ヒッグス粒子の質量
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/12 07:36 UTC 版)
素粒子物理学において、階層性問題は弱い力がなぜ重力に比べ1032も強いかという問いである。二つの力はともに自然の定数、弱い力に関するフェルミの定数と重力に関するニュートンの定数を含む。もしも標準模型のもとでフェルミの定数に対する量子補正を求めるなら、フェルミの定数の裸の値と量子補正とが巧妙に打ち消し合わない限り、フェルミの定数は不自然に大きく、ニュートンの定数に近い値となるはずである。 より厳密には、問題はヒッグス粒子がなぜプランク質量(もしくは大統一スケールや、重いニュートリノの質量スケール)よりも遥かに軽いのか、とも言える。裸の質量と輻射補正との間にファインチューニングされた驚くべき打ち消し合いがない限り、ヒッグス粒子の二乗質量への大きな量子補正は、必然的にその質量を新たな物理が現れるスケールまで大きくしてしまうことが予期される。 注意すべき点として、問題は標準模型だけを使ったのでは定式化できない。標準模型はヒッグス質量を計算できない。ある見方では「問題」は、ヒッグス粒子の質量を計算できる将来の素粒子理論が、極端なファインチューニングを含むべきでないとも言える。ファインチューニングされた関係を用いる事は暗黙に、繰り込み群のスケーリング以外の物理が、ヒッグス質量のスケールと大統一スケールとの間に、ほとんど存在しないだろうという根拠のない仮定である。この二つのスケールは少なくとも11桁隔たっているのであって、この「巨大な砂漠」の仮定は真実ではなさそうだと、the string discipline以外の何人かの物理学者からは見られている。 もしこの巨大な砂漠の仮定、従って階層性問題の存在を受け入れるなら、ファインチューニングを避けるためにあらたなメカニズムが必要になる。 階層性問題を解決する最も有名な—しかしただ提案されただけではない—理論は超対称性である。これは極小さいヒッグス質量が量子補正からどのように保護されているかを説明する。超対称性はヒッグス質量に対する輻射補正の二次発散を取り除く。しかし元の場所でヒッグスの質量がなぜ小さかったのかという問題、ミュー問題と呼ばれるものに関しては理解を与えない。さらに、大統一スケールより下で超対称性を破る自然な方法もないので、これによって得るものは基本的には、ヒッグス質量に関する元の階層性問題を、超対称性破れの新しい階層性問題へすげ替えるだけである。 他に提案された解として、ブレーンワールド模型の一種であるランドール・サンドラム模型(英語版)(RS1模型)や ADD模型(英語版)(大きな余剰次元模型)がある。
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