ヒドリド還元
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/05/31 14:33 UTC 版)
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ヒドリド還元(ヒドリドかんげん、hydride reduction)とは、化合物の還元を求核剤としての水素供与体により行う還元反応のことである。
ヒドリド還元に属する反応の範囲は用いる文脈や人によって揺れが見られる。例えば「水素化ジイソブチルアルミニウムによるエポキシドの還元は、ヒドリド還元とは位置選択性が異なる。」というような使い方がされることがある。 同じアルミニウムの水素化物を用いる反応であっても、水素化アルミニウムリチウムと水素化ジイソブチルアルミニウムでは反応機構が異なるためこの二つを区別しているのである。
一方で、水素化トリブチルスズによるハロゲン化物の還元のように、実際にはヒドリドではなくラジカル的な還元反応であっても、形式的にヒドリド還元と見なせることからヒドリド還元の範疇に含む場合もある。 このようにヒドリド還元に含まれる反応は多岐に渡る。
金属水素化物による還元
水素がイオン化する場合、一般的にはプロトン、すなわちプラスの電荷をもった化学種として振る舞うことが多いが、水素原子よりも電気陰性度の小さな原子(アルミニウム、ホウ素等)と結合した水素は、マイナスの電荷を持った水素イオン、すなわちヒドリドとして働くことができる。
金属塩など無機化合物に対して、金属水素化物は良い還元剤として作用する。一方、ヒドリドイオン自体は必ずしも求核性が高いわけでは無いので、酸性度の高い化合物に対してはプロトンとの反応が先行する。それ故有機化学では、水素化ナトリウムはもっぱら塩基として利用される。
一方、化合物種によっては金属水素化物がヒドリド還元に利用される。アルデヒド(R2=H)と水素化アルミニウムリチウムとの反応を例にとると、アルデヒドのカルボニル炭素は求電子的であるためにアルミニウムに結合した水素(ヒドリド)が求核剤としてカルボニル炭素に求核攻撃する。また、同時にカルボニルの酸素原子はアルミニウムと結合を形成する。このようにして生成したアルコキシアルミニウム化合物を加水分解することで、アルコールが得られ、全体としてはアルデヒドがアルコールに還元されたことになる。
アート型のヒドリド錯体を用いる還元
金属水素化物とルイス酸のアート錯体は典型的な求核剤として振舞う還元剤である。 分極した不飽和結合の求電子的な原子に対して付加反応を起こす。 また良い脱離基となる置換基が結合したsp3炭素に対してはSN2機構で求核置換反応を起こす。
この種の代表的なヒドリド還元剤とその適用例を次に示す。
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水素化ホウ素ナトリウム この節の加筆が望まれています。
- 水素化ホウ素亜鉛
この節の加筆が望まれています。- アセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
この節の加筆が望まれています。-
水素化アルミニウムリチウム (LAH)
同様な機構でLDAのイソプロピル基からヒドリド転位する例も知られている。 また、グリニャール試薬によるかさ高いケトンの還元反応、カニッツァロ反応なども類似した機構で進行すると考えられている。
ジルコニウム錯体やルテニウム錯体を用いても、メールワイン・ポンドルフ・バーレー還元と形式的には同じ反応が進行する。 しかし、この反応はイソプロピルアルコールからの脱水素によるヒドリド錯体の生成、ヒドリド錯体によるカルボニル化合物の水素化という2段階機構で進行していると考えられており、むしろ後述する遷移金属触媒による水素化反応と機構的には類似している。 このタイプの反応は触媒的水素転移反応 (Catalytic Hydrogen Transfer Reaction) と呼ばれている。
接触水素化
また、アルミニウムやホウ素などの13族元素以外では、ロジウムなどの遷移金属ヒドリド錯体(ウィルキンソン触媒)による還元も行える。 この場合には、水素-金属結合へのアルケンの挿入反応、生じたアルキル配位子のヒドリド配位子との還元的脱離により反応が進行する。 また、還元によりヒドリドを失ったロジウムは水素分子との反応によりヒドリド錯体を再生することができ、全体として触媒的水素化反応となる。
ホスフィン-エチレンジアミン-ルテニウム錯体のケトンの水素化反応は形式的にはヒドリド錯体のカルボニル基への求核攻撃とも考えられるが、ジアミンの存在が必須であるため6員環遷移状態を含むメールワイン・ポンドルフ・バーレー還元に類似した協奏的なヒドリド移動の反応機構が考えられている。
ヒドリド還元
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:20 UTC 版)
金属あるいは半金属の水素化物やその錯化合物(アート錯体)を還元剤として用いる還元反応である。 記事 ヒドリド還元に詳しい。 ジボラン(B2H6)は、アルデヒドやケトンをアルコールに還元できるほか、カルボン酸もアルコールに還元することができる。 水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、アルコールやアルカリ性の水を溶媒として使用できる還元剤。アルデヒドやケトンをアルコールに還元する。エステルは加熱したり、テトラヒドロフランなどを溶媒に使用するとアルコールに還元される。また、α,β-不飽和カルボニル化合物は 1,4-還元された後、カルボニル基も還元されて飽和のアルコールとなる。しかしセリウム塩を添加すると、1,2-還元が起こりアリルアルコールを生成するようになる。 シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)は、水素化ホウ素ナトリウムよりも還元力が低いが、酸性の水中での安定性が良い。アルカリ性水溶液では不安定なイミンをアミンに還元するのに利用される。 水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBH(C2H5)3)は、Super Hydrideという商標を持つ還元剤で市販されており、知られているヒドリド還元剤の中では特に強力な還元力を持つ。立体障害を受けているハロゲン化アルキルの還元などに使用される。 水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec-C4H9)3)および水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム(KBH(sec-C4H9)3)は、それぞれL-Selectride、K-Selectrideの商標を持つ還元剤である。立体的にかさ高い還元剤なので水素化ホウ素ナトリウムによる還元とは立体選択性が変化することがある。 水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)は、ルイス酸性を有する還元剤で、アルデヒドやケトン、エステルをアルコールに還元できるほか、アセタールを分解してエーテルにしたり、エポキシドを級数の多い側で開環させてアルコールにする。ニトリルはイミンに還元され、加水分解するとアルデヒドになる。また低温で反応を行うとエステルをアルデヒドに部分還元することができる場合もある。 水素化アルミニウムリチウム(LAH)(LiAlH4)は、強力な還元剤でアルデヒドやケトン、カルボン酸、エステルをアルコールへ還元する。ニトリルやアミドはアミンへ還元される。またハロゲン原子も水素に置換される。エポキシドを級数の少ない側で開環させてアルコールにする。α,β-不飽和カルボニル化合物の還元は1,2-還元が優先しアリルアルコールを生成する。水と接触したり、120℃以上に加熱すると激しく分解して発火することがある。反応はよく乾燥したジエチルエーテルやテトラヒドロフランを溶媒として行う。 水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムは、Red-Alという商標を持つ還元剤でLAHと同じような還元力を持つ。高温にしても比較的安定であり、発火の危険性が小さい利点がある。 水素化トリブチルスズ((n-C4H9)3SnH)は、ルイス酸の存在下では水素化ジイソブチルアルミニウムと同様の還元作用を示すが、ラジカル的な還元剤として有用である。光照射やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル開始剤などによりトリブチルスズラジカルが発生し、それによってハロゲン化アルキルや硫黄化合物などからハロゲンや硫黄官能基が引き抜かれ、発生したラジカルが水素化トリブチルスズから水素を引き抜いて還元される。
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