摂動
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摂動(せつどう、 英語: perturbation)とは、一般に力学系において、主要な力の寄与(主要項)による運動が、他の副次的な力の寄与(摂動項)によって乱される現象である。摂動という語は元来、古典力学において、ある天体の運動が他の天体から受ける引力によって乱れることを指していたが、その類推から量子力学において、粒子の運動が複数粒子の間に相互作用が働くことによって乱れることも指すようになった。なお、転じて摂動現象をもたらす副次的な力のことを摂動と呼ぶ場合がある。
- 1 摂動とは
- 2 摂動の概要
摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/05 05:23 UTC 版)
シュレーディンガー方程式を厳密に解く事は一般的に非常に困難な場合が多いが、近似に解く手法の一つとして摂動論がある。以下では摂動論におけるグリーン関数の形式理論について解説する。 系のハミルトニアン ^H が無摂動項 ^H0 と摂動項 ^V の和で与えられた (^H = ^H0 + ^V) とする。無摂動ハミルトニアン ^H0 に対して固有値方程式 H ^ 0 ϕ i ( 0 ) = E i ( 0 ) ϕ i ( 0 ) {\displaystyle {\hat {H}}_{0}\phi _{i}^{(0)}=E_{i}^{(0)}\phi _{i}^{(0)}} が成り立つ(例:ハートリー-フォック近似など)。 ω − ^H0 を微分作用素として考えると非摂動グリーン関数 G (0)(ω)は以下のように定義される(ここでデルタ関数 δ(x − x') は形式的に 1 とした)。 ( ω − H ^ 0 ) G ( 0 ) ( ω ) = − 1 {\displaystyle (\omega -{\hat {H}}_{0})G^{(0)}(\omega )=-1} 次に摂動ハミルトニアン ^V で展開すると、 G ( ω ) = G ( 0 ) ( ω ) + G ( 0 ) ( ω ) V ^ G ( 0 ) ( ω ) + G ( 0 ) ( ω ) V ^ G ( 0 ) ( ω ) V ^ G ( 0 ) ( ω ) + ⋯ = G ( 0 ) ( ω ) + G ( 0 ) ( ω ) V ^ G ( ω ) {\displaystyle {\begin{aligned}G(\omega )&=G^{(0)}(\omega )+G^{(0)}(\omega ){\hat {V}}G^{(0)}(\omega )+G^{(0)}(\omega ){\hat {V}}G^{(0)}(\omega ){\hat {V}}G^{(0)}(\omega )+\dotsb \\&=G^{(0)}(\omega )+G^{(0)}(\omega ){\hat {V}}G(\omega )\end{aligned}}} この式の両辺に ω − ^H0 を作用させ変形すると、摂動グリーン関数は次の関係を満たしていることがわかる。 ( ω − H ^ 0 − V ^ ) G ( ω ) = − 1 {\displaystyle (\omega -{\hat {H}}_{0}-{\hat {V}})G(\omega )=-1} また、この摂動グリーン関数が満たす関係式は ( H ^ 0 + V ^ ) ψ i = E i ψ i {\displaystyle ({\hat {H}}_{0}+{\hat {V}})\psi _{i}=E_{i}\psi _{i}} に対応している。
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/07 06:53 UTC 版)
摂動論では、未知の H ′ {\displaystyle {\mathcal {H}}'} 、 | Ψ n ⟩ {\displaystyle |\Psi _{n}\rangle \ } 、 ϵ n {\displaystyle \epsilon _{n}} を、既知の V {\displaystyle V\ } 、 | Ψ n ( 0 ) ⟩ {\displaystyle |\Psi _{n}^{(0)}\rangle } 、 ϵ n ( 0 ) {\displaystyle \epsilon _{n}^{(0)}} と、未知の { | Ψ n ( 1 ) ⟩ , | Ψ n ( 2 ) ⟩ , … } {\displaystyle \{|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\dotsc \}} 、 { ϵ n ( 1 ) , ϵ n ( 2 ) , … } {\displaystyle \{\epsilon _{n}^{(1)},\epsilon _{n}^{(2)},\dotsc \}} 、微小係数 λ {\displaystyle \lambda \ } を用いて H ′ = λ V | Ψ n ⟩ = | Ψ n ( 0 ) ⟩ + λ | Ψ n ( 1 ) ⟩ + λ 2 | Ψ n ( 2 ) ⟩ + ⋯ ϵ n = ϵ n ( 0 ) + λ ϵ n ( 1 ) + λ 2 ϵ n ( 2 ) + ⋯ {\displaystyle {\begin{aligned}{\mathcal {H}}'&=\lambda V\\|\Psi _{n}\rangle &=|\Psi _{n}^{(0)}\rangle +\lambda |\Psi _{n}^{(1)}\rangle +\lambda ^{2}|\Psi _{n}^{(2)}\rangle +\dotsb \\\epsilon _{n}&=\epsilon _{n}^{(0)}+\lambda \epsilon _{n}^{(1)}+\lambda ^{2}\epsilon _{n}^{(2)}+\dotsb \end{aligned}}} と表す。べき級数の中で既知であるのは、第1項目だけであることに注意。これで、 | Ψ n ⟩ {\displaystyle |\Psi _{n}\rangle \ } 、 ϵ n {\displaystyle \epsilon _{n}} を求める問題は { | Ψ n ( 1 ) ⟩ , | Ψ n ( 2 ) ⟩ , … } {\displaystyle \{|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\dotsc \}} 、 { ϵ n ( 1 ) , ϵ n ( 2 ) , … } {\displaystyle \{\epsilon _{n}^{(1)},\epsilon _{n}^{(2)},\dotsc \}} を求める問題に変換された。 これらを(0)式に代入し、任意の λ {\displaystyle \lambda \ } で成立すると仮定すると、 未知の ( | Ψ n ( 1 ) ⟩ , ϵ n ( 1 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(1)})} だけを含む方程式 ⋯ ( 1 ) {\displaystyle \cdots (1)} 未知の ( | Ψ n ( 2 ) ⟩ , ϵ n ( 2 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(2)})} と ( | Ψ n ( 1 ) ⟩ , ϵ n ( 1 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(1)})} だけを含む方程式 ⋯ ( 2 ) {\displaystyle \cdots (2)} 未知の ( | Ψ n ( 3 ) ⟩ , ϵ n ( 3 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(3)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(3)})} と ( | Ψ n ( 2 ) ⟩ , ϵ n ( 2 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(2)})} と ( | Ψ n ( 1 ) ⟩ , ϵ n ( 1 ) ) {\displaystyle (|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,\epsilon _{n}^{(1)})} だけを含む方程式 ⋯ ( 3 ) {\displaystyle \cdots (3)} ⋮ {\displaystyle \vdots } が得られ、未知数を分離することができる。これらを(1)式、(2)式、・・・の順に解いていくと、 { | Ψ n ( 1 ) ⟩ , | Ψ n ( 2 ) ⟩ , … } {\displaystyle \{|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\dotsc \}} 、 { ϵ n ( 1 ) , ϵ n ( 2 ) , … } {\displaystyle \{\epsilon _{n}^{(1)},\epsilon _{n}^{(2)},\dotsc \}} が求まる。 これらの式は、未知の { | Ψ n ( 1 ) ⟩ , | Ψ n ( 2 ) ⟩ , … } {\displaystyle \{|\Psi _{n}^{(1)}\rangle ,|\Psi _{n}^{(2)}\rangle ,\dotsc \}} を、既知の完全系 { | Ψ n ( 0 ) ⟩ } {\displaystyle \{|\Psi _{n}^{(0)}\rangle \}} の線形結合(重ね合わせ)で展開して、その展開係数 c i {\displaystyle c_{i}\ } を求める問題に変換することで解ける。 | Ψ n 1 ⟩ = c 1 | Ψ 1 ( 0 ) ⟩ + c 2 | Ψ 2 ( 0 ) ⟩ + c 3 | Ψ 3 ( 0 ) ⟩ + ⋯ = ∑ i c i | Ψ i ( 0 ) ⟩ {\displaystyle |\Psi _{n}^{1}\rangle =c_{1}|\Psi _{1}^{(0)}\rangle +c_{2}|\Psi _{2}^{(0)}\rangle +c_{3}|\Psi _{3}^{(0)}\rangle +\dotsb =\sum _{i}c_{i}|\Psi _{i}^{(0)}\rangle }
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/03/15 11:06 UTC 版)
「シュレーディンガー場」の記事における「摂動論」の解説
ファインマン図の拡張は、 多体摂動論と呼ばれる。 プロパゲーターは G ( k ) = 1 i ω − k 2 2 m . {\displaystyle G(k)={1 \over i\omega -{k^{2} \over 2m}}.\,} 相互作用の頂点は、2体ポテンシャルのフーリエ変換である。 あらゆる相互作用で、入射する外線と放射する外線の数は等しくなります。
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/12/31 13:54 UTC 版)
周期関数un,kは次のシュレーディンガータイプの方程式(単純に、ブロッホタイプの波動関数によるシュレーディンガー方程式の直接展開)を満たす。 H k u n , k = E n , k u n , k {\displaystyle H_{\mathbf {k} }u_{n,\mathbf {k} }=E_{n,\mathbf {k} }u_{n,\mathbf {k} }} ここでハミルトニアンは H k = p 2 2 m + ℏ k ⋅ p m + ℏ 2 k 2 2 m + V {\displaystyle H_{\mathbf {k} }={\frac {p^{2}}{2m}}+{\frac {\hbar \mathbf {k} \cdot \mathbf {p} }{m}}+{\frac {\hbar ^{2}k^{2}}{2m}}+V} kは長さの逆数の次元を持つ3つの実数で構成されるベクトルであり、pは演算子のベクトルであることに留意。明確にするために k ⋅ p = k x ( − i ℏ ∂ ∂ x ) + k y ( − i ℏ ∂ ∂ y ) + k z ( − i ℏ ∂ ∂ z ) {\displaystyle \mathbf {k} \cdot \mathbf {p} =k_{x}(-i\hbar {\frac {\partial }{\partial x}})+k_{y}(-i\hbar {\frac {\partial }{\partial y}})+k_{z}(-i\hbar {\frac {\partial }{\partial z}})} いずれにせよ、このハミルトニアンを2つの項の合計として書くと H = H 0 + H k ′ , H 0 = p 2 2 m + V , H k ′ = ℏ 2 k 2 2 m + ℏ k ⋅ p m {\displaystyle H=H_{0}+H_{\mathbf {k} }',\;\;H_{0}={\frac {p^{2}}{2m}}+V,\;\;H_{\mathbf {k} }'={\frac {\hbar ^{2}k^{2}}{2m}}+{\frac {\hbar \mathbf {k} \cdot \mathbf {p} }{m}}} これは摂動論の基礎である。非摂動ハミルトニアンはH0であり、実際にはk = 0(つまりガンマ点)における正確なハミルトニアンに等しくなる。摂動は項 H k ′ {\displaystyle H_{\mathbf {k} }'} である。結果の解析はk·pに比例する項であるため「k·p摂動論」と呼ばれる。この解析の結果はk = 0でのエネルギーと波動関数におけるEn、k、un,kの式である。 摂動項 H k ′ {\displaystyle H_{\mathbf {k} }'} はkが0に近づくにつれて徐々に小さくなることに注意。よって、k·p摂動論は小さいkの値に対して最も正確である。しかし、摂動展開に項が十分含まれている場合、理論がブリルアンゾーン全体のkの値に対してかなり正確になることがある。
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/07 06:53 UTC 版)
上記のような複数天体間、複数粒子間に相互作用が働くときの運動は数学的に厳密に解くことができないことが知られている(多体問題)。これらの数学的に厳密に解くことのできない問題の近似解を求める手法の1つに、摂動論(せつどうろん、 英語: perturbation theory)がある。具体的には、次のような手順で近似解を求める。 考えている問題Aを、厳密に解ける問題Bに小さな変更(摂動)が加えられた問題であるとみなす。 問題Aの近似解は、問題Bの厳密解に、摂動が加わったことによって生じる小さな補正(摂動項)を加えたものであると考える。 ここで求めるべき摂動項は、問題Bの厳密解の組み合わせ、すなわち一次結合の形で表現出来ると考え、その係数を与えられた条件から順次求める。
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 16:03 UTC 版)
惑星の公転軌道は第一に太陽の重力によって支配されており、0次近似としては太陽-惑星の二体問題とみなすことができる。この近似では惑星の軌道要素は一定であり、時間変化しない。しかし実際には惑星の軌道は他の惑星の摂動 (英: perturbation) によって変化する。そこである瞬間の惑星の軌道について、その瞬間に運動状態が一致するような仮想的なケプラー軌道を考え、その軌道要素を惑星のその時刻の接触軌道要素 (英: osculating orbital elements) と呼ぶ。接触軌道要素は他の惑星の摂動によって時間変化するため、それを計算することができれば惑星の軌道が求まることになる。このような摂動手法が定数変化法 (英: variation of arbitrary constants) である。
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摂動論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/18 03:22 UTC 版)
「ファインマン・ダイアグラム」の記事における「摂動論」の解説
ある始状態と終状態を決めた、すなわち外線を決めたとする。そこから無限個の頂点と内線を作り出せる、すなわち無限個のダイアグラムを作ることができ、無限個の仮想的な中間状態を考えなければならなくなる。そこで頂点の数を何個までと決めておけば、可能なダイアグラムの数は有限個になる。これを摂動論という。
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摂動論と同じ種類の言葉
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