その三
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 06:15 UTC 版)
道綱が15歳になったころ、珍しくあの方が顔を見せるが、またそのままずっと来なかった。私は前より一層憂鬱になり、死にたいと言うばかりになったが、あとに1人残る道綱がどんな思いをしてさすらう事になるかを考え、それも出来なかった。「まあ、形でもかえて、世を離れたらと思うのだけれど」と私が独り言のように言うと、まだ深くは分からない道綱も悲しそうに、「そうおなりになったら、まろも法師になりとうございます」と目に涙をいっぱい溜めている。私はそれを見て、その話を冗談にしてしまおうと、「そうなって鷹も飼えなくなられたら、どうしますか」と訊くと、道綱はいきなり立ち上っていって、自分の飼っている鷹を籠から出して矢のように放してしまった。それを傍で見ていたもので泣き出さないものはなかった。
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