取り無力化させるなど、接近戦でもわりと強い。時折不敵な笑みを浮かべるが基本的に無表情で飄々とし腹の中が探りにくく、鶴見をして「兵士として卓出で、敵に回すと非常に厄介」とまで評され、またその時々の状況に応じ先んじて陣営を変わることも辞さないため「コウモリ野郎」とも呼ばれる。瞳孔が縦長風になるなど作中でたびたび猫 扱いされる。温泉入浴中など、どんな状況でも用心深く銃を傍に置き、目を離して銃を盗まれた谷垣や、銃を雑に扱って壊した杉元に嫌味を言うなど、銃に関しては一家言ある様子。装備は三十年式歩兵銃→三八式歩兵銃、ベルダン M1870(英語版) など。脱走兵(扱い)ではあるが軍服は脱がず、その上にフードの付いたポンチョ風の外套を羽織り、脚絆を着用している。好物はあんこう鍋、苦手な食べ物はしいたけ。 元第七師団長・花沢幸次郎中将とその妾の間の息子。母は浅草芸者で、父と本妻との間に男子ができたため赤ん坊の時に母子ともに捨てられ、茨城 の母方の祖父母の元で育てられた、自称・バアチャン子。少年期、冬になるとあんこう鍋を作り続ける母に、それ以外のものを作って欲しいと思い、祖父の古い銃で鳥を撃つようになるが、母はかつて父が美味しいと言ってくれたあんこう鍋を作るのをやめず、彼に目を向けることはなかった。 異母弟・花沢勇作少尉が陸軍に入隊し、同じ第七師団に配属されたことをきっかけに交流を持つようになる。軍律上は上官である勇作から「兄様」と呼ばれていたが、尾形自身は「両親から祝福され愛されて育った子供の行く末」と冷ややかに見ていた。なお元第七師団ではあるが所属小隊の違うキロランケ も、尾形が「師団長の妾の子」であるということを知っており、師団内では公然の事実であった。尾形は第七師団の一部の人間から「山猫の子供は山猫」と陰口を言われていた。「山猫」 とは「芸者」を指す隠語である。 日露戦争終結後、鶴見中尉の指示の元、第七師団長の父を自刃に見せかけ殺害。その際に「父に捨てられ頭がおかしくなっていた母を殺鼠剤入りのあんこう鍋で殺害したこと」「日露戦争・二〇三高地にて腹違いの弟・勇作を密かに狙撃したこと」を告白、いずれも自分たち母子に対する父の愛情からの反応を期待しての行動であったと語るが、当の父からは「出来損ないの倅」と吐き捨てられる。だが、皮肉にも彼の容姿は父親似である。鶴見は「失った軍神の代わり」として第七師団が尾形を担ぎ上げるだろうと語ったが、尾形自身はその言葉に懐疑的で、内心では「『たらし』めが」と軽蔑していた。 鶴見からの造反を目論み、師団に無断で単独行動していた矢先に杉元・アシㇼパと遭遇。杉元と戦い右腕を折られ退却する途中、杉元の攻撃により昏倒し、川へ転落。滑落中に岩にぶつかり顎骨が割れる。極寒の川から自力で這い上がり低体温症で死ぬ寸前の所を鶴見の隊に救助され、手酷い負傷を被り衰弱甚だしい中、入院先で意識朦朧ながらも刺青人皮を追う存在を第七師団へ伝える。この時の負傷が元で、以降は左右下顎に縫合痕が残る。また入院中に髪が伸びツーブロックのオールバックになったため、初登場時とはやや印象が変わっている。左手で髪を撫で上げる仕草が癖になっている。 入院中に尾形襲撃犯(杉元)を捜索していた造反組の班(玉井伍長(声 - 手塚ヒロミチ)・野間(声 - 田所陽向)・岡田(声 - 笠間淳)・谷垣)が行方不明になった。尾形は密かに病院から抜け出し、二階堂浩平と共に杉元を捜索中、襲撃現場に一番近いアイヌのコタンにて谷垣を発見する。玉井が谷垣の造反組への引き込みに失敗し、造反計画を知った谷垣が玉井・野間・岡田の三人を殺したと判断した尾形は、口封じに谷垣の殺害を試みるも失敗する。また鶴見配下の三島らに尾行されていたこともあり鶴見への造反が露呈。直後に現れた鶴見の部隊を排除し逃亡したため、脱走兵として扱われている。 逃走後、刺青人皮の噂を聞きつけて茨戸の宿場町に現れ土方らと対峙。抗争に乗じて入手した刺青人皮を手土産に、土方の用心棒となる。夕張の江渡貝邸において鶴見の部下を奇襲、贋物の刺青人皮を持って逃げた江渡貝を追跡するも一歩及ばず、人皮は月島に回収される。この時に杉元らが土方一味に合流したため共に旅をするようになり、アシㇼパがのっぺら坊の娘と知って関心を抱く。 土方の用心棒である一方、出自が複雑であり目的も不明瞭であるため、土方からは怪しまれている。なお月島は「陸軍の反乱分子である仲間を売り、自らの出世を目論む、本部の飼い猫」と推測しているが、これについて尾形本人は肯定も否定もしていない。また網走監獄襲撃直前、土方に問われた際には軍に関わる気がないような発言をしている。菊田が中央のスパイとして第一師団・奥田中将から第七師団への異動を命じられた際には同席しており、尾形も同じ奥田のスパイであることが明かされている。ただし作中で鶴見との出会いは明かされておらず、真の目的は不明である。 江渡貝邸潜入時に南部大型自動拳銃(大型甲) を所持、気球隊試作機のことを知っており、配備前の三八式歩兵銃の仕様を把握しているなど、武器・装備に詳しい。 網走監獄ではキロランケと手を組み、ウイルクと杉元を狙撃した。ウイルク狙撃はキロランケの指示によるものだったが、杉元を撃ったのはウイルクから情報を聞いた可能性を考慮した、尾形自身の判断によるもの。 樺太に渡島後、キロランケに伴って北上する途中、野生のシカと間違えて現地のウイルタ民族の飼馴鹿を撃ち、ウイルタ民族との接触の機会を作った。キロランケの計画通り、ウイルタ民族に偽装して日露国境を超えた直後、国境守備隊のロシアの狙撃兵・ヴァシリから「三八式歩兵銃の持ち主」が狙撃されるものの、案内のウイルタ民族と前日から銃を交換してベルダンM1870を所持していたため命拾いした。狙撃戦には勝利したが疲労で熱を出し、回復までの間、頭部から血を流す勇作の幻覚を間近に見ていた。 亜港からの帰路においてアシㇼパが暗号の鍵を思い出したことを察し、聞き出そうとしたが失敗。流氷上で杉元が追いつきつつあることを知り、アシㇼパとの対話を諦めて「俺を殺してみろ」と挑発し、はずみで放たれた毒矢で右目に傷を負う。本来なら致命傷であったが、杉元が「あの子(アシㇼパ)を人殺しにはさせねえ」と右目を抉り取って救命したことで一命を取り留める。その後、一時は医者に「明日までもたない」と診断される状態であったが、間もなく隙を突いて杉元らのもとから逃亡した。北海道に帰ってきてからは右眼に義眼を入れ、土方の元で左撃ちの訓練をした。 ロシア語話者であり、鯉登狂言誘拐に参加した。 谷垣 源次郎(たにがき げんじろう) 声 - 細谷佳正 キャッチフレーズ - 阿仁マタギ 一等卒。歩兵第27聯隊。生真面目で誠実な青年。筋肉隆々で胸毛が濃く、たびたびシャツのボタンが千切れ飛ぶ。右頬にはレタㇻ狩りの際、杉元に付けられた裂傷痕がある。元マタギと言うこともあり射撃の腕は確かで、馴染みのない北海道の山中でもその知恵と技術、経験を活かす。装備は三十年式歩兵銃→村田銃(二瓶の形見)。好物はきりたんぽ、苦手なものはしいたけ。かに座、A型。 秋田県阿仁出身で陸軍入隊 以前は故郷でマタギをしていた。マタギ仲間でもある義弟・青山賢吉の住まいが全焼し、焼け跡からは胸に刺し傷のある谷垣の実妹・フミ(声 - 浅野真澄)の焼死体が発見される。谷垣は賢吉の犯行と断定し、復讐のため行方を追う最中、賢吉が第七師団に入隊したとの噂を耳にし、故郷を捨て自らも第七師団へ入隊。屯田兵村を捜すも北海道では見つからず終いであったが、日露戦争・二〇三高地にて瀕死の重傷を負った賢吉と再会。彼の口から真実を知り、復讐心だけで家族と村を捨て兵士となった今までの行動が全くの無意味で利己的だったことに懊悩、自身の役目を見失う。ちなみに、賢吉を探す最中に杉元と出会い会話を交わしているが、過去に面識があったことについてお互い気づいた描写はない。 玉井伍長の班にて野間・岡田ら4人で尾形加害犯捜査の任に就き、不審なアイヌ少女(アシㇼパ)を単独で追跡・保護しようとした時、突如現れた白銀の雄狼(レタㇻ)による牙の一振りで右足を砕かれ失神。行き倒れていた所を二瓶に手当され、行動を共にする内に己の身の処し方の選択に迫られ、軍から抜けマタギとしてやり直すことを選び、二瓶の白狼狩りに同行する。二瓶は「感情とは"匂い"となり発せられるもの」で「殺気が強いと獲物(狼)に気付かれるのかもしれない」と語る。それを聞いた谷垣は「マタギには獲物を狙う際に自分の気配を消し木になりきる"木化け"という言葉がある。今の話に木化けの本質を見つけた気がする」と答えた。 二瓶と杉元の交戦にてアシㇼパの身柄を抱えての移動中、不注意からアマッポ(狩猟罠)による矢毒を受けるも、アシㇼパの応急処置により一命を取り留める。二瓶の死亡後、アシㇼパの意向でコタンへ運ばれ療養していたが、杉元を追ってコタンを訪れた尾形らに玉井らを排除した嫌疑をかけられ対峙、二瓶の猟銃を手にマタギ出の知恵と経験を活かし撃退、直後に現れた師団兵の三島(声 - 石谷春貴)から鶴見が尾形らを泳がせていたことを知る。しかしその三島もすぐ尾形に射殺されたため、軍に戻ることは無かった。なお鶴見は彼の行動を黙認しているため、尾形と異なり脱走兵扱いではない。 尾形を撃退後はアイヌの普段着を羽織りアシㇼパのフチ(祖母)の世話を受け静養生活を送る。傷が癒えたころ、コタンに訪れたインカㇻマッの占いにより「アシㇼパの連れの男の中にアシㇼパを裏切る者がいる」と告げられる。大事な孫娘に振りかかるであろう禍事を案じ寝込んでしまったフチを安心させるため、自分の命の使い道を悟り、世話になった恩返しに孫娘を無事送り届けると約束してインカㇻマッ、チカパシと共に出立する。二人からは「谷垣ニㇱパ(旦那)」と呼ばれる。尾形からは玉井らを殺害し鶴見の手先として自身を追っていると誤解されていたが、後に姉畑の件で尾形と合流した際、玉井らの死を目撃した杉元の証言によって、尾形の誤解は解かれた様子。また姉畑の件で子熊の檻に監禁されて以降、時折「子熊ちゃん」と呼ばれる場面もある。 飛蝗から逃れて避難した小屋で杉元らとラッコ鍋を食べた後、ひとりで小屋に残っていた際に訪れたインカㇻマッと情交する。利用されているのかと疑いつつも彼女に惹かれており、網走監獄突入前には、時がきたらアイヌ式のプロポーズをしたいと告げた。 網走監獄襲撃時は、地元アイヌに扮して見回りを欺き、監獄出入口で待機していたが、杉元とウイルクが狙撃され重傷を負ったと知るとアシㇼパに脱出を促しつつ2人を救出に向かう。2人を救出後、監獄出入口でインカㇻマッがキロランケに腹部を刺され倒れているのを発見し動揺する間に、鶴見率いる第七師団に身柄を確保された。 鶴見がアシㇼパ追跡の先遣隊を派遣する際、自ら志願し、杉元・鯉登・月島と共に樺太へ渡る。その目的は「アシㇼパをフチの元まで送り届けること」で、自分と杉元だけがアシㇼパに信頼されていると語っている。流氷上でキロランケに遭遇した際には戦闘となり、鯉登らの応援も得て殺害した。鶴見から逃れるアシㇼパにフチへの伝言を頼まれる。「自分はマタギである」と確信するが、鶴見にインカㇻマッの妊娠を告げられ、インカㇻマッの解放と引き換えにアシㇼパを奪還するよう命じられる。インカㇻマッを連れて小樽のアシㇼパのコタンへ逃れ、フチの手伝いによりインカㇻマッは娘を出産する。 月島 基(つきしま はじめ) 声 - 竹本英史 キャッチフレーズ - 第七師団の良心、死神の右腕 軍曹。歩兵第27聯隊。鶴見の側近。目元のしわと低い鼻が特徴。任務にストイックな男で、団員の中では比較的温厚で常識人。ロシア語を習得している。背は高くない が、喧嘩や白兵戦は強い。好物はいごねり。 新潟・佐渡出身。父親が悪い噂の多い島中の嫌われ者だったため「人殺しの息子」「悪童」などと呼ばれ島に居場所がなく、新発田の第二師団 に入隊した。唯一、くせっ毛の髪質から「いご草」とからかわれていた幼なじみ(通称・いご草ちゃん(声 - 貫井柚佳))とは心を通わせており、日清戦争への出征前に、生還したら駆け落ちしようと約束する。しかし帰郷すると彼女は行方不明で、島では月島戦死のデマが広まっていた。いご草ちゃんがデマを信じ自殺したと考え、激情に任せデマの出処である実父を殺害し死刑囚となる。死刑を受け入れ陸軍監獄に服役していたが、第二師団で上官だった鶴見から「実はいご草は生きており、縁談がまとまり両親と共に関東に居る」と聞かされ、生きる気力を取り戻す。また近く起きるであろうロシアとの戦争に備え第七師団・札幌月寒に転属が決まった鶴見は、月島をロシア語の堪能な信頼できる部下と称して連れて行きたいと考え、その鶴見の方便のため全く喋れなかったロシア語を死んだ気になって習得した。 9年後の日露戦争・奉天会戦の戦場で偶然会った同郷の兵士から「いご草の遺体が月島の実家から発見された」と知らされ、激情に駆られ鶴見に詰め寄っていた最中、共にロシア軍の砲撃を食らう。咄嗟に鶴見を庇い両者とも重傷を負ったが、野戦病院に運ばれる際に工兵の作った橇を譲られたため、両者とも無事治療を受けられた。鶴見の弁によれば「いご草の遺体が月島の実家で発見されたというのは、月島の刑を軽くするための偽装工作」であり「いご草が生きているのは本当だ」とのことである(後年、花沢勇作童貞防衛作戦の際に、東京の財閥に嫁いだと見られるいご草の様子が描写されている)。この一件で、鶴見は月島の忠誠心が揺らがぬものと確信した一方、月島自身はこの出来事が彼を試すための「鶴見劇場」であったことに後になって気づいている。 物語の序盤、上官である和田大尉(声 - 稲田徹)に鶴見の射殺を命じられるが、逆に和田を射殺。前山一等卒(声 - 石狩勇気)と共に贋物刺青人皮制作を委託した剥製所に詰める任務に就くが、場を離れた隙に尾形から襲撃され前山は射殺される。襲撃から逃れるため贋物刺青人皮を持って炭鉱内へ逃げ込んだ江渡貝を追いかけ、炭鉱爆発に巻き込まれる混乱の中、江渡貝から贋物刺青人皮を託され辛うじて脱出、鶴見に極秘の伝言を伝える。 ベテラン軍曹として新任の鯉登少尉の補佐を担うことになるも、鶴見を前にすると対話不能状態になってしまう彼に、一々会話の通訳をさせられ心中辟易している。樺太先遣隊となって大泊(現在のコルサコフ )に着いた際は、鯉登少尉の荷物の中に潜んでいたチカパシとリュウに対し「これ以上子守をする気はない」と述べており、鯉登については子守りをしているつもりであることがうかがえる。 網走監獄襲撃後、杉元、谷垣、鯉登と共に、鶴見の命で樺太先遣隊としてアシㇼパ捜索に向かう。鶴見から現地における一行の判断を任されており、変わり者ばかりのメンバーに手を焼きながらも、持ち前の技能で一行をサポートしている。 函館での鯉登狂言誘拐に参加している。 二階堂兄弟(にかいどう) 声 - 杉田智和 一等卒の双子。歩兵第27聯隊。静岡出身。浩平が先に、洋平が後に生まれた。眉のない角張った顔が特徴。兄弟仲が良く、兄弟共に嗜虐欲や殺人衝動が強い。鶴見中尉に対する忠義心は薄い。浩平が巻きゲートル、洋平が短ゲートルを使用しているため足元を見れば区別できるが、コマごとにゲートルの種類が変わってることもある(第33話「呪的逃走」では浩平が短ゲートルを使用しているが第34話では巻ゲートルに変わっている)。洋平(ようへい) 浩平と共に娼館街で刺青の情報を探っていた杉元を攻撃して連行し、兵舎内に拘禁した杉元を殺さないよう厳命されていたにも関わらず、杉元の挑発に怒り独断で拷問の上で殺害しようとする。しかし杉元と二人切りになったとき、白石により既に枷を解かれていた杉元に声を挙げる間も無く返り討ちにされ死亡、さらに臓物を抜き取られ、彼の兵舎脱柵の偽装に利用されてしまう。 浩平(こうへい) キャッチフレーズ - 復讐の双子片割れ 杉元に洋平を殺されてからは杉元に復讐心を抱き執着している。好物はみかん。 常日頃から兄弟共に行動していたが洋平の死後、同じく造反組である尾形と谷垣を追跡。谷垣が仕掛けた囮に気を取られ、襲撃してきた羆に爪で叩きつけられ、頭皮をめくられ左耳を削り取られる。尾形の援護射撃で何とか生還するも、直後に反乱分子の動向を追っていた鶴見の隊に捕縛され、造反の疑いで右耳を削がれる拷問を受けるが、「杉元を殺させてやる」という取り引きに応じて小宮(声 - 綿貫竜之介)が仲間であると告げ、鶴見の下に戻る。削がれた耳は常に携帯し、それを洋平に見立てて会話するという奇癖が生じており、たびたび鶴見の癇に障っていたが、江渡貝より口元にその耳を付けられた人皮製ヘッドギアを製作され装着するようになる。鶴見の左耳が洋平(実は自分の耳)に似ていると言い、片方では可哀相なので欲しがる。鶴見が死亡した時は左耳をくれてやると約束を取り付けている。 夕張での贋物刺青人皮作製の証拠隠滅時、杉元への執着が仇となり土方の一撃で右足を失う。その後は鎮痛剤のモルヒネの過剰服用により情緒不安定で幼児のような発言が目立つ。有坂中将により、右足には散弾を仕込んだ義足を装着するようになった。網走監獄襲撃時に杉元を追跡し、一対一で戦うが、今度は耳と会話する奇癖が仇となり、義足の散弾を杉元に利用され右手を失い入院。見舞いに訪れた鶴見から「杉元は網走で死んだ」と聞かされ、生きる意味を見失い傷心となる。有坂中将から箸入りの義手を贈られ、元気になるようにと有坂の友人の長井が発見したメタンフェタミンを投与される。 鯉登 音之進(こいと おとのしん) 声 - 小西克幸 少尉。歩兵第27聯隊。父親は大日本帝国海軍大湊要港部司令官・鯉登平二少将。士官学校卒の新任 で、上級指揮官への道が約束されたエリート。鶴見お気に入りの薩摩隼人で自顕流の使い手。父親譲りの褐色肌で整った顔立ちで、将校でも坊主頭が基本の帝国陸軍において、髪を伸ばしている。鶴見に心酔しており、月島にねだって手に入れた鶴見のブロマイドを胸ポケットに忍ばせている。興奮すると猿叫を上げる、聞き取れないほど早口の薩摩弁になってしまう等、鶴見との会話に支障が出るため、月島に仲介させている。良くも悪くも坊ちゃん育ちで少々子供っぽく、杉元に負けず劣らず血の気が多いが、部下思いでもある。鶴見から詰めの甘さを度々指摘されている。船酔いする体質だが、バランス感覚や体幹、体力に優れ身体能力は高い。 父親が親友同士の尾形について、その性格を大嫌いだと言い切る。 白石と熊岸の交換のために旭川に来たという犬童を偽物と気づき銃殺、気球隊 の試作機を強奪し逃走を図る杉元や白石を追跡し同機に飛び乗る。自顕流による猛襲で杉元を追い込むが、アシㇼパの矢や白石の飛び蹴りを受け森に落下し彼らの逃走を許す。その後、鶴見に小樽での囚人狩りへの随行を命じられ、稲妻強盗の刺青人皮の入手に多大な貢献を果たした。 網走監獄襲撃後、鶴見の命令で杉元たちと共に樺太へ渡りアシㇼパを追跡することになる。豊原では曲馬団「ヤマダ一座」の公演に軽業芸で出演、貴公子然とした容姿と軽業の神様とまで評された才能で観客を魅了し、山田座長から曲馬団への残留を請われたが、鶴見への忠義心からそれを断った。 13歳年上の兄・鯉登 平之丞海軍少尉を日清戦争の黄海海戦で亡くしており(松島乗艦)、船に乗ると兄の戦死時の状況を思い浮かべてしまい、酔うようになった。 14歳の夏、鹿児島で鶴見と出会い、西郷隆盛の墓地まで案内する(兄・平之丞の墓も同じ墓地内にある)。その時に鶴見から月寒あんぱんをもらって一緒に食べ、「また偶然会えたら、お互い友人になれという天の声に従おう」と言われて別れる。海軍兵学校を受験するために海城学校に通っていたが、16歳の夏に函館でロシア人により誘拐されたところを鶴見に助け出されたことに感銘を受け、進路希望を海軍から陸軍に変更し、陸軍士官学校を受験して合格する。実はその誘拐は、鶴見が配下の菊田・月島・尾形を使って実行した狂言誘拐だった。覆面をした誘拐犯に言われた「барчонок」(金持ちの子、ボンボンの意)と、樺太からの帰路で尾形に言われた「барчонок」が一致したことから狂言誘拐を察し、鶴見に疑問を持つようになる。 宇佐美 時重(うさみ ときしげ) 声 - 松岡禎丞 上等兵。歩兵第27聯隊。明治28年に14歳。鶴見に心酔する青年で両頬に対称的に大きなホクロがある。武闘派。農家の生まれで家族仲も円満であったが、鶴見によれば攻撃性が高く忠実で、後悔や自責の念を感じない「生まれながらの兵士」。嫉妬深く、猟奇殺人を犯す人間の心理をも理解する。網走監獄に新人看守として潜入していたが、門倉にバレて任務半ばで脱出。罰として鶴見にホクロを頭に見立てた棒人間を描かれたが、逆にそれを喜び、消えぬよう刺青にしている。 鶴見と同郷で新潟出身。同じ新発田の柔道道場に通っていた鶴見に当時から心酔し、12歳の時に鶴見をめぐる嫉妬から友人・高木 智春を殺害。鶴見は自分の馬が蹴り殺したとして宇佐美を庇った。結果、その高木の父が第二師団で鶴見より高い地位にいたため鶴見は第七師団に左遷された。尾形より年上で、共に日露戦争へ従軍している。 菊田 杢太郎 (きくた もくたろう) 特務曹長。オールバックの壮年の男で作中で数少ない常識人。上着の下には、日露戦争の際にロシア将校から鹵獲した多数の銃(ナガンM1895)を纏う。二丁拳銃使い。登別温泉での都丹庵士戦以降は彼から奪ったスカーフを首に巻く。日露戦争の傷を癒やすため、陸軍の保養所のある登別温泉で療養している。 野良坊菜の生産地(東京近郊)の出身。家が貧乏という理由で帝国陸軍に入隊、日清戦争にも参加している。その際に同じく従軍していた弟を病気で亡くし、その死を自分が軍へ誘ったためであると後悔している。1901年頃、第一師団所属の軍曹で陸軍士官学校の候補生の指導をしていた。その頃に東京に出てきたばかりの杉元に出会っている。杉元を「ノラ坊」と呼び、花沢勇作の見合いの替え玉として杉元を使う事を思いつき、帝国ホテルへ見合いに行かせた。菊田曰く杉元の顔は品があるとの事。見合いの一件が終わり、別れ際「もう自分を許して前に進んだら?」と言う杉元に弟の姿を重ね、弟の遺品の軍帽を杉元に贈った。その後第七師団に異動を命じられ、鶴見の配下となり、函館での鯉登狂言誘拐やアイヌの金塊強奪事件の現場に立ち会う。実は中央のスパイで、異動は鶴見の監視が目的であり、また金塊を入手したら鶴見を暗殺する指令を受けている。 有古 力松(ありこ りきまつ) 有古力松は和名であり、本名はイポㇷ゚テ(アイヌ語: ipoptep)。有古イポㇷ゚テと表記されることもある。 一等卒。北海道アイヌ。褐色の肌やポニーテール、顔を斜めに通る裂傷痕が特徴。登別温泉近くに自分のコタンがある。 日露戦争の2年前、青森で起こった八甲田雪中行軍遭難事件の遭難者遺体を捜索したアイヌ隊の一人で、日露戦争に参加した63人のアイヌのうちの一人でもある。帰属意識は低い。奉天会戦では塹壕に菊田と残された。戦後、菊田とともに登別温泉で療養している。 父親がアイヌ惨殺事件の被害者であり、そのことで土方に勧誘されたが、鶴見に家族を人質に取られ、二重スパイのような状態になっている。 尾形と土方陣営で再会した際、鶴見たちを裏切るとは意外だと言われ、有古も尾形が裏切るとは思わなかったという会話を交している。
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