不正行為の具体例
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「科学における不正行為/del 20150613」の記事における「不正行為の具体例」の解説
時期事件名関係者名研究所大学事件内容補記1909年ピルトダウン人事件 1909年から1912年にかけてイギリスでチャールズ・ドーソン(英語版)によって旧石器時代の人骨が"発見"され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。偽造であったことが判明したのは、1953年になってのことである。 1926年サンバガエル捏造事件 オーストリアの遺伝学者パウル・カンメラー(英語版)は、19世紀初頭にラマルクが唱えた用不用説を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが、ピストル自殺した。 「ネオ・ラマルキズム」の項も参照。 1933年長崎医大博士号贈収賄事件 長崎医科大学 長崎医科大学教授だった勝矢信司は、1926年に同大教授に赴任して暫くして博士論文の指導や添削の謝礼として指導下の学生や博士号を取得する開業医から謝礼を受け取っていたが、やがてエスカレートして刀剣の鑑定料として多額の謝礼を受け取るばかりか、調度品を贈られたり旅行などで供応行為を受けていた。1933年に勝矢への贈収賄が発覚し、勝矢の指導下で医学博士を授与された開業医が検挙。更に勝矢ばかりか同大教授だった浅田一・赤松宗二も捜査を受け、勝矢ら三教授は辞任した(後に勝矢は免職処分となる)。 この事件の背景には長崎医大内での浅田ら東京帝大出身教授と勝矢ら京都帝大出身教授の対立があり、それが博士論文の審査にまで影響して公平性を失しているとの開業医の仮処分(結局却下)を切っ掛けとして発覚した。事態の発覚に伴い、学生や同窓生から全教授の辞任を要求する声が挙がり、一時は教授ばかりか助教授・講師・助手全員が辞表を提出する事態に発展。文部省は勝矢と彼の実弟を含めた四教授を辞職させ、小室要学長を更迭・高山正雄を新学長に就任させた。 1974年サマーリン事件 メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所(英語版) ウィリアム・サマーリン(英語版)が、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた。 1980年アルサブティ事件 イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師エリアス・アルサブティ(英語版)は、テンプル大学に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、ジェファーソン医科大学へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われ幾つもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された。 「査読」の項も参照。 1981年スペクター事件 コーネル大学 コーネル大学の大学院生マーク・スペクター (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授エフレイム・ラッカー(英語版)の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。論文が撤回されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった。 福岡伸一著「世界は分けてもわからない」に概要が記されている。 1981年クローンマウス事件 ジェネーブ大学のカール・イルメンゼー(ドイツ語版)とアメリカ・ジャクソン研究所のピーター・ホッペは、1977年にハツカネズミの体細胞から細胞核の移植によってクローン生物を生成することができると発表。これまで哺乳動物では不可能といわれていたクローンが哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せずさらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞することとなった。 1986年ボルティモア事件 マサチューセッツ工科大学 免疫学者テレザ・イマニシ=カリ(英語版)がデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だったデビッド・ボルティモアがその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠はみつからなかった」として告発は却下された。 この事件で、真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の研究公正局 (ORI) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。 1994年ピアース事件 イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した。 英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。 1997年ヘルマン・ブラッハ事件 フリードヘルム・ヘルマン(ドイツ語版)とマリオン・ブラッハ (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの内部告発によって発覚。ヘルマンとブラッハは詐欺の容疑で起訴されてたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した。 ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした。 2000年旧石器捏造事件 藤村新一が30年ほど前から発見していた旧石器の発見が捏造であったことが暴露された。影響が大きく、歴史教科書の修正をも余儀なくされた。 2002年ベル研シェーン事件 ベル研究所 ベル研究所の科学者ヘンドリック・シェーンが作成し2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が、後に捏造であることが判明し、全て撤回された。 ヘンドリック・シェーンはこの一件で、ベル研究所を解雇され、コンスタンツ大学からは博士の学位を剥奪された。 2002年7月Victor Ninov バークレー研究所 1999年に最重元素(超ウラン元素)が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回。 2004年12月 理化学研究所 実験データが改ざんされた不正論文があったとして記者発表されたが、裁判の結果、2010年4月に記者発表は取り消された。 2005年6月大阪大学医学部論文不正事件 大阪大学 2005年6月に、実験データの不適切な掲載を理由として、大阪大学医学部教授の下村伊一郎(内分泌・代謝内科)や竹田潤二(発生工学)らが発表していたNature Medicine誌の論文 (Nat Med. 2004 Nov;10(11):1208-15.) が撤回された。さらに、撤回されたNature Medicine誌の論文の筆頭著者の医学部生が執筆していた別のCancer Science誌での筆頭著者論文 (Cancer Sci. 2005 Jun;96(6):377.) も、不適切なデータが掲載されていたとして撤回された。2006年に、大阪大学は、竹田を1カ月の停職処分、下村教授を14日間の停職処分にした。撤回された2論文の筆頭著者の学生は、「実験に使ったマウスはいないので、実験を再現できない。実験の記録ノートもない」と話した。さらに、下村の研究室から発表されたScience誌の論文 (Science. 2005 Jan 21;307(5708):426-30) も、再現性が取れなかったとして、2007年10月に撤回された。 2005年7月 ノースカロライナ大学 1997年に刊行され、その後227回も引用された、コカイン症候群についての論文を撤回。 2005年9月多比良和誠川崎広明 東京大学 遺伝子の働きを制御するリボ核酸に関する論文について、疑義が浮上。2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた。 この不正行為から多比良は懲戒解雇されたが、解雇は不当として大学と裁判で争っているものの一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた。 2005年10月 マサチューセッツ工科大学 複数の論文や申請書に偽造データを使ったとして、新進の免疫学者が罷免された。 2005年12月 京都大学 ある教授の論文が、研究室の助手のデータを無断で使用して書かれたものだったと判明し、停職3ヶ月の処分となった。 2005年12月黄禹錫 ソウル大学 ファン・ウソク(黄禹錫)が行っていたクローン胚ES細胞研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回。黄禹錫はこの一件で、研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。 捏造が認定されたものの、NT-1株についての物質特許とES細胞の作成方法について、2011年にカナダ、2014年にアメリカで特許が成立している。なお、韓国ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている。 2006年1月Jon Sudbø ノルウェー・ラジウム病院 口腔ガンに関するJon Sudbøらの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明。 2006年1月杉野明雄 大阪大学 大阪大学大学院生命機能研究科教授の杉野明雄による論文不正が発覚し、懲戒解雇された。杉野の研究室の男性助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを杉野に改ざんされ、論文を米国の生物化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー (Journal of Biological Chemistry)」誌に投稿されたと指摘していた。男性助手はその後、毒物のアジ化ナトリウムを飲み自殺した。 2006年2月下村伊一郎、竹田潤二 大阪大学 大阪大学大学院生命機能研究科個体機能学講座病態医科学研究室。PTENマウス論文の捏造。 2008年論文贈収賄事件 名古屋市立大学 名古屋市立大学大学院医学研究科において、博士課程の論文審査をめぐる贈収賄が発覚した。名古屋市立大学教授の伊藤誠は、学位論文を提出した者から現金を受け取っていたとされ、名古屋地方裁判所で有罪判決を受けた。 2010年アニリール・セルカン 東京大学、JAXA 東京大学大学院工学系研究科の助教であったアニリール・セルカンの経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明。学位取り消し、懲戒解雇相当の処分が下された。 2010年森直樹 琉球大学 琉球大学教授の森直樹らの研究論文にデータ流用などの不正があった恐れがあるとして、論文が投稿された学術誌から指摘を3月に受け、同大学は4月に調査委を設置。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、森は8月に一旦懲戒解雇処分となったが、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった。 2011年服部良之 獨協医科大学 獨協医科大学教授の服部良之らの研究論文にデータ捏造などの不正があった恐れがあるとして同医大が調査委員会を設置し、4月末、服部を諭旨退職にした。 2012年藤井善隆 東邦大学 東邦大学の准教授で日本麻酔科学会に所属する医師藤井善隆が、1991年から2011年に発表した論文212本のうち、172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会の調査特別委員会が発表した。藤井は同年2月に東邦大で書いた論文に研究手続き違反があったとして、諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した。 前述のアルサブティ事件同様、査読による篩の限界が露呈されることとなった。 2012年ムン・ヒュンイン 東亜大学校 韓国、釜山の東亜大学校教授のムン・ヒュンインが、科学論文を科学雑誌に投稿した際に、ムン自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを、論文の査読者の連絡先として推薦し、自分自身で論文査読し、論文を受理させるという前代未聞の研究不正が発覚し、合計35報のムンの論文が撤回された。 2012年3月岡嶋研二原田直明 名古屋市立大学 名古屋市立大学の調査委員会は、1997年から2011年に発表された名古屋市立大大学院医学研究科教授の岡嶋研二、准教授の原田直明(二人は熊本大大学院医学薬学研究部に2005年まで在籍)の論文19本に実験画像の捏造や流用などの研究不正があったことを公表した。同大は、不正を主導したとして原田を懲戒解雇処分に、監督責任として岡嶋を停職6カ月の処分とした。熊本大学の調査委員会も同日、上記二人を含む合計4人が、熊大在籍中に論文不正に関与していたと発表した。 2012年森口尚史 東京大学医学部附属病院 東京大学医学部附属病院特任研究員の森口尚史がiPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を6件実施したと発表したが、うち、5件が虚偽であることが発覚し、東京大学医学部附属病院から懲戒免職処分を受けた。 2013年4月京都府立医科大学における論文不正事件 京都府立医科大学 京都府立医科大学の調査委員会(委員長は、木下茂副学長)は、循環器・腎臓教室の元教授の研究室から発表された14報の基礎研究論文に実験画像の改竄などの研究不正が見つかったとし、同教授に退職金の返還を求めることを発表した。一方、同教授は、画像の捏造や改竄については否定し、大学のずさんな調査で事実誤認がなされたと、大学を批判した。 2013年ディオバン事件 京都府立医科大学慈恵医科大学滋賀医科大学千葉大学名古屋大学 京都府立医科大学教授の松原弘明らが行った高血圧治療薬(降圧剤)バルサルタン(商品名「ディオバン」)の臨床研究において、その薬に有利になるようにデータが人為的に操作されていた。一例を挙げるとカルテには記載がなかった病気が論文データには作為的に書きこまれており、そうした捏造によって「他の降圧剤に比べ脳疾患や心臓病のリスクが減る」などと虚偽の結論を導きだしていた。松原は2月に辞職した。問題が報道され社会問題化してから、京都府立医科大学が正しいデータを使い検証し、この論文に書かれているような結果は得られなかったのでそれを7月に発表し、病院長・学長・副学長らが報道陣の前で謝罪した。この臨床研究には、この薬の販売元の製薬会社であるノバルティスファーマの日本法人社員が、その肩書を伏せて研究にかかわっていた。そしてこの問題の社員は京都府立医科大の臨床研究だけでなく慈恵医科大学、千葉大学、名古屋大学、滋賀医科大学で行われた臨床研究にも、ノバルティス社所属という身分を隠して参加し、論文作成にも関与していた。イギリスの一流医学誌『ランセット』は、大学による調査によってデータの操作が明白になったことなどを受けて「研究の信頼性を疑うのに十分だ」とし、以前に同誌に掲載した慈恵医大などが作成した論文などの撤回措置を取ることになった。 2013年東京大学分子細胞生物学研究所における論文不正事件加藤茂明研究室 東京大学分子細胞生物学研究所 東京大学分子細胞生物学研究所における論文不正に関する、科学研究行動規範委員会による調査の中間報告において、1996年~2011年に発表された51報の論文に科学的な適切性を欠いた画像データの使用がされていたと判断され、合計210カ所の画像の流用、転用、貼り合わせ、不掲載、消去、過度な調整など認められることが発表された。また、そのうち43報には、画像編集ソフトで複数の画像を貼り合わせ一つの画像に見せかけるなどの操作があり、研究不正(改ざん)と判断され、残り8論文は不注意によるものだとされた。また、平成25年12月11日現在で、すでに13報の論文が当事者らにより撤回されている。 この一件で、加藤は東京大学教授を依願退職した。 2014年柳澤純研究室 筑波大学生命環境系国立環境研究所 2012年に論文の不正が指摘され、大学が調査委員会を設置。論文に用いられていた4つの画像に改ざんが発見された。 この一件で、柳澤純は筑波大学教授を依願退職した。村山明子は筑波大学講師を辞職。立石幸代は国立環境研究所を雇い止め(事実上の解雇)。後に柳澤純は停職6月相当、村山明子は諭旨解雇相当、国立環境研究所は頬被りし立石幸代を処分しなかった。 2014年小保方晴子博士論文盗用剽窃事件(早稲田大学博士論文不正問題) 早稲田大学 小保方晴子が2011年3月に学位取得した博士論文について、約20ページ分の文章が、幹細胞に関する一般向けウェブサイトからのコピー・アンド・ペーストであること、論文の画像がバイオ系企業ウェブサイトの画像に酷似していること、参考文献リストを別の論文からコピー・アンド・ペーストしたため意味不明な内容になっている、などが指摘された。また、副査である外部審査委員が論文を読んでないことも報道されており、審査過程にも疑問があがっている。これらの指摘を受けて大学院先進理工学研究科は予備調査を進め、3月17日に調査委員設置を大学に要請。3月31日には調査委員会が設置され、処分を検討することになった。 本件はSTAP研究の不正疑惑に伴い発覚しており、博士論文に関連した論文においても、遺伝子の解析結果を示す画像を不適切に使い回していることが発覚。2014年3月に共著者のチャールズ・バカンティは、実験データを示す複数の画像や画像の説明内容を訂正している。 2014年先進理工学研究科博士論文における盗用剽窃事件(早稲田大学博士論文不正問題) 早稲田大学 小保方が所属していた研究室を中心に、他の学生の博士論文においても盗用剽窃が発覚した。このため早稲田大学は、先進理工学研究科280本の博士論文も調査することになった。 2014年STAP研究不正事件(小保方晴子、他) 理化学研究所 2014年1月末にSTAP研究が発表されたが、様々な論文不正の疑義から6月に論文は撤回され、7月2日にはネイチャーにより取り下げられた。理化学研究所の調査により、5月に小保方晴子による画像2点の不正、及び笹井芳樹と若山照彦の監督責任が確定し、懲戒委員会で処分が検討されていた。しかし調査委員会の解散後も論文不正以外の実験への疑惑が生じ、各種遺伝子解析からES細胞やTS細胞による捏造の疑いが強まっていた。 小保方逮捕の可能性も報道されていた中、理化学研究所は6月30日には科学的な疑義に対する予備調査を開始。合わせて7月1日から検証実験へ小保方を参加させることになり、現在は処分の検討が停止している。最中、8月5日に笹井芳樹が自殺をした。 この騒動は多くのメディアで盛んに取り上げられるとともに、法案提出延期や、センター解体が提言される事態にも発展し、行政や政治家も関係する事件となった。また、ネットの集合知や内部告発による不正の解明も話題になり、研究者倫理や科学界のあり方にも課題を投げかけている。現在ではシェーン事件やファン・ウソク事件と共に世界三大研究不正の一つとみなされつつある。 2015年論文不正指摘問題 東京大学・大阪大学など 東京大学や大阪大学の研究グループが発表した生命科学系の論文のうち約80本について、人為的な加工や剽窃などが疑われる画像が掲載されていることが相次いでインターネット上で指摘された。これを受け大阪大学のほか、九州大学が論文の予備調査を開始。このうち大阪大学は2015年4月8日までに、「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った。 サミュエル・ジョージ・モートン - 西欧人種の優越性と他民族支配の正当化を目的として、頭蓋骨容積の人種間比較データを捏造し発表。 ジョン・ロング ヴィジェイ・ソーマン 松本和子 - 研究費の不正受給が指摘された。
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不正行為の具体例
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「科学における不正行為」の記事における「不正行為の具体例」の解説
詳細は「科学における不正事件一覧(英語版)」を参照 大きく一般報道された事案や、その後の研究に大きな影響を与えた事件を中心に取り上げる。最終的に不正が認定されなかった事案を含む。 時期事件名関係者名研究所大学事件内容補記1909年ピルトダウン人事件 1909年から1912年にかけてイギリスでチャールズ・ドーソンによって旧石器時代の人骨が"発見"され、「ピルトダウン人」と名づけられたが、捏造された偽造化石の可能性が当初から疑われていた。1953年に初めて偽造と判明した。 1926年サンバガエル捏造事件 オーストリアの遺伝学者パウル・カンメラー(英語版)は、19世紀初頭にラマルクが唱えた用不用説を証明するために、サンバガエルを水中で交尾させることで婚姻瘤の発現が見られることを発表。ところが、他の研究者の検証によって婚姻瘤がカエルの足に着色することによる捏造だったことが判明。カンメラーは自らを陥れるための陰謀だと主張したが受け入れられず、ピストル自殺した。 「ネオ・ラマルキズム」の項も参照。 1933年長崎医大博士号贈収賄事件 長崎医科大学 長崎医科大学教授だった勝矢信司は、1926年に同大教授に赴任して暫くして博士論文の指導や添削の謝礼として指導下の学生や博士号を取得する開業医から謝礼を受け取っていたが、やがてエスカレートして刀剣の鑑定料として多額の謝礼を受け取るばかりか、調度品を贈られたり旅行などで供応行為を受けていた。1933年に勝矢への贈収賄が発覚し、勝矢の指導下で医学博士を授与された開業医が検挙。さらに勝矢ばかりか同大教授だった浅田一・赤松宗二も捜査を受け、勝矢ら三教授は辞任した(後に勝矢は免職処分となる)。 この事件の背景には長崎医大内での浅田ら東京帝大出身教授と勝矢ら京都帝大出身教授の対立があり、それが博士論文の審査にまで影響して公平性を失しているとの開業医の仮処分(結局却下)をきっかけに発覚した。事態の発覚に伴い、学生や同窓生から全教授の辞任を要求する声が挙がり、一時は教授ばかりか助教授・講師・助手全員が辞表を提出する事態に発展。文部省は勝矢と彼の実弟を含めた四教授を辞職させ、小室要学長を更迭・高山正雄を新学長に就任させた。 1974年サマーリン事件 メモリアル・スローン・ケタリング癌研究所(英語版) ウィリアム・サマーリンが、ネズミの皮膚にマーカーペンで黒い点を複数描き、皮膚移植が成功したかのように見せかけた。 1980年アルサブティ事件 イラクからヨルダンを経てアメリカ合衆国へ留学した医師エリアス・アルサブティは、テンプル大学に研究職のポストを得るものの成績が振るわず失職。その後、ジェファーソン医科大学へ移籍したが、そこで実験データの捏造が発覚。大学を追われいくつもの研究機関を転々とするものの、その際に無名の学術雑誌に掲載されていた論文を多数盗用し別の無名の学術雑誌に投稿することを繰り返した。そのうち60数件が実際に掲載されアルサブティの実績となってしまったものの、アルサブティの技能の拙さに不審を感じた同僚研究者の調査や元の論文著者の抗議から事態が発覚。医師免許を剥奪された。 「査読」の項も参照。 1981年スペクター事件 コーネル大学 コーネル大学の大学院生マーク・スペクター (Mark Spector) は、ガン発生のメカニズムについて新発見をしたと発表。指導教授エフレイム・ラッカー(英語版)の指導の下スペクターは次から次へと成果を挙げたものの、実験データの不自然さと追試が成功しなかったことから実験データの捏造が発覚。論文が撤回されたばかりか経歴詐称までも判明し、スペクターは退学処分となった。 福岡伸一著「世界は分けてもわからない」に概要が記されている。 1981年クローンマウス事件 ジェネーブ大学のカール・イルメンゼー(ドイツ語版)とアメリカ・ジャクソン研究所のピーター・ホッペは、1977年にハツカネズミの体細胞から細胞核の移植によってクローン生物を生成することができると発表。これまで哺乳類では不可能といわれていたクローンが、哺乳動物でも可能ということで世界的に反響をもたらしたが、他の実験者による再現実験では成功せず、さらにイルメンゼーがデータを故意に操作していたとの内部告発もあり、1981年にイルメンゼーの一連の研究は「捏造とは断定できないものの、信頼性に重大な疑問が残る」という調査結果を発表。イルメンゼーへの研究助成は打ち切られ、その後大学の職を辞する事となった。この事件以降、一時的にクローン生物研究は世界的に下火となった。 1986年ボルティモア事件 マサチューセッツ工科大学 免疫学者テレザ・イマニシ=カリがデータを捏造したと部下が告発したが、イマニシの属していた研究室の主宰者だったデビッド・ボルティモア(ノーベル賞受賞者)がその告発を受け入れなかった。一度は有罪とされたが、再審査においては「証拠は見つからなかった」として告発は却下された。 この事件で、真相究明が難航したことが、アメリカ合衆国の研究公正局 (ORI) の前身となった機関である科学公正局の設立のきっかけとなったとも言われることがある。 1994年ピアース事件 イギリスの産科医師ピアース (Malcolm Pearce) が、臨床例を捏造して、それをもとに論文を作成し、自身が編集委員を務める英国産科婦人科学会誌に発表した。編集委員長を論文共著者としていたが (= gift authership)、その編集委員長が辞任した。 英国が科学者による不正行為の対策に本格的に取り組むきっかけとなったともいわれる。 1997年ヘルマン・ブラッハ事件 フリードヘルム・ヘルマン(ドイツ語版)とマリオン・ブラッハ (Marion Brach) が、1988年から1996年の間に発表した細胞成長に関する37論文で、デジタル画像の捏造やデータ操作・偽造が行われたことが、両者の研究スタッフからの内部告発によって発覚。ヘルマンとブラッハは詐欺の容疑で起訴されたが、結局援助されていた資金を返還することで和解した。 ヘルマンとブラッハの研究はドイツ研究基金とドイツ癌研究援助基金から多額の資金援助を受けていたこともあり、5年後に発覚したベル研シェーン事件を含めてドイツ科学界に大きな影響を及ぼした。 1998年MMRワクチン捏造論文事件(英語版) アンドリュー・ウェイクフィールドが「新三種混合ワクチンの予防接種で自閉症になる」論文が『ランセット』に掲載された。12人の子供の患者を対象に研究し、「腸疾患」と「自閉症」と「三種混合ワクチン」が関連した新しい病気「自閉症的全腸炎(autistic enterocolitis)」を発見したと報告した。この論文掲載に対して『ランセット』は激しい批判に晒された。2004年2月に『ランセット』は、同論文の一部撤回を発表し、2010年に『ランセット』は、この論文を正式に撤回した。 イギリス・アメリカ合衆国・カナダ・オーストラリア・ニュージーランドにおいて、ワクチン接種が激減、麻疹 に感染する子供が増加した。アンドリュー・ウェイクフィールドは、イギリスの医師免許剥奪の懲戒処分を受けた。 2000年旧石器捏造事件 藤村新一が30年ほど前から発見していた、旧石器の発見が捏造であったことが毎日新聞のスクープによって暴露された。 発覚の影響は大きく、検定済教科書において、歴史教科書の記述削除を余儀なくされた。 2002年ベル研シェーン事件 ベル研究所 ベル研究所の科学者ヘンドリック・シェーンが作成し2000年から2001年にかけて『サイエンス』誌に掲載された論文10編および『ネイチャー』誌掲載の論文7編が、後に捏造であることが判明し、全て撤回された。 ヘンドリック・シェーンはこの一件で、ベル研究所を解雇され、コンスタンツ大学からは博士の学位を剥奪された。 2002年ヴィクトル・ニノフ バークレー研究所 1999年に最重元素(超ウラン元素)が発見されたとしていた研究の実験データが偽造されていたと判明し、論文を撤回。 2005年大阪大学医学部論文不正事件 大阪大学 2005年6月に、実験データの不適切な掲載を理由として、Nature Medicine誌の論文 (Nat Med. 2004 Nov;10(11):1208-15.) が撤回された。大阪大学は、筆頭著者の大学院生を実行犯と認定し、監督者の教員2名は停職処分にした。一方、実行犯と認定された筆頭著者が関与していない別の論文 (Science. 2005 Jan 21;307(5708):426-30) も、再現性が取れなかったとして2007年10月に撤回された。 2005年東京大学工学部のRNA研究室の事件 東京大学 遺伝子の働きを制御するリボ核酸に関する論文について、疑義が浮上。日本RNA学会が東京大学に調査を依頼した。反証として提示したABIのシークエンサーのデータが、データ作成当時はABIから販売されていなかったはずの新しいバージョンのソフトウェアを用いて作られたものであったことなどから、2006年3月に「データは偽造された可能性が高い」とされた。 この不正行為から東京大学は教授と助教を懲戒解雇したが、教授は解雇は不当として東京大学と裁判で争っていた。一審・二審ともに教授側の責任を認め「解雇は妥当」と結論付けた。 2005年ES細胞論文不正事件 ソウル大学 黄禹錫(ファン・ウソク)が行っていたクローン胚ES細胞研究に疑義が発生。2006年1月に調査委員会により捏造だと断定され、論文は撤回。黄禹錫はこの一件で、研究助成金など8億3500万ウォン(約6500万円)を騙し取ったと認定され、懲役2年、執行猶予3年の有罪判決を受けた。 捏造が認定されたものの、NT-1株についての物質特許とES細胞の作成方法について、2011年にカナダ、2014年にアメリカで特許が成立している。なお、韓国ではNT-1株の存在が認められておらず、訴訟が続いている。後の検証でES細胞の作製と世界初となるヒトの単為生殖に成功していたことは認められたが、論文が不正であり、論文に記された作成に至る経過とは関係なく偶然できた物と検証されたため、世界初の業績であるとはみなされていない。 2006年Jon Sudbø ノルウェー・ラジウム病院 口腔癌に関するJon Sudbøらの医学論文において、偽造データが使われていたことが判明。 2006年杉野明雄 大阪大学 大阪大学大学院生命機能研究科教授の杉野明雄による論文不正が発覚し、懲戒解雇された。杉野の研究室の男性助手を含む複数の共同論文著者らは、研究データを杉野に改竄され、論文を米国の生物化学専門誌「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー (Journal of Biological Chemistry)」誌に投稿されたと指摘していた。男性助手はその後、毒物のアジ化ナトリウムを飲み自殺した。 日本分子生物学会で研究不正問題に関するシンポジウムが開かれる契機となった。 2006年松本和子 早稲田大学 研究費の大量流用が行われた。内閣府の要職も務めていた者の事件であったことから、この事件は国の研究資金の管理が厳しくなる大きな契機となった。 2007年東北大学総長の疑惑 東北大学 東北大学の総長に対して研究不正の疑義が内外から寄せられ、様々な調査が行われたが、総長が自ら辞職することはなかった。東北大学の総長は告発した教授に対して名誉毀損の訴訟を起こした。 2010年アニリール・セルカン 東京大学宇宙航空研究開発機構 東京大学大学院工学系研究科の助教であったアニリール・セルカンの経歴詐称、業績の捏造、剽窃が判明。学位取り消し、懲戒解雇相当の処分が下された。 この事件の追及を担った11jigenは、その後5年近くに渡り多くの研究不正事件の発覚に関わった。 2010年森直樹 琉球大学 修士論文や博士論文の発表会における学生の様子を見れば、何かが起きていることは誰でも容易に分かる状態であったと言われる[要出典]。しかし、大学はそれを放置した。論文が投稿された学術誌から指摘を2010年3月に受け、同大学は4月に調査委を設置。38編の論文について不正があるとの調査結果が発表され、森は8月に一旦懲戒解雇処分となったが、その後の訴訟の結果、和解が成立し解雇処分は無効となった。また、内部調査では不正ではないとされていた琉球大学学長自身が共著として名を連ねていた論文が、外部調査委により不正と認定され、内部調査の在り方へ疑念が広がった。 2012年藤井善隆 東京医科歯科大学筑波大学 東邦大学 東邦大学の准教授で日本麻酔科学会に所属する医師藤井善隆が、1991年から2011年に発表した論文212本のうち、172本にデータ捏造の不正があったとする調査結果を日本麻酔科学会の調査特別委員会が発表した。藤井は同年2月に東邦大で書いた論文に研究手続き違反があったとして、諭旨免職処分となり、同年8月には日本麻酔科学会も自主的に退会した。 この事件の論文撤回数は、世界でも1位の数である。この1位という順位を、日本の研究不正が深刻である根拠とする言論もある。 2012年ムン・ヒュンイン 東亜大学校 韓国、釜山の東亜大学校教授のムン・ヒュンインが、科学論文を科学雑誌に投稿した際に、ムン自身が管理できるようにしていた偽名科学者のメールアドレスを、論文の査読者の連絡先として推薦し、自分自身で論文査読し、論文を受理させるという前代未聞の研究不正が発覚し、合計35報のムンの論文が撤回された。 2012年森口尚史 東京大学医学部附属病院 山中伸弥がiPS細胞でノーベル賞を受賞した直後、東京大学医学部附属病院特任研究員の森口尚史がiPS細胞を使った世界初の臨床応用として心筋移植手術を6件実施したと学会発表した。読売新聞はこのことを1面トップで大きくスクープした。しかし、少なくとも、5件が虚偽であることが発覚し、東京大学医学部附属病院から懲戒免職処分を受けた。読売新聞は、報道に関わった社員を処分した。 2013年ディオバン事件 京都府立医科大学東京慈恵会医科大学滋賀医科大学千葉大学名古屋大学 バルサルタン(商品名ディオバン)というノバルティスファーマが販売していた降圧剤についての臨床試験の論文が、京都府立医科大学・東京慈恵会医科大学・千葉大学・名古屋大学・滋賀医科大学から同時期に別々に発表された。一部の論文はディオバンが他の降圧剤に比べて脳卒中の割合等を大きく下げるというような画期的なものであった。これらの論文の恩恵を受け、ディオバンは1兆円を超える売り上げを上げた。しかしながら、由井芳樹のLancet誌における告発等を契機として、5つの大学のいずれの論文にも不正があり、また、いずれの論文の作成にもノバルティスファーマの社員が関わっているという利益相反の問題が発覚した。千葉大学を除いて、論文の責任著者は引責した。千葉大学は、千葉大学から大阪大学を経て東京大学に異動していた論文の責任著者を処分するよう東大に勧告したが、東大は処分を行わなかった。 2014年STAP細胞研究不正事件 理化学研究所ハーバード大学東京女子医科大学 2014年1月末にSTAP研究が発表され、筆頭著者は一夜にして時代の寵児になった。しかしながら、様々な論文不正の疑義が数週間後には発覚し、騒動の末、論文は撤回された。この騒動はメディアで極めて盛んに取り上げられ、理化学研究所に関連する法案の提出延期や理化学研究所のセンターが解体される事態にまで発展した。論文の調査や検証実験が行われている最中、8月5日に論文の共著者であった笹井芳樹は自殺を遂げた。 2014年早稲田大学博士論文不正問題 早稲田大学 STAP事件を契機として、STAP細胞論文の筆頭著者を含めた早稲田大学先進理工学研究科の多数の学生の博士論文において大量の盗用剽窃が発覚した。このため早稲田大学は、先進理工学研究科280本の博士論文も調査することになった。早稲田大学は、62件の学位論文を訂正したが、STAP細胞論文の筆頭著者以外の学位の取り消しは行わなかったことを発表した。 2014年東京大学分子細胞生物学研究所核内情報研究分野の論文不正 東京大学 2011年の年末から2012年の年初にかけて、Nature誌に掲載された大量訂正によって疑念を抱いたインターネット上の匿名集団が、2チャンネルの「捏造、不正論文総合スレ」に、20報以上の論文に不正が疑われるデータが掲載されていることを記載した。この研究室は日本分子生物学会で若手を対象とした研究倫理教育を行っていた研究室であったため、学会では大きな問題になった。東大の調査は3年に渡り、最終的に33報の不正行為を2014年12月26日に認定した。不正行為の認定にあたって、東大総長は自らをも処分した。研究室の出身者が異動していた筑波大学や群馬大学でも関連して調査や処分が行われた。 2015年匿名Aによる論文大量不正疑義事件 札幌医科大学・東北大学・東京慈恵会医科大学・東京大学・東京医科歯科大学・慶應義塾大学・日本大学・金沢大学・名古屋大学・京都大学・京都府立医科大学・大阪大学・大阪医科大学・近畿大学・関西医科大学・徳島大学・九州大学・杏林大学・立命館大学・広島大学・長崎国際大学・宮城県立病院機構宮城県立がんセンター・国立感染症研究所・国立病院機構京都医療センター・理化学研究所 日本全国の様々な研究機関から発表された約80本の医学系の論文において、不正な人為的加工や流用などが疑われる画像データが掲載されていることが、2013年の日本分子生物学会年会のために開設されたウェブサイト「日本の科学を考える」の「捏造問題にもっと怒りを」というトピックのコメント欄に、「匿名A」を名乗る人物によって、2014年の年末から2015年の年初にかけて相次いで指摘された。2015年1月6日には同様の趣旨の匿名告発が文部科学省に対して文書で行われた。最も多い28本の疑義が指摘された大阪大学は、責任著者が別の論文捏造事件で懲戒解雇された1本の論文を除く27本について予備調査を行い、1本については疑義を否定し、7本については不注意による誤使用と判断し、残りの19本については「データが残っていないため不正の事実が確認できず、これ以上の調査は困難」として調査を打ち切った。12本の疑義が指摘された東京大学は、予備調査の結果、全ての論文について不正行為が存在する疑いはないと発表した。 STAP事件よりはるかにスキャンダラスかつ重大な事件に発展する可能性も報道された。参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において、東京大学は調査の内容を全く明らかにしていないと指摘した。また、調査責任者は被告発者と親しい医学部の研究者が務めたという情報を明らかにした。 2016年岡山大学における論文不正問題 岡山大学 岡山大学病院に勤務する教授らが執筆者となっている、2006年発表のステロイドホルモンに関する論文について、画像の切り貼りなどの不正があったと、同大学医歯薬学総合研究科の教授2人が学内の調査委員会に告発した。この論文には当時の岡山大学長が関わっていた。調査委は実際に切り貼りがあったと確認したにもかかわらず、本来必要となるデータと照合しないまま不正なしと判断し、調査結果も公表していなかったことが、2016年1月4日付の毎日新聞の報道で発覚した。告発をした2名の教授は懲戒解雇の処分をされた。 文部科学省のガイドラインでは、論文に不正がなかったと判断した場合は、調査結果の公表はしないと定められており、この裏をかく形で、調査が所属機関に有利になるよう進められる、あるいは、杜撰な調査で不正が見逃されるなどしたとしても、外部からの検証が困難になる問題点が指摘されている。 2016年「Ordinary_researchers」による東京大学への論文不正疑義事件 東京大学 2016年8月末に、東京大学が医学系の論文不正の予備調査を行なっていることが報道された。2016年9月20日に、東京大学は、捏造及び改ざんの疑いがあるという匿名の申立てが2016年8月にあった6名の22報の論文について、本格的な調査を行なうことを明らかにした。2017年8月3日、東京大学は、分子細胞生物学研究所の5報の論文を不正と認定し、医学部の論文については全て不正なしと一行だけ記載した文書を公開した。調査報告書の全文は、大部分が黒塗りの状態で後日公開された。東京大学の池上徹は、2018年の分子生物学会のポスター発表において、分子細胞生物学研究所の助教が研究不正とはやや言い難いデータを基に処分されたことは、医学部が全て不正なしとされたことと比較すると不合理であると主張した。 2016年10月12日に、参議院議員の櫻井充は、参議院議長への質問主意書において、東京大学の調査範囲と調査委員選考について質問した。2016年10月25日に、参議院議員の足立信也は、参議院の厚生労働委員会において、疑義がかけられているアディポロンの研究に関して東京大学と理化学研究所が共同して特許を申請していることを指摘し、理化学研究所の責任について質問した。 2017年東北地方太平洋沖地震及び熊本地震等の地震波データ捏造問題 大阪大学など 2017年9月27日に、土木学会のホームページに、大阪大学准教授らが2016年に米国地震学会誌Seismological Research Lettersに論文発表した熊本地震の波形データについて、重要な匿名の情報提供があり、深刻に受け止めて公的な対応を検討しているという記事が掲載された。2019年1月26日に、大阪大学准教授が東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)の地震波データについても不正をしていた疑いが強いことが報じられた。 2019年3月15日に大阪大学は調査結果を公表し、5報の論文に捏造や改ざんなどの不正行為が認定された。調査中に准教授が死亡したため、北海道南西沖地震や阪神大震災等を扱っていた残りの論文については判定留保又は判定不能となった。 2019年ハルデン原子炉での捏造問題 ノルウェーエネルギー技術研究所 1990年から2005年の間にハルデン原子炉で行なった核燃料試験の結果が捏造されていたことが2020年5月に発表された。この捏造データは多くの国際機関にも提供されていたものであるが、捏造の詳細は何も明らかになっておらず、捏造が他の原子炉に与える影響も不明である。この捏造問題の調査が開始されたことは、日本の原子力規制委員会も2019年8月には把握している。2019年1月の原子力規制委員会の記者会見では、ハルデン原子炉の廃止が突然決まったことについて海外でも危機感を持たれていることが報告されていた。 2020年コロナの女王 白鴎大学 2000年頃、国立感染症研究所ウイルス3部の研究員の論文について疑義が浮上した。2002年5月17日、国立感染症研究所所長の吉倉廣は、研究員の論文の取り下げの要求と、ワクチンの国家検定へ研究員が関与することを禁止する旨を記載した文書を発出した。研究員の配偶者も所員であったこともあり、表沙汰にはならなかった。その後研究員は白鴎大学の教授となった。2020年の新型コロナウイルスのパンデミックにおいて、国立感染症研究所のOBが陰謀によりPCR検査を制限している旨の発言をワイドショーの生放送で行ったことを受け、国立感染症研究所のOB3名が週刊文春に2000年頃の事件の情報を提供した。 週刊文春の報道は安倍晋三内閣総理大臣も認識している。 2020年新型コロナウイルス感染症の治療薬に関わる不正 サージスフィア社 2020年の新型コロナウイルスのパンデミック当初、ドラッグリポジショニングによる治療薬の探索が世界各地で行われた。その過程で、米国サージスフィア社などが、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、イベルメクチン等の薬剤の効果を調べた論文を2020年5月にNew England Journal of Medicine誌やLancet誌などの著名な雑誌等に掲載した。米国大統領がヒドロキシクロロキンを予防薬として飲んでいると発言したこともあり、論文は大きな注目を集め、これらの薬剤の投与が広く行われた。しかし、2020年5月末に一部の専門家からサージスフィア社に対する疑義が表明され、また、2020年6月に、ガーディアン誌が、サージスフィア社がアダルトコンテンツのモデルを含む10人程度の従業員からなる小さな会社であり、データの信用性が疑わしいことを報道した。これを受けて、サージスフィア社が関与した論文は撤回された。 2020年肺がんの臨床試験に関わる不正 大阪大学、国立循環器病研究センター 2015年から行われていた「非小細胞肺がん手術適応症例に対する周術期hANP(ハンプ)投与の多施設共同ランダム化第Ⅱ相比較試験(JANP study)」の根拠となる論文に不正があったことが2020年08月18日に発表された。この論文の筆頭著者については、大量訂正の問題が過去に指摘されていた。2021年に大量訂正された論文に捏造、改ざんが認定。大量訂正は撤回回避と隠蔽の不正。大量訂正の論文は撤回。JANP studyは中止、10件の健康被害が確認。 2020年前年のノーベル賞受賞者への大量疑義の問題 ジョンズ・ホプキンズ大学、オックスフォード大学 2020年のノーベル賞ウィークの最中、2019年のノーベル医学生理学賞を受賞した人物らの60報以上の論文に不自然な酷似画像等があることがPubPeerで指摘された。ノーベル賞の受賞対象となったScience誌の論文に対しても指摘があった。 2021年グラフェンナノリボン不正 名古屋大学 将来の半導体の材料として期待される炭素素材「グラフェンナノリボン」の合成に関する内容に関して、科学誌ネイチャーで発表した論文が撤回された。ネイチャーの発表によると、物質の分子量を調べる「質量分析」の実験結果に不自然な点があった上、基となったデータを確認できなかった。 2022年福井大学教授の論文不正 福井大学 福井大学子どものこころの発達研究センター長の友田明美教授が、子育てをする母親のホルモン変化に関する内容の論文をオランダの学術誌に発表したが、その論文の査読を担当した千葉大学の橋本謙二教授(社会精神保健教育研究センター副センター長)と協力する形で、自らの論文の査読に関与する「査読関与」を行っていたことが明らかとなり、学術誌の出版元であるエルゼビアは2022年6月25日に該当の論文の不正を認定し撤回した。
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