第七巻 - 第十巻
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/14 17:13 UTC 版)
新しい格闘の潮流は日本だけに渦巻いているのではなかった。まず泉宗一郎が襲われ、右目を潰され敗北。次には松尾象山が謎の男に挑戦され、割って入ったレスラー伊達潮雄が重傷を負った。そして山中で技を磨いていた姫川の前にも刺客が現れ、付き人の加藤が倒された。敵の正体は葵三兄弟、絶えたと信じられていた古武術葵流をアメリカで秘密裏に受け継いできた男たちが、先代伝承者の死とともに表舞台への復活を望んで日本に渡ってきたのだ。 一方、文七の前にはかつて拳を交え、共闘したこともある柔道家、梅川丈次が現れた。梅川は、葵流が表舞台に現れた理由は葵流の先代伝承者、葵左門を自分が新たに習得した技で破ったからだと語った。梅川が習得した新技術はブラジリアン柔術で、それは当時の大半の格闘家にとって未知の技であった。同じころ、ブラジルからガルシーア柔術の総帥、ホセ・ラモス・ガルシーアが来日した。松尾象山はこの状況を「空手が試される」と表現し、格闘技にとっての新たな時代の幕開けを予言した。 血気にはやる格闘家たちの思いを汲むかのように、ふたつの小規模なトーナメントが開催された。まずは東洋プロレス主催のトーナメントだが、出場者は梅川丈二、東洋プロレスの実力派レスラー風間浩二、北辰館の前年のトーナメント優勝者である立脇如水、そして葵三兄弟の長兄にして伝承者である葵文吾であった。梅川は風間の奇襲で窮地に陥るも脱出し、マウントポジションからの絞め技で勝利する。しかし文吾も立脇をマウントポジションからの打撃で倒し、葵流の底知れなさを見せつける。2人の決勝戦は実力伯仲であったが、やがて危険な技の応酬が繰り広げられる格闘技の試合を逸脱した展開になり、試合中止となる。 時をおいて行われた北辰館の小規模トーナメントでは、まず文七と梶原が相まみえた。再び実現した因縁の対決であったが、真剣勝負にこだわって成長してきた文七は、すでに目突き、金的蹴りすらも想定した殺人技術の集大成たる武術に目覚めており、文明的なルールに心が縛られた梶原では相手にならなかった。だが文七は試合中、梶原にその片鱗をわざと見せることで、梶原を同じステージに上らせようとする。試合終了後、「俺も行くぞ、俺も行く」この敗北から梶原もまた、文七と同じステージに上ることを決意していた。次の試合では姫川が葵三兄弟の三男、葵飛丸を捨て身の作戦で倒し、勝ち上がる。決勝戦は文七と姫川の対戦になったが、試合前の文七の控え室に予期せぬ乱入者があった。梅川戦で受けた傷も癒えぬままの葵文吾であった。 文七と文吾の控え室での闘いは凄惨を極めた。歯が砕け、骨が折れる血みどろの戦いを制したのは文七であった。しかし大ダメージを負っていたにもかかわらず、極度の興奮状態にあった文七は控え室を出て、対姫川戦のリングに上がる。姫川は文七が普段の調子ではないことに気づいているようだが、一切手を抜かず文七を圧倒。そのさなか、姫川がふと見せた笑顔に文七は心の底からの恐怖を覚え失禁、あまつさえ脱糞に至るがそこで意識を取り戻した葵文吾が乱入しようとし、試合は中断される。試合自体はノーコンテストとなったが完敗を自覚した文七は抜け殻のようになり、失踪する。
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