水素 水素分子の生産

水素

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/31 17:58 UTC 版)

水素分子の生産

工業的には、炭化水素水蒸気改質や部分酸化の副生成物として大量に生産される(炭化水素ガス分解法)。硫黄酸化物を除いたパラフィン類やエチレンプロピレンなどを440 °Cの環境下でニッケルを触媒としながら水蒸気と反応させ、粗ガスを得る[2]

副生される一酸化炭素は水蒸気と反応して二酸化炭素と水素ガスとなる。のちにガーボトール法にて二酸化炭素を除去し、水素ガスが得られる[2]。粗ガスの精製には、圧縮したうえで苛性ソーダ洗浄を行い、熱交換器にて重いガス類を液化除去する方法(液化窒素洗浄法)もある[2]

また、ソーダ工業や製塩業において海水電気分解英語版の副生品として発生する水素が利用されることもある。現在のところ、水素ガスはメタンを主成分とする天然ガスから、触媒を用いた水蒸気改質によって生産する方法が主流である。日本国内における2019年の水素の生産量は627668×103 m3、工業消費量は400802×103 m3である[36]

水素分子(水素ガス)を生じる化学反応は多岐にわたる。古典的には実験室において小規模に生成する場合、亜鉛アルミニウムなど水素よりもイオン化傾向の大きい金属に希硫酸を加えて発生させる方法が知られている(キップの装置)。あるいは水酸化ナトリウム硫酸などを添加して電導性を増した水や、食塩水を電気分解して陰極から発生させることもできる。

実験室レベルにおいては工業的に生産されたガスボンベ入りの水素ガスを利用する。実験の際は防爆環境にて行われる。

製造方法別の色分け

カーボンニュートラルの実現に向け、水素の製造方法別に色分けする考え方が広まっている[37]

グレー水素:化石燃料(主に天然ガス)を水蒸気改質反応させ生産する水素。水蒸気改質反応時に副産物として多くの二酸化炭素が排出される[38][39][37]

ブルー水素:水蒸気改質反応の問題点である水素の製造時に排出される副産物の二酸化炭素を回収して処理(地下地層貯蔵ないしは炭素を再利用:CCUS、など)し、大気中に放出しないことで、二酸化炭素排出を実質ゼロにして生産される水素[38][39][37]。しかし、回収、貯蔵のためには大規模な施設が必要であり、オンサイト型水素ステーション毎に設置するとなると費用がかかり過ぎてしまう問題がある[37]

グリーン水素:二酸化炭素排出のない再生可能エネルギーを使い、水を電気分解して生産する水素[38][39][37]

ターコイズ水素:メタンの熱分解によって生成される水素。炭素は気体ではなく固体として生産されるため、二酸化炭素は排出されない。再生可能エネルギーの利用と、生成された炭素を永久に封じ込めることが条件となる[38][39][37]

イエロー水素:原子力発電の電力を用いて、水を電気分解して生産される水素[39][37]

ブラウン水素:石炭から生産される水素。製造時に多くの二酸化炭素が排出される。グレー水素に分類されることもある[39]

ホワイト水素:水素以外の製品生産時に副産物として生成された水素。生産は限定的[39][37]


注釈

  1. ^ 次いでヘリウムが約25 %[8][9]
  2. ^ Dias & Silvera (2017) は495 GPaの圧力において固体と推定される金属水素が得られたと発表したが、この実験結果については多くの科学者が疑問視している[22][23]
  3. ^ ハロゲンに近い性質を持つため、1周期系列と17族の位置に変更すべきというもの。

出典

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