水素化アルミニウムとは? わかりやすく解説

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水素化アルミニウム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/04 16:43 UTC 版)

水素化アルミニウム
Unit cell spacefill model of aluminium hydride
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.029.139
Gmelin参照 245
PubChem CID
CompTox Dashboard (EPA)
性質
AlH3
モル質量 29.99 g/mol
外観 白色の結晶
密度 1.486 g/cm3, 固体
融点 150 °C
沸点 分解
関連する物質
関連物質 水素化アルミニウムリチウム
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
 verify (what is  N ?)

水素化アルミニウム(すいそかアルミニウム、aluminum hydride)またはアラン(alane)は、無色の固体で化学式がAlH3で表される無機化合物である。極めて酸化されやすく空気中で自然発火するため危険物第3類に分類されている。そのため研究室内で還元剤として有機合成に使われる[1]以外ほとんど見られない。

構造

アランはポリマー構造をとり、その化学式はよく(AlH3)nと表される。アランは多数の多形体をとり、それぞれα-アラン、α’-アラン、β-アラン、δ-アラン、ε-アラン、θ-アラン、およびγ-アランと名付けられている。α-アランは立方晶または菱面体晶の形態ととるのに対し、α’-アランは針状結晶、γ-アランは結合した針の束状構造を作る。アランはテトラヒドロフランとエーテルに溶け、エーテルでの沈殿量はその調製法に依存する[2]

α-アランは、アルミニウム原子が6個の水素原子に囲まれ、別のアルミニウム原子とはそれで架橋されている構造で決定された。Al-H間の距離はすべて同じ172 pmで、Al-H-Alの角度は141°である[3]

α-AlH3 単位格子
Al 配位
H 配位

α-アランは、最も熱的に安定な多形体である。β-アランとγ-アランは同時に合成され、熱するとα-アランに変わる。δ、ε、θ-アランはいろいろな結晶化条件で合成される。それらは安定ではないが、熱してもα-アランにはならない[2]

アランの分子構造

単量体のAlH3は、固体の希ガスマトリックス内の低温条件下で単離したところ平面形であることが示された[4]。二量体のAl2H6 を固体水素中で単離したところ、ジボラン(B2H6)とジガラン(Ga2H6)と同形であった[5][6]

合成

水素化アルミニウムの不純物と関連化合物は古くから報告されている[7]。初めて合成法が公開されたのは1947年で、アメリカでは合成の特許が1999年にペトリらに割り当てられている[8][9]

現在では水素貯蔵に利用するためよりアミンを利用したより簡単で水素・アルミ以外の原料を必要としない合成法が研究されている。

塩化物を利用した合成法

主に水素化アルミニウムリチウムエーテル溶液塩化アルミニウムから合成される[10]。この合成法は手順が複雑であり、反応後に塩化リチウムを除去しなければならないことにも留意する必要がある。

Stereoselective reduction of a substituted cyclohexanone using aluminium hydride

数種のケトンのヒドロキシメチル化を可能にする[29]。ケトンはエノラートとして保護されているためケトン自体は還元されない。

Functional Group Reduction using aluminium hydride

有機ハロゲン化合物はゆっくり還元されるか、まったく還元されない。そのため、ハロゲン部分が存在するカルボン酸などを還元させることができる[30]

Functional Group Reduction using aluminium hydride

ニトロ基は還元されない。同様にニトロ基のあるエステルを還元することができる[31]

Ester reduction using aluminium hydride

アセタールを半保護されたアルコールへの還元にも使うことができる[32]

Acetal reduction using aluminium hydride

以下のようなエポキシド環の開環にも使える[33]

Epoxide reduction using aluminium hydride

アランが使われるアリル基転位はSN2反応であり、立体的な損傷がない[34]

Phosphine reduction using aluminium hydride

熱条件では二酸化炭素メタンに還元できる。

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