ヒドリド還元
ヒドリド還元
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/10 03:20 UTC 版)
金属あるいは半金属の水素化物やその錯化合物(アート錯体)を還元剤として用いる還元反応である。 記事 ヒドリド還元に詳しい。 ジボラン(B2H6)は、アルデヒドやケトンをアルコールに還元できるほか、カルボン酸もアルコールに還元することができる。 水素化ホウ素ナトリウム(NaBH4)は、アルコールやアルカリ性の水を溶媒として使用できる還元剤。アルデヒドやケトンをアルコールに還元する。エステルは加熱したり、テトラヒドロフランなどを溶媒に使用するとアルコールに還元される。また、α,β-不飽和カルボニル化合物は 1,4-還元された後、カルボニル基も還元されて飽和のアルコールとなる。しかしセリウム塩を添加すると、1,2-還元が起こりアリルアルコールを生成するようになる。 シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH3CN)は、水素化ホウ素ナトリウムよりも還元力が低いが、酸性の水中での安定性が良い。アルカリ性水溶液では不安定なイミンをアミンに還元するのに利用される。 水素化トリエチルホウ素リチウム(LiBH(C2H5)3)は、Super Hydrideという商標を持つ還元剤で市販されており、知られているヒドリド還元剤の中では特に強力な還元力を持つ。立体障害を受けているハロゲン化アルキルの還元などに使用される。 水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素リチウム(LiBH(sec-C4H9)3)および水素化トリ(sec-ブチル)ホウ素カリウム(KBH(sec-C4H9)3)は、それぞれL-Selectride、K-Selectrideの商標を持つ還元剤である。立体的にかさ高い還元剤なので水素化ホウ素ナトリウムによる還元とは立体選択性が変化することがある。 水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL-H)は、ルイス酸性を有する還元剤で、アルデヒドやケトン、エステルをアルコールに還元できるほか、アセタールを分解してエーテルにしたり、エポキシドを級数の多い側で開環させてアルコールにする。ニトリルはイミンに還元され、加水分解するとアルデヒドになる。また低温で反応を行うとエステルをアルデヒドに部分還元することができる場合もある。 水素化アルミニウムリチウム(LAH)(LiAlH4)は、強力な還元剤でアルデヒドやケトン、カルボン酸、エステルをアルコールへ還元する。ニトリルやアミドはアミンへ還元される。またハロゲン原子も水素に置換される。エポキシドを級数の少ない側で開環させてアルコールにする。α,β-不飽和カルボニル化合物の還元は1,2-還元が優先しアリルアルコールを生成する。水と接触したり、120℃以上に加熱すると激しく分解して発火することがある。反応はよく乾燥したジエチルエーテルやテトラヒドロフランを溶媒として行う。 水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムは、Red-Alという商標を持つ還元剤でLAHと同じような還元力を持つ。高温にしても比較的安定であり、発火の危険性が小さい利点がある。 水素化トリブチルスズ((n-C4H9)3SnH)は、ルイス酸の存在下では水素化ジイソブチルアルミニウムと同様の還元作用を示すが、ラジカル的な還元剤として有用である。光照射やアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のようなラジカル開始剤などによりトリブチルスズラジカルが発生し、それによってハロゲン化アルキルや硫黄化合物などからハロゲンや硫黄官能基が引き抜かれ、発生したラジカルが水素化トリブチルスズから水素を引き抜いて還元される。
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