日本のタクシー 問題点

日本のタクシー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/29 08:47 UTC 版)

問題点

交通事故の多さ

一般車に比べ事故が非常に多く、1台あたりの事故件数は全自動車と比べて8倍以上と極めて高い。原因として強引な運転や、疲労運転が挙げられる(いずれも道路交通法違反)。「1台あたりの走行距離が長いから、事故が多くみえるに過ぎない」との主張もあるが、走行距離あたりの事故件数で比較してもタクシーの事故率が突出している(2003年の時点では走行100万kmあたりタクシーの事故件数1.704件に対して、全自動車は1.195件[41])。

ドライバーの賃金問題

法人タクシードライバーの賃金は累進歩合制がほとんどであり、これに対して国土交通省は変更を勧告する通達を繰り返している。累進歩合制給与とは、売上高に応じて累進的に給与が加算される能力給制度の一種であるが、ベースとなる固定給が極めて低いのがタクシー業界の一般的特徴である。モータリーゼーションの進行でマイカーの所有が国民の多数に浸透してきたことと近年の規制緩和でタクシー台数が増やされたことをあわせると、限られたパイを取り合う構図になり、満足な収入を得られるのは一部の優れたドライバーに限られ、ほとんどのドライバーは極めて少ない収入となる(矢貫隆が『カーグラフィック』誌に2006年12月号より連載している「京都・タクシードライバー日記」によると、例えば1か月毎日12時間以上働いても売上高が30万円、賃金が手取り8万円というような状態が珍しくないという)。この問題に関連して、大阪府内の法人タクシーの運転手4人が、規制緩和による過度な増車等によって収入が低下し、労働条件の悪化と交通事故の増加を招いたなどとして、増車・運賃値下げの許認可取り消しと、1人当たり約50万円の損害賠償を国に対し求める訴訟を、2005年10月に大阪地裁に起こしたが、同地裁は2009年3月25日に、「規制緩和があったからといって、供給過多や極端な運転手の給与水準の低下があったとは認められない」として、訴えを棄却した[42]。しかし、2008年には国土交通省が現在までの増車により発生した過当競争を緩和する目的で減車を行う新制度を作り、台数が多すぎる地域を「特定地域」と設定して制限しようとするなど、司法、行政間の見解で矛盾が生じている。

運賃にまつわる問題

一部のタクシー事業者では、その地域の一般的なタクシーの運賃より割安な運賃を設定していることがある(ワンコインタクシーなど)が、この動きに対しては、過当競争につながるなどとして、「タクシー適正化・活性化特別措置法」が2014年1月に改正され、国土交通省の定めた公定幅運賃での営業が義務付けられた。従わない場合は車両の使用停止などの行政処分が行われる可能性がある。

こうした国の動きに反発する形で、割安なタクシーを運営する一部の事業者は、公定幅運賃を下回る運賃を申請したり、運賃変更命令や車両使用停止命令などを出さないよう訴訟を起こしたりするなどの行動をとっている[43][44][45][46]

客待ち独占問題

タクシー事業者の中には、鉄道事業者系などを中心として、構内での客待ちを独占し、他のタクシー事業者の乗り入れを排除するケースが見られる。2014年10月31日には、神戸電鉄系のタクシー会社である神鉄タクシーが、神戸電鉄のに自社以外のタクシー事業者が乗り入れることを排除したことが独占禁止法違反に当たるとの判決が、大阪高等裁判所で言い渡されている[47]。ただし、駅の乗り場が鉄道会社の私有地であるのか自治体等の公有地なのかによっても判断が変わりうる可能性があることは留意すべきである(私有地である場合は不法侵入と判断される可能性があるため)。

なお、大都市圏を中心にオフィスビルや病院等とタクシーの事業者あるいは無線組合と契約の上で車寄せを乗り場としている場合もあり、こちらの場合は乗り場が私有地であるため契約のない事業者が排除されることに法的な問題はないが、一方でこのような契約があることを理由に待機車がいないときの呼び込みを拒否する例もある(ただし、乗客からの直接の申し込みではないので乗車拒否にはならない)。

乗務員の質、素行の悪さ

1969年頃の日本では、タクシーの乗務員が女性客を車内に閉じ込めて暴行に及ぶ事件が続発。「オオカミタクシー」と呼ばれる時代があった[48]。もっとも日本国外では珍しいことではなく、2017年から2018年の間にアメリカの配車サービス、ウーバーで発生した性的暴行被害は5981件に達している[49]

タクシーを標的とする犯罪

乗車中は密室となることもあり、客による暴行事件、客を装った者による強盗傷害事件はしばしば発生する。2016年度に日本国内で発生したタクシー強盗の発生件数は97件発生、うち88件が逮捕されている[50]

主なタクシー強盗殺人事件


注釈

  1. ^ (有償運送) 自家用自動車(事業用自動車以外の自動車をいう。以下同じ。)は、次に掲げる場合を除き、有償で運送の用に供してはならない。
  2. ^ それらに加えて規模の大きい都市においては、大きい幹線道路の左端にタクシーの乗り場専用レーンが設けられている場合もある。
  3. ^ 地域によっては申し出さえすれば、(条件が許す限りではあるが)順番の変更が受け入れられる場合もある。誘導係員がいない場合は、先頭から順に使えるか確認していって使用できる車まで移動する方が(トラブルを避ける意味でも)望ましい。
  4. ^ 都内の大手タクシー会社では、グループに自動車教習所や提携教習所があり、ここで二種免許取得のための教習が可能。
  5. ^ 「この期間を終える前に退職した場合、取得費用を返還しなければならない」という書面契約を行う場合がある。
  6. ^ 1970年代に個人タクシーで用いられたマークII(X10系まで)やスカイライン(C10・C110・C210系)などでは、下級グレードを中心に後部座席のヘッドレストを装備していない車種が多かったため、基準を満たすためにメーカー・ディーラーでヘッドレストの後付けが行われていたと推測される。
  7. ^ プリウス(20系:185/65R15、30系・50系:195/65R15)、ノア・ヴォクシー・エスクァイアおよびセレナ(195/65R15)、ノート(185/65R15、ただしE13系は標準だがE12系以前はオプションホイールまたは社外ホイール装着時)等の例がある。
  8. ^ 京成グループに所属するが、車体や行灯にはK'SEI GROUPロゴを掲出していない(公式サイトには明記)。
  9. ^ ウォルト・ディズニー・カンパニーとの関係により京成グループ統一行灯を使用せずK'SEI GROUPロゴの掲示もしていない。また、その関係で京成タクシーホールディングス傘下ではない(が共同配車体制は敷かれている)。
  10. ^ 京成グループであるが、独立性が高くK'SEI GROUPロゴは用いていない。
  11. ^ 京成グループであるがタクシーの車体にはK'SEI GROUPロゴを使用していない。

出典

  1. ^ a b c タクシーの再編が加速 『日本経済新聞』 平成23年6月17日東京夕刊
  2. ^ タクシー自働車広告『日本全国諸会社役員録. 第21回』(国立国会図書館デジタルコレクション)
  3. ^ a b 齊藤俊彦『くるまたちの社会史』中央公論社〈中公新書〉、1997年、119-120頁。ISBN 4-12-101346-8
  4. ^ バス、タクシーのガソリン使用全面禁止(昭和16年8月21日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p81
  5. ^ ガソリン券の闇取引根絶措置(昭和15年9月21日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p81 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  6. ^ タクシー料金倍額に値上げ(昭和15年8月29日 朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p82
  7. ^ 代用燃料車への改装願いが殺到(昭和16年9月3日 東京日日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p82
  8. ^ 決戦に備えて旅行を大幅制限(昭和19年3月15日 毎日新聞(東京) 『昭和ニュース辞典第8巻 昭和17年/昭和20年』p783
  9. ^ 社団法人東京乗用旅客自動車協会・タッくんミニ情報2012年3月 No.230
  10. ^ a b 浅井建爾『道と路がわかる辞典』日本実業出版社、2001年11月10日、初版、250頁。ISBN 4-534-03315-X
  11. ^ 運輸政策審議会 「今後のタクシー事業のあり方について」(平成5年5月11日答申第14号)
  12. ^ 運輸省, “平成8年 運輸白書 第6章 人と地球にやさしい車社会の形成へ向けて 第2節 利用者ニーズに対応した車社会の形成へ向けて 1 自動車旅客輸送の活性化” (プレスリリース), https://www.mlit.go.jp/hakusyo/transport/heisei08/pt2/825206.html 2012年10月6日閲覧。 
  13. ^ 運輸省, “タクシーの活性化と発展を目指して ~タクシーの需給調整規制廃止に向けて必要となる環境整備方策等について~” (プレスリリース), 運輸省運輸政策審議会自動車交通部会答申, https://www.mlit.go.jp/kisha/oldmot/kisha99/koho99/taxi_.htm 2012年10月7日閲覧。 
  14. ^ 「突然新型メーター採用 近距離割増料はタダ」『朝日新聞』昭和45年(1970年)3月1日朝刊、12版、15面
  15. ^ 国土交通省自動車局旅客課, “タクシーに関するアンケート調査(資料中の設問に書かれている情報)” (プレスリリース), https://www.mlit.go.jp/common/001088425.pdf 2017年6月8日閲覧。 
  16. ^ 青鉛筆『朝日新聞』1976年(昭和51年)8月2日朝刊、13版、23面
  17. ^ 貨客混載 タクシーが荷物も宅配 北海道・旭川で全国初 毎日新聞(2017年11月1日)2017年11月7日閲覧
  18. ^ 「NEKO MOOK1903 特装大全」p.66 ネコ・パブリッシング 2013年3月発行 ISBN 978-4-7770-1403-3
  19. ^ 運賃カルテル:タクシー25社に初の認定 毎日新聞 2011年12月21日
  20. ^ 新潟市等に所在するタクシー事業者に対する排除措置命令及び課徴金納付命令について (PDF) 公正取引委員会 報道発表資料 平成23年12月21日(国立国会図書館のアーカイブ:2013年4月5日収集)
  21. ^ 中国人白タク 横行も検挙困難…スマホ決済で 数千人登録”. 毎日新聞 (2017年8月). 2017年11月12日閲覧。
  22. ^ 在日中国人の“白タク”行為が増加 格安料金だけではない「意外な人気」の理由”. デイリー新潮. 2018年2月27日閲覧。
  23. ^ 宿泊旅行統計調査”. 国土交通省観光庁. 2017年11月13日閲覧。
  24. ^ 訪日外客統計の集計・発表”. JNTO日本政府観光局. 2017年11月13日閲覧。
  25. ^ 敦賀のタクシー会社:脱原発議員の配車拒否し謝罪 - 毎日新聞(2014年1月15日付)
  26. ^ 相次ぐ大阪のタクシー強盗 週刊大阪日日新聞 2009年1月24日(Internet Archiveのアーカイブ:2009年4月8日収集)
  27. ^ 防犯対策進む県内タクシー 北日本新聞(Internet Archiveのアーカイブ:2013年5月11日収集)
  28. ^ 国内初、電気自動車タクシー登場 8月にも愛媛県で 47NEWS 2009年7月13日(Internet Archiveのアーカイブ:2009年7月22日収集)
  29. ^ タクシー乗降口の高さ規制廃止 国交省 - レスポンス、2011年3月31日
  30. ^ タクシー車両の基準緩和等について 国土交通省 報道発表資料 平成27年6月12日
  31. ^ ただし北海道小樽市のこだま交通では以前、ブルーバード(U14系)の4WD車や[1]スバル・レオーネレガシィの4WD車を導入していた。
  32. ^ サービス/製品一覧 - トーシンテック株式会社
  33. ^ タクシー無線局の構成 電波博物館 (電波適正利用推進員協議会)
  34. ^ タクシー無線のデジタル化 第48回移動体通信研究会 平成17年度(目黒会)
  35. ^ a b c d e ディジタル・タクシー無線機とそのシステム RFワールドNo.7 2009-09 pp.53-54(CQ出版
  36. ^ 沿革 移動無線センターについて(移動無線センター)
  37. ^ 世界に先駆けタクシー無線のデジタル化がスタート 〜タクシー事業者4社にデジタル化の変更許可〜 関東総合通信局 報道資料 平成15年11月19日(Internet Archiveのアーカイブ:2007年10月22日収集)
  38. ^ (有)大東タクシー様 旅客運送(移動無線センター)(同上:2009年10月27日収集)
  39. ^ モバイルクリエイト、タクシー自動配車システムでMVNOとして全国展開へ日本通信、MVNEとして地域発のMVNOを支援 日本通信 ニュースリリース 2009年6月19日(同上:2017年12月25日収集)
  40. ^ アナログタクシー無線局等のデジタル化について 総務省電波利用ホームページ(国立国会図書館のアーカイブ:2016年1月5日収集)
  41. ^ タクシーと全自動車の交通事故増加の推移
  42. ^ 「規制緩和で収入激減」タクシー運転手の訴え認めず 大阪地裁 産経新聞 2009年3月25日
  43. ^ MKタクシー「違法運賃」で国交省に申請 「公定幅運賃」下回る - 産経ニュースwest、2014年3月28日
  44. ^ [「値上げ強制は損害」 500円タクシー、国を提訴 朝日新聞 2014年4月29日
  45. ^ タクシー運賃幅は「違法」 エムケイなどが国提訴 - 産経ニュースwest、2014年5月1日
  46. ^ 運賃規制でタクシー会社提訴 - NHK福岡NEWS WEB、2014年5月8日
  47. ^ タクシー乗り場:乗り入れ排除は独禁法違法 大阪高裁判決 毎日新聞 2014年10月31日
  48. ^ 「またオオカミタクシー 客の少女を監禁」『朝日新聞』昭和44年8月27日夕刊、3版、11面
  49. ^ ウーバーの性的暴行被害、2年間で5981件”. CNN (2019年12月6日). 2020年9月29日閲覧。
  50. ^ タクシー業界の取り組み”. 全国ハイヤー・タクシー連合会 (2017年). 2020年9月29日閲覧。
  51. ^ 孫社長「危機的な状況だ」ライドシェア事業への国の規制を批判 - NHKニュース
  52. ^ ビジネス特集 波紋を呼ぶライドシェア - NHKニュース
  53. ^ オールラウンド仕様車”. ヤマハモーターパワープロダクツ. 2020年10月7日閲覧。
  54. ^ 狭い路地行く電気自動車タクシー、福山・鞆で全国初の営業運行”. 産経新聞社 (2019年4月18日). 2020年10月7日閲覧。





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