標準理論とは? わかりやすく解説

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ひょうじゅん‐りろん〔ヘウジユン‐〕【標準理論】

読み方:ひょうじゅんりろん

標準模型


標準模型

(標準理論 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/25 13:51 UTC 版)

標準模型
標準模型素粒子

標準模型(ひょうじゅんもけい、: Standard Model、略称: SM)とは、素粒子物理学において、強い相互作用弱い相互作用電磁相互作用の3つの基本的な相互作用を記述するためのモデルのひとつである。

標準理論(ひょうじゅんりろん)または標準モデル(ひょうじゅんモデル)とも言う。多くの物理現象をほぼ的確に描写する仮説である。

概要

標準模型は、強い相互作用についての量子色力学弱い相互作用電磁相互作用についてのワインバーグ=サラム理論をあわせた SU(3)c×SU(2)L×U(1)Y ゲージ対称性を基礎とし、ヒッグス機構による真空の対称性の破れとフェルミオンの質量獲得、アノマリーの相殺の要請によるフェルミオンの世代構造と世代間混合とCP対称性の破れについての小林・益川理論などの理論も組み込まれたものである[1]。標準模型は特殊相対性理論と整合する量子論として、場の量子論的方法で記述され、今のところ重力をのぞき、場の量子論であつかわれるあらゆる事象を的確に描写している[2]

標準模型の素粒子

標準模型の素粒子は力を媒介するスピン1のゲージ粒子、対称性を破るスピン0のヒッグス粒子、物質を構成するスピン1/2のフェルミオンからなる。

ゲージ粒子

標準模型のゲージ粒子
粒子名 記号 ゲージ対称性
グルーオン G SU(3)c
Wボソン W SU(2)L×U(1)Y
Zボソン Z
光子 A

標準模型はヤン=ミルズ理論に従い、それぞれのゲージ群に対応するゲージ粒子が存在する。

SU(3)Cに対応するゲージ粒子はグルーオンと呼ばれている。

SU(2)LとU(1)Yに対応するゲージ粒子に関しては、ヒッグス機構によりゲージ場の混合と質量の獲得が起こるので、多少複雑な様相を呈する。ウィークアイソスピン SU(2)L の非対角成分は質量を獲得してWボソンとなり、対角成分とウィークハイパーチャージ U(1)Y は交じり合って、質量を獲得するZボソンと質量を獲得しない光子になる。

フェルミオン

標準模型のフェルミオン
粒子名 記号 表現
クォーク Q (3,2)1/6
上系列反クォーク U (3*,1)-2/3
下系列反クォーク D (3*,1)1/3
レプトン L (1,2)-1/2
反荷電レプトン E (1,1)1

フェルミオンは強い相互作用をするクォークと、強い相互作用をしないレプトンに分けられる。さらに、クォークとレプトンは、それぞれ左手型(left-handed)粒子と右手型(right-handed)粒子に分類することができる。標準模型における左手型粒子は電弱相互作用ウィークアイソスピンを持つが、右手型粒子は持たない。そのため、左手型粒子と右手型粒子ではゲージ相互作用の形が異なり、標準模型はゲージ相互作用に関してカイラルな理論となっている。また、この性質のために、電弱対称性がヒッグス機構によって破れないかぎり、全てのクォークとレプトンは質量を持つことができない。全てのクォークと荷電レプトンは、ヒッグス機構によって質量を獲得する。ニュートリノは標準模型の範囲内では質量を持つことはない

フェルミオンは左手型クォークと左手型レプトン、右手型アップクォークと右手型ダウンクォーク、右手型荷電レプトンで世代と呼ばれるグループを構成する。一般に、ゲージ相互作用を含む模型については、カイラルアノマリーと重力アノマリーが相殺されている必要があるが、世代を構成するフェルミオンの間でアノマリーが相殺される構成になっている。標準模型は、3世代のクォークとレプトンが存在する。小林・益川理論によると、フェルミオンの混合によりCP対称性が破れるためには3世代以上のフェルミオンが必要である。実際に、フェルミオンの混合に起因するCP対称性の破れは実験で確認されており、標準模型による予言と良く一致することが確かめられている。

ヒッグス粒子

標準模型では、ヒッグス機構により電弱対称性が自発的に破れる。一般に場の揺らぎは粒子として解釈されるが、ヒッグス場の4つある揺らぎの自由度のうち3つは、WボソンZボソンが質量を持つことに伴い、その縦波成分として吸収される。残りの1自由度は、スピン0のスカラー粒子であるヒッグス粒子としてあらわれる。2012年7月にジュネーブ郊外の欧州原子核研究機構 (CERN) で行われているLHC実験により新粒子の発見が発表された[3]。この新粒子の性質はヒッグス粒子と良く一致しており、その後のスピン-パリティ観測、崩壊後粒子の信号強度の検証により標準模型におけるヒッグス粒子、およびこれを内包する理論によるヒッグス粒子であることが認定された。

歴史

素粒子の相互作用
原子核と素粒子

未解決の問題

標準模型は2014年現在までに行われた素粒子物理学に関する実験結果をほとんど全て矛盾することなく説明することができているが、その一方で、理論的または実験・観測的観点から解決すべき問題をいくつか抱えている。このことは標準模型を超える物理の存在を示唆する。この節では標準模型において未解決の問題を列挙する。

重力の量子化

標準模型は基本的な相互作用とされる4つの力のうち、電磁気力、弱い力、強い力の3つをヤン=ミルズ理論に基づき量子論的に記述することに成功している。しかし、残りの1つである重力についてはその記述を欠いている。言い換えれば、重力を媒介するとされる重力子は標準模型の粒子のリストに含まれていない。これは、標準模型の基礎的な枠組みとなっている場の量子論における量子効果による発散の相殺を重力理論に適用できないからである。重力を量子論的に扱うことができる枠組みの候補としては、超弦理論ループ量子重力理論などが挙げられる。

大統一理論

標準模型が記述する3つの力のうち、強い力は、電磁気力と弱い力とは別のゲージ対称性により記述されている。このため、3つの力を統一的に理解することは難しい。しかし、電磁気力を記述するU(1)ゲージ対称性が ウィキメディア・コモンズには、標準模型に関するメディアがあります。



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