繰り込み
繰り込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/27 18:10 UTC 版)
場の量子論 | ||||||||||||||
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歴史 | ||||||||||||||
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繰り込み(くりこみ、アメリカ英語:Renormalization イギリス等英語及びフランス語:Renormalisation )とは、場の量子論で使われる、計算結果が無限大に発散してしまうのを防ぐ数学的な技法であり、同時に場の量子論が満たすべき最重要な原理のひとつでもある。
くりこみにより、場の量子論を電磁相互作用に適用した量子電磁力学が完成した。場の量子論にくりこみを用いる方法は、以後の量子色力学およびワインバーグ・サラム理論を構築する際の規範となる。
概要
量子力学の摂動論では相互作用項を含まない自由ハミルトニアンの固有状態を初期状態にしてその時間発展を求めるため、相互作用を通じて自由ハミルトニアンが保存しない中間状態にも遷移可能である(不確定性原理参照)。場の量子論 (QFT) ではそのような中間状態が無限にある。中間状態に存在可能な運動量を積分すると特定の過程に関して運動量や質量、結合定数に関する発散が発生する。しかし実際の物理現象はこのような発散を示さず、量子補正に現れる発散は非物理的であると理解されるべきである。
簡単な例としてスカラー4点理論の、次元正則化法における2点間数の1-loop補正は
脚注
繰り込み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/06 05:29 UTC 版)
ファインマン・ダイアグラムにおいてループとして表される高次の輻射補正は、場の量子論の計算で無限大の発散項として現れる。この発散を回避する操作が繰り込みである。このとき、繰り込みによって導入されたエネルギースケールに依存して結合定数や質量が変化する。 結合定数のエネルギースケール依存性はベータ関数によって記述される。結合定数をg、エネルギースケールをμとして、ベータ関数は以下のように定義する。 β ( g ) = μ ∂ g ∂ μ {\displaystyle \beta (g)=\mu \,{\frac {\partial g}{\partial \mu }}} このようにエネルギースケールに依存する結合定数は有効結合定数、あるいは走る結合定数と呼ばれ、これらの理論は繰り込み群によって記述される。 結合定数が十分小さく扱える領域において、ベータ関数は摂動論のような近似的な方法で計算される。このとき、ベータ関数は結合定数の級数として展開され、高次の項の寄与(高次のループ)は無視される。 φ4理論において、1次の摂動におけるベータ関数は以下のように計算される。 β ( g ) = 3 16 π 2 g 2 + O ( g 3 ) {\displaystyle \beta (g)={\frac {3}{16\pi ^{2}}}g^{2}+O(g^{3})} この結果より、φ4理論のベータ関数は常に正である、すなわち、φ4理論はエネルギースケールの増加に比例して結合定数が増加する理論であることが分かる。この結合が十分に強いとき、この結果は有限エネルギーにおけるランダウ・ポールの存在を示唆している。しかし、強結合領域では摂動論が適用できないため、ランダウ・ポールを記述するためには非摂動的な方法が必要となる。 場の量子論において結合定数がエネルギースケールに依存するとき、連続極限(運動量カットオフを無限大にする極限)をとることで、その場が自由場と等しくなる場合がある。このとき、結合定数が0となるので、伝播関数は自由場のそれと等しくなり、相互作用は無いものとみなされる。この理論は、カットオフを取り除かずに成立する有効理論であると解釈される。この性質はtrivialityと呼ばれ、φ4相互作用においては、5次元以上の時空(D≧5)で成り立つことが証明されている。D=4の場合におけるtrivialityの存在は、厳密な証明はされていないが、数値計算によって十分な証拠が確認されている。この議論はヒッグス機構と関連しており、ヒッグス粒子の質量の上限を指定する要因の一つである。
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