再現実験
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/23 09:14 UTC 版)
「としまえんの水上設置遊具による溺水事故」の記事における「再現実験」の解説
再現実験は、プールに、今回の事故が発生した際に設置されていたものと同等の遊具を設置したうえで実施された。被験者が着用するライフジャケットの浮力は、Aが着用していたライフジャケットの浮力と体重比が等しくなるように設定された。再現実験は、ライフジャケットを着用した状態で様々な行動をし、遊具下に入り込まないか検証する調査実験と、ライフジャケットを着用したまま遊具下に入り込んでしまった場合に脱出できるか検証する確認実験とが行われた。 調査実験においては、落水実験、遊具揺動実験、上り動作実験の3種類の実験が行われた。落水実験においては、様々な体勢で被験者が遊具から落下した結果、立位から身体を捻り逆様に落下したり、立位で前向きに真っ直ぐ落下した後、水中で腕を1回かいたりすると確実に遊具の下に入り込んでしまい(それぞれ4回中4回、3回中3回)、膝を遊具に突いた状態から水中を覗き込んだ体勢で逆様に落下した場合や、立位で後ろ向きに真っ直ぐ落下した後、水中で腕を1回かいた場合も、3回に2回は遊具の下に入り込んでしまうことが明らかになった。この他、真っすぐ水深1.5メートルの水中に落下し、水底を蹴った場合や、遊具場を走って頭か足から水中に落下した場合も、遊具の下に入り込む危険があることが判明した。遊具揺動実験では、大人8人が遊具場で飛び跳ねることによって遊具を水面上で揺動させ、落水後に浮上した被験者が遊具と水面の隙間から遊具下に入り込む危険がないか調査されたが、そのような隙間の発生は確認できなかった。しかし、揺動する遊具の周囲の激しい水飛沫を浴びることによる乾性溺水や誤嚥、動転の可能性はあるとされた。それに、落水後に、遊具の構造上必ず発生する遊具同士の隙間に身体が入ってしまった場合、溺水の恐れがあるとされた。上り動作実験では、遊具から水面に落下した被験者が、遊具の先端から遊具に上ろうとして再度水中に落下し、遊具の下に入り込む可能性がないか検証したが、そのような可能性はないことが判明した。 確認実験においては、浮力抵抗実験と遊具揺動による影響確認実験の2種類の実験が実施された。浮力抵抗実験においては、遊具の下以外の水中にいる被験者をロープで引っ張るのに必要な力が約10ニュートンであるのに対し、遊具の下にうつぶせに浮かんだ被験者を引っ張り出すには約200ニュートンの力が必要であることが判明した。比較として、大学の男子競泳選手が最も推進力が大きいクロールで泳ぐ場合でさえ、推進力の平均値は155ニュートンで、標準偏差が25ニュートンであることから、200ニュートンもの抵抗がかかった場合、潜水作業の熟練者であっても遊具の下からの脱出は困難であるとされた。遊具揺動による影響確認実験では、遊具を水面上で揺動させ、遊具下にいる被験者にどのような影響が生じるか調査した結果、遊具の揺動と同時に被験者も上下するために脱出が困難になり、さらに、水中で脱力して頭や背中の上部が遊具にくっつき、下半身が垂れ下がった状態で遊具が揺動すると、上半身が下方に押し出されて足の方向へ移動するため、遊具の中央に移動していくために、より脱出が困難になることも明らかになった。事故後にこの現象が発生し、溺水につながった可能性もあるとされた。 この他、エア遊具の代わりに浮島を設置した場合でも、浮島の下に入り込んでしまうとその外側に出ない限り呼吸が難しくなり、溺水につながることが明らかになった。一方で、遊具の下に空間がある場合、人が乗ると空間の高さが半分程度になるものの、遊具の下に入り込んでしまった場合でもその空間で呼吸が可能であるため、溺水防止に有効であるとされた。
※この「再現実験」の解説は、「としまえんの水上設置遊具による溺水事故」の解説の一部です。
「再現実験」を含む「としまえんの水上設置遊具による溺水事故」の記事については、「としまえんの水上設置遊具による溺水事故」の概要を参照ください。
- 再現実験のページへのリンク