再現性の危機への言及
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/14 14:53 UTC 版)
「再現性の危機」の記事における「再現性の危機への言及」の解説
再現性は「科学のコーナーストーン」として言及されてきた。再現研究は出版された結果が真の発見を反映したものか偽陽性を反映したものかを評価しようとしている。科学的発見の誠実さと研究の再現性は将来の研究の基礎知識を形作るため重要である。 再現性の危機に対応するための学術出版の近年の発展の一つは登録された報告を用いるものである。登録された報告のフォーマットは著者に、データ収集の前に、研究方法と分析を記述したものを提出することを求めている。方法と分析の計画がピアレビューにより審査されたら、発見の出版は著者が提出したプロトコルに従っているか否かに基づき暫定的に保証される。登録された報告の一つの目的はQRPを導きかねない有意な発見に対する出版バイアスを回避することであり、厳密な方法に基づいた研究の出版を促進することである。MITとスタンフォード大学における実験的方法のコースワークに基づき、心理学のコースはオリジナルな研究というよりは再現実験を強調すべきと提案された。このような試みのおかげで学生は科学的方法論を学び、再現性が確かめられるような意味ある科学的発見について多くの独立した再現実験を行うだろう。大学院生は卒業前に博士論文の研究に関連したトピックに基づいた高い精度の再現実験を出版することを求められるべきと薦める声もある。 再現実験の精度を高めるために、元の研究より大きなサンプルサイズが必要とされる。出版バイアスと元の研究における小さなサンプルサイズと関連した大きなサンプリングの変動性のために、出版された研究における効果量(英語版)の推定は誇張されることが多いので大きなサンプルサイズが要求される。 データ、プロトコル、そして発見が大衆により記録でき、かつ評価もされうるオンライン・レポジトリにより研究の統合と再現性が改善されようとしている。そのようなレポジトリの例として、open science framework、http://www.re3data.org/、www.psychfiledrawer.orgなどがある。Open Science Framework のようなサイトは意欲的な科学者の努力における開かれた科学慣行のためにバッジを提供している。しかしながら、分析のためのデータとコードを提供したいと思うような研究者はおそらくもっとも洗練されているという懸念もある。スタンフォード大の John Ioannidis は"最も几帳面で洗練されていて研方法を熟知しており注意深い研究者が、間違いを追い求める再分析者による批判と評価の攻撃により影響されるようになるというパラドックスが起こるだろうし、どうやっても間違いを無視できない"と提言している。 学術雑誌 Psychological Science(英語版) では、研究の事前登録と、効果量と信頼区間の報告が推奨されている。編集スタッフは草稿を出版受理する前に、小さいサンプルサイズにおける試行からの驚くべき発見を行った研究の再現性について尋ねるようにしている、と筆頭編集者は記している。 2016年7月に、Netherlands Organisation for Scientific Research(英語版)は再現研究のために300万ユーロを拠出した。この資金は現在あるデータの再解析に基づいた再現と新しいデータの収集と分析による再現のためのものである。資金は社会科学、健康についての研究、ヘルスケア・イノベーションの領域で使用可能である。 2017年6月に72人の著名な研究者が、新たな発見をしたと主張する際の証拠の統計的基準の低さが再現性の危機の一因になっているとする論文を発表した。新発見の統計的有意性を評価するために、科学者が好んで用いるP値の閾値は0.05から0.005に引き下げるべきであると、統計学の大家たちは主張する。その一方、イリノイ工科大学の計算機科学者Shlomo Argamonは「実験する方法が多数ある限り、どんなに小さいP値の閾値を用いてもその中に一つの実験方法が偶然に有意になる可能性が極めて高い」と新しい方法論的な基準を求める。実際小さいP値の閾値を用いたらお蔵入り問題がより著しくなり、多数の論文が出版できなくなる。
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