博士論文
博士論文(1960年代)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/03 09:30 UTC 版)
「黒田成幸」の記事における「博士論文(1960年代)」の解説
付置変換(attachment transformation)の導入付置変換は量化子の作用域に関わる変換規則であり、日本語や韓国語では少なくともモ・to 、その他多くの言語で WH 疑問に作用する。付置変換の生成文法史上の影響は「解釈に変更を加える変換規則が少なくとも一つ存在する」ということを証明したことである、ということがよく知られている。図式的にはQ [S ... X ... → [S ... Q + X ... で表される。 背景として、Chomsky (1957) Syntactic Structures, pp. 69 - 70 では、WH 疑問文は次のように派生される。‘What did John eat?’, ‘Who ate an apple?’ の基底表示はJohn - Aff - eat - NP、とNP - Aff - eat - an apple。変換規則Tq適用の出力Aff - John - eat - NP [- animate]、とAff - NP [+ animate] - eat - an apple、この記号列には続いて Tw1が適用される。 Tw1=構造分析:X - NP - Y, ここで X と Y は空の記号列でもよい、構造変化:X1 - X2 - X3 → X2 - X1 - X3 こういった任意適用の変換規則について、Lees (1960) が否定変換について、Edward Klima が疑問変換について、義務的に適用される単一変換であることを示唆する (Chomsky 1965: 141) Katz and Postal (1964) An Integrated Theory of Linguistic Descriptions は一般原理として、変換規則は句構造を他の句構造に写像するだけであり、すなわち、変換規則は意味解釈に寄与する要素を導入しない、とした。この主張は「Katz-Postalのテーゼ」として知られ、Chomsky (1965) Aspects of the Theory of Syntax 以降の「標準理論」に、意味解釈は深層構造でのみ決定される、という形で採用された(これを強い形で採用・遂行した研究プログラムが生成意味論である)。この枠組みでは Tq、Tw2のような変換規則は認められず、疑問文を特徴付ける要素は句構造規則によって基底表示に組み込まれる。 ハの理論日本語母語話者以外の読者にハを解説するために書かれたもの。 チョムスキーが Cartesian Linguistics の準備をしている頃、講義でもその内容が扱われ、黒田はターム・ペーパーを書くためにチョムスキーからエドムント・フッサールの著作を借りたという。余談だが、その頃黒田はドイツ語が堪能ではなく自由に使えるフランス語で読めるように、チョムスキーはフッサールの仏語訳を貸してくれたという。博士論文で既にポール・ロワイヤル論理学に言及しつつ判断論との関連を述べているが、これがきっかけとなり、フッサールの師であるブレンターノの研究を経由して、アントン・マルティ Anton Marty の判断論と出逢うことになる。後に第2章を発展させ、単純判断 thetic (Categorimatisch) judgment と複合判断 categorical (Syncategorimatisch) judgment の区別を生成文法の世界に導入することになり、近年、William Ladusawが様々な意味論的概念と対比させる論文を書いて以来、再評価と言ってよい動きがある。黒田自身も、例えば、Kratzer-DiesingのMapping Hypothesisなどと比較してコメントを加えたりしている。 なお後年黒田は東北大学で数年教鞭をとるが、かつて東北大学英語学教授だった中島文雄はマルティの研究者でもあった。 逆行同一名詞句削除(counter equi-NP deletion)相当の規則の定式化後に原田信一によって定式化される逆行同一名詞句削除を定式化。後に黒田自身この規則は記述的一般化にすぎないとコメントしているが、コントロールに関わる重要な現象を捉えた意義は大きい。 変形のフィルターとしての働き後に導入されることになる、不適格な構造を除去するフィルターに先駆けた提案を関係節化に基づいて行っている 線状格付与(linear case marking)の提案日本語の格付与について、初頭の格をもたない名詞句にガを付与し、格を持たない残りの名詞句にヲを付与する循環的規則を提案した。 空代名詞(empty pro)分析日本語において項のうち音声的実現を持たないものがある。これを空代名詞として扱い、分布様式の制限を明らかにした。
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